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審決分類 審判 査定不服  意10条1号類似意匠 取り消して登録 C4
管理番号 1380959 
総通号数
発行国 JP 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2022-01-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-08-25 
確定日 2021-07-06 
意匠に係る物品 歯ブラシ 
事件の表示 意願2019− 12611「歯ブラシ」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
本願は、令和1年6月7日に出願された、願書に記載した本意匠(以下「本意匠」という。)を意願2019−12602(意匠登録第1684470号)とする関連意匠の意匠登録出願であって、その後の主な経緯は以下のとおりである。
令和2年 2月13日付け 原審拒絶理由の通知
令和2年 3月24日 意見書の提出
令和2年 5月19日付け 拒絶査定
令和2年 8月25日 拒絶査定不服審判の請求
令和3年 1月27日付け 当審拒絶理由の通知
令和3年 4月 2日 意見書の提出

第2 本願の意匠の願書及び添付図面の記載
本願の意匠は、意匠に係る物品を「歯ブラシ」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を願書の記載及び願書に添付した図面のとおりとしたものであり(以下「本願意匠」という。)、物品の部分として意匠登録を受けようとする部分を、「実線で表された部分が、部分意匠として登録を受けようとする部分である。」(以下「本願部分」という。)としたものである(別紙第1参照)。

第3 当審における拒絶の理由及び本意匠
1 当審における拒絶の理由
当審定における拒絶の理由は、本願意匠が、願書に記載した本意匠に類似する意匠と認められないので、意匠法第10条第1項の規定に該当しない、としたものである。

2 本意匠
(1)手続の経緯
本意匠は、本願の出願日と同日の令和1年6月7日に出願された意匠登録出願(意願2019−12602)であって、審査において拒絶査定がなされて、審判においてその査定を取り消す旨の審決を経てから令和3年4月12日に意匠権の設定の登録(意匠登録第1684470号)がなされ、令和3年5月10日に意匠公報が発行されたものである。

(2)本意匠の願書及び添付図面の記載
本意匠は、意匠に係る物品を「歯ブラシ」とし、その形態を願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり、物品の部分として意匠登録を受けようとする部分を「実線で表された部分が、部分意匠として登録を受けようとする部分である。」(以下「本意匠部分」という。)としたものである(別紙第2参照)。

第4 当審の判断
1 対比
(1)本願意匠と本意匠の意匠に係る物品の対比
本願意匠と本意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、共に「歯ブラシ」であり、共通する。

(2)本願部分と本意匠部分の用途及び機能の対比
本願部分と本意匠部分(以下「両部分」という。)は、いずれも「歯ブラシ」のヘッド部における植毛部(ブラシ部)に係る用途及び機能を構成するものであり、共通する。

(3)両部分の位置、大きさ及び範囲の対比
両部分は、いずれも「歯ブラシ」のヘッド部におけるブラシ部をその位置、大きさ及び範囲とするものであり、共通する。

(4)両部分の形態
両部分の形態を対比すると、その形態には、以下のとおりの共通点及び相違点が認められる。
ア 共通点
(ア)毛束の配列態様
(a)正面及び背面視における態様
正面及び背面視において、ヘッド基台部に10列の毛束を、上端を水平状に配して構成する点。
(b) 平面視における態様
(b−1)平面視において、ヘッド部基台に複数の毛束を略扁平八角形状に配した構成とする点。
(b−2)毛束群は、長手方向に10列、短手方向は半束ずらした行を含めると11行(一つの列の最多は6行)とし、具体的には、ヘッド部先端から4列目ないし8列目までの中央5列は、短手方向に毛束を6行配し、3列目と9列目は、左記中央5列の行配列に対して半束分ずらして毛束5行を配し、1列目及び2列目は、3列目に対して更に半束分ずらした配置の毛束2行及び4行からなり、さらに、毛束3行からなる10列目は9列目の中央3行と整列して配する態様とする点。

(イ)毛束の明暗態様
(c)毛束の毛先部の態様
(c−1)毛束の毛先部の一部について、毛束の毛先部を暗調子とする点。
(c−2)平面視において、毛束群の毛先部を暗調子とするものと暗調子部を有さない(明調子)毛束とによって、モザイク状の模様が表れる態様とする点。
(d)モザイク状の模様の具体的態様
毛束の毛先部を暗調子とするものと明調子とするものによって、平面視において表れるモザイク状の模様について、ヘッド部先端から3列目の上下両端を構成する毛束群、4列目及び5列目の上下両端から各2行の毛束群、6列目の上下両端を構成する毛束群、7列目及び8列目の上下両端から各2行の毛束群、9列目の上下両端を構成する毛束群の調子を同じものとし、それ以外の毛束群の調子を反転させることにより、全体として、ブラシ部長手方向に沿って、上下に略扁平六角形状をベースとした模様(以下「上下模様」という。)を配し、残りの水平中央部に上下に凹凸を有する略横長の模様(以下「中央横長模様」という。)が浮かび上がる態様とする点。

イ 相違点
毛束の毛先部を暗調子とするものと明調子とするものによって、平面視において表れるモザイク状の模様について、本願部分は、上下模様を明調子、中央横長模様を暗調子とするのに対し、本意匠部分はそれらを反転した態様とする点。

