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審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 K9
管理番号 1375932 
審判番号 不服2021-943
総通号数 260 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2021-08-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-01-22 
確定日 2021-08-02 
意匠に係る物品 歯車 
事件の表示 意願2020- 1730「歯車」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯

本願は、令和 2年(2020年) 1月30日の意匠登録出願であって、その後の主な手続の経緯は、以下のとおりである。

令和 2年(2020年) 7月16日付け 拒絶理由の通知
同年 8月20日 意見書の提出
同年 10月15日付け 拒絶査定
令和 3年(2021年) 1月22日 審判請求書の提出

第2 本願の意匠

本願は、物品の部分について意匠登録を受けようとする意匠登録出願であり、本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は、意匠に係る物品を「歯車」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下、「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり、本願意匠において物品の部分として意匠登録を受けようとする部分(以下「本願部分」という。)を、「実線で表した部分が部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。一点鎖線は、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分とその他の部分との境界のみを示す線である。」としたものである。(別紙第1参照)

第3 原審の拒絶の理由及び引用した意匠

原審における拒絶の理由は、本願意匠は、出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者(以下、「その意匠の属する分野における通常の知識を有する者」を「当業者」という。)が日本国内又は外国において公然知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので、意匠法3条2項の規定に該当するとしたものであって、具体的には、以下のとおりである。

「この意匠登録出願の意匠に係る『歯車』の分野においては、歯溝部の最下部に正背面視において軸方向の端部に表れる別部材を配すことは、本願出願前よりごく一般的に見受けられているところです(例えば下記の意匠1)。
そうすると、本願出願前に公知となった下記の意匠2の歯溝部の最下部に、本願出願前に公知となった下記の意匠3の弾性体を配し、正背面視において軸方向の端部まで表れるものとしたにすぎない本願の意匠は、当業者であれば、容易に創作することができたものです。

意匠1
特許庁発行の公表特許公報記載
特表2016-509180
図2および関連する記載によって表された歯車の意匠

意匠2
特許庁発行の意匠公報記載
意匠登録第1615901号の意匠

意匠3
特許庁発行の公開特許公報記載
特開2008-162352
図3および関連する記載によって表された歯車の意匠」

第4 当審の判断

以下、本願意匠の意匠法3条2項の該当性、すなわち、本願意匠が当業者であれば容易に創作することができたか否かについて検討し、判断する。

1 本願意匠
(1)意匠に係る物品
本願の意匠に係る物品は、機械部品として用いられる「歯車」である。

(2)本願部分
願書の記載及び願書に添付した図面の記載の内容から、本願部分の用途及び機能、位置、大きさ及び範囲、並びに形態は、以下のとおりである。

ア 本願部分の用途及び機能、並びに位置、大きさ及び範囲
本願部分は、弾性体からなるものであり、他の歯車と噛み合う際に発生するノイズ(歯打ち音)を低減させる用途及び機能を有するものであって、略円盤状の歯車の上端中央に形成される歯と歯の間の隙間の底(歯底)を軸方向に陥没させその内部に充填した弾性体のうち、正面視において上から約1/5の高さを占める大きさ及び範囲である。
イ 本願部分の形態
本願部分は、正面視略逆等脚台形で、上辺、下辺の長さ及び高さの比率は、約2:1.8:1である。

2 引用意匠の認定
引用意匠の認定にあたり、本願意匠の図の向きに、引用意匠の図の向きを合わせるものとする。

(1)意匠1(別紙第2参照)
ア 意匠に係る物品
意匠に係る物品は、自動車のエンジンに使用される「スプロケット(歯車)」である。
イ 形態
意匠1は、歯車の上端に形成される2つ並んだ略富士山形の間の歯底において、軸方向縦に形成した切欠きに正面視略丸頭リベット状の弾性体を頭部が歯底の上に表れるよう密着状にはめ込んだものである。
(2)意匠2(別紙第3参照)
ア 意匠に係る物品
意匠に係る物品は、機械部品として用いられる「歯車」である。
イ 形態
意匠2は、中央に円孔を形成した略円板で、周面に多数の歯を形成したものであって、正背面に周に沿って環状の溝を形成している。
歯は、正面視略縦長等脚台形で斜辺はやや弧状に湾曲している。
(3)意匠3(別紙第4参照)
ア 意匠に係る物品
意匠に係る物品は、電動パワーステアリング装置に使用される「小歯車」である。
イ 形態
意匠3は、歯車の断面であって、歯車の周縁に形成される正面視略等脚台形の歯及びその両脇の歯底の上に正面視略扁平逆等脚台形の弾性体を密着状に充填したものである。

3 本願意匠の創作性の検討
この物品の属する分野において、中央に円孔を形成した略円板で、周面に正面視略縦長等脚台形の歯を多数形成した略円板状の歯車は、本願の出願前に公然知られているものであり(意匠2)、また、他の歯車と噛み合う際に発生するノイズを軽減させるため、歯車の歯底に軸方向縦に切欠きを形成し正面視略丸頭リベット状の弾性体を頭部が歯底の上に表れるよう密着状にはめ込んだもの(意匠1)や、歯底の上に正面視略扁平逆等脚台形の弾性体を密着状に充填したもの(意匠3)が、本願の出願前に公然知られているものであるが、本願部分のように、略円盤状の歯車の上端中央に形成される歯と歯の間の歯底を軸方向に陥没させ、その内部に充填した弾性体のうち上部を正面視略逆等脚台形としたものは、上記の引用意匠には見られないものであるから、本願部分は、当業者にとって、格別の創作を要したものといわざるを得ない。
そうすると、本願部分の態様は、この種物品分野において独自の着想によって創出したものであり、当業者が公然知られた形態に基づいて容易に本願意匠の創作をすることができたということはできない。

第5 むすび

以上のとおりであって、本願意匠は、原審が示した理由によっては意匠法3条2項に規定する意匠に該当しないものであるから、この拒絶の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。

また、当審において、更に審理した結果、他に拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。

別掲

審決日 2021-07-14 
出願番号 意願2020-1730(D2020-1730) 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (K9)
最終処分 成立  
前審関与審査官 佐藤 美紗子 
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 内藤 弘樹
加藤 真珠
登録日 2021-08-06 
登録番号 意匠登録第1693494号(D1693494) 
代理人 野間 悠 
代理人 長谷川 芳樹 
代理人 野村 信三郎 
代理人 黒川 朋也 

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