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審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 C3
管理番号 1376800 
審判番号 不服2017-15311
総通号数 261 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2021-09-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-10-13 
確定日 2018-08-07 
意匠に係る物品 クリーニングシート 
事件の表示 意願2016- 23375「クリーニングシート」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
本願は、意匠法第14条第1項の規定により、秘密にすることを請求する期間を3年とした、平成28年(2016年)10月27日の意匠登録出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成28年11月7日 :手続補正書の提出
平成29年6月14日付け :拒絶理由の通知
平成29年9月19日付け :拒絶査定
平成29年10月13日 :審判請求書の提出


第2 本願意匠
本願意匠は、意匠に係る物品を「クリーニングシート」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであって、「平面図において上下、左右に連続する。」としたものである(別紙第1参照)。


第3 原審における拒絶の理由
原審における拒絶の理由は、本願意匠が、出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形態に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので、意匠法第3条第2項の規定に該当するとしたものであって、具体的には、
「本願意匠は、クリーニングシートの表面及び裏面のほぼ全面に模様を施したものですが、その模様は、周知の模様である四崩し文、すなわち四本ずつの縞が縦横に略石畳状に配される文様であり、この種クリーニングシートの分野に限らず普通に見られる公然知られたものです(例えば、下記意匠1,2)。また、表面の模様の算木に該当する部分を地部分よりも盛り上がった態様とすることは、この種物品分野において本願出願前よりごく一般的に行われています(例えば、下記意匠3)。
そうすると、本願意匠は、クリーニングシートの表面及び裏面のほぼ全面に、周知模様である四崩し文を単に施し、本願出願前に公然知られた手法を用いて、算木部分を一定の厚みで形成したに過ぎないため、当業者であれば、容易に創作をすることができたものと認められます。

下記意匠1(当審注:以下「意匠1」という。別紙第2参照)
特許庁特許情報課が2006年6月8日に受け入れた
中華人民共和国意匠公報2006年4月19日No.016号
「織物地」(登録番号CN3519856)の意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HH18006400号)

下記意匠2(当審注:以下「意匠2」という。別紙第3参照)
意匠登録第148189号
「被服地」の意匠

下記意匠3(当審注:以下「意匠3」という。別紙第4参照)
電気通信回線の種類 :インターネット
掲載確認日(公知日):2014年5月12日
受入日 :特許庁意匠課受入2014年6月13日
掲載者 :ウェスコ
掲載ページのアドレス:http://il.wesco.fr/media/catalog/product/cache/1/image/9f3d7a41ffbca01790fbdc0197d9c171/3/9/39364_P_39364@P2@XL.jpg
に掲載された「清掃用シート」の意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HJ26011924号)」
としたものである。


第4 当審の判断
本願意匠の意匠法第3条第2項の該当性、すなわち、本願意匠が容易に創作することができたか否かについて、検討し、判断する。

1.本願意匠
本願意匠の意匠に係る物品は「クリーニングシート」であり、本願意匠の形態は以下のとおりである。
本願意匠の形態は、平面図において上下、左右に連続する薄手のシートの平面及び底面の全面に、平面と底面で同一の位置で、同一の長さの細幅の、並行に4条並べた複数の線条突起の単位を、平面図の縦辺に対し左斜め約45度及び右斜め約45度の角度で上下方向及び左右方向に交互に配して成るものである。
具体的には、平面視で、両端を半円状とし、幅と長さの比を約1:14とする線条突起を、長さの約8分の1の間隔を開けて4条並行に並べ、矩形状の範囲の1単位とし、1単位の長辺と短辺の比は約3:2とし、直交する2単位には長さの約20分の1の間隔を開け、相接する4単位の中央に小正方形状の余地を空けて、全体を構成したものである。なお、線条突起の高さは、正面視及び断面視で、1条の幅の約半分である。

2.拒絶理由に記載された意匠
意匠1及び意匠2については、拒絶理由で、「本願意匠」の「模様」が「周知の模様である四崩し文」としたうえで、本願意匠に係る物品分野に限らず「普通に見られる公然知られたもの」の例示として記載されているものである。
意匠3については、意匠に係る物品は「清掃用シート」であり、その形態は以下のとおりである。なお、本願意匠の図面にあわせて、引用意匠3の左上の横長矩形の写真を平面図とし、右下の写真を清掃用シートが折り畳まれて当該シートの底面が見えている状態の図とする。
平面図において薄手のシートの平面及び底面の全面に、長短2種類の長さの太幅の線条突起を、平面図の縦辺に対し垂直及び水平に碁盤の目状に配して成るものである。
具体的には、平面視で、幅と長さの比を約1:2、約1:3とする長短2種類の長円形状の線条突起を、3条、等間隔を開けて並行に並べ「三」字状として正方形状の1単位とし、上下左右隣り合う各単位が相互に90度回転して位置するよう、碁盤の目状に配して、全体を構成したものである。一方、底面に、平面のような線条突起の構成はない。

3.本願意匠の創作の容易性について
(1)本願意匠の平面視の模様
一般に、崩し文は、和算や易占に用いる算木を崩したようにみえるので「算崩し」などともいわれる文様の一種であり、3条ずつ縦横に配列するなら「算崩し」が転じて「三崩し」、5条なら「五崩し」といわれるなかで、4条にあたるものが「四崩し文」と呼ばれている。
そして、この崩し文は、算木にあたるものの条数が決まっても、1条の模様が矩形状であるか否か、模様の縦横の長さの比率、条同士の間隔、複数条を1単位としたときの直交する2単位同士の間隔、相接する4単位の中央に小正方形状の余地があるか否か、など、全体の形状を決める要素は多岐に亘るものであり、その模様は一義的に決まるものではない。
これを踏まえて本願意匠についてみると、本願意匠の模様は、前記1.のとおり、平面視で、両端を半円状とし、幅と長さの比を約1:14とする1条分の模様を、長さの約8分の1の間隔を開けて4条並行に並べ、矩形状の範囲の1単位とし、1単位の長辺と短辺の比は概ね3:2であり、直交する2単位には長さの約20分の1の間隔を開け、相接する4単位の中央に小正方形状の余地を空けて、全体を構成しており、意匠1、意匠2とは異なるものであるから、この態様が周知の模様であるということはできない。

(2)本願意匠のシートの両面における同一位置同一形状の突起
本願意匠は、「クリーニングシート」に係るものであるが、この種の物品分野において、シートの地の表面の全体に模様を表すことは、意匠3に示すとおり、本願出願前よりごく普通に行われているところである。
しかし、本願意匠のように、シートの地の平面と底面の同一の位置に同一の形状の突起を設けてシート全体を構成したものは、意匠3には見られないものであるから、本願出願前より公然知られているとはいいがたいものである。
そうすると、本願意匠は、シートの地の表面の全体に表した模様を、一定の高さの突起状としたとしても、本願意匠は、シートの両面の地の同一の位置に同一の模様で同一の高さの突起を設けてシート全体を構成しているのであるから、当業者であれば、容易に創作することができたものとはいえない。


第5 むすび
以上のとおり、本願意匠は、原審の拒絶の理由によっては、意匠法第3条第2項の規定に該当しないので、本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2018-07-20 
出願番号 意願2016-23375(D2016-23375) 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (C3)
最終処分 成立  
前審関与審査官 桐野 あい 
特許庁審判長 内藤 弘樹
特許庁審判官 宮田 莊平
渡邉 久美
登録日 2018-08-17 
登録番号 意匠登録第1613329号(D1613329) 
代理人 特許業務法人 Vesta国際特許事務所 

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