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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 G2 |
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管理番号 | 1379916 |
審判番号 | 不服2021-7992 |
総通号数 | 264 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2021-12-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2021-06-17 |
確定日 | 2021-11-17 |
意匠に係る物品 | モータースクーター |
事件の表示 | 意願2020- 18268「モータースクーター」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、令和2年8月31日に出願された意匠登録出願であって、同年11月17日付の拒絶理由の通知に対し、令和3年1月18日に意見書が提出されたが、同年3月11日付けで拒絶査定がなされ、これに対して同年6月17日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 第2 本願の意匠 本願の意匠は、意匠に係る物品を「モータースクーター」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形状等」という。)を願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである(以下「本願意匠」という。別紙第1参照。)。 第3 原査定の拒絶の理由及び引用意匠 原査定の拒絶の理由は、本願意匠が、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠に類似するものであるから、意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)に該当する、というものである。 そして、その引用意匠は、特許庁発行の意匠公報記載、意匠登録第1598120号(意匠に係る物品、モータースクーター)の意匠としたものである(別紙第2参照)。 第4 当審の判断 以下において、本願意匠の意匠法第3条第1項第3号の該当性、すなわち、本願意匠が引用意匠に類似する意匠であるか否かについて検討し、判断する。 1 対比 (1)意匠に係る物品の対比 本願意匠及び引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、いずれも「モータースクーター」であり、共通する。 (2)両意匠の形状等の対比 両意匠の形状等を対比すると、以下のとおりの共通点及び相違点が認められる。 ア 共通点 (ア)主な外装の構成 (a)主な外装の構成を、フロントカバー部、リアカバー部、アンダーカバー部、及び、これらのカバーに囲まれ、足を載せるフロアステップから上方に続いて側面を覆う暗調子のカバー部(以下「サイドカバー部」という。)とする点。 (b)フロントカバー部は、風よけ用のメーターバイザー、フロントコンビネーションランプを備えている点。 (c)リアカバー部は、リアカバーの上面にシート、後端部上面に荷台等の設置にも使用するグラブレール部、一段下にリアコンビネーションランプ、その下に後輪用の泥よけ(リアフェンダー)が取り付けられた態様とする点。 (イ)各部の形状 (a)フロントカバー部 (a-1)フロントカバーは、正面図の方向から見て(正面視)、右側(前方側)先端をフロントタイヤの中心軸より前の位置から、開放部を後方にした略倒V字状に形成し、シートの前端部のわずかに後ろ側でリアカバーと接する態様としたもので、内側(シート側)も同様に略倒V字状とし、内側の略倒V字状の先端部下から、フロントカバー先端部にわたり略水平状に絞り込まれ、その下方には、アンダーカバー部の前側端部まで張り出し面(以下「フロント張り出し面」という。)を構成している点。 (a-2)メーターバイザーは、右側面図の方向から見て(右側面視)、フロントカバー先端部から上の高さ幅の略半分の位置から、上方へ向けて末広がりとするもので、上方側に向かって左右に広がるウイング部を有している点。 (a-3)フロントコンビネーションランプは、右側面視、フロントカバー先端部から略U字状に構成されている点。 (b)リアカバー部 (b-1)リアカバーは、正面視、フロントカバーの接続部から後方へ向けて斜め上方に伸び、後端部は、グラブレール部下にわずかな空間を有している点。 (b-2)シートは、正面視、フロントカバー部からリアカバー部までの長さ(以下、「全長」という。)の約半分の長さとするもので、後ろから全長の約1/3の長さまでを略水平とし、そこから下降斜面を経て、再度略水平とし、先端部を下降斜面とする構成とし、後ろ側の斜面の長さは先端部の斜面の長さの約半分とする点。 (b-3)リアフェンダーは、正面視、リアカバーの後端やや内側から、水平に対して約60度の角度で、後輪の中心軸の高さ近くまで伸びている点。また、左側面視、先端に向かって先細りとなっている点。 (b-4)リアコンビネーションランプは、左側面視、中央の水平部から、細い帯状部が上下、左右それぞれに突出し、これら各4つの突出部が側面に回り込んだ態様とする点。 (c)アンダーカバー部 (c-1)アンダーカバー部は、正面視、前輪の後ろ側に斜めの風よけ部(以下「前方アンダーカウル」という。)を有し、下面は略水平で、上面(フロアステップ側)は後方へ向けてわずかに斜めに上がったものとし、後ろ側は、斜め後方に先細り状に伸び(以下「後方アンダーカウル」という。)、後端部はリアカバーとの間に別体のタンデムステップが組み込まれた態様とするものである点。 (c-2)後方に、空気取り込み用の孔部を有している点。 (ウ)明暗調子 主にフロントカバー、リアカバー、アンダーカバーを明調子、それ以外の、サイドカバー部、シート等を暗調子による構成とする点。 イ 相違点 (ア)フロントカバー部 (ア-1)フロントカバー (a)本願意匠のフロントカバー下面は、正面視、先端部側のやや内側から下端まで水平に対して約30度のゆるやかな角度で略直線状に延伸し、その下端部は、暗調子のサイドカバー部に食い込むような態様としているのに対し、引用意匠は、前輪に沿って凹曲線状とし、アンダーカバーの前方アンダーカウルへと繋がる態様とする点。 (b)本願意匠のフロントカバーの内側は、略倒V字状の上側にやや幅のある面が倒V字に沿って設けられているが、下側には設けられていないのに対し、引用意匠は、下側にも倒V字に沿った面が設けられ、リアカバーとの接合部まで伸びている点。 (c)本願意匠のフロント張り出し面は、上面を直線状の面構成としているのに対し、引用意匠は、ゆるやかに膨らんだ曲線状の面構成としている点。 (ア-2)メーターバイザー 本願意匠のメーターバイザーは、ウイング部の最大幅を、メーターバイザー本体の最大幅の約1.5倍とし、飛行機の翼状に認識できるのに対し、引用意匠は、同約1.2倍とするわずかな張り出しにすぎないものである点。 (ア-3)フロントコンビネーションランプ 本願意匠のフロントコンビネーションランプは、右側面視、複数のライトが一体となって略U字状を構成し、左右の端部は外側に向いたものとしているのに対し、引用意匠は、略U字状の左右の中間に、フロントカバー面が入り込む構成とし、左右の端部は内側に向いたものとしている点。 (イ)リアカバー部 (イ-1)リアカバー 本願意匠のリアカバーは、後端部上面のグラブレール部の前方側の端部近辺からフロントカバーとの接合部下方側へ向かって直線的なキャラクターラインを有しているのに対し、引用意匠は、後端部からサイドカバー部に設けられた装飾プレート部へ向かって曲線状のキャラクターラインを有している点。 (イ-2)リアコンビネーションランプ 本願意匠のリアコンビネーションランプは、上の帯状突出部が水平状に設けられ、下の帯状突出部は斜め下に突出し、ウィンカーは、下の帯状突出部に沿っって設けられているものの、上の突出部にまでわたっているのに対し、引用意匠は、上の帯状突出部は斜め上に、下の帯状突出部は斜め下に突出することで略X字状を形成し、中央の水平部は、上の帯状突出部と下の帯状突出部の間に別部材が挟まった3層構成とするもので、ウィンカーは、下の帯状突出部に沿った斜め下方向に向かう細帯状で、上の細帯突出から離れて設けられている点。 (ウ)アンダーカバー部 (ウ-1)アンダーカバー 本願意匠のアンダーカバーは、下面の直線部の長さが全長の約3/10で、後方アンダーカウルは水平部から直接斜め後方に立ち上がっているのに対し、引用意匠は、同約2.5/10で、やや短かく、後方アンダーカウルは、水平部から、角度が小さく短い直線部を介した後に斜め後方へ伸びている点。 (ウ-2)タンデムステップ部 本願意匠のタンデムステップ部は、後方アンダーカウルにおける、上方に向かって先細りとなる態様に沿って、略三角形状とするものであるのに対し、引用意匠は、本願意匠と同様にアンダーカバーに沿ったものではあるが、後輪側に暗調子の三角形状の切れ込み部を有したものである点。 (エ)サイドカバー部 (エ-1)本願意匠のサイドカバー部は、正面視、フロントカバーとアンダーカバーに囲まれた略三角形状部を前側のパーツとし、後ろ側のパーツを略扁平六角形状とし、これら2つを横に組み合わせた態様とするのに対し、引用意匠は、扁平五角形状の前側上部を細く突出させた態様とする点。 (エ-2)本願意匠のサイドカバーの略扁平六角形状パーツは、タンデムステップ先端部から中央に薄い三角形状の面が突出して表れているのに対し、引用意匠は、扁平略五角形状の、シートに対向する辺の中央に、細い変形四角形状の別体の装飾プレートが備わっている点。 2 類否判断 (1)両意匠の意匠に係る物品の類否判断 両意匠の意匠に係る物品は、同一である。 (2)両意匠の形状等の類否判断 ア 共通点及び相違点の評価 両意匠は、モーターバイクに係るものであり、需要者は、購入者であり、斜め前方、斜め後方から見た各外装の態様、とりわけフロントコンビネーションランプの構成等によるフロント周りの態様等について注視するものということができる。 A 共通点の評価 (A)主な外装の構成における共通点(ア)(a)ないし(c)は、当該物品分野において、通常見られる構成であり、両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。 (B)各部の形状におけるフロントカバー部の共通点(a)のうち、(a-1)及び(a-2)は、概括的に捉えたものにすぎず、また、需要者が注視する(a-3)のフロントコンビナーションランプにおける共通点も、略U字状に構成した点は、従来から公然知られた態様(下記、参考意匠1参照)にすぎず、両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。 (C)リアカバー部における共通点(b)のうち、(b-1)ないし(b-3)は、いずれも当該物品分野において、従来から見られる態様にすぎず、両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。(b-4)は、概括的に捉えた態様にすぎず、具体的な態様における相違点を考慮すれば、類否判断に及ぼす影響は大きなものとはいえない。 (D)アンダーカバー部における共通点(c)のうち、共通点(c-1)は、従来から公然知られた態様(下記、参考意匠2参照)にすぎず、共通点(c-2)も、参考意匠1に表れているように、従来からよく見られる態様であり、類否判断に及ぼす影響は小さい。 (E)明暗調子における共通点(ウ)は、当該物品分野においてよく見られる態様にすぎず、類否判断に及ぼす影響は小さい。 参考意匠1(別紙第3参照) 特許庁発行の意匠公報記載 意匠登録第1500448号「モータースクーター」の意匠 参考意匠2(別紙第4参照) 特許庁意匠課公知資料番号HC25600677号の「スクーター」の意匠 B 相違点の評価 (A)フロントカバー部 (A-1)フロントカバーにおける相違点(ア-1)の(a)ないし(c)は、本願意匠に直線的で伸びやかな印象を与え、引用意匠には丸く固まり感のある印象を与えるもので、両意匠の類否判断に一定の影響を及ぼす。 (A-2)メーターバイザーにおける相違点(ア-2)も、斜め前方から見た際に、目立つ部分であり、類否判断に一定の影響を及ぼす。 (A-3)フロントコンビネーションランプにおける相違点(ア-3)は、本願意匠が全体を発光部としているのに対し、引用意匠は発光部が4つに別れることで、両意匠のフロント部の表情に異なった印象を与えており、需要者がとりわけ注視するフロント周りの態様であることから、両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。 (B)リアカバー部 (B-1)リアカバーにおける相違点(イ-1)は、この点だけをみれば部分的相違とも捉えられるが、フロントカバーにおける相違点(ア-1)と合わせ、需要者が受ける両意匠の印象に影響を及ぼすことから、両意匠の類否判断に一定の影響を及ぼす。 (B-2)リアコンビネーションランプにおける相違点(イ-2)は、斜め後方から見た際に、需要者の目にとまる部分でもあり、類否判断に一定の影響を及ぼす。 (C)アンダーカバー部 (C-1)アンダーカバーにおける相違点(ウ-1)は、下面部における部分的な相違にすぎず、類否判断に及ぼす影響は小さい。 (C-2)タンデムステップ部における相違点(ウ-2)は、上方に向かって先細りとなる後方アンダーカウルに沿った態様とする共通点の中にあっては、部分的なものにすぎず、類否判断に及ぼす影響は小さい。 (D)サイドカバー部 サイドカバー部における相違点(エ-1)及び(エ-2)は、明調子によるフロントカバー等に比べると、目に付きにくい暗調子の態様とするものではあるが、その中にあって、相違点(エ-2)における引用意匠が有する別体の装飾プレートの有無は、小さな部分ではあるものの、異なる美感を生じさせている。また、相違点(エ-1)における全体形状の相違は顕著であり、相違点(エ-1)及び相違点(エ-2)が相まって及ぼす類否判断への影響は、大きいものと認められる。 イ 総合評価に基づく両意匠の形状等の類否判断 両意匠の形状等における共通点及び相違点の評価に基づき、両意匠全体を総合的に観察し、判断する。 前記ア「B」に説示したとおり、アンダーカバー部における相違点が類否判断に及ぼす影響は小さいものの、フロントコンビナーションランプにおける相違点(ア-3)、そして相違点(エ-1)及び相違点(エ-2)が相まって及ぼすサイドカバー部の態様が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きく、他の相違点はいずれも類否判断に一定の影響を及ぼすものである。 これに対し、前記ア「A」に説示したとおり、リアコンビネーションランプにおける共通点(b-4)は、類否判断に及ぼす影響が大きいとはいえず、その他の共通点も類否判断に及ぼす影響は小さい。 これらの評価を総合すると、両意匠の形状等は、相違点が共通点を凌駕するものであり、類似しない。 ウ 小括 両意匠は、意匠に係る物品は同一であるが、両意匠の形状等は類似しない。 よって、両意匠は類似しない。 第5 むすび 以上のとおり、本願意匠は、引用意匠に類似せず、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないものである。したがって、原査定の拒絶の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2021-10-28 |
出願番号 | 意願2020-18268(D2020-18268) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(G2)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 藤澤 崇彦 |
特許庁審判長 |
小林 裕和 |
特許庁審判官 |
正田 毅 北代 真一 |
登録日 | 2021-12-03 |
登録番号 | 意匠登録第1702861号(D1702861) |
代理人 | 眞島 竜一郎 |
代理人 | 田▲崎▼ 聡 |
代理人 | 安部 聡 |