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審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 L2
管理番号 1377853 
審判番号 不服2021-6467
総通号数 262 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2021-10-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-05-20 
確定日 2021-09-02 
意匠に係る物品 擁壁用ブロック 
事件の表示 意願2020- 15556「擁壁用ブロック」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 事案の概要

1 手続の経緯
本願は,令和2年(2020年)7月27日の意匠登録出願であって,同年11月20日付けの拒絶理由の通知に対し,同年12月17日に意見書が提出されたが,令和3年(2021年)2月18日付けで拒絶査定がなされ,これに対して,同年5月20日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

2 本願意匠の願書及び添付図面の記載
本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとする意匠登録出願であって,その意匠は,意匠に係る物品を「擁壁用ブロック」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を,願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり(以下「本願意匠」という。),部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を,「実線で表した部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」(以下「本願部分」という。)としたものである(別紙第1参照)。

3 原査定の拒絶の理由及び引用した意匠
原査定の拒絶の理由は,本願意匠は,出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形態に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので,意匠法第3条第2項の規定に該当するとしたものであって,具体的には,以下のとおりである。

「本願出願前に公知となった下記の意匠1の前面部と背面部間のつなぎ部の下端形状を,本願出願前に公知となった下記の意匠2から類推される前面部と背面部間の下端面と面一でつながるつなぎ部の下端形状に置き換え,意匠2のつなぎ部のようにつなぎ部を2箇所としたにすぎない本願の意匠は,当業者であれば,容易に創作することができたものです。

意匠1(当審注:別紙第2参照)
著者の氏名 株式会社丸万コンクリート
掲載箇所 3月22日の右下の写真
媒介のタイプ [online]
掲載年月日 令和2年3月22日
検索日 [令和2年11月12日検索]
情報の情報源 インターネット
情報のアドレス URL:https://www.facebook.com/pg/maruman.concrete/posts/
に掲載された擁壁用ブロックの意匠

意匠2(当審注:別紙第2参照)
著者の氏名 株式会社丸万コンクリート
掲載箇所 3月25日の「+2」を押すと表れる写真
媒介のタイプ [online]
掲載年月日 令和2年3月25日
検索日 [令和2年11月12日検索]
情報の情報源 インターネット
情報のアドレス URL:https://www.facebook.com/pg/maruman.concrete/posts/
に掲載された擁壁用ブロックの意匠」

第2 当審の判断

本願意匠の意匠法第3条第2項の該当性について,すなわち,本願意匠の出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)であれば容易に本願意匠の創作をすることができたか否かについて,以下検討し,判断する。
1 本願意匠の認定
(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は,道路,河川,港湾等の擁壁や護岸などを構築するために使用されるコンクリート製の「擁壁用ブロック」である。

(2)本願部分の用途及び機能
本願部分の用途及び機能は,ブロックの底面部に設けられた突条部分であって,ブロックを上下に積み上げる際にその位置決めが容易で,積み上げた後にはブロックが前後にずれないようにするストッパーの機能を有するものである。

(3)本願部分の位置,大きさ及び範囲
本願部分の位置,大きさ及び範囲は,正面側板体(以下「前壁部」という。),背面側板体(以下「後壁部」という。)及びこれら前壁部及び後壁部を接合する2つの連結部分(以下「連結部」という。)からなる擁壁用ブロックの下端部分に位置し,突条部を含む前壁部底面部,突条部を含む後壁部底面部,及び連結部底面部の部分をその大きさ及び範囲とするものである。

(4)本願部分の形態
ア 本願部分は,背面側に傾斜した略横長長方形状の前壁部と,前壁部よりやや肉厚で背面側に傾斜した略横長長方形状の後壁部とを平行に配置し,これら前壁部及び後壁部を2つの連結部によって接合した構成の擁壁用ブロックにおける下端部分の形態であって,
イ 前壁部下端部分の具体的な形態は,前壁部底面部の正面側約1/2の水平面部分と,前壁部底面部の背面側約1/2の部分から前壁部背面側の下方部分までの範囲の部分から,背面側斜め下方に向かって突出して形成した側面視略台形状の突条部分(以下「前壁突条部」という。)からなるものであり,
ウ 後壁部下端部分の具体的な形態は,後壁部正面側の下方部分から後壁部底面部の正面側約1/2の部分までの範囲の部分から,正面側斜め下方に向かって突出して形成した,前面側傾斜面部分が僅かに湾曲した側面視略台形状の突条部分(以下「後壁突条部」という。)と,後壁部底面部の背面側約1/2の水平面部分からなるものであり,
エ 各連結部底面部分の具体的な形態及び配置態様は,連結部の底面側の横幅を後壁部底面部とほぼ同じ幅の底面視略縦長長方形状とし,前壁突条部底面部分及び後壁突条部底面部分を面一でつなげた右側面視略水平な直線状としたものであり,前壁部と後壁部の間における2つの連結部の間隔を,底面視において約1:2:1の間隔となる略「ローマ数字の2」の字状になるようにして配設したものである。

