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審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 H1
管理番号 1380991 
総通号数
発行国 JP 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2022-01-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-06-21 
確定日 2021-12-24 
意匠に係る物品 半導体モジュール 
事件の表示 意願2020− 1382「半導体モジュール」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
令和 2年 1月28日 意匠登録出願
令和 2年 9月25日付け 拒絶理由通知書
令和 2年11月11日 意見書提出
令和 3年 3月23日付け 拒絶査定
令和 3年 6月21日 審判請求書提出

第2 本願の意匠
本願は、物品の部分について意匠登録を受けようとする、令和2年(2020年)1月28日の意匠登録出願(意願2020−1382)であって、その意匠は、願書及び願書に添付した図面の記載によれば、意匠に係る物品を「半導体モジュール」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下、「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)は、願書及び願書に添付した図面の記載のとおりとしたものであって、「部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を実線で、それ以外の部分を破線で表した。各図において表れる一点鎖線は、部分意匠として登録を受けようとする部分とそれ以外の部分の境界のみを表している。」としたものである。(以下「本願意匠」という(別紙第1参照)。また、本願の物品の部分として意匠登録を受けようとする部分を以下「本願部分」という。)

第3 原査定における拒絶の理由
原査定における拒絶の理由は、本願意匠が、出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので、意匠法第3条第2項の規定に該当するというものであって、具体的には、以下のとおりである。
「この意匠登録出願の意匠は、半導体モジュールのうち、絶縁・放熱部材の一部及び接続端子の一部について意匠登録を受けようとしたものですが、この種半導体モジュールの属する分野では、この意匠の出願前から公然知られた意匠1に示すように絶縁・放熱部材の一部に切り欠きを設けることも、この意匠の出願前から公然知られた意匠2に示すように特に切り欠き等を設けず略直方体の絶縁・放熱部材とすることもいずれも行われています。
また、上記意匠1、意匠2にも表れているように、この種半導体モジュールにおいては、接続端子を接続先の回路にあわせて増減させることは広く行われており、本願意匠の接続端子の意匠登録を受けようとする部分についてみると、絶縁・放熱部材の上下の分かれ目から水平に帯状の接続端子を複数設けているにすぎず、それぞれの接続端子の形状等や接続端子の配置、絶縁・放熱部材との接続の態様のいずれについても顕著な創作は認められません。
そうすると、この意匠の出願前から公然知られた意匠1の絶縁・放熱部材の切り欠きをなくし略直方体とし、接続端子を増減させたものについて、絶縁・放熱部材の一部及び接続端子の一部について意匠登録を受けようとしたに過ぎない本願意匠の意匠登録を受けようとする部分としたに過ぎない本願意匠は、当業者であれば容易に創作することができたものです。
意匠1
特許庁発行の意匠公報記載
意匠登録第1511987号の意匠