類否判断
以下、本願意匠が第10条第1項の規定に該当するか否かについて検討し、判断する。
(1)両意匠の意匠に係る物品の類否判断
両意匠の意匠に係る物品は、同一である。

(2)両部分の用途及び機能の類否判断
両部分の用途及び機能は、同一である。

(3)両部分の位置、大きさ及び範囲の評価
両部分の位置、大きさ及び範囲は同一である。

(4)両部分の形態の類否判断
ア 共通点及び相違点の評価
両意匠は、いずれも「歯ブラシ」のヘッド部におけるブラシ部に係るものであり、需要者は、歯や歯茎をブラッシングする当該ブラシ部における形状、模様等の形態について注視するものということができる。
(ア)共通点の評価
毛束の配列態様について、正面及び背面視においてヘッド基台部に10列の毛束を、上端を水平状に配して構成する共通点(a)は、当該物品分野において、従来からよく採用されてきた態様にすぎず、両部分の形態の類否判断に及ぼす影響は小さい。
また、平面視における共通点(b−1)も、当該物品分野において、よく見られる態様であり、類否判断に及ぼす影響は小さい。
一方、平面視における共通点(b−2)は、一部の列の行配列を半束分ずらして配する等、限られた面積の中における配列の工夫という点で、両部分の形態の類否判断に一定の影響を及ぼすものと認められる。

次に、毛束の明暗態様について、毛束の毛先部の態様における共通点(c−1)及び(c−2)は、いずれも両意匠の出願前より公然知られた態様であり((c−1):参考意匠1、(c−2):参考意匠2)、両部分のみの特徴とはいえない態様であり、類否判断に及ぼす影響は限定的なものと認められる。
しかしながら、モザイク状の模様の具体的態様における共通点(d)についてみると、両部分が毛束の毛先部の明暗によって作り出すモザイク状の模様は、この種物品分野において独特なものであり、両部分のみの特徴ということができ、需要者に当該モザイク状の模様による共通した印象を強く与えるものと認められることから、両部分の類否判断に及ぼす影響は大きい。

参考意匠1:特許庁意匠課公知資料番号第HH28507061号に表された「歯ブラシ」の意匠(別紙第3参照)

参考意匠2:特許庁意匠課公知資料番号第HH28507070号に表された「歯ブラシ」の意匠(別紙第4参照))

(イ)相違点の評価
平面視において表れるモザイク状の模様の相違は、明暗の反転ではあるものの、中央横長模様を構成する毛束の数は27本であるのに対し、上下模様を構成する毛束は各11本で、上下合わせると22本であることから、本願部分は、本意匠部分に比べて暗調子部が多く、それが中央に細長く配されているため、需要者にブラシ部全体としては細身の印象を与えるのに対し、本意匠部分は、上下模様が暗調子部であるため、需要者にブラシ部全体としては上下に幅の広いものとする印象を与えていることから、両部分の形態の類否判断に一定の影響を及ぼすものと認められる。

イ 総合評価に基づく両部分の形態の類否判断
両部分の形態における共通点及び相違点の評価に基づき、両部分の形態全体を総合的に観察し、判断する。
前記ア(ア)に示したとおり、共通点(a)及び共通点(b−1)は、いずれも両部分の形態の類否判断に及ぼす影響は小さく、共通点(b−2)は、一定の影響を及ぼすものと認められるものの、両部分の相違点におけるブラシ部に模様部を有するか否かといった顕著な相違に比べると、多数の毛束群といった印象の中に埋もれる程度のものにすぎない。また、共通点(c−1)及び(c−2)は、いずれも両意匠の出願前より公然知られた態様であり、類否判断に及ぼす影響は限定的なものと認められる。
しかしながら、共通点(d)は、需要者に当該モザイク状の模様による共通した印象を強く与え、両部分の類否判断に大きな影響を及ぼしており、前記ア(イ)で示した、毛束の毛先部の暗調子部と明調子部の数の差による影響よりも、モザイク状の模様の共通点の方が、類否判断に及ぼす影響が大きいということができる。
したがって、両部分の形態全体を総合的に観察した場合、両部分の形態は、相違点よりも共通点の及ぼす影響の方が大きく、両部分の形態は類似する。

ウ 小括
両意匠は、意匠に係る物品は同一で、両部分の用途及び機能、さらには位置、大きさ及び範囲も同一で、両部分の形態も類似する。
したがって、両意匠は類似する。

3 本願意匠が意匠法第10条1項の規定に該当するか否かについて
本意匠は本願と同日の出願に係る自己の意匠登録出願であるから、本願は、意匠法第10条第1項が規定する出願時期と出願人に係る要件を満たしている。
さらに、前記2のとおり、本願意匠と本意匠は類似するものと認められるので、本願意匠は、意匠法第10条1項に規定されている本意匠に類似する意匠(関連意匠)の要件を満たしている。
したがって、本願意匠は、意匠法第10条1項の規定に該当するものである。

第6 むすび
以上のとおりであって、本願意匠は、願書に記載した本意匠に類似し、意匠法第10条第1項の規定に該当するものと認められるから、当審の拒絶の理由によって、本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
別掲




審決日 2021-06-15 
出願番号 2019012611 
審決分類 D 1 8・ 3- WY (C4)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 正田 毅
北代 真一
登録日 2021-08-11 
登録番号 1693734 
代理人 杉村 憲司 
代理人 村松 由布子 

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