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審決分類 |
審判 査定不服 2項容易に創作 取り消して登録 H7 |
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管理番号 | 1380968 |
総通号数 | 1 |
発行国 | JP |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2022-01-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-11-13 |
確定日 | 2021-07-12 |
意匠に係る物品 | テレビジョン受像機 |
事件の表示 | 意願2019− 29288「テレビジョン受像機」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、令和1年12月27日の意匠登録出願であって、その後の主な経緯は以下のとおりである。 令和2年 3月17日付け:拒絶理由の通知 令和2年 5月 7日 :意見書の提出 令和2年 5月11日 :手続補正書及び上申書の提出 令和2年 7月31日付け:拒絶査定 令和2年11月13日 :拒絶査定不服審判の請求 令和2年11月30日付け:手続補正指令(方式)の通知 令和3年 1月 8日 :手続補正書(方式)の提出 令和3年 1月 8日 :手続補正書の提出 令和3年 5月27日 :手続補正書の提出 第2 本願の意匠 本願の意匠は、意匠に係る物品を「テレビジョン受像機」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり(以下「本願意匠」という。)、物品の部分として意匠登録を受けようとする部分を、「実線と一点鎖線で囲まれた部分が、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。一点鎖線は、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分とそれ以外の部分との境界のみを示す線である。」(以下「本願部分」という。)としたものである(別紙第1参照)。 第3 原査定における拒絶の理由及び引用意匠 原査定における拒絶の理由は、本願意匠が、出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が日本国内又は外国において公然知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので、意匠法第3条第2項の規定に該当するというものであって、具体的には、以下のとおりである。 「テレビジョン受像機の表示部としては、上面及び左右両側面からなる周側面を正面に対する直交面として構成した長方形薄板状のものが、本願出願前から公然知られています(引用意匠1)。また、表示部の正面及び周側面を透光性を有する部材で均一に覆う手法も、本願出願前から公然知られています(引用意匠2)。 本願意匠は、出願前から公然知られている引用意匠1を基に、引用意匠2に見られる公然知られた手法により、表示部の正面、上面及び左右両側面の表面を透光性を有する部材で構成し、そのうち、「表示部上方における、正面部分、並びに、上面の正面側端部近傍部分及び左右側面の正面側端部近傍部分」を、意匠登録を受けようとする部分とした程度に過ぎないため、当業者であれば容易に創作することができたものであると認められます。 (中略) ・引用意匠1 特許庁発行の意匠公報記載 意匠登録第1600149号の意匠 ・引用意匠2 特許庁発行の意匠公報記載 意匠登録第1624027号の意匠 」 第4 当審の判断 以下において、本願意匠の意匠法第3条第2項の該当性、すなわち、本願意匠が当業者であれば容易に創作することができたか否かについて検討し、判断する。 1 本願意匠の認定 (1)本願意匠の意匠に係る物品 本願意匠の意匠に係る物品は、「テレビジョン受像機」である。 (2)本願部分の用途及び機能 本願部分は、テレビジョン受像機の表示パネルの一部及びその周側面(上面及び左右両側面)の一部としての用途及び機能を有するものである。 (3)本願部分の位置、大きさ及び範囲 本願部分は、正面視縦:横を約1:1.7とする表示パネルの正面上端から約1/4までとする表示パネル上部、及び正面の表示パネルから連接する上面及び左右両側面にわたる周側面における表示パネルの厚みの約2/5までの位置、大きさ及び範囲とするものである。 (4)本願部分の形態 ア 全体の形状 本願部分は、正面のパネル面に対して、周側面を直交面として構成した略長方形薄板状とするものである。 イ 正面のパネル面と周側面の角部の形状 正面のパネル面と周側面である上面及び左右両側面との角部(以下「正面角部」という。)は、直角であって、アール状に形成されていない。 ウ 本願部分の具体的態様 (ウ−1)本願部分は、有機ELパネルである内部発光パネル部の前面及び周側面を、表示パネルの厚みの約1/25とするごく薄い厚みの樹脂(以下「樹脂厚み」という。)で均等に覆ったもので、 (ウ−2)正面のパネル面及び周側面すべて透光性を有しており、正面パネル周側面寄りの端部(以下「正面パネル外周」という。)には、本願部分の樹脂厚み幅分内側まで、内部発光パネル部が存在し、その外側は、本願部分のみが、その樹脂厚み幅分だけ透光性を伴って枠状に表れる態様とするものである。 なお、本願は、令和2年5月11日、そして審判請求後の令和3年1月8日及び令和3年5月27日に手続補正書が提出されている。 令和2年5月11日の手続補正により、願書添付図面の「N−O間部分拡大図」及び「P−Q間部分拡大図」を変更しているが、この手続補正は、出願当初の願書の記載又は願書添付図面の要旨を変更するものではないと認められる。 また、審判請求提出後の令和3年1月8日の手続補正は、当審の指摘を受けて、令和3年5月27日の手続補正によって、すべて変更され、その補正は、出願当初の願書の記載又は願書添付図面の要旨を変更するものではないと認められる。 2 引用意匠の認定 原査定における拒絶の理由に用いられた、引用意匠1(意匠登録第1600149号の意匠)及び引用意匠2(意匠登録第1624027号の意匠)は、概要以下のとおりである。 