2 原査定の拒絶の理由における引用意匠の認定
原査定における拒絶の理由で引用された,意匠1及び意匠2の意匠に係る物品及び形態は,概要以下のとおりである。
以下,対比のため,本願意匠の図面における正面,平面等の向きを,意匠1及び意匠2にもあてはめることとする。
(1)意匠1
意匠1は,令和2年3月22日に株式会社丸万コンクリートがインターネットに公開(情報のアドレスURL https://www.facebook.com/pg/maruman.concrete/posts/)した「擁壁用ブロック」の意匠である。
また,意匠1における本願部分に相当する部分の形態は,前壁部の下端部分を,前壁部底面部の正面側約1/2の部分を水平面とし,前壁部底面部の背面側約1/2の部分から前壁部背面側の下方部分までの範囲の部分から,背面側斜め下方に向かって側面視略台形状の前壁突条部を設けた形態とし,後壁部の下端部分を,後壁部正面側の下方部分から後壁部底面部の正面側約1/2の部分までの範囲の部分から,正面側斜め下方に向かって,前面側傾斜面部分を僅かな湾曲面とした側面視略台形状の後壁突条部を設け,後壁部底面部の背面側約1/2の部分を水平面とした形態であると認められる。

(2)意匠2
意匠2は,令和2年3月25日に株式会社丸万コンクリートがインターネットに公開(情報のアドレスURL https://www.facebook.com/pg/maruman.concrete/posts/)した「擁壁用ブロック」の意匠である。
また,意匠2における本願部分に相当する部分の形態は,連結部底面部分を,下辺部分を左側面視略水平な直線状に形成した板体としたものであり,これら2つの連結部の間の後壁部下端部分には,正面側斜め下方に向かって傾斜面を形成したものであると認められるが,この連結部の下端部分の詳細な形態は明らかではなく,前壁部下端部分と後壁部下端部分を面一でつなげた形態であるか否かまでは確認することはできないものである。

3 本願意匠の創作容易性の判断
まず,本願部分の前壁部の下端部分を,前壁部底面部の正面側約1/2の部分を水平面とし,前壁部底面部の背面側約1/2の部分から前壁部背面側の下方部分までの範囲の部分から,背面側斜め下方に向かって側面視略台形状の前壁突条部を設けた形態とし,後壁部の下端部分を,後壁部正面側の下方部分から後壁部底面部の正面側約1/2の部分までの範囲の部分から,正面側斜め下方に向かって側面視略台形状の後壁突条部を設け,後壁部底面部の背面側約1/2の部分を水平面とした形態は,意匠1で示したように公然知られた形態であるといえる。
しかしながら,当業者が本願意匠に係る物品を創作する際には,物品の機能を発揮するうえで重要なブロックの底面部分の形態について考慮するものであるところ,本願部分の底面部分の形態は,前壁部の下端部分には前壁突条部を設け,後壁部の下端部分には後壁突条部を設け,連結部の底面部分の形態を,前壁突条部底面部分及び後壁突条部底面部分と面一になるように形成した上で,底面視において,前壁突条部底面部分,後壁突条部底面部分及び連結部底面部分を,略「ローマ数字の2」の字状になるようにして配設した形態のものは,引用している意匠1及び意匠2には見当たらず,これらの形態については,本願意匠の出願前に公然知られたものであるとはいえないものである。
なお,原審では「意匠2には少なくとも手前側のつなぎ部と背面部が面一に接続されていることが開示されて」いると認定しているが,連結部底面部部分と前壁突条部底面部分及び後壁突条部底面部分の接合部分の形態は,意匠2の写真からは明らかではなく,連結部下端部と後壁部下端部分を面一に接続した形態が, 開示されているということはできない。
そうすると,本願意匠におけるブロックの底面部分の形態は,この種物品分野において独自の着想によって創出したといえるものであり,当業者が公然知られた形態に基づいて容易に本願意匠の創作をすることができたとはいうことができない。
したがって,本願意匠は,意匠1及び意匠2を示しても当業者が公然知られた形態に基づいて容易に本願意匠の創作をすることができたとはいえないものである。

第3 むすび

以上のとおりであって,本願意匠は,原審が示した理由によっては意匠法第3条第2項に規定する意匠に該当しないものであるから,原査定の拒絶の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。

また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。

別掲

審決日 2021-08-18 
出願番号 意願2020-15556(D2020-15556) 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (L2)
最終処分 成立  
前審関与審査官 佐藤 美紗子 
特許庁審判長 上島 靖範
特許庁審判官 渡邉 久美
江塚 尚弘
登録日 2021-09-15 
登録番号 意匠登録第1696322号(D1696322) 
代理人 今井 彰 

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