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審決分類 審判    B5
審判    B5
審判    B5
管理番号 1381683 
総通号数
発行国 JP 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2022-02-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2020-05-19 
確定日 2022-01-11 
意匠に係る物品 短靴 
事件の表示 上記当事者間の意匠登録第1596866号「短靴」の意匠登録無効審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 意匠登録第1596866号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 手続の経緯
本件登録意匠、すなわち、意匠登録第1596866号の意匠(別紙第1参照)は、平成29年(2017年)5月26日に意匠登録出願(意願2017−11248)されたものであって、審査を経て平成30年(2018年)1月12日に意匠権の設定の登録がなされ、同年2月5日に意匠公報が発行され、その後、当審において、概要以下の手続を経たものである。
・審判請求書提出 令和2年 5月20日
・審尋 令和2年 6月30日付け
・回答書提出 令和2年 7月21日
・審判事件答弁書提出 令和2年 9月29日
・審判事件弁駁書提出 令和2年12月18日
・審理事項通知 令和3年 2月 9日付け
・口頭審理陳述要領書(被請求人)提出 令和3年 3月 3日
・口頭審理陳述要領書(請求人)提出 令和3年 3月11日
・口頭審理陳述要領書(2)(被請求人)提出 令和3年 3月22日
・口頭審理 令和3年 3月22日
・上申書(被請求人)提出 令和3年 4月 7日
・上申書(請求人)提出 令和3年 4月20日
・無効理由通知(被請求人に対して) 令和3年 8月 2日付け
・職権審理結果通知(請求人に対して) 令和3年 8月 2日付け

第2 請求人の申し立て及び理由の要点
請求人は、請求の趣旨を
「登録第1596866号意匠の登録を無効とする。
審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」と申し立て、その理由を、おおむね、以下のとおり主張した(「回答書」、「審判事件弁駁書」、「口頭審理陳述要領書」及び「上申書」の内容を含む。)。
1 「審判請求書」における主張
(1)請求の理由
ア 本件意匠登録(審判請求書における別紙(以下「請求書別紙」という)1、甲1)
登録番号 第1596866号
意匠に係る物品 短靴
意匠の内容 請求書別紙1意匠公報に記載のとおり
創作者 ▲高▼田 正宇
意匠権者 ▲高▼田 正宇
イ 手続の経緯
出願 平成29年5月26日
登録 平成30年1月12日
公報発行日 平成30年2月5日

ウ 無効理由の要点
(ア)無効理由1
本件登録意匠は、出願日前に公開された先行意匠(甲4)と同一とするものであるため、意匠法第3条第1項第2号に反して登録されたものである。
(イ)無効理由2
本件登録意匠は、出願日前に公開された先行意匠(甲4)と類似するものであるため、意匠法第3条第1項第3号に反して登録されたものである。
(ウ)無効理由3
本件登録意匠は、出願日前に公開された先行意匠(甲4)に甲5意匠を組み合わせると容易に創作可能であるため、本件登録意匠は意匠法第3条第2項に反して登録されたものである。
(エ)無効理由4
本件登録意匠は、出願日前に公開された先行意匠(甲5)と同一とするものであるため、本件登録意匠は意匠法第3条第1項第1号に反して登録されたものである。
(オ)無効理由5
本件登録意匠は、出願日前に公開された先行意匠(甲5)と類似するものであるため、本件登録意匠は意匠法第3条第1項第3号に反して登録されたものである。
(カ)無効理由6
本件登録意匠は、出願日前に公開された先行意匠(甲5)に先行周辺意匠(甲2、3の1乃至3)及び甲4意匠を組み合わせると容易に創作可能であるため、本件登録意匠は意匠法第3条第2項に反して登録されたものである。
(キ)無効理由7
本件登録意匠は、共同出願違反(意匠法第15条で準用する特許法第38条違反)として、無効理由を有する。
エ 本件意匠登録を無効にすべき理由(無効理由1 意匠法第3条第1項第2号違反、無効理由2 同第3号違反、無効理由3 同条第2項違反)
(i)本件登録意匠の要旨(請求書別紙2 本件登録意匠の要旨説明図 参照)
A 総論
本件登録意匠は、請求書別紙2に記載のとおり、靴底となる「ソール部」と、足の甲・側方・後方を包む「アッパー部」とからなる。
「ソール部」とは、いわゆる靴底であり、本件登録意匠公報において、黒系色からなる樹脂製部分を指しており、「アッパー部」とは、足の甲・側方・後方を包み込む周壁部と、該周壁部の上端縁に足を挿入する開口部を有する部位を有するものである(形態a)。また、開口部前方にリボン形状のリボン部が配置され(形態b)、開口部周縁に形成された縁取り部が形成されている(形態c)。
これらの「アッパー部」は、意匠公報に記載の公知資料である甲2の1・先行周辺意匠1「ア」、同「イ」、同「ウ」、甲2の2・先行周辺意匠2、甲3の1・先行周辺意匠3、甲3の2・先行周辺意匠4、及び、甲3の3・先行周辺意匠5に開示されるように、一般的なバレエシューズ形態であって、本件意匠登録の要部となり得ない(請求書別紙5参照)。
すなわち、甲2の1・先行周辺意匠1「ア」、同「イ」、同「ウ」、甲2の2・先行周辺意匠2、甲3の1・先行周辺意匠3、甲3の2・先行周辺意匠4、及び、甲3の3・先行周辺意匠5は、靴底から立ち上がる周壁部を有し、足を挿入する開口部があるばかりか(形態a)、開口部前方にリボン部が配置され(形態b)、開口部周縁に形成された縁取り部が形成されている点(形態c)まで一致している。よって、「アッパー部」は公知意匠に示すものと相違点はなく、「アッパー部」自体の創作性は極めて乏しいものである。
そこで、本件登録意匠の要部は、専ら「ソール部」の具体的形態である。
B 本件登録意匠の要旨(「ソール部」の具体的形態)
「ソール部」は、本件意匠公報に係る正面図、背面図及び底面図に記載のとおり、複数の切り込み溝が形成されている。
底面図に記載のとおり、「ソール部」は、長手方向にかけて、先端からつま先部分、足裏部分、中央部分、かかと部分、後端部分の5つに区分けされている(特徴A)。
足裏部分は、足の左右方向(底面図では上下方向)にかけて4つの切り込み溝が形成され、足の前後方向(底面図では左右方向)にかけて6つの切り込み溝が各々湾曲して形成され、「ソール部」の外縁と切り込み溝により25個に区分けされている(特徴B)。
区分けされた足の左側(底面図では上側)から足の右側(底面図では下側)にかけて、第1列、第3列、第5列の区分け部位に、円形状の凹所が形成される(特徴C)。
また、底面図に記載のとおり、かかと部分は、足の左右方向(底面図では上下方向)にかけて2つの切り込み溝が形成され、足の前後方向(底面図では左右方向)にかけて3つの切り込み溝が各々湾曲して形成され、「ソール部」の外縁と切り込み溝により6個に区分けされている(特徴D)。
区分け部位の全てに、円形状の凹所が形成される(特徴E)。
なお、つま先部分と後端部分には微細な三角形状の突起が円形状に配置され、中央部分は、3つに区分けされて足の左右部分(底面図では上下部分)には網掛状の突起が形成される。
正面図及び背面図から見た場合、「ソール部」の足裏部分とかかと部分において、底面から上方に向けて形成された切り込み溝が形成される。
足裏部分は、「ソール部」の厚み(上下方向幅)の約2分の1に至る程度に深く切り込まれた切り込み溝が6つ形成される。かかと部分は中央部分の凹み幅(上下方向幅)の約2分の1に至る程度に深く切り込まれた切り込み溝が3つ形成される(特徴F)。
つまり、「ソール部」は、前記特徴A〜Fに記載のとおり、足裏部分とかかと部分に切り込み溝が形成され、底面視で切り込み溝により区画された部分に円形状の凹所が適宜配置され、正面視に足裏部分の切り込み高さが「ソール部」の足裏部分の厚み長さの約2分の1に、かかと部分の切り込み高さが「ソール部分」の中央部分の凹み幅の約2分の1に至ることが本件意匠の要部である。
(ii)先行意匠が存在する事実及び証拠の説明(請求書別紙3 甲4要旨説明図参照)
先行意匠は、「ラックラックパンプス」を商品名とするパンプスが表示されているアマゾンジャパン合同会社によるインターネットの掲載ページである(甲4)。同ページによると、当該商品は、平成29年(2017年)5月1日に取扱いが開始されており、本件意匠出願日(2017.5.26)の日前である。
なお、同ページには被請求人の記載が見たらないが、被請求人の業態が短靴の販売者に対して製造した短靴を卸す形態であるため、実際の製造元は被請求人である。

文書タイトル:ラックラックパンプス GS−001 (24、 シャンパンゴールド)
製品掲載ページの会社名:アマゾンジャパン合同会社
製品掲載ページのURL:https://www.amazon.co.jp/ケイウィーブ−ラックラックパンプス−GS−001−24−シャンパンゴールド/dp/B071J4MJXV/ref=pd_aw_sbs_121_1/355−3445210−5364929?_encoding=UTF8&pd_rd_i=B071J4MJXV&pd_rd_r=b0e8f6e0−4677−4e1e−83e6−ca778b95cd9c&pd_rd_w=G5cPG&pd_rd_wg=4qHSA&pf_rd_p=bff3a3a6−0f6e−4187−bd60−25e75d4c1c8f&pf_rd_r=KV9ZK9R8GSS7T7MMN2PK&psc=1&refRID=KV9ZK9R8GSS7T7MMN2PK
インターネットからの抽出日:令和2年4月30日
公知となった日:2017年(平成29年)5月1日

