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審決分類 |
審判 査定不服 2項容易に創作 取り消して登録 H7 |
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管理番号 | 1380978 |
総通号数 | 1 |
発行国 | JP |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2022-01-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2021-03-25 |
確定日 | 2021-07-30 |
意匠に係る物品 | 撮像機能付き電子計算機 |
事件の表示 | 意願2019− 3674「撮像機能付き電子計算機」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、意匠法第14条第1項の規定により本願に係る意匠(以下「本願意匠」という。)を3年間秘密にすることを請求した、平成31年(2019年)2月23日の意匠登録出願であって、その主な手続の経緯は以下のとおりである。 令和2年(2020年) 8月20日付け 拒絶理由の通知 令和2年(2020年)10月 7日 意見書の提出 令和2年(2020年)12月21日付け 拒絶査定 令和3年(2021年) 3月25日 拒絶査定不服審判の請求 第2 本願意匠 本願は、物品の部分について意匠登録を受けようとする意匠登録出願であり、本願意匠の意匠に係る物品は、本願の願書の記載によれば「撮像機能付き電子計算機」であり、本願意匠の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下、「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」ともいう。)は願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりである。 第3 原査定における拒絶の理由 原査定における拒絶の理由は、本願意匠が、出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」ともいう。)が日本国内又は外国において公然知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたと認められるので、意匠法第3条第2項の規定に該当するとしたものであって、具体的には、以下のとおりである。 「本願意匠は、「撮像機能付き電子計算機」の画像であり、横長の表示部全域に撮影したコンテンツを表示したときに、そのコンテンツを横に3分割するとともに撮像の際の指標となる2つの白色の縦線と、表示部の枠線について、部分意匠として意匠登録を受けようするものです。 しかしながら、本願出願前より、コンテンツ表示部を分割するとともに撮像の際に指標となる白い直線を用いた画像は公然知られており(画像1)、21対9のアスペクト比の表示部も、また本願出願前より公然知られています(意匠A)。 また、横長のコンテンツ表示部を横に3分割する縦線を設けることは、本願出願前より多く見られるため(画像2、画像3)、このような構成とすることは、当業者にとってありふれた手法であるといえます。 加えて、映像等を表示する表示部のアスペクト比を16対9とすることは、例を挙げるまでもなく、広く知られており、このことから、撮像する際の指標となる領域の長方形の縦横比を16対9とすることは、当業者であれば容易に想到できるといえます。 そうすると、本願意匠は、表示部のアスペクト比を意匠Aに見られるように21対9として、その表示部全域にコンテンツを表示させ、画像1にに見られるように撮像する際の指標を白い直線で表し、その際の具体的な形態について、横長のコンテンツ表示部を横に3分割する構成とし、その分割の割合を、当業者であれば容易に想到できる構成比に変更したにすぎず、その結果生じた、2つの白色の縦線と、表示部の枠線については、その具体的な形態について当業者であれば容易に創作できたものと認められます。 (中略) 意匠A: 著者の氏名 GSMArena.com 表題 Acer Iconia Smart has 21:9 screen, Liquid swaps the Metal for mt 掲載箇所 Acer Iconia Smartの注釈の上の2図 媒体のタイプ [online] 掲載年月日 2011年 2月14日 検索日 2020年 8月19日 情報の情報源 インターネット 情報のアドレス https://www.gsmarena.com/acer_iconia_smart_has_ 219_screen_liquid_swaps_the_metal_for_mt-news-2326.phpに掲載された携帯情報端末の意匠 画像1: 電気通信回線の種類 インターネット 掲載確認日(公知日) 2016年 2月12日 受入日 特許庁意匠課受入2016年 4月 7日 掲載者 Uplause Ltd. 