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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 G2
管理番号 1379900 
審判番号 不服2020-10893
総通号数 264 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2021-12-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-08-05 
確定日 2021-01-06 
意匠に係る物品 自動車用ステアリングホイール 
事件の表示 意願2019-26391「自動車用ステアリングホイール」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
本願は,意匠法第14条第1項の規定により本願に係る意匠(以下「本願意匠」という。)を10月秘密にすることを請求した,令和1年(2019年)11月28日の意匠登録出願であって,令和2年2月18日付けの拒絶理由の通知に対し,同年4月3日に意見書が提出されたが,同年4月28日付けで拒絶査定がなされ,これに対して,同年8月5日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2 本願意匠
本願意匠は,願書及び願書に添付した図面によれば,意匠に係る物品を「自動車用ステアリングホイール」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合を願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである(別紙第1参照)。

第3 原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するとしたものであって,拒絶の理由に引用された意匠(以下「引用意匠」といい,本願意匠と併せて「両意匠」ともいう。)は,下記のとおりである(別紙第2参照)。

引用意匠
特許庁発行の意匠公報記載
意匠登録第1574032号
(意匠に係る物品,自動車用ステアリングホイール)の意匠

第4 当審の判断
1.本願意匠
(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は「自動車用ステアリングホイール」であり,リム,スポーク及びハブ(請求人がいうところの「パッド」のこと。)から成るものである。

(2)本願意匠の形状
本願意匠の基本的構成態様は,次のとおりである。
リムは正円形で,中央やや下寄りに位置する正面視で六角形のハブとは,略3時と9時の位置(アナログ時計の文字盤のように位置を表す。「○時の位置」とした場合は,以下同じ。)にある水平スポークと,6時の位置にある下スポークの3本のスポークで連結されている。
各部の具体的な形状は,以下のとおりである。
ア.リムの形状
リムの外側は正円形で,内側は,略2時と10時の位置になだらかな山状の膨らみを設けている。
イ.スポークの形状
水平スポークの上側辺は,上側に突出しているハブとは,段差形状を介して繋がっている。
水平スポークの前面にあるスイッチ部とハブとの間には,僅かな隙間を設けており,スイッチ部とハブは分離している。
下スポークは,倒立等脚台形状の空隙を設けてあり,正面視でU字形状を呈しているものであり,奥側への傾きが大きく,下スポークの上端は,ハブの下側の,奥の位置でハブと接続している。
ウ.ハブの形状
ハブの前面は,リムの位置より手前に突出している。
ハブは,正面視でやや横長の六角形である。
ハブの前面と,立ち上がり面の間には,略六角形状全周にわたって,帯状の面取り面を設けている。
ハブの前面略中央には,角丸横長長方形を表する溝を施している。

2.引用意匠
(1)意匠に係る物品
引用意匠の意匠に係る物品は「自動車用ステアリングホイール」であり,リム,スポーク及びハブから成るものである。

(2)引用意匠の形状
引用意匠の基本的構成態様は,次のとおりである。
リムは正円形で,中央やや下寄りに位置する正面視で六角形のハブとは,略3時と9時の位置にある水平スポークと,6時の位置にある下スポークの3本のスポークで連結されている。
各部の具体的な形状は,以下のとおりである。
ア.リムの形状
リムの外側は正円形で,内側は,略2時と10時の位置になだらかな山状の膨らみを設けている。
イ.スポークの形状
水平スポークの上側辺は,左端からハブの上側辺を介して右端まで,なだらかな円弧形状となっている。
水平スポークの前面にあるスイッチ部は,ハブと隣接している。
倒立等脚台形状の空隙を設けた下スポークは,奥側への傾きがほとんどなく,ハブの前面の近傍でハブに接してからは外側に折れ曲がって,ハブの下側斜辺に沿って水平スポーク下辺まで達しており,正面視でY字形状を呈しているものである。
ウ.ハブの形状
ハブの前面は,リムの位置から手前に,僅かに突出している。
ハブは,正面視で横長の六角形である。
ハブの前面と,立ち上がり面の間には,六角形の下側斜辺には僅かな,六角形の下辺には大きな面取り面を設けている。
ハブの六角形の上辺部は,前面から立ち上がり面にかけて連続した滑らかな曲面となっている
ハブの前面略中央には,角丸横長長方形を表する凹部が設けてある。