同ページに記載の意匠は、靴底から立ち上がる周壁部を有し、足を挿入する開口部があり、開口部前方にリボン部が配置され、開口部周縁に縁取り部が形成されている「アッパー部」を有する(形態a〜c)。
また、「ソール部」は、長手方向にかけて、先端からつま先部分、足裏部分、中央部分、かかと部分、後端部分の5つに区分けされている(特徴A)。
さらに足裏部分に足の左右方向にかけて4つの切り込み溝が形成され、足の前後方向にかけて6つの切り込み溝が各々湾曲して形成され、「ソール部」の外縁と切り込み溝により25個に区分けされている(特徴B)。
区分けされた足の左側から足の右側にかけて、第1列、第3列、第5列の区分け部位に、円形状の凹所が形成される(特徴C)。
また、かかと部分に、足の左右方向にかけて2つの切り込み溝が形成され、足の前後方向にかけて3つの切り込み溝が各々湾曲して形成され、「ソール部」の外縁と切り込み溝により6個に区分けされている(特徴D)。
区分け部位の全てに、円形状の凹所が形成される(特徴E)。
(iii)先行周辺意匠の適示(請求書別紙5 本件登録意匠と先行周辺意匠(及び甲5図面)との対比表 参照)
A 意匠公報記載の先行周辺意匠(甲2の1、甲2の2)
本件意匠公報記載の公知資料1(甲2の1 公知資料番号:HJ2401203200)は、株式会社ディノスによるインターネット上の掲載ページであり、平成24年(2012年)6月18日に公知になったものである。甲2の1第1枚目左上、甲第2枚目(※当審注:第2枚目の誤記と認められる。)に表れる「ア」、「イ」、「ウ」で特定される意匠を、それぞれ「先行周辺意匠1ア」、「先行主変(※当審注:周辺の誤記と認められる。)意匠1イ」、「先行周辺意匠1ウ」とする。
本件意匠公報記載の公知資料2(甲2の2 公知資料番号:HJ2501398900)は、株式会社リクルートホールディングスによるインターネット上の掲載ページであり、平成25年(2013年)5月20日に公知になったものである(先行周辺意匠2)。 前記先行周辺意匠1は、靴底から立ち上がる周壁部を有し、足を挿入する開口部があるばかりか、開口部前方に板状体が配置されている(形態a〜b)。
よって、本件意匠の「アッパー部」に関する意匠が開示されている。
B その他の先行周辺意匠
公知資料1、2に係る先行周辺意匠1ア、同イ、同ウ及び2(甲2の1、2の2)以外にも、甲3の1乃至3に表示される先行周辺意匠3乃至5が存在する。
先行周辺意匠3は、2015年(平成27年)5月10日に株式会社宝島社が発行する「おしゃれな足もと」に、掲載されたものであって、甲3の1に係る第13書籍頁において黄色マーカー部分で特定される意匠である。
先行周辺意匠4は、2011年(平成23年)3月25日に株式会社アース・スター エンターテイメントが発行する「一生モノの靴メンテナンスブック」に掲載されたものであって、甲3の2に係る第43書籍頁において、黄色マーカー部分で特定される意匠のうち下段の意匠である。
先行周辺意匠5は、2013年(平成25年)12月8日に株式会社宝島社が発行する「おしゃれな足もと」に掲載されたものであって、甲3の3に係る第69書籍頁において、黄色マーカー部分で特定される意匠である。
上記先行周辺意匠3乃至5は、靴底から立ち上がる周壁部を有し、足を挿入する開口部があるばかりか、開口部前方にリボン部が配置され、開口部周縁に形成された縁取り部が形成されている(形態a〜c)。
なお、縁取り部は先行周辺意匠3、4では判別し難いが、先行周辺意匠5には別色となり、縁取り部が判別し易い。
よって、本件意匠の「アッパー部」に関する意匠が開示されているだけでなく、本件意匠の「アッパー部」は極めて一般的な短靴の形態(バレエシューズ型)であり、意匠としての創作性は低いことがわかる。
C 甲5図面
前記に加え、先行周辺意匠として甲5図面が存在する。甲5図面の詳細は、後述するエ(※当審注:オの誤記と認められる)(ii)に記載のとおりである。
(iv)本件意匠と先行意匠との対比(請求書別紙4 本件登録意匠と甲4意匠との対比表 参照)
A 一致点
本件意匠と先行意匠とは、「アッパー部」の形態a乃至形態cが一致する。また、本件意匠の要部である「ソール部」の特徴A乃至特徴Eが一致する。
B 相違点
本件意匠は、足裏部分に「ソール部」の厚み(上下方向幅)の約2分の1に至る程度に深く切り込まれた切り込み溝が6つ形成される。かかと部分は中央部分の凹み幅(上下方向幅)の約2分の1に至る程度に深く切り込まれた切り込み溝が3つ形成される(特徴F)。
先行意匠(甲4)は、底面図より足裏部分に切り込み溝が6つ形成されるが、「ソール部」の厚み(上下方向幅)の約2分の1に至る程度に深く切り込まれたか判別し難い。また、かかと部分に切り込み溝が3つ形成されるが、中央部分の凹み溝(上下方向幅)の約2分の1に至る程度に深く切り込まれたか判別し難い。
(v)本件登録意匠と先行意匠との類否
本件登録意匠と先行意匠とは、「アッパー部」の形態a乃至形態cが一致し、本件意匠の要部である「ソール部」の特徴A乃至特徴Fのうち、特徴A乃至特徴Eが一致する。特徴Fが切り込み溝の本数は一致するものの、切り込み溝の深さが判別し難い点で相違する。切り込み溝の切り込み深さ以外では一致しており、需要者に与える印象は小さく、美観を共通するものである。そのため、本件登録意匠と先行意匠とは同一、若しくは、少なくとも類似するものである。
(vi)先行意匠と先行周辺意匠により本件登録意匠が容易に創作することができること
仮に、切り込み溝の深さが需要者に与える印象が相当程度ある場合であっても、後述する甲5図面の「ソール部」を請求人が代表を務めるヒカリ技研工業株式会社(甲6 以下、「ヒカリ技研」という)が本件登録意匠出願日前に第三者に販売して公知となったものであり(甲8、9)、甲4及び甲5を組み合わせると容易に本件登録意匠を被請求人が創作できるものであるため、意匠法第3条第2項に違反して登録されたものである。
(vii)むすび
前記により、本件意匠登録は、意匠法第3条第1項第2、3号若しくは同第2項に違反して登録されたものであり、同法第48条第1項第1号の無効理由に該当する。
オ 本件意匠登録を無効にすべき理由(無効理由4 意匠法第3条第1項第1号違反、無効理由5 同第3号違反、無効理由6 同条第2項違反)
(i)本件登録意匠の要旨
前記エ(i)と同じである。
(ii)先行意匠が存在する事実及び証拠の説明(請求書別紙6 甲5要旨説明図参照)
A 請求人の「ソール部」の製造、販売による公知(甲5、8、9)
本件登録意匠に係る「ソール部」は、請求人吉田勇夫が平成22年(2010年)10月6日に創作した(甲5)。甲5図面は、請求人が代表取締役を務めるヒカリ技研(甲6)における本件登録意匠の要部である「ソール部」(ヒカリ技研における商品名「HE−23」)の製造図面である。
ヒカリ技研は、本件意匠出願日前の平成25年5月8日に被請求人に販売した(甲7)。ヒカリ技研は、被請求人だけでなく、本件意匠に係る「ソール部(商品名「HE−23」)」を、本件意匠出願日前の平成25年5月13日にキャッスルシューズ社に(甲8)、平成26年9月16日に株式会社I.コーポレーションに販売したことにより(甲9)、公知となった。
甲5・図面による意匠は、底面に長手方向にかけて、先端からつま先部分、足裏部分、中央部分、かかと部分、後端部分の5つ区分けされている(特徴A)。
足裏部分は、足の左右方向にかけて4つの切り込み溝が形成され、足の前後方向にかけて6つの切り込み溝が各々湾曲して形成され、外縁と切り込み溝により25個に区分けされている(特徴B)。
区分けされた足の左側から足の右側にかけて、第1列、第3列、第5列の区分け部位に、円形状の凹所が形成される(特徴C)。
また、かかと部分は、足の左右方向にかけて2つの切り込み溝が形成され、足の前後方向にかけて3つの切り込み溝が各々湾曲して形成され、外縁と切り込み溝により6個に区分けされている(特徴D)。
区分け部位の全てに、円形状の凹所が形成される(特徴E)。
なお、つま先部分と後端部分には微細な三角形状の突起が円形状に配置され、中央部分は、3つに区分けされて足の左右部分(底面図では上下部分)には網掛状の突起が形成される。
側面視では、足裏部分とかかと部分において、底面から上方に向けて形成された切り込み溝が形成される。
足裏部分は、全体の厚み(上下方向幅)の約2分の1に至る程度に深く切り込まれた切り込み溝が6つ形成される。かかと部分は中央部分の凹み幅(上下方向幅)の約2分の1に至る程度に深く切り込まれた切り込み溝が3つ形成される(特徴F)。
つまり、甲5・図面に表れる公知意匠は、足裏部分とかかと部分に切り込み溝が形成され、底面視で切り込み溝により区画された部分に円形状の凹所が適宜配置され、正面視に足裏部分の切り込み高さが全体の厚み長さの約2分の1に、かかと部分の切り込み高さが中央部分の凹み幅の約2分の1に至る。
B ヒカリ技研製造の「ソール部」についての補足
請求人が創作し、請求人が代表を務めるヒカリ技研が被請求人に販売した「ソール部」は、ヒカリ技研が販売している「エバロンソール」シリーズの一態様である。「エバロンソール」は、ヒカリ技研が、独自配合した天然ゴム、TPU、安定剤、架橋剤など16種類をブレンドした混合ポリマーを原料とし、優れたクッション性と耐摩耗性、耐薬品性をもつソールであり、開発当初は画期的な商品として業界紙である「ゴム化學新聞」に掲載された(甲10)。
ヒカリ技研は、「エバロンソール」を本社所在地である大阪府東大阪市の「東大阪ブランド製品認定評議会」に申請し、審査の結果、平成25年8月30日に「東大阪ブランド製品」に認定されている(甲11)。同認定における認定証には、種々存在するソール形態の一つとして本件意匠登録に係る「ソール部」の一部が表示されている。
エバロンソールを製造する射出発泡製造機器は、日本国内にはヒカリ技研にしかなく(甲18)、同社は優れたクッション性や耐摩耗性だけでなく、全て同社製造の日本国内で製造する安全性を謳って、業界で周知されていた(甲10、11)。
(iii)先行周辺意匠の適示(請求書別紙5 参照)
前記エ(iii)と同じである。
これに加え、甲4に表示される意匠も先行意匠として適示する。甲4の適示内容は前記エ(ii)と同じである。
(iv)本件登録意匠と先行意匠との対比(請求書別紙7 本件登録意匠と甲5図面との対比表 参照)
A 一致点
本件登録意匠の要部である「ソール部」の特徴A乃至特徴Fの全てが一致する。
B 相違点
本件登録意匠は「アッパー部」が存在しているが、先行意匠は「アッパー部」が存在していない。そのため、「アッパー部」に関する形態a乃至形態cないことが相違点となる。
(v)本件登録意匠と先行意匠との類否
本件登録意匠は、前記エ(i)に記載のとおり、「ソール部」の具体的な形態が要部であり、「アッパー部」は先行周辺意匠1ア、同イ、同ウ、及び、同2乃至5(甲2、3)に記載のとおり一般的なバレエシューズ形態に他ならない。本件登録意匠に接した需要者は、一般的な「アッパー部」には然したる美観を抱かず、「ソール部」に強い美観を抱くものとなるため、「ソール部」の具体的形態が一致する甲5と美観を共通するものであるから、両者は類似するものと主張する。