表題 Uplause ライブイベント写真&動画アプリ を App Store で 掲載ページのアドレス https://itunes.apple.com/jp/app/uplause-raibui bento-xie-zhen/id941023788?mt=8 に掲載された「スマートフォン用ソフトウェアの動画機能」の画像 (特許庁意匠課公知資料番号第HJ27149355号) 画像2: 大韓民国意匠商標公報 2017年 3月31日17−10号 ディスプレイスクリーン用画像(登録番号30−0900769) (特許庁意匠課公知資料番号第HH29410095号) 画像3: 電気通信回線の種類 インターネット 掲載確認日(公知日) 2017年 7月18日 受入日 特許庁意匠課受入2018年 1月15日 掲載者 Funny Five Playground 表題 写真 スライドショー 動画 作成 ムービーメー カー アプリ − Google Play の Android アプリ 掲載ページのアドレス https://play.google.com/store/apps/details?id= com.FPCA.Photo.Slideshow.And.Video.Maker に掲載された「スマートフォン用ソフトウェアの写真加工機能」の画像 (特許庁意匠課公知資料番号第HJ29082013号)」 第4 当審の判断 以下において、本願意匠の意匠法第3条第2項の該当性、すなわち、本願意匠が当業者であれば容易に創作することができたか否かについて検討し、判断する。 1 本願意匠の認定 当審では、本願意匠について、以下のとおり認定する(別紙第1参照)。 (1)意匠に係る物品 本願意匠の意匠に係る物品(以下「本願物品」という。)は「撮像機能付き電子計算機」であり、願書の「意匠に係る物品の説明」には、以下のとおり記載されている。 「本願意匠に係る物品は、スマートフォンタイプの電子計算機である。映画の撮影及び再生に最適な横長の21対9のアスペクト比での動画撮影が可能である。本願の部分意匠として意匠登録を受けようとする部分には、撮像画像の表示領域と、21対9のアスペクト比で撮像する当該画像を16対9で再生するとした場合にその内のどの範囲が再生されるかを示す指標であって撮像画像の前面に表示される2本の線分とが含まれる。参考正面図における引出線1は撮像画像の表示領域及び本願物品の画像表示部(ディスプレイ部)の外縁であり、引出線2で示す線分が同指標となる。引出線3で示す記号は映像の中心点を表している。」 また、願書の「意匠の説明」には、以下のとおり記載されている。 「実線で囲んだ部分(破線で表した図形を除く。)が部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」 これらの願書の記載によれば、本願物品は、「スマートフォンタイプの電子計算機」であって、21対9のアスペクト比での動画撮影ができるものであり、撮像画像の前面に表示される2本の線分(指標線)によって、16対9で再生するとした場合にどの範囲が再生されるかを示すことができるものである。 (2)「正面図」に表された画像 上記(1)のとおり本願物品は動画撮影ができるものであると説明されていること、及び「実施態様の一例を示す参考正面図」の右端寄りに撮影ボタンが表されているので本願物品の「正面図」に表された画像(以下「本願画像」という。)が操作の用に供されることから、本願画像は意匠法第2条第2項(平成18年改正意匠法)に規定された物品の操作の用に供される画像に該当すると認められる。 本願意匠において部分意匠として意匠登録を受けようとする部分は、本願画像内で「破線で表した図形を除く」部分(以下「本願画像部分」という。)である。 (3)本願画像部分の用途及び機能 上記(1)の願書の記載によれば、本願画像部分の用途及び機能は、21対9の横幅:縦幅の比の中で、撮像画像の表示領域と、指標線によって16対9で再生するとした場合にどの範囲が再生されるかを示すことである。 (4)本願画像における本願画像部分の位置、大きさ及び範囲 本願画像は、本願物品の正面部の位置にあり、そのほぼ一杯の大きさ及び範囲を占めている。 (5)本願画像部分の形態 ア 全体の形状 本願画像部分の外枠は、本願画像の外枠に一致しており、横幅:縦幅の比は約21:9である。 イ 指標線の形状 指標線は、本願画像部分の左端寄り及び右端寄りに、一本ずつ配された垂直線であって、本願画像部分の上端から下端までわたっている。 二つの指標線並びに本願画像部分の上端及び下端を囲った領域の横幅:縦幅の比は約16:9である。 2 引用意匠及び引用画像の認定 原査定における拒絶の理由で引用された意匠及び画像について、以下のとおり認定する。