3.両意匠の対比
(1)意匠に係る物品の対比
本願意匠に係る物品も,引用意匠に係る物品も,共に「自動車用ステアリングホイール」である。

(2)両意匠の形状の対比
両意匠の形状を対比すると,以下に示す主な共通点と相違点が認められる。
ア.共通点について
(ア)リムは正円形で,中央やや下寄りに位置する正面視で六角形のハブとは,略3時と9時の位置にある水平スポークと,6時の位置にある下スポークの3本のスポークで連結されている点。
(イ)リムの外側は正円形で,内側は,略2時と10時の位置になだらかな山状の膨らみを設けている点。
(ウ)水平スポークの前面には,スイッチ部を設けている点。
(エ)下スポークは,倒立等脚台形状の空隙を設けている点。
(オ)ハブの前面は,ステアリングの位置より手前に突出している点。
(カ)ハブは,正面視で横長の六角形である点。
(キ)ハブの前面と,立ち上がり面の間には,面取り面を設けている点。

イ.相違点について
(ア)水平スポークの上側辺につき,本願意匠は,上側に突出しているハブとは,段差形状を介して繋がっているのに対して,引用意匠は,左端からハブの上側辺を介して右端まで,なだらかな円弧形状となっている点。
(イ)水平スポークの前面にあるスイッチ部につき,本願意匠は,ハブとの間には,僅かな隙間を設けており,スイッチ部とハブは分離しているのに対して,引用意匠は,ハブと隣接している点。
(ウ)下スポークにつき,本願意匠は,正面視でU字形状を呈しているものであり,奥側への傾きが大きく,下スポークの上端は,ハブの下側の,奥の位置でハブと接続しているのに対して,引用意匠は,奥側への傾きがほとんどなく,ハブの前面の近傍でハブに接してからは外側に折れ曲がって,ハブの下側斜辺に沿って水平スポーク下辺まで達しており,正面視でY字形状を呈している点。
(エ)ハブの前面の位置につき,本願意匠は,リムの位置より手前に突出しているのに対して,引用意匠は,僅かに突出している点。
(オ)ハブの正面視の形状につき,本願意匠は,やや横長の六角形であるのに対して,引用意匠は,横長の六角形である点。
(カ)ハブの前面と,立ち上がり面の間に設けてある面取り面につき,本願意匠は,ハブの全周にわたって帯状の面取り面を設けているのに対して,引用意匠は,六角形の下側斜辺には僅かな,六角形の下辺には大きな面取り面を設けている点。
(キ)ハブの六角形の上辺部につき,本願意匠は,(カ)の面取り面であるのに対して,引用意匠は,前面から立ち上がり面にかけて連続した滑らかな曲面となっている点。
(ク)ハブの前面略中央における角丸横長長方形につき,本願意匠は,溝を施して表しているのに対して,引用意匠は,凹部である点。