なお、「アッパー部」と「ソール部」とを備えた短靴全体と「ソール部」(靴底)との物品の違いによる反論も予想されるが、短靴の製造ルートは、製造者が必要な「アッパー部」、「ソール部」をそれぞれの業者から購入したり、自ら製造したりして、短靴全体を製造する。そのため、流通経路・販売経路・取扱事業者が一致するものであり、両物品は類似する。
(vi)先行意匠と先行周辺意匠により本件登録意匠が容易に創作することができること
先行意匠(甲5)に示された「ソール部」は本件登録意匠の「ソール部」と具体的形態が一致するものである。「アッパー部」については、先行周辺意匠1ア、同イ、同ウ、及び、同2乃至5(甲2、3)には形態a乃至形態cを共通する一般的なバレエシューズ形態が表示されている。これに加え、甲4には「アッパー部」に加えて「ソール部」の特徴A乃至Eが表示されている。
上記に示す甲5に、先行周辺意匠1ア、同イ、同ウ、及び、同2乃至5(甲2、3)と甲4を組み合わせると、容易に被相続人は本件登録意匠を創作することが可能である。
(vii)むすび
前記により、本件意匠登録は、意匠法第3条第1項第2、3号若しくは同第2項に違反して登録されたものであり、同法第48条第1項第1号の無効理由に該当する。
カ 本件意匠登録を無効にすべき理由(無効理由7 共同出願違反 意匠法第15条で準用する特許法第38条違反)
(i)はじめに
本件登録意匠は、エ(i)に記載のとおり、被請求人が選定した「アッパー部」は一般的なバレエシューズ形態であって創作性は無く、請求人が創作した「ソール部」を要部とするものである。
よって、被請求人は意匠登録を受ける権利を有するものではなく、本件意匠登録は所謂冒認出願として無効である(意匠法第48条第1項第3号)。
ただ、本件登録意匠は、一般的なバレエシューズ形態ながらも「アッパー部」を加えた状態で出願され、登録されたものである。しかし、請求人は、本件意匠の全体的形成にも尽力しており、被請求人も後述のとおり認めているとおり、少なくとも本件登録意匠は、共同創作に係るものである。
そこで、エ及びオに係る無効理由に加え、共同出願違反に係る無効理由を主張するものであるが、冒認出願としての無効理由も内在するものである。
(ii)本件登録意匠の要旨
前記エ(i)に記載の通りである。
(iii)請求人吉田勇夫が共同創作者であること
A 「ソール部」を請求人が本件意匠登録出願日前に創作したこと
前記オ(ii)に記載の通りである(甲5、8乃至11)。
B 請求人の「ソール部」の創作を被請求人が認めていること
本審判に至る前段階における通知文書によると、下表に示す通り、被請求人は請求人による「ソール部」の創作を認めている。
すなわち、令和2年1月6日、請求人が代表を務めるヒカリ技研より、被請求人に対し、被請求人が単独で意匠登録をしたことを指摘したところ(甲12)、被請求人より同年2月6日付通知書にて「同アウトソール(ソール部)の意匠の帰属を▲高▼田産業株式会社(以下「高田産業」)とすることについては双方とも了解済み」との回答がなされた(甲13)。
この内容を再度確認するため、同年3月2日付通知書(2)において、「貴社は、本件意匠に係るアウトソールをヒカリ技研工業代表者が創作したが、アウトソールの意匠権の帰属を高田産業と合意したと述べておられます。しかし、当該意匠の帰属を高田産業と合意した事実はありません。」と申し向けた(甲14)。なお、ヒカリ技研の「代表者」とは請求人である(甲6)。
これに対し、被請求人は同月19日付通知書において、「意匠権帰属の合意ですが…(省略)…作成時の口頭による合意に基づくものです。」と回答している(甲15)。
「前記登録意匠は、当社の前記靴底を要部とするものであり、当社に断りなく、貴社単独で出願し、登録されたものです。」
(甲12 請求人 令和2年(2020年)1月6日付通知書)
「同アウトソールの意匠の帰属を高田産業とすることについては、双方とも了解済みの事項となります。」
(甲13 被請求人 2020年2月6日付通知書)
「貴社は、本件意匠に係るアウトソールをヒカリ技研工業代表者が創作したが、アウトソールの意匠権の帰属を高田産業と合意したと述べておられます。
しかし、当該意匠の帰属を高田産業と合意した事実はありません。当該合意を示す客観的根拠をお示し下さい(照会事項1)。」
(甲14 請求人 令和2年(2020年)3月2日付通知書)
「まず、意匠権帰属の合意についてですが、少なくとも書面について合意したことはありません。作成時の口頭による合意に基づくものです。」
(甲15 被請求人2020年3月19日付通知書)
被請求人通知書の内容は、意匠登録を受ける権利の帰属に関すること、すなわち、意匠登録を受ける権利の譲渡を口頭で受けたと回答している(甲13、15)。意匠権の帰属を合意すること(意匠登録を受ける権利の譲渡を受けること)は、請求人が創作者であること、本件登録意匠が共同創作であること、が前提であって、請求人が共同創作者でなければ合意する必要性がない事柄である。
したがって、被請求人は、前記通知書(甲12乃至15)の内容から、被請求人は請求人が「ソール部」の創作者であること、本件登録意匠が共同創作に係るものであること、を認めていることが明らかである。
C 本件登録意匠の共同創作(「ソール部」の被請求人への販売状況)
本件「ソール部」は、被請求人が従事していた個人営業である高田産業(当時の代表者は高田義秀)に本件意匠登録出願日前に販売した。被請求人は、ヒカリ技研から販売を受けた「ソール部」をもとに「アッパー部」を創作し、本件意匠登録に係る意匠を完成させた。なお、「アッパー部」に創作性が乏しいのは前記エ(i)に記載の通りである。
すなわち、請求人が代表を務めるヒカリ技研と被請求人が従事する高田産業とは、平成22年11月より取引が開始された。本件「ソール部」である「商品名」を「HE−23」とする商品が2足、ヒカリ技研から高田産業に販売されている(甲7第2頁)。その後、12月18日には22足(同第3頁)販売され、平成26年3月24日に計744足、同31日に625足販売され(同第4頁)、平成28年8月まで順次販売されていた(甲7第1、5頁)。
D 本件登録意匠の共同創作(請求人の意匠の全体的形成への関与)
被請求人は、ヒカリ技研から購入した「ソール部」に、一般的なローファー形態の「アッパー部」を選定した(甲2、甲3)。しかし、本件登録意匠は、単に「ソール部」を請求人が創作し、「アッパー部」を被請求人が選定したものではなく、請求人と被請求人とが協力して創作されたものである。
すなわち、請求人は本件意匠登録に係る「ソール部」と「アッパー部」との接合に際し、被請求人に数々の技術指導を行い、本件登録意匠の全体的な形成に寄与している。
当初、被請求人が選定した「アッパー部」を、請求人が創作した「ソール部」に接合しようとしたところ、接合できなかった。被請求人は、それまで単なるゴム靴等の製造実績はあったが、「アッパー部」と「ソール部」とを接着させる短靴の製造実績はなく、接合技術をもっていなかった。とりわけヒカリ技研工業代表者である請求人が開発した混合ポリマーによる「ソール部」を接合させるためには、一般的な接合技術や接着剤では接合が完全ではないため、当初に意図した短靴を完成することができなかった。
そこで、請求人が甲16・エバロンソール接着工程を示し、接合のための前処理工程、プライマー工程、接着工程を手取り足取り説明して、接合に尽力した(甲16)。甲16・エバロンソール接着工程は、請求人(ヒカリ技研代表者)が「エバロンソール(HE−23)」の購入先への一般的説明事項であるが、実際には接着面を一部削っての均一性を保つなどのノウハウを提供することにより、「アッパー部」と「ソール部」とを接合させ、本件登録意匠の全体的形成に寄与している。
よって、本件登録意匠が請求人と被請求人による共同創作であって、本件意匠登録に係る意匠登録を受ける権利は、請求人と被請求人との共有によるものである。
(iv)意匠登録を受ける権利を被請求人が承継していないこと
A 総論
請求人は、被請求人に意匠登録を受ける権利を譲渡していない。請求人は被請求人が意匠登録出願を行ったことすら知らなかった(甲12)。
なお、被請求人は、甲12 通知書において、本件「ソール部」の商品名「HE−23」は、高田産業の「T‐23」に合わせたもので、いわゆる「止め型」(一方当事者のためだけに製造販売する金型)であると主張しているが、完全に事実に反している。ヒカリ技研は、高田産業の「止め型」にした製品についてはタカダの各文字の頭文字をとり「TKD」の商品名をつけている(甲7第3頁 なお「HE−23」の「H」はヒカリ技研、「E」はエバロンの略)。「止め型」にした場合、金型代金を請求しなければならないが、その様な事実もない。
しかも、本件登録意匠の実施品を数点購入したところ、甲17(3)写真に示すように、高田産業の品名は「T−030」と記載されていることが判明し、被請求人からの回答は虚偽であることが明らかとなった。
B 意匠登録を受ける権利を被請求人が承継していないこと(立証責任)
請求人は被請求人に意匠登録を受ける権利を譲渡していない。被請求人は作成時の口頭による合意を主張しているが(甲15)、そのような事実はない。
立証責任の観点からも、請求人が共同創作者であることを立証した場合、「共同創作者から意匠登録を受ける権利を承継したこと」は意匠権者である被請求人に立証責任がある。
「冒認又は共同出願違反を理由として請求された特許無効審判において、「特許出願がその特許に係る発明の発明者自身又は発明者から特許を受ける権利を承継した者によりされたこと」についての主張立証責任は、形式的には、特許権者が負担すると解すべきであるとしても、「出願人が発明者であること又は発明者から特許を受ける権利を承継した者であること」は、先に特許出願されたという事実により、他に反証がない限り、推認されるものというべきである。」
参考裁判例 平成25年3月28日 知的財産高等裁判所 判決 平24(行ケ)10280号 審決取消請求事件
参考裁判例は、特許無効審判に係るものであるが、意匠登録に係る無効審判も同様に解釈されるものである。
本件意匠登録に係る「ソール部」を創作し、本件登録意匠の全体的な形成に寄与したことにより、請求人が共同創作者であることは前記(ii)に示す通りであり、被請求人も認めている(甲15)。つまり、「意匠登録を受ける権利が共有に係ること」は明らかである。
また、本件登録意匠の創作者欄及び出願人欄には、被請求人の氏名しか記載されていない。そのため、先に出願された事実により推認される事項としては、被請求人単独で創作し、出願した事実でしかない。
請求人が前記(ii)に示す事項により、出願された事実により推認される事項は覆るものであって、被請求人が請求人から意匠登録を受ける権利の譲渡を受けたことの立証責任を有する。
意匠法第15条で準用する特許法第38条は、
「特許を受ける権利が共有に係るときは、各共有者は、他の共有者と共同でなければ、特許出願をすることができない」
と記載しているのであるから、当該規定内容からも意匠登録を受ける権利の譲渡を受けたことは、被請求人に立証責任があると思料するものであるが、被請求人からの通知では何ら客観的な証拠はないとしている(甲13、15)。
(v)むすび
前記により、本件意匠登録は、意匠法第15条によりで準用する特許法第38条に違反して登録されたものであり、同法第48条第1項第1号の無効理由に該当する。
キ 結語
前記に示す無効理由1、2、3のいずれによっても、本件登録意匠は無効理由を有するため、本件登録意匠を無効とする審判を求める。

