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審決分類 |
審判 査定不服 2項容易に創作 取り消して登録 M2 |
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管理番号 | 1377859 |
審判番号 | 不服2021-5939 |
総通号数 | 262 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2021-10-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2021-05-10 |
確定日 | 2021-09-07 |
意匠に係る物品 | トンネル内消火配管用T字管 |
事件の表示 | 意願2019- 27740「トンネル内消火配管用T字管」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 事案の概要 1 手続の経緯 本願は,意匠法第4条第2項の規定の適用を受けようとする令和1年(2019年)12月13日の意匠登録出願であって,令和2年(2020年)年9月1日付けの拒絶理由の通知に対し,同年10月16日に意見書が提出されたが,令和3年(2021年)2月8日付けで拒絶査定がなされ,これに対して,同年5月10日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 2 本願意匠の願書及び添付図面の記載 本願の意匠は,意匠に係る物品を「トンネル内消火配管用T字管」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を,願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである(以下「本願意匠」という。別紙第1参照)。 3 原査定の拒絶の理由及び引用した意匠 原査定の拒絶の理由は,本願意匠は,出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形態に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので,意匠法第3条第2項の規定に該当するとしたものであって,具体的には,以下のとおりである。 「この意匠登録出願である『トンネル内消火配管用T字管』が属する配管・管継手の分野においては,管体の開口端部付近に接続・固定等のための凸状部等を配することは,例を挙げるまでもなく本願出願前よりごく一般的に行われています。 そうすると,本願出願前に公然知られた下記の意匠1のそれぞれの開口端部に,本願出願前に公然知られた下記の意匠2のそれぞれの開口端部に配された環状凸部の形状を,意匠3の環状凸状部に見られるように管体に付設する方法で設けた本願意匠は,当業者であれば容易に創作できたものです。 【意匠1】 特許庁意匠課が2006年 3月24日に受け入れた オーケー器材株式会社発行の内国カタログ『エアコン用 銅管 05-12』 第10頁所載 管継ぎ手の意匠 (特許庁意匠課公知資料番号第HC18010218号) 【意匠2】 大韓民国意匠商標公報 2019年2月25日 管接続具(登録番号30-0994893)の意匠 (特許庁意匠課公知資料番号第HH31402580号) 【意匠3】 大韓民国意匠商標公報 2016年 9月20日 配管接続口(登録番号30-0872502)の意匠 (特許庁意匠課公知資料番号第HH28439358号)」 第2 当審の判断 本願意匠の意匠法第3条第2項の該当性について,すなわち,本願意匠の出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)であれば容易に本願意匠の創作をすることができたか否かについて,以下検討し,判断する。 1 本願意匠の認定 (1)意匠に係る物品 本願意匠の意匠に係る物品は,ダクタイル鋳鉄により製造され,トンネル内に構成される消火配管の一部として使用される「トンネル内消火配管用T字管」である。 (2)形態 本願意匠の形態は,以下のとおりである。 ア 本願意匠は,全体の形態を,略円筒形の主管の上面部中央部分に,主管より小径な支管を立設した略倒T字状に形成したものであって, イ 主管及び支管の外周面における開口部付近に,突出部分の断面形状を略長方形とする突条部を,主管及び支管と一体的に各開口部に1条ずつ形成したものである。 2 原査定の拒絶の理由における引用意匠の認定 原査定における拒絶の理由で引用された,【意匠1】ないし【意匠3】の意匠に係る物品及び意匠の形態は,概要以下のとおりである。 以下,対比のため,本願意匠の図面における正面,平面等の向きを,【意匠2】にもあてはめることとする。 (1)【意匠1】(別紙第2参照) 【意匠1】は,日本国特許庁が平成18年(2006年)3月24日に受け入れた,オーケー器材株式会社発行の内国カタログ「エアコン用 銅管 05-12」第10頁に所載の「管継ぎ手」の意匠であり,その形態は,略円筒形の主管の上面部中央部分に,主管より小径な支管を立設して全体を略倒T字状に形成したものである。 (2)【意匠2】(別紙第3参照) 【意匠2】は,大韓民国が平成31年(2019年)2月25日に発行した大韓民国意匠商標公報に記載された,登録番号30-0994893の「管接続具」の意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HH31402580号)であり,その形態は,略円筒形の厚みのない主管の上面部中央部分に,主管と略同径で厚みのない支管を立設して全体を略倒T字状に形成したものであって,主管及び支管の開口部付近に,突出部分の断面形状を略倒コの字状とした突条部を1条形成したものである。 (3)【意匠3】(別紙第4参照) 【意匠3】は,大韓民国が平成28年(2016年)9月20日に発行した大韓民国意匠商標公報に記載された,登録番号30-0872502の「配管接続口」の意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HH28439358号)であり,その形態は,略円筒管の外周面上端部から下端部にかけて,突出部分の断面形状を略長方形とした突条部を,略円筒管と一体的に,等間隔に6条形成したものである。 3 本願意匠の創作容易性の判断 まず,本願意匠の形態アについては,本願意匠の「トンネル内消火配管用T字管」の属する流体の配管・管継手の分野において,主管と支管を接合する管継ぎ手全体の形態を,略円筒形の主管の上面部中央部分に,主管より小径な支管を立設して略倒T字状に形成したものは,例えば【意匠1】にみられるように本願の出願前より公然知られたものであるから,管継ぎ手全体の形態を本願意匠のような略倒T字状に形成することに着想の新しさや独創性があるとはいえず,本願意匠の形態アについては,当業者であれば,格別の障害も困難もなく容易に成し得るものであるといえる。 次に,本願意匠の形態イについては,本願意匠に係る物品は,ダクタイル鋳鉄により製造される配管であり,これらダクタイル鋳鉄製の配管同士を接続する際には,耐震性等を考慮して伸縮性及び可撓性を有する接続方式(例えば,挿し口を受口に挿入し,ゴム輪を受口と挿し口の隙間に押し込み,ボルトで押輪を管軸方向に押し込み,ゴム輪をさらに圧縮するメカニカル継手方式(一般社団法人日本ダクタイル鉄管協会発行の「ダクタイル鉄管管路のてびき」(https://www.jdpa.gr.jp/download/tebiki/tebiki.pdf)参照)を主な接続方法とするために,配管の開口部外周面部分には何も設けないことが通常であるところ,本願意匠に係る物品については,本願意匠に係る物品に,伸縮性及び可撓性をもって接続することができるK形継ぎ手を別途連続して接合する(願書添付図面の【使用状態を示す参考図1】参照)ことにより,円環状カップリングによる固着式の接続方法を採用し,配管開口部に突条部を形成する形態とすることが可能になったものであるから,このダクタイル鋳鉄製の配管開口部に突条部を設けた形態が,従来からあるありふれた手法に基づくものであるとか,特段の創意を要さないで創作できるものとは認めがたいものである。 そして,本願意匠の形態イの円環状カップリングにより固着するための突条部の形態についても,略円筒形の開口部分を略倒コの字状に形成した突条部である【意匠2】とはその形態が大きく異なるものであり,弾性のあるホースをはめ込んで接続する方法の【意匠3】の突条部と,円環状カップリングによる固着式の接続方法の本願意匠の突条部とはその用途及び機能が異なる上に,その具体的な数や配置態様も大きく異なるものであるから,当業者が,【意匠2】及び【意匠3】に接しても,本願意匠の形態イについては,容易になし得るものということができない。 したがって,本願意匠は,本願意匠の出願前に公然知られた【意匠1】ないし【意匠3】を示しても,当業者が公然知られた形態に基づいて,容易に創作をすることができたものであるとはいうことができない。 第3 むすび 以上のとおりであって,本願意匠は,原審が示した理由によっては意匠法第3条第2項に規定する意匠に該当しないものであるから,原査定の拒絶の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。 また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2021-08-23 |
出願番号 | 意願2019-27740(D2019-27740) |
審決分類 |
D
1
8・
121-
WY
(M2)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 蓮 遥子 |
特許庁審判長 |
上島 靖範 |
特許庁審判官 |
渡邉 久美 江塚 尚弘 |
登録日 | 2021-10-04 |
登録番号 | 意匠登録第1697743号(D1697743) |
代理人 | 鎌田 直也 |
代理人 | 中谷 弥一郎 |
代理人 | 鎌田 文二 |