4.判断
(1)意匠に係る物品の類否判断
両意匠の,意匠に係る物品は,いずれも「自動車用ステアリングホイール」であるから,一致している。

(2)両意匠における形状の評価
ア.共通点について
共通点(ア)は,両意匠の全体形状に関わる根幹的な形状であるが,この種物品においては,ごくありふれた形状と認められ,両意匠のみの特徴とは認められないから,両意匠の類否判断に与える影響は小さい。
共通点(イ)については,この種物品分野においては,リムの外形が正円形であることは,ごくありふれた形状であり,なおかつ,リムの内側の,略2時と10時の位置に山状の膨らみを設けることも通常行われる造形であるから,共通点(イ)が両意匠の類否判断に与える影響は小さい。
共通点(ウ)については,近年この種物品分野においては,スポークの前面に各種のスイッチを設けることは,通常行われており,両意匠のみの特徴とは認められないから,共通点(ウ)が両意匠の類否判断に与える影響は小さい。
共通点(エ)は,両意匠に一定程度の共通感を生み出しているが,近年の傾向として,倒立等脚台形状の空隙を設けている下スポークをよく見掛けるようになり,両意匠のみの特徴とまではいえないから,共通点(エ)が両意匠の類否判断に与える影響は一定程度にとどまるものである。
共通点(オ)は,ありふれた形状であるから両意匠のみの特徴とは認められず,加えて,具体的には相違点(エ)の相違が内在していることから,両意匠の類否判断に与える影響は小さい。
共通点(カ)は,この種物品においては,様々な形状の横長六角形を用いることはありふれており,両意匠のみの特徴とは認められず,加えて,具体的には相違点(オ)の相違が内在していることから,両意匠の類否判断に与える影響は小さい。
共通点(キ)は,具体的には相違点(カ)及び相違点(キ)の相違が内在していることから,両意匠の類否判断に与える影響は小さい。

イ.相違点について
相違点(ア)については,本願意匠は,水平スポークが細くてスマートな印象と,水平スポークとハブが独立しているという印象が生じているのに対して,引用意匠は,水平スポークが幅広で厚ぼったい印象と,水平スポークとハブに一体感が生じており,両意匠において異なる印象を与えるものであり,両意匠の類否判断に与える影響は大きい。
相違点(イ)については,本願意匠は,スイッチ部とハブが分離しているため,相違点(ア)と相まって,ハブの独立している印象が強くなるのに対して,引用意匠は,スイッチ部とハブが隣接しているため,相違点(ア)と相まって,ハブの一体感が強くなり,両意匠において異なる印象を与えるものであり,両意匠の類否判断に与える影響は大きい。
相違点(ウ)については,本願意匠は,U字形状の下スポークが下からハブを支えているような印象を与えているのに対して,引用意匠は,Y字形状の下スポークが,ハブの下側を挟んでいるような印象を与え,両意匠において異なる印象を与えるものであり,両意匠の類否判断に与える影響は大きい。
相違点(エ)については,両意匠にそれほど大きな相違はないが,相違点(ウ)と相まって,本願意匠は,手前に突出したハブの前面と,ハブ下側の奥の位置で接続している傾きが大きい下スポークとの位置関係から,より大きな立体感(奥行き感)が生まれているのに対して,引用意匠は,突出程度が僅かなハブの前面と,ハブの前面の近傍でハブに接している下スポークとの位置関係から,立体感が希薄であり,これによって両意匠において異なる印象を与えるものであり,両意匠の類否判断に与える影響は大きい。
相違点(オ)については,相違点(オ)のみでは僅かな相違であるが,相違点(カ),同(キ)及び同(ク)が相まって,ハブ前面の具体的な形状において,両意匠において異なる印象を与えるものであり,両意匠の類否判断に与える影響は大きい。

(3)両意匠における形状の類否判断
以上のとおり,共通点は,両意匠の類否判断に与える影響は,一定程度にとどまるか小さいものであり,これらの共通点によっては,両意匠の類否判断を決するものといえないのに対して,相違点(ア)ないし(ク)によっては,需要者に別異の印象を起こさせるものであるから,両意匠の類否判断を決するものといえる。
そうすると,本願意匠の形状と引用意匠の形状は,類似するとは認められない。

(4)両意匠における類否判断
よって,両意匠は,意匠に係る物品が一致しているが,上記のとおり本願意匠と引用意匠の形状は類似するものではないから,本願意匠と引用意匠は類似するとはいえない。

5.結び
したがって,本願意匠は,引用意匠に類似せず,原査定の引用意匠をもって,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできず,本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審が更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。

別掲

審決日 2020-12-09 
出願番号 意願2019-26391(D2019-26391) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (G2)
最終処分 成立  
前審関与審査官 藤澤 崇彦 
特許庁審判長 刈間 宏信
特許庁審判官 橘 崇生
正田 毅
登録日 2021-01-27 
登録番号 意匠登録第1679314号(D1679314) 
代理人 眞島 竜一郎 
代理人 安部 聡 
代理人 田▲崎▼ 聡 

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