(2)審判請求書に添付された「別紙」(前記、請求書別紙1ないし8)
別紙1 意匠公報
別紙2 本件登録意匠の要旨説明図
別紙3 甲4意匠の要旨説明図
別紙4 本件登録意匠と甲4意匠との対比表
別紙5 本件登録意匠と先行周辺意匠(及び甲5図面)との対比表
別紙6 甲5意匠の要旨説明図
別紙7 本件登録意匠の6面図と甲5図面(ソール部)との対比表
別紙8 本件登録意匠と先行周辺意匠(及び甲5図面)の対比表(回答書修 正版)

2 「弁駁書」における主張
(1)弁駁の内容(補足事項)
ア 「HE−23」製品の特定及び補足
(ア)弁駁書における別紙(以下「弁駁書別紙」という)9における「HE−23」製品の特定
図5・図面によりヒカリ技研が製造した製品(エバロンソール HE−23 以下、「HE−23製品」という)の内容を、弁駁書別紙9に示す。
申立人の主張は、甲5・図面により製造された弁駁書別紙9記載の「HE−23」製品が販売等により公知に至ったことを主張するものである。
なお、弁駁書別紙9に示す「HE−23」製品は、後述の「2012年金型」により製造された製品である。甲5・図面は「2010年金型」作成において製図されたものであるが、「2012年金型」は成形上の不具合解消の観点から下底面の溝の谷部分の形態を微調整したものである。
(イ)東大阪ブランド機構における認定
甲10・認定書にて示すように、「HE−23」製品を含むエバロンソールは、同機構における東大阪ブランドとして2013年(平成25年)8月30日に認定された。
甲10・認定書にかかる認定は、請求人が代表を務めるヒカリ技研が申請したものであり(甲19の1)、「HE−23」製品の写真が提供され(甲20)、審査におけるプレゼンテーションや書面審査において、甲5・図面により作成された「HE−23」製品が提供された。
甲20・写真をもとに甲10・認定書が東大阪ブランド機構により作成され、その後はパンフレットや東大阪市役所にて展示され、周知されている。現存するパンフレットは2016年(平成28年)のものである(甲21)。
よって、同認定によって、遅くとも平成25年8月末日には、図5・図面により製造された「HE−23」製品は公知に至った。
(ウ)「HE−23」製品の販売による公知
甲5・図面により作成された「HE−23」製品は、少なくとも本件意匠登録出願日前の2016年(平成28年)5月13日にキャッスルシューズ社に(甲8)、2014年(平成26年)9月16日に株式会社I.コーポレーション(以下、「I.コーポ」という)に販売し(甲9、甲32)、公知に至った。両社はいずれもヒカリ技研より本件ソールを購入し、短靴を製造して、卸業者に販売することを業としている。
(エ)I.コーポ社による「HE−23」製品を用いた短靴の製造、販売(公知の状態を補足する資料)
「I.コーポ」社は、ヒカリ技研より「HE−23」製品を購入し、アッパーを付けて短靴を製造し、遅くとも2015年(平成27年)3月より販売した(甲22)。
前記のとおり、「I.コーポ」社は、短靴を製造し、卸業者に販売する事業形態であるところ、ヒカリ技研より甲5・図面により製造された「HE−23」製品を購入し、アッパーを取り付けて製造した短靴を卸業者に販売していた。その際、各シーズン毎に「仕様書」を作成し、卸業者に提示し、発注を受けて販売していた。
前記「仕様書」を精査したところ、仕様書1(甲23の1・「2015年春夏」ファイル)、仕様書2(甲23の2・「2015年秋冬」ファイル)、仕様書3(甲23の3・「2016年春夏」ファイル)に、「HE−23」製品をソールにした短靴が掲載されていた。
短靴は各シーズン前に販売するものであるため、仕様書1は遅くとも2015年3月、仕様書2は遅くとも2015年9月、仕様書3は遅くとも2016年3月に、「HE−23」製品が卸業者に提示、販売され、公知に至った。
特に、仕様書3(甲23の3・「2016年春夏」ファイル)に記載の品番266製品のラベルに記載される「JS HERTLEABEL」は、各販売店にて販売されており、マルイのネット通販等でも販売されている(甲24)。
また、仕様書2(甲23の2・「2015年秋冬」ファイル)に記載の品番269製品は、本件ソールに一般的なローファーをアッパーとして採用した製品であって、別事件登録意匠(1596855号・ローファー型)の先行周辺意匠となり得るものとなる。
イ 請求人の本件登録意匠の創作経緯の補足
(ア)ヒカリ技研における請求人の創作手法(甲25・創作状況報告書)
ヒカリ技研は、従業員数約20名(工場担当者12名、営業担当者2名、経理事務2名、パート4名)であり、新製品の開発は専ら代表者である請求人が担当していた。ヒカリ技研は、特許・実用新案を20件、意匠登録を14件出願しているが、近年を除き考案者や創作者は請求人である(甲19の2、3)。
請求人の創作手法は、手書きのスケッチ画を作成し、当該スケッチ画を元に木型製作者に詳細を説明して木型を製造させ、当該木型をもとに金型を製造する手法である。
例として、甲25・別紙1「参考スケッチ画」のように請求人の署名とともに詳細なデザイン画が作成され、本件ソールの新型である同・別紙2〜4のように、スケッチ画から木型が作成され、木型により製造された金型の納品を受けて、当該金型を用いて製品を製造する。
(イ)甲5・図面(HE−23製品)の創作経緯
請求人は、2001年(平成13年)ころ、エバロンと称する自社で開発した新たな配合のEVA樹脂を開発した(甲10)。当時は、サンダル用ソールを主に製造しており(甲10記事内写真のソールは全てサンダル用である)、受注量に生産量が追い付かないほどの多大な販売実績を有していた。そこで、ヒカリ技研はサンダルだけでなく、短靴用ソールにも販路を広げるべく2010年(平成22年)ころより短靴用ソールの開発を本格的に始めた。
請求人は、2010年9月上旬ころ「HE−23」製品のスケッチ画を作成し、韓国ウレタン金型製造業者である「HAN SHIN TRADEを屋号とする韓仁寿氏に木型製造を委託し、同月下旬ころ木型が完成した(甲26)。さらに、当該木型をもとに金型を中国の広州徳易有限公司に委託し、同年10月16日、金型の納品(2010年金型)とともに製図されたのが甲5・図面である。
2010年金型では、底面(靴底)の溝の谷部分からのヒビ割れ等の不良率が高かったため、2011年11月下旬ころ、当該谷部分をアールに微調整する新たな金型を製造することを目的に、再度、韓仁寿氏に木型製造を委託し、同年12月下旬ころに木型の納品を受けた(甲26、甲25・別紙5〜7)。この木型をもとに2012年に再度、広州徳易有限公司に金型製造を委託した(2012年金型)。
さらに、2016年10月、広州徳易有限公司が倒産したため、中国の嘉隆模具有限公司に2面取りの金型の製造を委託した(2016年金型、甲25・別紙8)。
(ウ)請求人の「HE−23」製品の創作
請求人の開発過程は、請求人の作成したスケッチ画をもとに木型製造業者に説明して木型を製造し、当該木型をもとに金型を製造するものである。
前記請求人の創作を裏付けるものとして、「HE−23」製品にかかるスケッチ画を受領して木型の製造委託及びデザインの指示を受けた木型製造業者・韓仁寿氏が請求人の創作であることを認めている(甲26)。韓氏はウレタン金型の製造業者であるためにエバロン樹脂(EVA樹脂)用の金型製造技術が乏しかったために、木型のみの製造を委託した。韓氏にとっても木型のみの製造は本来的業務ではなく、謂わばイレギュラーな依頼であったため、特段記憶に残っていたものである。
甲25・別紙5の請求書は、成型不良を改善するための「2012年金型」を製造するために委託した木型に関するものである。金型製造は10万円以上の費用となるところ、当該請求額が4万円であることからしても、その内容(「MOLD(型)」)が木型であることがわかる(なお、「インソール」は「アウトソール」の誤記である)。
また、補足として現存する他製品のスケッチ画に代表者の氏名が記載されており(甲25・別紙1)、ヒカリ技研の実用新案登録、意匠登録は平成30年以降を除き、全て請求人が考案者、創作者である。そのなかでも上述した「東大阪ブランド認定」の申請書(甲19の1)において適示した取得した知的財産欄に記載の登録実用新案は2件とも請求人を考案者とするものである(甲19の2、3)。このように、ヒカリ技研は請求人が創業者であり、同社内でエバロンソール開発当時に、製品開発を担当していたのは請求人のみである。
さらに言うと、請求人は本請求前の書面のやり取りにおいて、ヒカリ技研代表者(請求人)がソールを創作したことを記載したところ(甲14)、被請求人は、何ら反論もなく認めている(甲15)。
前記事実より、甲5・図面に記載された「HE−23」製品を創作、開発したのは請求人である。
(エ)被請求人との共同創作の経緯
被請求人が従事する高田産業は、高田義秀と同人の妻と息子である被請求人だけの小規模事業体であった。このような状況であったため、連絡手段としては電話や面前のやり取りばかりであった。以下、請求人と共同して創作した被請求人を含む被請求人側の事業主体として「高田産業」を主語にして述べる。
高田産業は、それまで短靴の製造経験が乏しく、アッパーとの接合を要しないサンダルしか取り扱っていなかった。そのため、高田産業は、ヒカリ技研より「HE−23製品」を購入したが、アッパーとを接合し、短靴を製造することができなかった。請求人は、高田産業に販売した平成25年5月8日より数日経過した後、アッパーとの接着ができないとの電話連絡を受けた。電話での回答では解消されなかったため、平成25年5月下旬ころ、請求人は甲・16書面をもって高田産業を訪れ、直接的に製造開発過程に関与している。
請求人が訪れたところ、高田産業が接合して製造した短靴は散々たる状況であった。「HE−23」製品にアッパーを取り付けることができないもので、一部取り付けられた製品も「HE−23」製品が平板状に伸びた状態であった(甲25・別紙9 参考写真2)。状況を見かねた請求人は、高田産業が接合した短靴を精査したところ、接合方法が悪いだけでなく、「中敷き」に極めて硬質な材質(「二段ボール」材)を用いているため、柔軟性を有する「HE−23」が「中敷き」に負けてしまっていると考えるに至った。そこで、「二段ボール」と呼ばれる硬質紙材を2枚重ね合わせた材質から「テキソンボール」と呼ばれる軟質紙材にクッション材を張り合わせた柔らかい材質であって厚み3mm以下のものを使用することを高田産業に提案した(甲25・別紙9 参考写真3)。請求人が指示する材質の「中敷き」を用いることにより、「HE−23」の形状に沿った足先と踵が上方にせり上がる形態が形成された(甲25・別紙9 参考写真1と2の違いを参考にされたい)。
さらに、接合技術も高田産業は乏しかったことから、「中敷き」に留めたアッパーを削って平面にすること、アッパーの底面側を削って平面化すること、を手取り足取り、ともに行いながら高田産業の短靴が完成するように尽力した。
その甲斐あって、高田産業の短靴が完成した。
前記の請求人の関与において、甲25・別紙9参考写真1と2との違いを踏まえると、本件登録意匠の外観的創作に大きく関与していることは明らかであって、請求人は本件登録意匠の共同創作者である。
(オ)甲4・ラックラックパンプスの補足
株式会社G STARSが販売する本件登録意匠(登録第1596866号・パンプス型 )と形態を同じくする「ラックラックパンプス」は、「中敷き」に請求人が素材を選定した「テキソンボール」が使用され、「ふかふか低反発クッション」と記載されている(甲27)。なお、「ラックラックパンプス」は、2016年(平成28年)9月、11月にディノス・セシール社のHPに口コミが掲載され(甲28の1)、勅使川原郁恵氏のブログによると同年8月16日に小田急百貨店新宿店で販売、展示されており(甲28の2)、少なくとも2016年(平成28年)8月には販売が開始されていた。なお、ディノス社は高田産業の有力な販売先である。

