ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード![]() |
審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 C5 |
---|---|
管理番号 | 1378795 |
審判番号 | 不服2021-6675 |
総通号数 | 263 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2021-11-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2021-05-07 |
確定日 | 2021-09-13 |
意匠に係る物品 | 電気圧力鍋 |
事件の表示 | 意願2020- 14644「電気圧力鍋」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,令和2年(2020年)6月16日の意匠登録出願であって,同年11月27日付けの拒絶理由の通知に対し,同年12月14日に意見書が提出されたが,令和3年3月31日付けで拒絶査定がなされ,これに対して,同年5月7日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 第2 本願意匠 本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書の記載及び願書に添付した図面によれば,意匠に係る物品を「電気圧力鍋」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下,形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合を「形態」ともいう。)を,願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであって,「実線で表した部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」(以下「本願部分」という。)としたものである(別紙第1参照)。 第3 原査定における拒絶の理由及び引用意匠 原査定における拒絶の理由は,本願意匠は,本願の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠に類似するものであるから,意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当し,意匠登録を受けることができないとしたものであって,当該拒絶の理由に引用された意匠は,下記のとおりである(別紙第2参照)。 「【引用意匠】 電気通信回線の種類 インターネット 掲載確認日(公知日) 2016年11月26日 受入日 特許庁意匠課受入2016年12月22日 掲載者 Amazon.com,Inc. 表題 Amazon.com:Gracelvoe St ainless 7-in-1 Multi-Fu nctional Programmable I 掲載ページのアドレス https://www.amazon.com/Gracelvoe-Stainless-Multi-Functional-Programmable-Pressure/dp/B01LWSF09W/ref=zg_bsnr_289825_13?_encoding=UTF8&psc=1&refRID=GJNEVQ4NE6MYGENMN9RH に掲載された『電気なべ』の意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HJ28051829号)の本願意匠が意匠登録を受けようとする部分に相当する部分の意匠」 なお,本審決においては,以下,上記電気なべの意匠を「引用意匠」といい,本願意匠と併せて「両意匠」という。また,引用意匠の本願部分に相当する部分を「引用部分」といい,本願部分と併せて「両部分」という。 第4 当審の判断 1 両意匠の対比 (1)意匠に係る物品 本願意匠の意匠に係る物品は「電気圧力鍋」であるのに対して,引用意匠の意匠に係る物品は「電気なべ」である。 (2)両部分の用途及び機能 本願部分は,電気圧力鍋における表示部及び操作ボタンを配した操作盤部分(参考斜視図における銘板表示部のこと。)であり,電気圧力鍋の操作盤としての用途及び機能を有するものであるのに対して,引用部分は,電気なべにおける表示部及び操作ボタンを配した操作盤部分であり,電気なべの操作盤としての用途及び機能を有するものである。 (3)両部分の位置,大きさ及び範囲 両部分共に,本体(蓋部を除く。以下同様。)