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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 K8
管理番号 1380998 
総通号数
発行国 JP 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2022-01-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-08-04 
確定日 2021-12-09 
意匠に係る物品 フットポンプ 
事件の表示 意願2020− 12900「フットポンプ」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 事案の概要

1 手続の経緯
本願は,令和2年(2020年)6月26日の意匠登録出願であって,同年12月23日付けの拒絶理由の通知に対し,令和3年(2021年)2月1日に意見書が提出されたが,同年5月12日付けで拒絶査定がなされ,これに対して,同年8月4日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

2 本願意匠の願書及び添付図面の記載
本願意匠は,意匠に係る物品を「フットポンプ」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形状等」という。)を,願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである(別紙第1参照)。

3 原査定の拒絶の理由及び引用意匠
原査定の拒絶の理由は,本願意匠が,その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠に類似するものであるから,意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠(先行の公知意匠に類似するため,意匠登録を受けることができない意匠)に該当する,というものである。
上記の拒絶理由通知において引用された意匠は,中華人民共和国意匠公報(公報発行日:2020年6月5日)に記載された,「ペダルエアーポンプ(公開番号CN305825894S)」の意匠(特許庁意匠課公知資料番号第RH02003209号)(以下「引用意匠」という。)である(別紙第2参照)。

第2 当審の判断

1 本願意匠と引用意匠の対比
(1)意匠に係る物品の対比
本願意匠の意匠に係る物品は,「フットポンプ」であり,引用意匠の意匠に係る物品は,「ペダルエアーポンプ」であって,その記載は一致しないものであるが,いずれもタイヤやボール等に,空気を注入するために使用される足踏式のポンプであるから,本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は,その用途及び機能が一致するものである。

(2)形状等の対比
両意匠の形状等を対比する(以下,対比のため,引用意匠も本願意匠の図面の向きに合わせることとする。)と,その形状等には,主として以下の共通点及び相違点が認められる。

ア 形状等の共通点
(共通点1)両意匠は,全体を,フットポンプの土台となる略枠状のフレーム(以下「基台フレーム」という。)の背面側端部内側部分に,正面側端部に足踏みペダルを配した略枠状のフレーム(以下「ペダルフレーム」という。)を,回動可能に軸着し,基台フレームとペダルフレームの間にシリンダーを配した構成としたものであって,足踏みペダルを踏み込むことでシリンダーのピストンが圧縮され,ホースの先端から空気を放出することができるフットポンプの形状等とした点が共通する。
(共通点2)両意匠は,基台フレームの形状を,側面視が扁平な略倒C字状の左右板状体(以下「基台側面板」という。)の,正面側端部の略中央付近及び背面側端部の正面寄りの下端部分に,略円柱形状の連結部材(以下「連結材」という。)を横設して左右の基台側面板を連結し,基台フレーム全体を略枠状に構成したものであって,左右基台側面板の四隅にある接地部分には,カバー材を嵌着し,基台フレームの正面側連結材の前方部分には,ペダルフレームを固定するための線材を横設して,これと連動して可動するロックレバーを右基台側面板の外側面部分に配設し,正面側連結材の中央部分には,シリンダーチューブ下端部に設けられた略円筒状のシリンダー固定部を挿着している点が共通する。
(共通点3)両意匠は,ペダルフレームの形状を,側面視が基台フレームより扁平な略倒C字状の左右板状体(以下「ペダル側面板」という。)の正面側上面部分に,ペダルフレームの形状に沿って湾曲した略矩形板状体を配し,この略矩形板状体の上面部分に,表面に斜め格子状の細溝を複数列形成したラバー材を載設して足踏みペダルを構成し,この足踏みペダルと,左右ペダル側面板背面側先端部分に横設した連結材で左右ペダル側面板を連結し,ペダルフレーム全体を略枠状に構成したものであって,背面側先端部分の連結材にはバネ部材を巻着して,ペダルフレームが上方に跳ね上がるようにし,左右ペダル側面板の中央やや背面寄りの下端部分にも,連結材を横設して,これにシリンダーのピストンロッド先端部分と連結するピストンロッド固定部材(以下「ロッド固定部」という。)を挿着している点が共通する。
(共通点4)両意匠は,基台フレームの背面側連結材に,ホース保持部を2箇所形成したホース固定ホルダーを嵌着している点で共通する。
(共通点5)両意匠は,ピストンロッド固定部の背面側に,先端部分にホースを連結した略円筒形状の突出部を形成し,この突出部の上面部分に平面視円形状で側面視略擂り鉢状の圧力ゲージを配設している点が共通する。
(共通点6)両意匠は,ホースの先端部分に平面視を略長方形状とし,左側面視を略長円形状とし,右側面部にレバーを配した形状のバルブ取付部を設けている点で共通する。