(2)被請求人答弁書に対する認否、反論
ア 答弁書(後記第3の1)「(1)はじめに」について
争う。
イ 答弁書(後記第3の1)「(2)当事者について」について
「ア」は認め、「イ」の後段は争う。被請求人は、口頭で発注を行っており、納期も単に「できるだけ早く製造せよ」という無理な要求ばかりであった。ヒカリ技研は他社発注もあるので順序を考えてほしいと何度も理解を求めていた。被請求人が中国で製造したのは、「(ヒカリ技研に)合理的な理由に乏しい納品遅滞が続いた」のではなく、単に製造単価が安い海外製品を求めただけである。海外製品を求めるのであれば、請求人が創作したデザインを流用する必要はないにもかかわらず、被請求人はHE−23製品のデッドコピー品を中国製造会社に製造させた。これだけに留まらず、請求人の「HE−23」製品の販売先に対して販売を控えるよう口頭で周知していたことが本件問題の発端である。
ウ 答弁書(後記第3の1)「(3)本件登録意匠が創作され意匠登録されるに至った経緯」について
(ア) 認否
「ア」は認否の限りでなく、「イ」(ア)は争う。EVA樹脂から独自の配合をもとに新規な材質としたのがヒカリ技研のエバロン樹脂である(甲10)。EVA樹脂と同一視する被請求人の主張は失当極まりない。同(イ)は争う。被請求人は「T−23」なる木型を提供していない。同(ウ)も争う。止め型の合意もなければ株式会社I.コーポレーション等に許諾した事実もない。なお、同社名は「I」の後に「.」が付くのであるが被請求人が同社名すら正確に知らないことも許諾した事実が虚偽であることを示すものである。
「ウ」は争う。前記のとおり被請求人の求める納期自体が無理な要求ばかりであった。「エ」及び「オ」は争う。以下、請求人の反論をする。
(イ)ソール部分の創作について
被請求人は、EVA樹脂のソールは中国、韓国で製造されていたことをもって、ヒカリ技研のエバロンソールの創作性を否定する主張を行っているが、極めて失当である。
一般的なEVA樹脂は、成型時にいったん膨張して徐々に収縮する素材である。この収縮作用のため、正確な足寸法に合わせた成型が極めて難しい。クロックス等の一体型サンダルでEVA樹脂製品が多いのは、収縮時にラスト(甲29)に合わせることで収縮後形態を制御することができるためである。一方、本件ソールのようなアッパーに合わせるソールは、ラスト等の型に合わせて収縮することができないため、不良率が極めて高い。そのため、ソールをEVA樹脂で製造することは高い難易度をもっており、製造が極めて難しかった。
近年、確かに、中国や韓国でもEVA樹脂でランニングシューズ用ソールが製造されているが、足サイズをシール貼付されているものを散見する。これは自然収縮で既定の足寸法に合わせることが難しいために、収縮によっては異なるサイズ用に用いるためである。
ヒカリ技研は、収縮率を制御しやすい素材(エバロン樹脂)を開発し、永年の経験と製法によって、自然収縮によっても規定寸法に合わせることができるようになったため、弁駁書別紙9のとおり本件ソールには足寸法が刻印されている。
前記のとおり、ヒカリ技研の製品は、特殊なEVA樹脂(エバロン)を用いてソールの製造に至ったことから、単価を500円程度としながらも販売することが可能になった(甲7〜9、31、32)。この単価に見合う製品を被請求人は販売できなかったので、被請求人は中国でのHE−23製品のデッドコピー品を製造させ、廉価製品を輸入開始したものである。
なお、被請求人のデッドコピー品が製造できたのは、現在の中国でのEVA製造技術も徐々に上がっていることと、粗悪なEVA樹脂を用いれば樹脂単価が安く、人件費も低額であるため、高い不良率を度外視しているものと思われる。
よって、被請求人が主張するエバロンソールを単なるEVA樹脂と同一視することは極めて失当である。
(ウ)製造年月日の矛盾
被請求人は、2013年(平成25年)頃、ヒカリ技研より高田産業に対して商品開発の協力要請があり、被請求人の木型である「T−23」をもとに「HE−23」製品が完成するに至ったと主張している。
しかし、甲5・図面の作成年月日は2010年(平成22年)10月6日である。被請求人主張の経緯であれば、協力要請した2013年(平成25年)以降に図面が作成されていなければ辻褄が合わない。これも、被請求人の主張が虚偽であることを示すものである。
これに加え、甲11・東大阪ブランド機構には、「HE−23」製品が2013年(平成25年)8月に認定され、ヒカリ技研が自社製品として申請している。この事実からしても、被請求人の「止め型」であるとの主張は失当である。
(エ) 被請求人主張の「木型」について
被請求人の主張する「木型(T−23)」は、証拠もなく、その内容が全く示されておらず反論のしようがない。善意に解釈して存在するとしても、短靴を製造する高田産業が所有する「木型」とは、「ラスト」と呼ばれる人の足型(アッパー型)を指しているものと思われる(甲29)。この「ラスト」は、ソールとアッパーとを接合する部分形状には関与するが、ソール側面やソール底面の形状には全く関与しないものであって、「ラスト」に合わせて「ソール」を製造したとしても、本件ソールのような靴底形状や靴側面形状が自ずと形成されることはあり得ない。
つまり、被請求人の主張に沿ったとしても、本件ソールの具体的形態を創作したことが請求人による創作の補助者に過ぎないと評価することは失当である。
(オ)本件登録意匠の作成についての反論
被請求人は、別事件登録意匠の創作した日は出願日(2017.5.10)の直前とし、ヒカリ技研との取引終了後のため、関与を否定しているが、失当である。
被請求人は、意匠権の帰属の合意がなされていると回答している(甲13、15)。ヒカリ技研との取引終了後に本件登録意匠が創作されたので請求人の創作関与がないと主張しておきながら、意匠権帰属合意がなされたとの回答は完全に矛盾する。2013年(平成25年)にヒカリ技研が高田産業に「HE−23」製品を販売した直後に、本件登録意匠は請求人の尽力を得て、共同創作がなされたものであり、そうでなければ甲13、15回答書の文言に整合しない。
エ 答弁書(後記第3の1)「(4)」、「ア 無効理由1〜3」、「イ 無効理由4〜6」について
(ア)認否
当該記載は主張に関するものであるため、事実に関する認否の限りではない。以下、反論を弁駁する。
(イ)意匠の要部
意匠の要部につき、被請求人の主張は失当である。被請求人が適示する判決例に沿ったとしても、本件登録意匠の要部にアッパーを含めることは誤りである。
被請求人が適示する判決例は、「公知意匠にはない新規な創作部分の存否を参酌して」としているが、本件登録意匠・別事件登録意匠にかかるパンプス、ローファーのアッパー形態はいずれも一般的な形態に他ならない。当該審査において、公知意匠にない新規な創作部分として本件ソールが大きく寄与していたことは明白である。
被請求人は、本件登録意匠のパンプス形態に関して「形態d〜f」、別事件登録意匠のローファー形態に関して、「形態c、d」を指摘しているが、その主張形態が明らかでないばかりでなく、いずれも微細な違いを縷々主張しているだけであり、意匠としての全体的な美観を決定付けるものではない。ステッチが露出したり、靴のつま先部分と踵部分を補強する部材を配して縫い合わせたものは、従前から行われている手法であり(甲33)、特段の美的特徴をもつ創作ではない。
つまり、本件登録意匠(パンプス)・別事件登録意匠(ローファー)の「公知意匠にはない新規な創作部分」とは、本件ソール以外にない。 つまり、本件登録意匠(パンプス)・別事件登録意匠(ローファー)の「公知意匠にはない新規な創作部分」とは、本件ソール以外にない。
また、被請求人は需要者がソールを目にすることはないとまで主張しているが、これも失当である。株式会社I.コーポレーションが作成した仕様書において、「2015年春夏」ファイルは、短靴の裏面をはっきり示している(甲23の1)。また、甲4・アマゾンサイトにおいても、短靴の裏面を示している。これは、取引者や需要者が、当該短靴の裏面に特徴を有しており、取引者や需要者が特別に注意を惹く部分であることを示すものに他ならない。
よって、前記から本件登録意匠の要部は本件ソールの形状に他ならず、被請求人の適示する裁判例も請求人の主張を補強するものに過ぎない。
(ウ)甲4・「ラックラックパンプス」と意に反する公知
被請求人は、甲4・「ラックラックパンプス」の製造元が被請求人ではないため、意に反する公知として新規性喪失の例外規定に該当すると主張している。しかし、被請求人が「ラックラックパンプス」の製造元でないと主張するのであれば何ら秘密保持義務等があるはずがなく、甲4により単に公知に至ったものと考えるのが相当である。
その他、被請求人のデザインが盗用されたとことを証するものも何一つない。
(エ)意匠の類否
前記のとおり、本件登録意匠の要部は本件ソールであって、アッパーの美的外観には何らの特徴はない。被請求人が主張する特徴も取引者・需要者が特段の美観を生じさせるものではなく、甲4・甲5に記載の意匠と実質的同一若しくは類似するものである。
(オ)得意先元帳の補足
請求人が提出した甲7・得意先元帳(被請求人)につき、平成25年5月〜10月部分を補足して甲31として提出する。平成25年5月8日の販売実績が明記されている。
なお、請求人が提出した甲9・得意先元帳(「I.コーポ」社)につき、平成26年9月〜平成27年10月までの販売実績を甲32として提出する。甲23の1〜3の裏付けとなる期間を提出するものであって、その後も同社に販売が継続されている。
オ 答弁書(後記第3の1)「(4)」、「ウ 無効理由7」について
(ア)認否
当該記載は主張に関するものであるため、事実に関する認否の限りではない。以下、反論を弁駁する。
(イ)「帰属の合意」
被請求人は、甲13・通知書にて明記する「意匠権の帰属の合意」について、請求人が創作者であること、本件登録意匠が共同創作であることを前提としていることは理由がないと反論するが、極めて失当である。
「帰属」とは、「物・権利などが、特定の人・団体・国などの所有となること。」、「物や人が、どこに、あるいはだれに属するか、ということ。」であり(甲30)、本件でいうと意匠を受ける権利の存否が不明確であるから何らかの合意がなされたということが前提である。
当該書面は、代理人弁護士より作成された書面である。請求人と被請求人との間で帰属合意(意匠登録を受ける権利の合意)がなされたと主張するのであれば、それは両者間に創作に関与していたことが前提であることは明白であって、何ら関係のない者と意匠の帰属合意をすることはあり得ない。
被請求人は、安易に口頭合意があったと回答すればよいと思って回答したことを、答弁書に至って単に言い繕っているに過ぎない。
(ウ)共同創作
請求人の主張は前記に示すとおりである。請求人の共同創作が無ければ、単にアッパーとソールとが接着できなかっただけでなく、「中敷き」の硬質材により甲25・別紙9参考写真2に示すようにソールが平板化した形態の意匠となってしまっていた。請求人の協力があったからこそ、短靴のつま先部分が上方に反りかえる本件登録意匠の形態が実現されたものであって、外観形態に寄与していないとする被請求人の主張は失当である。
(エ)EVARONの刻印
甲25・別紙2、3で示す本件ソールの新形態である「HE−25」製品にも「EVARON」の刻印はない。当然ながら同製品も被請求人の「止め型」ではない。「EVARON」の刻印がないことが「止め型」であるとの被請求人の主張は失当である。
(オ)「止め型」と第三者への販売に関する被請求人の許諾
ヒカリ技研が前記「I.コーポ」社、「キャッスルシューズ」社やその他の第三者に販売する際に、被請求人の許諾がなされた事実は一切ない。被請求人は許諾をした証拠も提出せず、「問題にしたことがない」としているが、単に「止め型」ではなかっただけである。
甲7・得意先元帳(被請求人)と、甲8・得意先元帳(キャッスルシューズ)、甲9・得意先元帳(I.コーポ)との単価の違いを見ると、被請求人の単価が最も安い(430円、他社は480〜500円)。「止め型」にするには金型代金を単価に乗せるため必然的に高くなるがそのようなことが無かったことからも、被請求人の「止め型」ではなかったことが明白である。
なお、被請求人の単価が安かったのは、単に被請求人の事業規模が低かったので、請求人の善意で特別安く販売しただけである。
(カ)まとめ
被請求人の主張は、客観的事実に沿うものでもなく、従前からの書面内容(甲13、15)にも合致しないもので信用足り得ないものである。
請求人主張のとおり、本件登録意匠は請求人が外観的創作に関与したものであって、共同出願違反に該当することは明らかである。