なお、引用された意匠及び画像の出典や公知日などについては、前記第3のとおりである。 (1)意匠A(別紙第2参照) ア 意匠Aの意匠に係る物品 意匠Aの意匠に係る物品は、「携帯情報端末」であり、携帯情報端末に関する用途及び機能がある。 イ 意匠Aの形態 意匠Aは、全体が縦長の略板状であって、正面に表示部が設けられており、その表示部に表示された画像の横幅:縦幅の比は約21:9である。 (2)画像1(別紙第3参照) ア 画像1の用途及び機能 画像1は、「スマートフォン用ソフトウェアの動画機能」の画像であり、ライブイベントにおいて写真及び動画を撮影する用途及び機能がある。 イ 画像1の形態 画像1は、外周が縦長長方形状(縦横比が約1.8:1)であり、その上端寄りと下端寄りを除いた全面にスポーツ観戦をしている観客が複数映っており、中央から上部にかけての略正方形箇所が明るく表されて、それ以外が暗く表されている。略正方形箇所内の上端寄りには白色の水平分割線が配されて、その上には文字表示と時刻表示があり、また、略正方形箇所内の下端寄りにも白色の水平分割線が配されて、その下には文字表示と音量表示がある。そして、略正方形箇所の下方には、「Snap!」と表示された横長長方形のボタン(スナップショットを撮るボタン)が配されている。 (3)画像2(別紙第4参照) ア 画像2の用途及び機能 画像2は、ディスプレイスクリーン用画像であり、メニューアイコンを変化させたり、子供部屋や居間などを表示する用途及び機能がある。 イ 画像2の形態 画像2は、外周が横長長方形状(横幅:縦幅の比が約16:9)であり、水平方向に3等分する2本の垂直線が破線で表されている。 参考図面1.1、同1.2、同1.3、同1.4、同1.5、同1.6、同1.7,同1.8、同1.9、同1.11、同1.12、同1.14及び同1.15では、右側の垂直線によって、左右の被写体が切り替わっており、参考図面1.10、同1.13及び同1.16では、左側の垂直線によって左右の被写体が切り替わっている。 (4)画像3(別紙第5参照) ア 画像3の用途及び機能 画像3は、「スマートフォン用ソフトウェアの写真加工機能」の画像であり、写真を加工する用途及び機能がある。 イ 画像3の形態 本願画像部分に対応する画像3の形態、具体的には、画像3の上部の形態について認定する。 画像3の上部は、雲が浮かぶ青空を撮影した写真が横幅一杯に現されており、その写真の縦横比は約1:2.1であり、左下に「SAMPLE」の文字部が挿入されている。そして、写真の両側にフィルター加工(曇りガラスを通して見たような加工)が左右対称状に施されており、その境界は垂直状であって、フィルター加工部分の横幅は画像3の横幅の約1/4である。 3 本願意匠の創作非容易性について 本願意匠が意匠法第3条第2項の規定に該当するか否か、すなわち、当業者であれば容易に本願意匠の創作をすることができたか否かについて検討する。 本願画像部分の用途及び機能は、21:9の横幅:縦幅の比の中で、指標線によって16対9で再生するとした場合にどの範囲が再生されるかを示すことであるところ、引用意匠及び引用画像の用途及び機能はそれとは異なるから、そのような用途及び機能を有する画像の形態が本願の出願前に公然知られているかについては明らかではない。 そして、本願画像部分の形態についても、約21:9である外枠の左端寄り及び右端寄りに垂直線を上端から下端にわたるように一本ずつ配して、これらの垂直線と外枠に囲われた領域の横幅:縦幅の比を約16:9とした形態は、引用意匠及び引用画像には表されていない。そうすると、当業者が、引用意匠の形態に基づいて、本願画像部分の形態を容易に創作することができたということはできない。 したがって、原査定における拒絶の理由で引用された意匠に基づいて、当業者が容易に本願意匠の創作をすることができたということはできない。 第5 むすび 以上のとおりであって、本願意匠は、意匠法第3条第2項が規定する、意匠登録出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に創作をすることができたとはいえないものであるから、原査定の拒絶の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。 また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2021-07-15 |
出願番号 | 2019003674 |
審決分類 |
D
1
8・
121-
WY
(H7)
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最終処分 | 01 成立 |
特許庁審判長 |
北代 真一 |
特許庁審判官 |
井上 和之 小林 裕和 |
登録日 | 2021-08-13 |
登録番号 | 1693947 |
代理人 | 五味 飛鳥 |