意匠2
特許庁発行の意匠公報記載
意匠登録第0982886号の意匠」

第4 当審の判断
請求人の主張を踏まえ、本願意匠の意匠法第3条第2項の該当性、すなわち、本願意匠の出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)であれば本願意匠が容易に創作することができたか否かについて、検討し、判断する。
1 本願意匠
(1)本願意匠の意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は、複数の半導体を組み合わせて回路を構成して集積し、1つのパッケージに納めた「半導体モジュール」である。
(2)本願部分の用途及び機能
本願部分は、本体及び本体から突出した各端子部の内、底面視、本体の中央に配された絶縁・放熱部材部及び平面視下辺の左から3本目と10本目の端子部は全てを、その余の平面視上辺及び下辺の端子部は先端から僅かに突出した根元付近までを区画して除いたものであって、主に電子機器の電力供給の制御などのために用いられ、本体部は回路を集積してユニットとして保護し、端子部は電力供給、電位、電圧、電流の制御などの入出力に関わり、他回路などに接続するものである。
(3)本願部分の位置、大きさ及び範囲
本願部分は、正面図側を正面として、物品全体の奥行き方向で略中央の下側の位置であり、本体については、略長方形状の絶縁・放熱部材部が占める底面の約6割を除いた範囲であり、端子部については、突出部分の全て、もしくは先端から約9割を除いた範囲である。
(4)本願部分の形態
(あ)全体を厚みの薄い略直方体状の本体部と、本体部から突出した複数の端子部とで構成し、平面視で本体部の左右辺の縦方向中央に略U字状の切り欠き(以下「切り欠き部」という。)を設けている。
(い)本体部の縦横及び高さ比について、縦横及び高さの長さ比が約1:1.6:0.2である。
(う)本体部を側面視すると、周側面は、縦方向の中央やや上寄りを境に上下にごく僅かに内方に傾いた傾斜面を形成し、縦方向の中央やや上寄りの全周に亘って稜部を形成している。
(え)切り欠き部は、平面側の左右辺に面した隅角部分に小型の直角三角形状の面取り部を設け、左右側面視の、縦方向で中央やや上寄りを境に、平面側の内周面は略鉛直状で、底面側は、底面に向かって僅かに裾広がりである。
(お)端子部は、略短冊状で、幅広の大端子部と、幅狭の小端子部から成り、共に、正背面視で中央やや上寄り付近から手前に突出して形成しており、大端子部は、本体部の平面視上辺側に、左右に余地を残し、等間隔に4本を配し、小端子部は、平面視下辺側の3カ所にまとめて配し、左右端寄りに2本ずつと中央に6本、左右対称で等間隔に計10本を配し、配置カ所間は大きく間隔を空けている。

2 引用意匠
原査定における拒絶の理由で引用された、意匠1及び意匠2の意匠に係る物品及び形態は、概要以下のとおりである。
以下、対比のため、本願意匠の図面における正面、平面等の向きを、意匠1及び意匠2にもあてはめることとする。
(1)意匠1(別紙第2参照)
意匠に係る物品は「電力用半導体素子」であり、
(ア)全体を厚みの薄い略直方体状の本体部と、本体部から突出した複数の端子部とで構成し、本体部と端子部全体が右側面視略コ字状を呈するもので、平面視した本体部の下辺の略中央より右側半分に(以下「右半部」という。)小型の略隅丸長方形状の切り欠き(以下「小型切り欠き部」という。)を4つ等間隔に設け、左右辺の縦方向中央に略U字状の切り欠き部を設けている。
(イ)本体部の縦横及び高さ比について、縦横及び高さの長さ比が約1:1.7:0.2であり、本体部を底面視すると、縦方向で切り欠き部よりやや上から下辺手前まで、横方向で切り欠き部手前の左右一杯に横長長方形状の絶縁・放熱部材部を設けている。
(ウ)本体部を側面視すると、周側面は、縦方向の中央やや上寄りを境に上下にごく僅かに内方に傾いた傾斜面を形成し、縦方向の中央やや上寄りの全周に亘って稜部を形成している。
(エ)略U字状の切り欠き部は、平面側の左右辺に面した隅角部分に小型の直角三角形状の面取り部を設け、左右側面視においては、縦方向で中央やや上寄り付近より平面側及び底面側の内周面は、中央やや上寄りを境に上下に向かって、僅かに裾広がりの内周面を形成している。また、小型切り欠き部も背面視で中央やや上寄りを境に上下に向かって広く開口し、僅かに傾斜した内周面を形成している。
(オ)端子部は、幅広の大端子部と、幅狭の小端子部から成り、本体部の正面側に各端子が本体部の正面と背面の縦方向略中央付近から手前に突出しており、平面視左端部の略短冊状の2端子を除いて、上方に折れ曲がり右側面視で略逆倒L字状と略倒L字状に形成し、各端子の根元が僅かにくびれた略短冊状部分は、先端よりも幅広で、先端側のピン状部分は極めて細く形成しており、大端子部は、本体部の平面視上辺側に、等間隔に7本配し、いずれも略短冊状部の根元寄りで屈曲し、平面視上辺側の小端子部は、5カ所にまとめて配し、左端には屈曲しないごく短い端子部を2本、小型切り欠き部間に、略短冊状部の先方で屈曲した短い端子部(以下「短端子」)と先端側のピン状部で屈曲した長い端子部(以下「長端子」)を交互に2本ずつ(3カ所)、その余の右側には密に短端子と長端子を交互に13本、等間隔に計21本配し、配置カ所間は間隔を空けている。
(2)意匠2(別紙第3参照)
意匠に係る物品は「電力用半導体素子」であり、全体を厚みの薄い略直方体状の本体部と、本体部から突出した複数の端子部とで構成し、本体部と端子部全体が右側面視略コ字状を呈するもので、平面視した本体部の左右辺寄りのやや下側に円孔部を設けている。
本体部の縦横及び高さ比について、縦横及び高さの長さ比が約1:2.5:0.3であって、本体部を平面視すると、円孔部の左右端いっぱいやや下辺寄りに横長長方形状の絶縁・放熱部材部を設けている。
本体部を側面視すると、周側面は、縦方向の中央を境に上下にごく僅かに内方に傾いた傾斜面を形成し、縦方向の中央全周に亘って稜部を形成している。
端子部は、略短冊状の幅広の大端子部と、幅狭の小端子部から成り、各端子は本体部の正面と背面の縦方向略中央付近から手前に突出して上方に折れ曲がり、右側面視で略逆倒L字状と略倒L字状に形成し、根元側の略短冊状部分は、先端よりも幅広で、先端側のピン状部は極めて細く形成しており、大端子部は、本体部の平面視上辺側の左右に余地を残し、左端から4本は等間隔に、5本目は間隔を空けて、計5本を配し、平面視下辺側の小端子部は7カ所にまとめて配し、左端から5カ所目に3本、7カ所目に8本、その余は、5カ所に2本ずつ、等間隔に計21本配し、配置カ所間は間隔を若干空けている。