(3)弁駁書に添付された「別紙」(前記、弁駁書別紙9)
別紙9 「HE−23」製品図

3 「口頭陳述要領書」における主張
(1)陳述の要領
請求人は、以下のとおり、陳述要領する。
ア 争点
被請求人による口頭審理陳述要領書(以下、「被請求人要領書(1)」という)(後記第3の2(1)ア(イ))記載事項を争点と認めるものではない。当該記載以外を被請求人が積極的に争わないことを示したものとして、以下、反論を行う。
イ 本件意匠の要部
意匠の類似判断として、「意匠を全体として観察することを要するが、この場合、意匠に係る物品の性質、用途及び使用態様、並びに公知意匠にはない新規な創作部分の存否等を参酌して、取引者・需要者の最も注意を惹きやすい部分を意匠の要部として把握し、・・・意匠の要部を共通しているか否かを重視して、観察を行う」とする一般論については争いがない。
意匠法が知的創作物を保護する創作法で、公知意匠にはない新規かつ創作非容易な創作物を保護することが法目的であるため(法第1条3条)、この創作法的観点からすると公知意匠にはない新規な創作部分を検討して取引者・需要者の注意を惹く部分を抽出することが必要である。
本件意匠のアッパーは、極めてありふれたバレエシューズ型パンプス・ローファー型であって、何らの創作的特徴もない。かかる創作的特徴のないありふれたアッパー部分に取引者・需要者の最も注意を惹きやすい美観が生じるとは到底考えられない。
仮に、全体的観察という点を考慮したとしても、本件ソールを用いたことが、本件意匠の全体的な創作に寄与したことに他ならない。
よって、本件意匠の要部は、専ら本件ソールの形態によるものである。
新規性及び創作非容易性
(ア)意に反する公知
被請求人は、甲4・サイト広告(ラックラックパンプス)が、「被請求人が製造したものではない」(第3の1(4)ア(ク))とするのみで、甲4に表示される製品の製造者・販売者・公開者との具体的な関係性を開示、立証していない。
特許庁意匠審査基準(甲34)によると、次の記載がある。「意匠登録を受ける権利を有する者の意に反して公開された場合とは、例えば、創作者の創作した意匠が窃取盗用によって第三者に公開されたような場合が該当する。どのような経過を経て、公開時における公開意匠についての意匠登録を受ける権利を有する者の意に反して公開されたかという事実が明示されるとともに証明される必要がある。」(下線は請求人)
また、被請求人は、「有斐閣 意匠法第2版」を示して「意に反する公知」とは、「自己の意思の支配が及ばない状況で公知になった場合」と主張するが、同書には当該記載の直後に例示として「例えば、出願するまで秘密にしようとしていたにもかかわらず、窃取盗用によって第三者に公開されたような場合が該当する。」とされている(甲35)。
被請求人は、単に「被請求人が製造したものではない」とするのみで、どのような経過を経たのか、どのような事実経緯であるのか等の明示の主張もなく、証明に至っては一切ない。甲4・サイト広告に表示される製品について、単に被請求人が製造したものではないとの主張のみで「窃取盗用」に至ったとは到底認められない。
なお、ラックラックパンプスは、本件出願日より1年以上前から何度もテレビ広告がなされていたことが明らかとなった。酷似した外観を有する本件意匠を創作したとする被請求人が放置していたことを踏まえると、単なる窃取盗用がなされたとは到底考え難い(甲36の1乃至2)。
(イ)甲4・広告サイト表示製品に関する状況
甲4・広告サイト表示製品は、本件意匠にかかるバレエ型パンプスと極めて酷似する形態を有している。甲4・サイト広告に表示される「ラックラックパンプス」と同じ商品名が、2016年(平成28年)8月16日における勅使河原郁恵氏のブログ内で、同氏がプロデュースしたと紹介されている(甲28の2)。
あくまで無関係との被請求人の主張をもとに考えると、甲4・甲28の2に表示されるラックラックパンプスは勅使河原郁恵氏が自ら創作したものであって、甲4による公知は、単純な第三者による公知となる。
よって、被請求人主張の意に反する公知に基づく新規性喪失の例外規定は適用されず、甲4・広告サイトにより本件ソールを用いたバレエ型パンプスは、本件意匠出願日前に公知に至った。
エ 被請求人木型「T−23」(乙1、乙2)について
(ア)はじめに
被請求人は、乙1・写真が「T−23」型(ラスト)であるとし、乙2・写真から、「T−23」型が平成19年4月26日に製造されたことを立証したいものと思われる。
しかし、乙1・写真(1、2枚目)の形態は、甲5・図面と形態が明らかに異なっており(甲37)、本件ソールを用いたアッパーの「型」ではない。乙1・写真(1、2枚目)の「23・」とは単なる足サイズの235(23.5センチ)を刻印したものに他ならない(甲38、39の1、2)。
しかも、乙1・写真(3枚目以降)と乙2・写真の「型」には、「M」とのサンダルで用いるサイズ刻印がなされていることから、これらはサンダルの「型」に他ならない(甲40、41)。
よって、乙1・写真と乙2・写真から、「T−23」型が平成19年4月に製造されたとの立証はなされていないばかりか、サンダル用の「型」であることから、請求人の主張する請求人が短靴の製造経験が乏しいとの主張を裏付ける証拠に他ならない。
以下、前記内容について説明する。
(イ)乙1・写真(1、2枚目)と甲5図面、本件ソールとの形状が異なること
乙1・写真の1枚目、2枚目には「T」、「23・」の文字が刻印されていることから、被請求人は当該刻印から「T−23」であることを立証するものと思われる。
しかし、乙1・写真(1、2枚目)に表示される型は、「HE−23」と一致していない。
乙1・写真(1、2枚目)のつま先(先端部位)は、足の長手方向と直交する方向に直線状のラインが発生する「角張ったライン」となっている。一方、甲5・図面や本件ソールの写真から明らかなように、つま先は半円形上に湾曲しており、明らかに異なる(甲37、2枚目)。
また、乙1・写真(1、2枚目)は左足の型と思われるが、小指の付け根部分に角が形成され、当該角から指先にかけての外側形状が乙1・写真(1、2枚目)では内側(親指側)に向けてシャープな直線形状を描いているのに対し、甲5・図面や本件ソールの写真では小指の付け根部分に角が形成されず、指先にかけての外側形状が外側に凸となる湾曲形状となっている(甲37、3枚目)。
型(ラスト)は、靴の型であり、一般的な足形形態であることは共通しているが、具体的かつ細かな形態が各々異なるものである。乙1写真(1、2枚目)の型と甲5・図面や本件ソールの形態は、当業者からすると、全く異なる形態である。
(ウ)乙1号証(1、2枚目)の表示が単なる足サイズであること
乙1・写真(1、2枚目)に「235」と黒色表示がなされているように、靴サイズの「23.5センチ」のための型である。被請求人は、23.5センチの型をもって、本件ソールの「HE−23」に合う「T−23」の型と見せかけただけである。
乙1・写真(1、2枚目)の「T」の文字の刻印と足首部分の刻印が不自然に離れている。「T−23」が品番であるならば、連続する文字で「T」「−(ハイフン)」、「23」と表示する。
足首部分には「23・」刻印がなされているが、「23」の続きの文字を隠すように撮影され、「23」の隣には明らかに文字が刻印されており、この文字は「5」である(甲38)。
ラスト(型)は、足サイズごとに製造され、似たような形態を複数所有することになるため、一般的に表面のわかりやすい位置にサイズ表記がなされる(甲39の1、2、甲29)。乙1・写真(1、2枚目)の「235」の刻印や文字表記は「23.5センチ」を表記するためのものである。
(エ)乙1・写真(3枚目以降)と乙2・写真はサンダル用の「型」であること
乙1・写真(3枚目以降)や乙2・写真には、「M」の文字が刻印されている(甲40)。靴のサイズ表記は一般的にセンチ表記がなされるところ、「S」、「M」、「L」のサイズ表記を行うのはサンダルである(甲41)。そのため、乙1・写真や乙2・写真は短靴用の本件ソールに合致するものではなく、単なる23.5センチのサイズ「M」のサンダル用型であることは明らかである。
(オ)被請求人主張について
前記のとおり、乙1・写真は、単に「T=高田産業」の「235=23.5サイズの型」を「T−23」の型としているだけであり、そもそもサンダル用の型である。
「T−23」のラストが存在するから、本件ソール「HE−23」ができたことの立証とは到底ならない。
そもそも、請求人の本件ソールの「HE−23」の記載は、「H=ヒカリ技研」、「E=エバロンソール」の略であり、「−(ハイフン)」の後の数字は、できた金型から順に連番でつけたものである(甲42、43)。
女性用靴は、シーズンごとに新製品を企画、提供し、一部のヒット製品以外は廃盤となって金型自体も廃棄されていくので、現在も販売しているのは「HE−16」、「HE−23」、「HE−32」、「HE−34」、「HE−70」であるが、これらは基本的に連番で製造されていることがわかる。
また、被請求人の止め型は、型番を「TKD」としていることも既述のとおりである(甲7)。
よって、被請求人の「T−23」の型をもとに請求人が「HE−23」の型を製造したとの主張は、何らの裏付けもなく、乙1・乙2写真も信用性がない。
オ 創作過程について
(ア)創作者
意匠法における創作者とは、意匠の創作に実質的に関与した者をいい、具体的には、形態の創造、作出の過程にその意思を直接的に反映し、実質上その形態の形成に参画した者をいう。
被請求人は、「T−23」の型から請求人が「HE−23」の型を製造したとして、請求人の行為を補助者と主張しているが、失当である。
前記のとおり、そもそも「T−23」の型が「HE−23」の型より先に製造されていたとの被請求人の主張、立証は何ら根拠がないものであるが、仮に「T−23」の型が先に存在していたとしても「T−23」の型にはソール形態の外縁しか表れない。具体的な本件ソールの底面や側面の溝形態、底形態、側面形態の創造、作出に被請求人は何らの寄与もしていない。
補助者とは、例えば既に創作されたデザインを図面で清書した者のような形態の創造過程でその意思を反映していない者を指すのであって、被請求人の主張は失当である。
本件ソールは、請求人のスケッチ画をもとに図5に表示された2010年に図面が製造され、修正する2012年金型を製造した取引履歴も存在する(甲25)。これらの具体的な創作過程を鑑みれば、ソール「HE−23」は2010年に請求人の創作であることは明らかである。
(イ)「HE−23」の溝形態の補足
「HE−23」の創作経緯として、裏面側(底側)から形成される溝が特徴となる。
溝の深さは、天板まで長さを5mmの位置に至るまで形成されているが、溝を深くするとソールの屈曲検査で破断する可能性が高くなる。本件ソールは、配合を調整した「エバロン樹脂」を用いて10万回の屈曲試験に合格している(ウレタンは2万5千回で破断)。
短靴のソールにおいて、このような深い溝を形成することはなく、短靴のソールの意匠としては特徴的な形態である。被請求人の主張する「型」を請求人に提供しても、この深い溝が形成されたソールを創作したことにはならない。
(ウ)本件ソールの接着工程
一般的なソールはアッパーと接着しやすいように、表面に「バフ」と呼ばれる荒加工を施す。甲17・対象写真に示すように、請求人会社が製造していない3号製品は、アッパーとの接着面の周囲かつ接着表面に荒面が形成され、指でなぞるとザラザラしている。
一方、本件ソール(甲17の1号製品)は、荒加工を行わなくとも接着可能な樹脂配合としており、接着表面に荒加工がなされていない。そのため、通常のソールとはそもそも接着工程と異なる特殊な接着工程となる。
従前から請求人が主張するとおり、被請求人は短靴の製造経験が乏しかった。これは、前記に示す通り、被請求人の「型」(乙1、乙2)はサンダル用であることからもわかる(甲40、41)。短靴の製造経験が乏しい被請求人に対して本件ソールをアッパーに接着させるために、請求人がテキソンボールを指摘したり、接着手法を手取り足取り行うことで、ようやく本件意匠にかかる短靴が完成した。
よって、請求人が本件意匠の共同創作者であることは明らかである。
(エ)止め型の主張に対して
被請求人は、「HE−23」が止め型であるとの主張を繰り返している。既述のとおり、被請求人は止め型とする場合には独自の品番を求めていたので、「TKD」の品番名を用いていた(甲7)。そのため、「HE」の文字が入っているだけでも、本件ソールが止め型でないことがわかる。
また、「止め型」とは当該取引先限りでの「型」をいうものであって、「止め型」の製品について許諾をとって他社に販売するものではない。実際にI.コーポ社やキャッスルシューズ社が「HE−23」製品を用いていることが、本件ソールが被請求人の「止め型」でないことを示すものである(甲22、23の1、2、3)。
当然ながら請求人は、被請求人から他社への販売の承諾を受けたこともない。
(オ)意匠の帰属の合意
被請求人は、止め型の合意をもって意匠の帰属の合意と主張している。前記のとおり本件ソールはそもそも「止め型」ではないのであるが、念のため反論する。
「止め型」とは一般的に金型代金を負担して当該負担元に対してのみの専用製品として提供するものである。「止め型」にかかる外観的デザインを別人が創作すれば、それは当該別人が創作者となり、意匠登録を受ける権利が当該別人に発生する。「止め型の合意」と「意匠の帰属の合意」とは全く無関係である。
被請求人が「意匠の帰属の合意」としたのは、本件ソールを創作したのが請求人であり、請求人に無断で意匠登録出願をした“後ろめたさ”から、甲13・被請求人書面において「意匠の帰属」を「了解済み」と主張したものである。その後は取り繕った主張を繰り返しているが、被請求人の主張はいずれも信用に足るものではない。
(カ)被請求人への販売について
被請求人は、2013年ころに請求人が被請求人に対してエバロンソールの開発に協力してくれと申し出たと主張しているが、この主張自体、極めて不自然な主張である。
エバロンソール自体は、2001年に既に完成している(甲10)。ヒカリ技研はソールの製造メーカーであるため、被請求人に提示するのは具体的製品を提示して営業活動をすることが一般的であり、何らの製品もなく「開発に協力してくれ」と営業活動をすることはない。
しかも、被請求人は個人事業を行う事業者で、規模的には小規模事業者であるところ、請求人会社が当該規模の被請求人に「開発に協力してくれ」との申出をすることも極めて不自然である。
よって、被請求人の反論は信用足りうるものではない。

4 「上申書」における主張
上申の内容
(1)甲5・図面の形式的証拠力
ア 作成経緯
甲5・図面は、2010年10月6日に真意に作成されたものであって、偽造の類ではない。
その作成経緯は、前記2の「(1)」、「イ」に示すとおりである(甲25・創作状況報告書、甲26・取引状況報告書)。前記書面及び報告書に記載のとおり、甲5・図面の制作経緯となる2010年金型製造経緯、2012年金型製造経緯、2016年金型製造経緯とともに詳細に記載され、甲5・図面が2010年10月6日に作成された事実の経緯が明らかである。
特に、2012年金型製造経緯は、2011年(平成23年)12月末に発送された「HAN SHIN TRADE」社請求書(甲25・別紙5、6、甲26・別紙3、4)及びの送金依頼書(甲25・別紙7、甲26・別紙5)の客観的資料を提出して示している。
被請求人は2013年(平成25年)に被請求人がラストを提供して本件ソールが創作されたとの経緯を主張して甲・5図面の日付(2010.10.6)を偽造したとの主張をしているが、前記請求書、送金依頼書が2011年末から2012年初頭に存在している事実からも、被請求人の主張する開発経緯が誤りであることが明らかである。
その他、後述する「(2)本件ソールの作成経緯に関する被告主張に対する反論」のとおり被請求人の発経緯の主張自体、信用足り得るものでない。
イ スタンプによる日付の記載
被請求人は、甲5・図面の日付がスタンプにより示されたことも理由としていると思われる。
しかし、そもそも工業図面の日付は、CADソフトによる印字や、検収者の確認印とともに押印されたスタンプによる日付であることが一般的である。工業図面の性質としてスタンプによることを理由に作成日付に特段の疑念が生じるものではない。
そもそも甲25・創作状況報告書に示すように、甲5・図面は2010年金型の製造者が金型納品とともに請求人会社に送付し、請求人が日付と会社名をスタンプしたものであって、スタンプで記載された経緯も一致している。
なお、甲5・図面は、右下欄に請求人会社の会社名が同じくスタンプにより示されているが、これは真実であると請求人は認めている(甲13、甲15)。
よって、単にスタンプにより日付が表示されているからといって、形式的証拠力を疑う余地はない。