の周側面上辺に寄せて配した操作盤の全範囲とするものであり,縦幅で本体の高さの約4分の3を占める大きさとしたものである。 (4)両部分の形態 (4-1)共通点 (A)全体の基本的な構成について 共通点1:扁平な板状の操作盤の略中央に設けた表示部を略凹形状に囲むように,表示部の左右両側及び下側に操作ボタンを複数配したものである。 (B)操作盤の形態について 共通点2:本体の周側面の形状に合わせて,全体的に湾曲したものである。 共通点3:下側の左右両角を丸くした正面視略長方形としたものである。 共通点4:左右両辺側及び下辺側の側面(板材でいうところの「こぐち」と「こば」部分)を,後方に向けて広がる傾斜面としたものである。 (C)表示部について 共通点5:正面視縦長長方形としたものである。 (D)左右両側の操作ボタン群について 共通点6:各操作ボタンを同形同大としたものである。 共通点7:左側の操作ボタン群と右側の操作ボタン群を,同じ個数とし,それぞれ縦一列に等間隔で並べ,左右対称に配したものである。 (E)下側の操作ボタン群について 共通点8:操作ボタンを水平に3個配したものである。 (4-2)相違点 (B)操作盤の形態について 相違点1:正面視形状について,本願部分は,ごく僅かに横長であるのに対して,引用部分は縦長である。 相違点2:左右両辺側及び下辺側の傾斜面の正面視幅について,本願部分は,操作盤の横幅の約33分の1とした細幅であるのに対して,引用部分は,操作盤の横幅の約14分の1とした太幅である。 なお,引用部分については,前記第3に記載したインターネット情報に掲載されている,引用意匠の操作盤部分だけを正面から撮った写真も参照して認定した(別紙第2参照)。 相違点3:上辺側の面について,本願部分は,後方に向けて広がる傾斜面としたものであるのに対して,引用部分は,ほぼ水平面としたものである。 相違点4:下側の左右両角の丸みについて,本願部分は,半径を操作盤の横幅の約8分の1としたものでるのに対して,引用部分は,半径を操作盤の横幅の約5分の1としたものであって,本願部分よりも引用部分の方が,半径が大きいものである。 相違点5:正面の縁について,本願部分は,縁に模様を施していないものであるのに対して,引用部分は,縁にほぼ沿うようにして,線模様を施したものである。 (C)表示部について 相違点6:本願部分は,液晶表示部であって,非通電時には何も表れていないものであるのに対して,引用部分は,LEDを利用したデジタル表示部であって,常時7セグメントLEDによる数字表示部と,その下方に横長長方形の文字表示領域や複数のLEDランプが表れているものである。 (D)左右両側の操作ボタン群について 相違点7:本願部分は,各操作ボタンの形状を正円形とし,僅かな弧状に膨出させたものであるのに対して,引用部分は,各操作ボタンの形状を上辺の中央にLEDランプを設けた略隅丸長方形としたものであって,全体的に膨出させたものであるかどうかは不明である。 相違点8:本願部分は,最上段の操作ボタンの上端が表示部の上辺の高さよりも上に位置するものであるのに対して,引用部分は,最上段の操作ボタンの上端が表示部の上辺の高さと同程度の高さ位置としたものである。 (E)下側の操作ボタン群について 相違点9:本願部分は,右の操作ボタンを左右両側の操作ボタン群の操作ボタンと同じ大きさの円形とし,左と中央の操作ボタンをそれよりも小さい円形としたものであって,左右非対称に配したものであるのに対して,引用部分は,中央の操作ボタンを左右両側の操作ボタン群の操作ボタンと同じボタンとし,左と右の操作ボタンをそれよりも小さい円形としたものであって,左右対称に配したものである。 相違点10:本願部分は,左右両側の操作ボタン群の最下段の操作ボタンと共に,中心を揃えて配したものであるのに対して,引用部分は,下側の操作ボタンの中心を,左右両側の操作ボタン群の最下段の操作ボタンの下端の位置に揃えて配したものである。 (F)その他について 相違点11:本願部分は,操作盤の正面の上辺寄りに何も表れていないものであるのに対して,引用部分は,操作盤の正面上辺寄りの左右に,南京錠(左の南京錠は開いた状態,右の南京錠は閉じた状態)の正面形状の模様と三角形の模様がそれぞれ小さく表れているものである。 2 両意匠の類否 (1)意匠に係る物品について 本願意匠の意匠に係る物品は「電気圧力鍋」であるのに対して,引用意匠の意匠に係る物品は「電気なべ」であるが,どちらも電気鍋であることに変わりないから,両意匠の意匠に係る物品は,類似する。 (2)両部分の用途及び機能について 両部分共に,物品として類似する電気圧力鍋と電気なべにおける,表示部及び操作ボタンを配した操作盤としての用途及び機能を有するものであるから,両部分の用途及び機能は,共通する。 (3)両部分の位置,大きさ及び範囲について 両部分共に,本体の周側面上辺に寄せて配した操作盤の全範囲とするものであり,縦幅で本体の高さの約4分の3を占める大きさとしたものであるから,両部分の位置,大きさ及び範囲は,共通する。 (4)両部分の形態について (4-1)共通点の評価 共通点1は,両部分全体の基本的な構成態様に係るものであるが,この種物品においては,よく見られる態様であるから,両部分の形態の類否判断に及ぼす影響は,一定程度にとどまる 共通点2ないし4は,操作盤の全体の形状に係るものであるが,両部分にのみ見られる特徴といえるものではないし,具体的に見れば相違点1ないし5を内包するものであるから,両部分の形態の類否判断に及ぼす影響は,一定程度にとどまる。 共通点5は,表示部の形状としてありふれたものであるし,具体的に見れば相違点6を内包するものであるから,両部分の形態の類否判断に及ぼす影響は,小さい。 共通点6及び共通点7は,左右両側の操作ボタン群に係るもので,両部分にのみ見られる特徴といえるものではないし,具体的に見れば相違点7及び相違点8を内包するものであるから,両部分の形態の類否判断に及ぼす影響は,一定程度にとどまる。 共通点8は,下側の操作ボタン群に係るもので,具体的に見れば相違点9及び相違点10を内包するものであるから,両部分の形態の類否判断に及ぼす影響は,小さい。 (4-2)相違点の評価 相違点1ないし5は,操作盤の形態に係るものであるが,引用部分においては,正面視で,左右両辺側及び下辺側の傾斜面が太幅(相違点2)で,下側の左右両角の丸みの半径が大きい(相違点4)ことから,堅牢な印象をもたらすと共に,操作盤の正面視形状が縦長(相違点1)で,上辺側の面が水平(相違点3)で正面から見えないことが加わって,傾斜面がU字状に見えるものであるところ,本願部分においては,視覚的にそのような印象をもたらさないから,両部分の形態の類否判断に及ぼす影響は,大きい。 相違点6は,表示部内の形態に係るもので,本願部分はありふれたものであるが,引用部分は本願部分とは全く異なるものであり,操作性にも影響するから,両部分の形態の類否判断に及ぼす影響は,一定程度認められる。 相違点7及び相違点8は,左右両側の操作ボタン群に係るものであり,相違点7については,各操作のたびに目が行く箇所であるところ,本願部分の各操作ボタンの形状はありふれたものであるが,引用部分の各操作ボタンの形状とは全く異なるものであるから,両部分の形態の類否判断に及ぼす影響は,大きいものであり,相違点8については,部分的な相違ではあるものの,印象を異にするものであるから,両部分の形態の類否判断に及ぼす影響は,一定程度認められる。 相違点9及び相違点10は,比較的見えづらい場所にある下側の操作ボタン群に係る相違であるが,当該部分について全く異なる印象を与えるから,両部分の形態の類否判断に及ぼす影響は,大きい。 相違点11は,部分的な相違であるが,操作性に係るものであるから,両部分の形態の類否判断に及ぼす影響は,一定程度認められる。 (4-3)形態の類否 両意匠の形態の共通点及び相違点の評価は上記のとおりであって,相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は,共通点のそれを凌駕するものといえるから,両意匠の形態は類似しない。 (5)小括 そうすると,両意匠は,意匠に係る物品は類似し,両部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲は共通するものの,形態は類似しないから,本願意匠は,引用意匠に類似するものではない。 5 むすび 以上のとおりであって,本願意匠は,原査定の引用意匠に類似する意匠ではなく,原査定の引用意匠をもって意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するとして,同法同条の規定によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。 また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
![]() |
審決日 | 2021-08-24 |
出願番号 | 意願2020-14644(D2020-14644) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(C5)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 前畑 さおり |
特許庁審判長 |
上島 靖範 |
特許庁審判官 |
橘 崇生 正田 毅 |
登録日 | 2021-10-15 |
登録番号 | 意匠登録第1698691号(D1698691) |