3 本願部分の創作非容易性について
本願部分の形態が容易に創作することができたか否かについて検討すると、上記1の(4)(あ)、(う)、(え)及び(お)の端子部が幅広の大端子部と、幅狭の小端子部から成る形態は「半導体モジュール」の物品分野でよく見受けられる形態(例えば、意匠1(U字状切り欠き部平面側内周面の態様を除く))であって、本願部分の切り欠き部の平面側内周面が略鉛直状である点及び上記1の(4)(い)の平面視での本体の縦横及び高さの長さ比の点についても、意匠1の切り欠き部の裾広がりの内周面による傾斜の程度はごく僅かなものであり、本願部分の本体と意匠1の本体の縦横及び高さの長さ比は近値のものであって、意匠1の形態に基づいてそれらの内周面態様及び構成比率に若干の変更を行うことに困難を認めることはできず、これらの点について、格別の創意を施したということはできない。
しかしながら、「半導体モジュール」の物品分野において、その性能に関わる端子部の配置は、当業者は注意を払って創作するものと認められ、回路によって沿面距離を考慮し、小型切り欠き部のないパッケージの中で、いかにして回路を配し、端子部を配置するかという点に工夫と創作の余地が存在するというべきところ、上記1の(4)(お)の形態の内、特に小端子部の配置については、本願出願前に公然知られた形態である意匠1及び意匠2のいずれにも表されておらず、小端子部を、平面視下辺側の3カ所にまとめて配し、左右端寄りに2本ずつと中央に6本、左右対称で等間隔に計10本を配し、配置カ所間の間隔を大きく空けた形態とすることが、「半導体モジュール」の物品分野において本願意匠出願前にありふれた手法であったとする証拠もないから、本願部分の当該形態は、独自の着想によって創出された特徴を形成しているといえる。

4 小括
そうすると、本願部分の形態は、「半導体モジュール」の物品分野において独自の着想によって創出したものであり、当業者が公然知られた形態及びありふれた手法に基づいて容易に本願意匠の創作をすることができたということはできない。

第5 むすび
以上のとおりであって、本願意匠は、意匠法第3条第2項が規定する、意匠登録出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたときに該当しないので、原査定の拒絶の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。

また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。

別掲





審決日 2021-12-08 
出願番号 2020001382 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (H1)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 内藤 弘樹
特許庁審判官 渡邉 久美
江塚 尚弘
登録日 2022-01-14 
登録番号 1705786 
代理人 恩田 誠 
代理人 恩田 博宣 

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