なお、各引用意匠の形態は、本願部分に相当する形態について認定し、それぞれ引用1部分及び引用2部分という。 (1)引用意匠1(別紙第2参照) ア 引用意匠1の意匠に係る物品 本願意匠の意匠に係る物品は、「テレビジョン受像機」である。 イ 引用1部分の用途及び機能 引用1部分は、テレビジョン受像機の表示パネルの一部及びその周側面の一部としての用途及び機能を有するものである。 ウ 引用1部分の位置、大きさ及び範囲 引用1部分は、正面視縦:横を約1:1.7とする表示パネルの正面上端から約1/4までとする表示パネル上部、及び正面の表示パネルから連接する上面及び左右両側面にわたる周側面における表示パネルの厚みの約2/5までの位置、大きさ及び範囲とするものである。 エ 引用1部分の形態 (ア)全体の形状 引用1部分は、正面のパネル面に対して、周側面を直交面として構成した略長方形薄板状とするものである。 (イ)正面のパネル面と周側面の角部の形状 正面角部は、直角であって、アール状に形成されていない。 (ウ)引用1部分の具体的態様 (ウ−1)引用1部分の全体が同じ調子によって表されたもので、内部発光パネル部との関係は表れていない。 (ウ−2)正面パネル外周については、明瞭には表れていないため、ベゼル(枠)の有無等の態様が不明である。 (2)引用意匠2(別紙第3参照) ア 引用意匠2の意匠に係る物品 本願意匠の意匠に係る物品は、「Television receiver(参考訳:「テレビジョン受像機」。以下日本語参考訳で示す。)」である。 イ 引用2部分の用途及び機能 引用2部分は、テレビジョン受像機の表示パネルの一部及びその周側面の一部としての用途及び機能を有するものである。 ウ 引用2部分の位置、大きさ及び範囲 引用2部分は、正面視縦:横を約1:1.8とする表示パネルの正面上端から約1/4までとする表示パネル上部、及び正面の表示パネルから連接する上面及び左右両側面にわたる周側面における表示パネルの厚みの約2/5までの位置、大きさ及び範囲とするものである。 エ 引用2部分の形態 (ア)全体の形状 引用2部分は、正面のパネル面に対して、周側面を直交面として構成した略長方形薄板状とするものである。 (イ)正面のパネル面と周側面の角部の形状 正面角部は、表示パネルの厚みの約1.5/5までをアール状とするものである。 (ウ)引用2部分の具体的態様 (ウ−1)引用2部分は、内部発光パネル部の前面及び周側面を、表示パネルの厚みの約1/10、正面角部のアール状の約1/3とする薄い厚みのガラス(以下「ガラス厚み」という。)で均等に覆ったもので、 (ウ−2)正面のパネル面及び周側面すべて透明とするもので、正面パネル外周には、正面角部のアール状が始まる箇所まで、内部発光パネル部が存在し、電源を入れると透明である引用2部分を通して内部発光パネル部が見える態様とするもので、その外側は、引用2部分のみが、そのガラス厚み幅の約3倍の幅で透明のアール状枠として表れる態様とするものである。 3 本願意匠の創作非容易性について 本願意匠が意匠法第3条第2項の規定に該当するか否か、すなわち、当業者であれば容易に本願意匠の創作をすることができたか否かについて検討する。 まず、本願の意匠に係る物品は「テレビジョン受像機」であり、表示パネルを有する態様は普通に見られ、本願部分の用途及び機能、並びに位置、大きさ及び範囲について、特段の創作性を認めることはできない。 そして、本願部分の形態について、全体の形状を、正面のパネル面に対して周側面を直交面として構成した略長方形薄板状とした点は、引用1部分及び引用2部分に見られるものである(前記2(1)エ(ア)及び(2)エ(ア))。 また、正面角部をアール状に形成しない直角とするものも引用1部分に 表れている(前記2(1)エ(イ))。 しかしながら、本願部分の具体的態様についてみた場合、下記のとおり、引用1部分及び引用2部分の形態から導き出されるということはできない。 本願部分は、前記1(4)ウのとおり、正面のパネル面及び周側面すべて透光性を有しており、正面パネル外周には、内部発光パネル部が本願部分の樹脂厚み幅分内側まで存在し、その外側は、本願部分のみが、その厚み幅(表示パネルの厚みの約1/25のごく薄い厚み)分だけ透光性を伴って枠状に表れる態様とするものである。 これに対し、引用2部分は、前記2(2)エ(ウ)のとおり、正面のパネル面及び周側面すべて透明とするもので、正面パネル外周には、正面角部のアール状が始まる箇所(表示パネルの厚みの約1/10の薄い厚み)まで、内部発光パネル部が存在し、その外側は、引用2部分のみが、そのガラス厚み幅の約3倍の幅で透明のアール状枠として表れる態様とするものである。 つまり、引用2部分の正面パネル外周における内部発光パネル部の端部より外側は、やや幅の広い正面角部のアール状部が枠部としてとらえられるのに対し、本願部分の対応する部分は、本願部分の樹脂厚み分のみの極薄い厚み幅とする枠部とするものであり、両部分の態様は大きく異なるものと認められる。 したがって、この引用2部分の態様を、正面角部をアール状に形成しない直角とする引用1部分と組み合わせても、極薄い枠部の印象を同じとすることはできず、本願部分の態様を導き出すことはできない。 よって、本願意匠は、当業者がこれら公然知られた形態に基づいて容易に創作をすることができたということはできない。 第5 むすび 以上のとおりであって、本願意匠は、意匠法第3条第2項が規定する、意匠登録出願前に当業者が日本国内において公然知られた形態に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものに該当しないので、原査定の拒絶の理由によって本願の登録を拒絶すべきものとすることはできない。 また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2021-06-23 |
出願番号 | 2019029288 |
審決分類 |
D
1
8・
121-
WY
(H7)
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最終処分 | 01 成立 |
特許庁審判長 |
小林 裕和 |
特許庁審判官 |
正田 毅 北代 真一 |
登録日 | 2021-07-14 |
登録番号 | 1691624 |
代理人 | 井上 美和子 |
代理人 | 渡邊 薫 |