イ 形状等の相違点
(相違点1)本願意匠のシリンダーの数及び配置態様が,フットポンプ内部の中央部分に一つ配設しているのに対し,引用意匠のシリンダーの数及び配置態様は,フットポンプ内部の中央部分に僅かに間隔をあけて2つ並設している点で,両意匠は相違する。
(相違点2)本願意匠の足踏みペダルの形状等が,平面視において略縦長長方形状のやや細幅の板状体の上面部分に,ほぼ同じ大きさのラバー材を載設しているのに対し,引用意匠の足踏みペダルの形状等は,斜視図から見てその平面視が略正方形状と認められる板状体の上面部分に,その周囲に余地を残してラバー材を載設している点で,両意匠は相違する。
(相違点3)本願意匠のロッド固定部の形状が,正面視を略U字状とし,その背面側右寄りの部分から背面側に向かって,先端部分にキャップを冠着した略円筒形状の突出部を立設しているのに対し,引用意匠のロッド固定部の形状等は,正面視において中央部分が略U字状に下方に大きく突出し,その左右部分が略円弧状に下方に突出した形状とし,その正面側略U字状突出部分から正面側に向かって,先端部分にキャップを冠着した略円筒形状の突出部を立設している点で,両意匠は相違する。
(相違点4)本願意匠のバルブ取付部の根元付近には,各種バルブに対応する3種類のノズルアダプターが取り付けられた三つ叉連結部材を取り付けているのに対し,引用意匠にはそのようなものを取り付けていない点で,両意匠は相違する。

2 両意匠の類否判断
(1)意匠に係る物品の判断
両意匠の意匠に係る物品は,その用途及び機能が一致するものであるから同一であるといえる。

(2)形状等の類否判断
本願意匠の意匠に係る物品である「フットポンプ」は,タイヤ等に空気を注入するために足踏みペダルを踏み込んで使用するものであるから,この物品の購入者である需要者は,使用時において重要な部位である足踏みペダルの形状等が注意を惹く部分であるといえる。
よって,この種物品の類否判断に際しては,使用時において需要者の注意を惹く部分である足踏みペダルの具体的な形状等について強い関心を持って観察するとの前提に基づいて,両意匠の共通点及び相違点が類否判断に及ぼす影響について評価することとする。

ア 共通点の評価
(共通点1)は全体の形状等に係るものであるが,両意匠の形状等を概括的に捉えた場合の共通点にすぎないものであるから,この(共通点1)が意匠全体の美感に与える影響は小さい。
(共通点2)の基台フレームの形状,(共通点3)のペダルフレームの形状,及び(共通点4)のホース固定ホルダーの形状については,そのフレームの構成態様については,この種物品分野において既に見られるものにすぎず,両意匠のみに認められる格別の特徴とはいえないものではあるが,基台側面板及びペダル側面板の形状や,細部の形状にすぎないもののホース固定ホルダーの形状に一定の特徴があると認められるから,これらの(共通点2)ないし(共通点4)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度ある。
(共通点5)及び(共通点6)の各部の形状等については,この種物品分野において既に見られるものにすぎず,両意匠のみに認められる格別の特徴であるとはいえないから,この(共通点5)及び(共通点6)が意匠全体の美感に与える影響は小さい。

イ 相違点の評価
(相違点1)のシリンダーの数及び配置態様の相違については,本願意匠は,シリンダーが1つしかなく空気を注入する際,作業時間のかかるものであるとの印象を与えるのに対し,引用意匠は,2つのシリンダーを有しており,勢いよく短時間に空気を注入できるものであるとの印象を与えるものであって,特に車両のタイヤに空気を入れるために強力なフットポンプを求めているような需要者にとってみれば,これらの相違は別異の印象を強く与えるものであるから,この(相違点1)が意匠全体の美感に与える影響は大きい。
(相違点2)の足踏みペダルの形状等の相違については,使用時において重要な部位である足踏みペダルの形状等に係るものであって,特に圧力の高い車両用タイヤに空気を入れる際には,本願意匠が,横幅が小さくて踏み込みにくいペダルであるとの印象を与えるのに対し,引用意匠は,横幅が大きくて踏み込みやすいペダルであるとの印象を与えるから,この(相違点2)が意匠全体の美感に与える影響は大きい。
(相違点3)のロッド固定部の形状の相違については,特に目に付く部位ではないものの,その形状は大きく異なるものであるから,この形状は全体の形状等の共通性に完全に埋没するものとはいえず,この(相違点3)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度ある。
(相違点4)のノズルアダプターを配した三つ叉連結部材の有無の相違については,当該ノズルアダプター及び三つ叉連結部材は,この種物品分野において既に見られるものであって,格別の特徴をもつものとはいえないから,この(相違点4)が意匠全体の美感に与える影響は小さい。

ウ 形状等の類否判断
両意匠の形状等における各共通点及び相違点についての個別評価に基づき,意匠全体として全ての共通点及び相違点を総合的に観察した場合,両意匠は,需要者が強い関心を持って観察する足踏みペダルの形状等,及びシリンダーの数及び配置態様の相違が意匠全体の美感に与える影響が大きく,ロッド固定部の形状の相違も両意匠の類否判断に一定程度の影響を及ぼすものであるから,両意匠の基台フレーム,ペダルフレーム,及びホース固定ホルダーの形状の共通性が両意匠の類否判断に一定程度の影響を与えることを考慮しても,意匠全体として観察した際に両意匠は異なる美感を起こさせるものであるといえるから,両意匠の形状等は類似しないものである。

(3)小括
以上のとおり,両意匠は,意匠に係る物品が同一であるが,その形状等において類似しないから,本願意匠と引用意匠が類似するということはできない。

第3 むすび

上記のとおりであって,本願意匠は,引用意匠に類似せず,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないものである。したがって,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。

また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。

別掲




審決日 2021-11-24 
出願番号 2020012900 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (K8)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 上島 靖範
特許庁審判官 渡邉 久美
江塚 尚弘
登録日 2021-12-15 
登録番号 1703666 
代理人 中谷 武嗣 

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