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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 L6
管理番号 1380988 
総通号数
発行国 JP 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2022-01-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-06-08 
確定日 2021-10-18 
意匠に係る物品 建築用パネル 
事件の表示 意願2020− 6903「建築用パネル」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 主な手続の経緯

令和2年(2020年) 4月 1日 意匠登録出願
同年 11月30日付け 拒絶理由通知書
令和3年(2021年) 1月13日 意見書提出
同年 4月 9日付け 拒絶査定
同年 6月 8日 審判請求書提出

第2 本願の意匠

本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は、意匠に係る物品を「建築用パネル」とし、その形状等(形状、模様若しくは色彩若しくはこれらの結合)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり、本願意匠において物品の部分として意匠登録を受けようとする部分(以下「本願部分」という。)を、「実線で表された部分が、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。一点鎖線は、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分とその他の部分の境界のみを示す線である。」としたものである。(別紙第1参照)

第3 原査定の拒絶の理由

原査定の拒絶の理由は、本願意匠は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の意匠(以下「引用意匠」という。)に類似するものであるから、意匠法3条1項3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)に該当する、というものである。

引用意匠(別紙第2参照)
特許庁発行の意匠公報記載
意匠登録第1239429号
(意匠に係る物品、建築用パネル)の意匠の本願意匠について部分意匠として意匠登録を受けようとする部分に相当する部分

第4 当審の判断

1 本願意匠と引用意匠の対比
(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は「建築用パネル」であり、引用意匠の意匠に係る物品も「建築用パネル」であるから、本願意匠及び引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、一致する。

(2)本願部分と、引用意匠において本願部分と対比する部分の用途及び機能、並びに位置、大きさ及び範囲
本願部分と、引用意匠において本願部分と対比する部分、すなわち本願部分に相当する部分(以下、「引用部分」といい、本願部分と引用部分をあわせて「両部分」という。)は、パネルの外壁の部分(化粧面及びこれに連続する周側面の一部)であるから、両部分の用途及び機能、並びに位置、大きさ及び範囲は一致する。

(3)両部分の形状等
両部分の形状等については、主として、以下のとおりの共通点及び相違点がある。
なお、両部分の対比のため、本願意匠の図の向きに合わせて、引用意匠の図の向きを認定する。

ア 共通点
両部分は、平面視略縦長矩形状の平板の上面に、正面視略等脚台形の凸条を長手方向に沿って等間隔に複数本設けて、凸条と凹条を交互に形成している点において共通する。

イ 相違点
(相違点1)本願部分は、平面において上下にのみ連続する長尺材であるのに対し、引用部分は、定尺材である点、
(相違点2)本願部分は、凸条を8本形成し、両端の凸条は平板の縁からやや内側に形成しているのに対し、引用部分は、凸条を20本形成し、両端の凸条は平板の縁に近接して形成している点、
(相違点3)正面視の凸条の長さの比率及び斜辺の角度について、本願部分は、上辺及び下辺の長さと高さの比率は約9:13:9で、斜辺の角度は約80度であるのに対し、引用部分はそれぞれ、約9:11:10、約85度である点、
(相違点4)正面視の凸条の上辺と凹条の下辺の長さの比率について、本願部分は、1:1.6であるのに対し、引用部分は、約1:1点である点、
(相違点5)凸条と凹条の入隅と出隅について、本願部分は、隅丸状に形成しているのに対し、引用部分は、隅丸状に形成していない点において相違する。

類否判断
以上の共通点及び相違点が両意匠の類否判断に与える影響を評価・総合して、両意匠の類否を意匠全体として検討し、判断する。

(1)意匠に係る物品
両意匠の意匠に係る物品は、同一である。

(2)両部分の用途及び機能、並びに位置、大きさ及び範囲の類否判断
両部分の用途及び機能、並びに位置、大きさ及び範囲は、同一である。

(3)両部分の形状等の共通点及び相違点の評価
両意匠は、家屋等の建築物の壁面に取り付けられる建築用パネルであるから、需要者は、主に外観に注目する住宅等購入者のほか、壁板材の取り付けや施工を行う取引業者や施工業者が含まれる。
したがって、当該パネルの外壁のうち化粧面が表れる平面及び正面の態様が需要者の注意を強く惹く部分といえる。

ア 共通点の評価
この種物品の分野において、平面視略縦長矩形状の平板の上面に、正面視略等脚台形の凸条を長手方向に沿って等間隔に複数本設けて、凸条と凹条を交互に形成したものは、本願の出願前から、ごく普通にみられる態様であり、両部分にのみ見られる特有の態様とはいえないから、両部分の類否判断に与える影響は小さい。

イ 相違点の評価
(相違点1)本願意匠は、任意の長さに切り分けて使用する建築用資材であるところ、平面において上下にのみ連続するものである本願部分と定尺の引用部分との相違が、両部分の類否判断に与える影響は小さい。
(相違点2)凸条を8本形成した本願部分と、その2倍以上の本数(20本)を形成した引用部分とは、一見して異なる視覚的印象となって、需要者に異なる美感を起こさせるものであり、両端の凸条の態様も相まって、両部分の類否判断に与える影響は大きい。
(相違点3)本願部分は、引用部分より若干横長で斜辺の傾斜角度もやや小さいが、その差は僅かであって、部分的な相違であるから、両部分の類否判断に与える影響は小さい。
(相違点4)本願部分は、正面視において凸条の上辺より凹条の下辺の方が横長で、形成される凸条の数も8本と少ないため、凸条の間隔が広く、ゆったりとした印象をもたらしているのに対し、引用部分は、凸条と凹条の長さが同じで、形成される凸条の数も20本と多いため、細かい凹凸が規則的に交互に並んだ単調な印象を与えており、(相違点2)と相まって、需要者に異なる美感を起こさせているから、両部分の類否判断に与える影響は大きい。
(相違点5)この種物品の分野において、当該部位を、本願部分のように隅丸状としたものも、引用部分のように角を立たせたものも、どちらも普通に見られるものであるが、平面全体として見た場合、本願部分は、角のない柔らかな印象を与えているのに対し、引用部分は、角張った印象を与えており、両者は、視覚的印象が大きく異なるものであるから、需要者に異なる美感を起こさせるものといえ、両部分の類否判断に与える影響は大きい。

ウ 形状等の類否判断
両部分の形状等における共通点及び相違点の評価に基づき、意匠全体として総合的に観察し、判断した場合、共通点は、両部分の類否判断に与える影響は小さいものであるのに対し、(相違点1)及び(相違点3)は、両部分の類否判断に与える影響は小さいものの、(相違点2)、(相違点4)及び(相違点5)は、いずれも、両部分の類否判断に与える影響は大きいものである。
したがって、両部分の形状等を全体として総合的に観察した場合、両部分の形状等は、共通点に比べて、相違点が与える影響の方が大きいものであるから、両部分の形状等は類似しない。

(4)小括
以上のとおり、両意匠は、意匠に係る物品は同一で、両部分の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲も同一であるが、形状等においては、共通点が未だ両部分の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対して、相違点が両部分の類否判断に与える影響は共通点のそれを凌駕しており、意匠全体として見た場合、両部分は、需要者に異なる美感を与えているというべきであるから、本願意匠は、引用意匠に類似するということはできない。

第5 むすび

以上のとおりであって、原査定の引用意匠をもって、本願意匠は、意匠法3条1項3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから、原査定の拒絶の理由によって、本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。

また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。

別掲




審決日 2021-09-28 
出願番号 2020006903 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (L6)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 加藤 真珠
内藤 弘樹
登録日 2021-11-04 
登録番号 1700254 
代理人 飯島 紳行 

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