(2)本件ソールの作成経緯に関する被告主張に対する反論
ア 被請求人の主張
被請求人の主張を整理すると次のとおりである。
(A)乙1・写真及び乙2・写真のラストは、本件ソールに対応し、平成19年4月に製造されたものである。
(B)ラストからソールが製造されるものであって、ソールからラストが製造されることはない。
(C)2013年(平成25年)に被請求人から請求人にラストが提供されてソールの作成支持をしたのであるから、同年以前を作成日とする甲5・図面の作成日付は真実作成されたものではない。
以下のとおり被請求人主張の(A)、(B)、(C)はいずれも失当である。
イ 前記(A)「乙1・写真及び乙2・写真のラストは、本件ソールに対応し、平成19年4月に製造されたものである。」に対する反論
(ア)刻印の表示からサンダル用であること
乙1・写真の3枚目以降と乙2・写真のラストは、いずれも「M」の刻印がなされたサンダル用ラストであって「T−23」ではない。
「T−23」の刻印は、乙1・写真の1、2枚目にしか存在しない。同写真のラストは被請求人が口頭審理日に提出された口頭審理陳述要領書(2)(後記第3の2(2))において乙1・写真3枚目以降と異なると自認したものである。
被請求人は後記第3の2(2)において、「短靴であっても製造の際に「M」サイズを製造することはある」と強弁しているが、これも失当である。請求人会社のヒカリ技研における被請求人会社への取引先元帳(甲7、甲31)では本件ソールである「HE−23」のサイズは「23.0」と表記され、その他のサンダル用ソールである「HS−110」、「HS−92」、「TDK−24」はいずれも「S」、「M」、「L」で表記されている。
つまり、請求人会社と被請求人会社との実際の取引状況を鑑みても、サンダル用は「S」、「M」、「L」とサイズ表記され、短靴用は「23.0」との寸法サイズが表記されていたことが明らかである(甲7、甲31)。
よって、「M」の刻印がなされた乙1・写真3枚目以降と乙2・写真のラストはいずれもサンダル用であって、短靴用である本件ソールとは異なるものである。
(イ)乙1・写真の3枚目以降、乙2・写真のラスト形状は甲5・図面の形状と一致しないこと
請求人会社は取引先からの依頼により甲5・図面にかかる本件ソールに対応するラストを製造していた(甲44の1)。当該ラストを本件比較のために再度製造依頼し(甲44の2)、納品を受けたものが甲45・報告書に示すラストである(以下、「請求人ラスト」という)。当該請求人ラストは、甲5・図面にかかる本件ソールの上平面(接合面)に一致することが甲46・報告書から明らかである。
乙1・写真3枚目以降と、甲45・報告書に示す請求人ラストの写真とを対比した甲47・対比報告書の赤線部分に示すように、乙1・写真3枚目以降のラストはつま先部分の湾曲が緩やかで大きく、両側から幅方向中央にかけて緩やかな曲線を描く形態となる。一方、請求人ラストは、つま先部分の湾曲がシャープで小さく、両側から幅方向中央にかけてつま先幅を狭めるような曲線を描く形態となる。当該形態の違いから、乙1・写真3枚目以降のラストは、甲5・図面にかかる本件ソールに合致しないものである。
また、乙2・写真のラストは、甲45・報告書に示す請求人ラストの写真とを対比した甲48・対比報告書の赤線部分に示すように、乙2・写真のラストはつま先から土踏まず部分までに至る幅が後方に向けて大きく広くなるように形成されているが、請求人ラストはつま先から土踏まず部分に至るまでに至る幅が後方に向けての広がりが小さい。サンダルは短靴に比べて指の付け根部分の幅を広くする傾向があるが、乙2・写真のラストも同様につま先部分の幅が広くなっている。つま先の幅広形状からしても乙2・写真のラストはサンダル用であって、甲5・図面とは異なる。
前記はいずれも本件ソールとの合致を検討するためにラストの底面(接合面)の形態に着目したものであるが、乙1・写真3枚目以降のラストが乙2写真のラストから製造されたものであれば底面以外の形態も一致するはずである。しかし、甲47・報告書及び甲48・報告書の青線部分に示すように、両ラストの足首部分前側の傾斜が、乙1・写真3枚目以降のラストでは低勾配であるのに対し、乙2・写真のラストは急勾配となっている。よって、両者の形態も異なることから、乙2・写真のラストから乙1・写真3枚目以降のラストが製造されたということも事実に反するものである。
なお、乙2・写真に表示される「H19」、「4/16」は、製造年月日を特定したものかは定かではない。「4/16」は鉛筆書きの文字の上に油性ペンで上書きした形跡があるが、製造年月日の記載なら製造当初から記載されているはずである。
よって、乙1・写真の3枚目以降のラスト、乙2・写真のラストのいずれも甲5・図面にかかる本件ソールとはいずれも形状が一致しない。また、乙2・写真のラストが平成19年4月16日に製造されたことを示すものでもなければ、乙2・写真のラストから乙1・写真のラストが製造されたこともない。
(ウ)被請求人主張の特徴が、そもそも特徴足り得ないこと
被請求人は、被請求人上申書(後記第3の3)、被請求人口頭審理陳述要領書(2)(後記第3の2(2))において、以下の主張をしている。
「一致している。ソール部の型は、靴によって様々であるが、例えば、「T−23」の特徴であるつま先から踵までの長さが長いという特徴と甲第5号証の図面が一致している。そして、両者が偶然一致することはありえない。」
(後記第3の3(2))
「「T−23」の特徴として、つま先から踵までの長さが長いという特徴があるところ、これはつま先部分にゆとりをもたせて履きやすくするという目的がある。一方、サンダルのつま先部分は空いており、つま先部分にゆとりをもたせる必要はない。請求人は、「M」という刻印は、サンダルに行われる」
(後記第3の2(2)イ)
被請求人は、乙1・写真3枚目以降と乙2・写真に示すラストが「T−23」と強弁し、その特徴が「つま先から踵までの長さが長い」という点が甲5・図面と一致しているとしている。
しかし、「つま先から踵までの長さ」とは単なる靴のサイズであることに他ならない。サイズが23センチなら「つま先から踵までの長さ」は23センチとなることは当然である。
よって、被請求人主張の特徴は、特徴足り得ない。
ウ 前記(B)「ラストからソールが製造されるものであって、ソールからラストが製造されることはない。」に対する反論
被請求人は自らの主張をこじつけるために強弁しているが、ラストからソールが製造されることも可能であり、ソールからラストが製造されることも可能である。ラストとソールとが接合する接合面が一致しておれば製造が可能である。
請求人会社は、本件ソールの新たな納品先から試作品作成のためにラスト提供の依頼を受けたため、本件ソールに合致するプラスチック製ラストを有限会社大山に発注し、令和3年3月12日に納品を受けている(甲43の1)。この事実からもソールからラストが製造されることはないとする被請求人の主張が事実に反することが明らかである。
また、短靴の製造メーカーはそれぞれラストを所有しているが、被請求人の主張が正しければ請求人会社の製造するソールは全て特定取引先しか使用できないものとなってしまう。しかし、実際には、甲5・図面による本件ソール(HE−23)をI.コーポ社(甲9、甲22、甲23の1乃至3)やキャッスルシューズ社(甲8)が用いていることは既述のとおりである。I.コーポ社やキャッスルシューズ社が本件ソールを用いていることからすると、ソールからラストが製造可能であることは明らかであり、これらの事実からも被請求人の主張は事実に反するものである。
エ 前記(C)「本件ソール(HE−23)は、被請求人ラスト(T−23)の頭文字を同じくしたもの」に対する反論
前記に示すように、乙1・写真3枚目以降と乙2・写真のラストは、本件ソールと合致しておらず、「T−23」と表記されたラスト(乙1写真・1、2枚目)は被請求人自身が異なるものと自認するに至っている。
少なくとも「T−23」と刻印された乙1・写真1、2枚目のラストは本件ソールと合致しないとしており、異なる形態に同じ型番を示すことは商慣習上あり得ない。被請求人も2021年3月1日付口頭審理陳述要領書第4頁(後記第3の2(1)イ(エ))において以下の記載をしている。
「なお、「T−23」という型番は、高田産業における短靴の木型の23番目を意味している。「HE−23」という型番は、この「T−23」の数字部分を用いたものであると考えられる。」
すなわち、乙1・写真1、2枚目に「T−23」の刻印があるが、3枚目以降の写真には「M」の刻印があるに過ぎない。型番が順番に付けられていたのであれば、乙1・写真1、2枚目のラストが「T−23」であって、形態の異なる3枚目以降や乙2・写真のラストは「T−23」ではないことになる。
よって、乙1・写真1、2枚目のラストに「T−23」の刻印があることから、被請求人の主張する乙1・写真3枚目以降及び乙2・写真のラストは「T−23」ではない。「本件ソール(HE−23)は、被請求人ラスト(T−23)の頭文字を同じくしたもの」との請求人の型番が「HE−23」であるとの主張は失当であることが明らかである。
オ 小括
以上から、被請求人提出のラスト(乙1、2)の存在により、甲5・図面に記載の日付が誤りであるとの主張はいずれも成り立ち得ないものである。

(3)共同創作
ア 請求人の主張の補足(創作者)
本件ソールを創作に際しての被請求人は、口頭審理陳述要領書(後記第3 の2(1))に以下の記載がある。
「以上の通り、本件登録意匠は、高田産業が作成した木型「T−23」に基づくものであり、これを基に請求人の主張する「HE−23」が作成されたに過ぎず、請求人は、創作の補助者に過ぎない。」
つまり、被請求人は、被請求人ラスト「T−23」に基づいて本件ソールが作成されたとして創作の補助者と主張しているが、補助者との主張は請求人の作成・創作に関する「評価」であり、「事実行為」として請求人が本件ソールを作成・創作したことは争っていない。
請求人ラストと本件ソールとの合致を示す報告書(甲45)からしても、ラストと本件ソールとは接合面が一致すればよいことがわかる。つまり、ラストの底面部の形態(足裏部分の形態)と、ソールの平面部(足裏がのる部分の形態)とが一致しておればよい。本件ソールは、底面部から側面部にかけて特徴的な溝形態が複数配列されており、これらの形態はラストの底面部の形態とは何らの関係がないことは既述のとおりである。
よって、本件ソールの創作者が請求人であることは争いがない。
イ 本件意匠の共同創作についての補足(補助者非該当性)
被請求人主張の創作補助者についても反論する。請求人は具体的な本件ソールを創作し、被請求人が選定したアッパーとの接合を協力して本件ソールのつま先と踵が上方に湾曲する形態を実現していることから(甲25)、単に課題を指示ないし示唆したに止まる者でもなく、主体的意思を欠く者でもない。
被請求人は「テキソンボール」に弾力性がないと指摘し、朝日実業から弾力性素材を仕入れていると主張するが、反論になっていない。
請求人は硬い「二段ボール」から柔らかい(湾曲性に富む・弾力性がある)「テキソンボール」へ変更を指示して本件意匠の短靴を完成させたことを主張している(甲25第7、8頁、甲25・別紙9)。その後に中敷きをどこから納品されるかなどは創作過程に直接関係がない。被請求人の述べる「弾力性」とは単なるクッション性を述べたものと思われる。
後述エ のとおり、本件ソールは平成25年8月に被請求人会社に販売し、請求人がともに張り合わせに協力する等を行って短靴の全体的形成に尽力した。その後の平成26年3月以降に請求人会社からの提供数が1490足に至っており(甲49・取引先元帳)、平成26年の春夏モデルから量産に入ったことがわかる。この創作時期や提供数からしても、請求人が報告する甲25・報告書記載の共同創作過程が信用足り得ることが明らかである。
よって、請求人は、本件意匠の共同創作者に該当する。
ウ 本件意匠の共同創作についての補足(本件意匠の要部の創作)
請求人が本件ソールを創作し、被請求人がありふれた一般的なバレエシューズ型、パンプス型のアッパーを選定し、張り合わせに際して実際に共同で行ったことは請求人が提出した弁駁書(前記2(1)イ(エ))(甲25)、口頭審理陳述要領書(前記3(1)オ(ウ))に記載のとおりである。
請求人は、前記接合経緯に加え、本件意匠の物品である短靴の全体的形態に対して本件ソールの寄与が極めて高いことも主張するものである(1(1)カ(iii)D 第一文)。本件意匠において、創意工夫を重ねた部分は本件ソールに他ならない。
つまり、本件意匠の要部として本件ソールが極めて高い比重を有する主張をしているとおり、本件意匠に接した取引者や需要者は、女性用の短靴としてソールの底面から大きな溝が複数形成され、短靴のつま先側と踵側が上方に湾曲した形態を有している。
これが特徴的であることは、本件ソールを用いたI.コーポ社が自らの仕様書において、以下の陳述がなされている。(甲22 第3枚目)。
「2015年春夏モデルから本件ソールを導入したところ、本件ソールの屈曲性や底面の形状が特徴的なソール形状でしたので、卸先業者に分かりやすくするために、ソールの下底面部分を示す底面写真やソールの側面部分を示す側面写真をつけております。」
I.コーポ社が本件ソールを用いた最初の甲23の1・仕様書(2015年春夏モデル)には、短靴の正面写真や斜視写真を掲載するとともに、側面写真に加えて底面写真も掲載している。その後の甲23の2・仕様書(2015年秋冬モデル)や甲23の3・仕様書(2016年春夏モデル)には底面写真は形成されていない。
これは、本件ソールの屈曲形態が特徴的であることから取引先に説明するために掲載する必要があったためであり、当業者にとって短靴に用いる本件ソールが特徴的な形態であることを示すことに他ならない。
この特徴は本件ソールに起因するものであるため、本件ソールを用いたこと自体で、本件意匠の創意工夫を凝らした部分であって、本件意匠の外観の全体的な形成に大きく寄与するものである。換言すると、本件意匠の要部である本件ソールを創作することにより少なくとも本件意匠の共同創作者である。
請求人は、従前から主張する本件意匠の作成経緯(接合経緯 甲25)、被請求人の帰属合意との回答事実(甲15)から少なくとも本件意匠の共同創作者は請求人であることを主張するものであるが、本件ソールの本件意匠における創作的価値の寄与(本件意匠の要部であること)からも、請求人が本件意匠の共同創作者に該当すると主張するものである。
エ 本件意匠の共同創作についての補足(創作時期)
被請求人は、本件ソールを被請求人に提供したのが、平成25年5月であることは被請求人も認めていながら(甲7、31)、答弁書第5頁において本件意匠の創作時期を2017年(平成29年)の初めころとしているが、これも失当である。
前記1(1)カ(iii)C欄(審判請求書)について補足すると、請求人会社は被請求人会社に対して継続的に相当数を販売した。具体的にも平成26年3月は合計1490足、同年5月は200足以上、同年7月は770足以上、同年8月は350足以上を販売し、平成27年2月以降も100足単位の発注で月合計1000足以上を定期的に販売していた(甲49・取引先元帳 頁内の鉛筆書きは合計数)。この販売状況からすると、明らかに大量生産を行っており、被請求人が本件ソールを用いた本件意匠にかかる短靴を平成29年に創作に至ったとは到底考えられない。
なお、バレエシューズ型の本件意匠と同一形態の「ラックラックパンプス」は平成28年8月16日に小田急百貨店新宿店にて販売されており(甲28の2)、当該事実からも被請求人の平成29年に創作に至ったとの主張は到底考えられない。
よって、被請求人が述べる本件意匠の創作時期が平成29年との主張は、事実に合致するものではなく、信用足り得ない。

(4)意匠の要部(新規性違反、創作非容易性違反)
前記「(3)」「イ 本件意匠の共同創作についての補足(本件意匠の要部の創作)」の記載内容と同じく、当業者をして特徴的なソールである。
よって、短靴の要部はアッパーであるとの被請求人の主張は失当である。

5 請求人添付の証拠
甲第1号証 意匠登録第1596866号(本件登録意匠)の原簿
甲第2号証の1 パソフィットPS46のバレエパンプスの拡大写真−デ
ィノス(先行周辺意匠1(ア)ないし(ウ))特許庁公
知資料番号HJ2401203200
甲第2号証の2 スリムコーチ バレエシューズのブラックS(22−
22.5cm)/ファッション通販eyeco(先行周 辺意匠2)
特許庁公知資料番号HJ2501398900
甲第3号証の1 「おしゃれな足もとコーディネートBOOK2」13、
16、39頁(先行周辺意匠3)
甲第3号証の2 「一生モノの靴メンテナンスブック」20、43頁(先
行周辺意匠4)
甲第3号証の3 「おしゃれな足もとコーディネートBOOK」69、4
6頁(先行周辺意匠5)
甲第4号証 Amazon.co.jp掲載の「ラックラックパンプ
ス GS−001(24、シャンパンゴールド)」
https://www.amazon.co.jp/ケイウィーブ−ラックラックパンプス−GS−001−24−シャンパンゴールド/dp/B071J4MJXV/ref=pd_aw_sbs_121_1/355−3445210−5364929?_encoding=UTF8&pd_rd_i=B071J4MJXV&pd_rd_r=b0e8f6e0−4677−4ele−83e6−ca778b95cd9c&pd_rd_w=G5cPG&pd_rd_wg=4qHSA&pf_rd_p=bff3a3a6−0f6e−4187−bd60−25e75d4c1c8f&pf_rd_r=KV9ZK9R8GSS7T7MMN2PK&psc=1&refRID=KV9ZK9R8GSS7T7MMN2PK
甲第5号証 「HE−23」製作図面(ヒカリ技研工業株式会社)
甲第6号証 ヒカリ技研工業株式会社の履歴事項全部証明書
甲第7号証 得意先元帳(高田産業株式会社)(一部抜粋)
甲第8号証 得意先元帳(キャッスルシューズ社)(一部抜粋)
甲第9号証 得意先元帳((株)I.コーポレーション)(一部抜粋 )
甲第10号証 2001年(平成13年)7月5日発行の「ゴム化学新 聞」
甲第11号証 東大阪ブランド認定証
甲第12号証 通知書(請求人代理人)
甲第13号証 通知書(被請求人代理人)
甲第14号証 通知書(2)(請求人代理人)
甲第15号証 通知書(被請求人代理人)
甲第16号証 エバロンソール接着工程
甲第17号証 写真撮影報告書(1)1号製品(2)2号製品(3)3 号製品
甲第18号証 ヒカリ技研工業株式会社HP
https://hikari−giken.com/evaron.php
甲第19号証の1 「東大阪ブランド」認定応募申請書
甲第19号証の2 登録実用新案公報(登録第3046596号)
甲第19号証の2 登録実用新案公報(登録第3068677号)
甲第20号証 東大阪ブランド認定製品として提供された写真の提供時
期について(証明)
甲第21号証 パンフレット(東大阪ブランド2016)
甲第22号証 購入販売状況説明書((株)I.コーポレーション)
甲第23号証の1 2015年春夏 (仕様書1)((株)I.コーポレー ション)
甲第23号証の2 2015年秋冬 (仕様書2)((株)I.コーポレー ション)
甲第23号証の3 2016年春夏 (仕様書3)((株)I.コーポレー ション)
甲第24号証 株式会社マルイホームページ
https://search−voi.0101.co.jp/voi/brand/12288/
甲第25号証 創作状況報告書
甲第26号証の1 取引状況報告書
甲第26号証の2 甲26の1別紙2 本件ソール写真図
甲第27号証 GSTARS ONLINE SHOP
gstars−shop.com/?pid=98805703
甲第28号証の1 「ラックラック空飛ぶパンプス」
https://www.cecile.co.jp/detail/HS−7/
甲第28号証の2 「パンプスをプロデュースしました」 勅使川原郁恵の オンラインブログ
https://ameblo.jp/teshigawara−ikue/entry−12191004773.html
甲第29号証 「【靴作りにおいて】メーカーの宝『ラスト』とは」
https://belleandsofa.com/2019/07/10/221/
甲第30号証 コトバンク「帰属」とは
https://kotobank.jp/word/帰属−474191
甲第31号証 得意先元帳(高田産業株式会社)(一部抜粋)甲7の補 充
甲第32号証 得意先元帳((株)I.コーポレーション)(一部抜粋 )甲9の補充
甲第33号証 株式会社同朋舎出版発行の「ワーズワード」354、3 55頁
甲第34号証 意匠審査基準(一部抜粋)
甲第35号証 茶園 成樹 編「意匠法」 第2版73頁
甲第36号証の1 FACEBOOK((株)G−STARSのページ)
https://www.facebook.com/Gstars.japan/photos/a.1396240000692374/1763082234008147
甲第36号証の2 FACEBOOK((株)G−STARSのページ)
https://www.facebook.com/Gstars.japan/photos/a.1396240000692374/1762191797430524
甲第37号証 乙1・甲5・本件ソール写真対象図
甲第38号証 乙1(1、2枚目)刻印参考図
甲第39号証の1 マモルオンラインショップ(一部抜粋)
https://www.kkmamoru−nyshop.com/product/165
甲第39号証の2 和靴(一部抜粋)
https://kutsuzairyou.nagomigutsu.co.jp/product/kdz−last−sc11−n/
甲第40号証 乙1(3枚目以降)、乙2刻印参考図
甲第41号証 ショップキラキラ本店ブログ(一部抜粋)
http://shop−kilakila.com/blog/?p=9496
甲第42号証 エバロンソール型番表
甲第43号証 エバロンソール現存型番写真
甲第44号証の1 納品書(有限会社大山)
甲第44号証の2 納品書(有限会社大山)
甲第45号証 請求人ラストに関する写真撮影報告書
甲第46号証 請求人ラストと本件ソールとの整合に関する写真撮影報
告書
甲第47号証 乙1(3枚目以降)のラストと請求人ラストとの対比報
告書
甲第48号証 乙2のラストと請求人ラストとの対比報告書
甲第49号証 取引先元帳(高田産業株式会社)
甲第1号証ないし甲第49号証はすべて写しである。

第3 被請求人の答弁及び理由の要点
被請求人は、答弁書を提出し、請求の趣旨に対する答弁を「1 本件審判請求は成り立たない。2 審判費用は請求人の負担とする。との審決を求める。」と答弁し、その理由を、おおむね以下のとおり主張した(「口頭審理陳述要領書」、「口頭審理陳述要領書(2)」及び「上申書」の内容を含む。)。
1 「答弁書」における主張
請求の理由に対する答弁
(1)はじめに
ア 請求の概要
本請求は、本件登録意匠(甲1)について、新規性を欠くこと(意匠法第3条第1項第2号違反、同第3号違反)、創作非容易性を欠くこと(意匠法3条第2項違反)、共同出願違反(意匠法15条1項・特許法38条違反)の各無効事由があることを理由として、これを無効とする審決を求めるものである。
しかし、これには理由がない。
イ 本書面の構成
以下、まず議論の前提として、当事者(「(2)」)、及び本件登録意匠が登録申請されるに至った経緯(「(3)」)について、確認しておく。
その上で、請求の主張する無効理由毎に、認否・反論を行う(「(4)」)。

(2)当事者について
ア 請求人について
請求人は、株式会社ヒカリ技研工業(以下「ヒカリ技研」という)の代表者とのことである(甲6)。
イ 被請求人について
被請求人は、大阪市生野区内において「高田産業」の屋号で、主にケミカルシューズ(合成皮革を使用した靴類)の製造を行っている。同社の創業は、被請求人の父高田義秀であり、被請求人は、現在、同人と共同経営者の立場にある(以下、「高田産業」という場合には、事業所としての高田産業を指すものとする)。
請求人とは、1990年(平成2年)頃から取引があった。しかし、請求人において、合理的な理由に乏しい納品遅滞が続いたことから、2016年(平成28年)8月からは、取引を行っていない。

(3)本件登録意匠が創作され意匠登録されるに至った経緯
ア はじめに
本件登録意匠について、その無効事由の有無について議論する前提として、その創作過程について、確認しておく。
イ ソール部分の創作
(ア)まず、本件登録意匠が、大きくアッパー部分とソール部分に分かれていることについては、争いがない。
ここでまず、ソール部分についてであるが、2013年(平成25年)頃、ヒカリ技研の方から高田産業に対し、同社において開発したとされるE.V.A素材を使用した商品を開発したいので協力して欲しい旨の申入があった。ヒカリ技研においては、新たに機械を導入し、同素材の活用を模索したものの、結局、十分な販路を開拓することができず非常に苦戦していた。そこで、高田産業において、これに応じることとしたものである。
ちなみに、E.V.Aとは、エチレン酢酸ビニル(Ethylene−vinyl acetate)のことで、その発泡体は、ランニングシューズのショックアブソーバーその他多様な用途に用いられている。請求人は、「新素材」云々の主張をしているが、技術的には特段真新しいものではなく、中国や韓国においては、既に一般的に使用されていた素材にすぎない。具体的には、ナイキやアディダスといった欧米系のシューズメーカーは、1990年代以降、欧州からの中国等へ機器を持ち込み、盛んに製造するに至っていた(甲16の冒頭部分に「日本では当社が初めて生産を開始した」と記載されているのは、その意味である)。
(イ)高田産業においては、ヒカリ技研からの前記申出に応じ、同社に対して、前記E.V.A素材を使用したソールの製造を発注することにした。
ここで、ヒカリ技研へのソールの発注にあたって高田産業が同社に提供したのは、高田産業において20年以上も前から使用していた木型(T−23)である。ヒカリ技研においては、同木型を使用して製造したソールについて「HE−23」と呼んでいるが、これは高田産業の所有する木型が基になっている。
同ソールの製造にあたっては、高田産業からヒカリ技研に対し、同木型に合わせたデザインを指示している。短靴のソール面の形状は、美観としての重要性を否定するものではないが、むしろ短靴のソール面の形状は、曲がりやすさその他の機能に直結するため、機能的な側面の方も大きいことを指摘しておきたい。
物理的な意味において図面の描画行為を行ったのはヒカリ技研であるが、意匠の創作(意匠法3条1項)という点からみれば、主体的意思を欠く補助者に過ぎない。
(ウ)前記のような経緯を経て、ソール部分にかかる意匠(甲5)が完成するに至った。
そして、前記のような経緯を踏まえ、高田産業とヒカリ技研との間で、前記ソールについては、ヒカリ技研において、高田産業の許諾無しに第三者に対して製造・販売することが禁止されるに至った(いわゆる「止め型」の合意)。
実際に、ヒカリ技研においては、前記ソールを、キャッスルシューズ、株式会社Iコーポレーションに販売しているが(甲8、9)、これは高田産業の許諾の下に行われたものである。
ウ ヒカリ技研との取引の停止
高田産業においては、その後も、ヒカリ技研に対し、前記ソールの製造を発注し続けた。
ところが、ヒカリ技研においては、代金の度重なる値上げにもかかわらず、納期遅滞が続いた。ソールの納品の遅れは、商品の製造の遅れに直結するため、再三にわたり、改善の申入れを行った。
しかし、ヒカリ技研の納期の遅れは改善されるどころか、ますます悪化したため、2016年(平成28年)8月には、やむを得ず取引を停止することになったものである。
エ 本件登録意匠の作成
(ア)被請求人が、本件登録意匠を創作するに至ったのは、2016年(平成28年)初めのことである。
取引先よりリボンパンプスの製造の注文を受け、履き口をゴムで絞り、足にフィットするような形状にするとともに、軽量化のために不必要なものを取り除いたパンプスを製造することを思いついた。
(イ)具体的には、(i)アッパー部分の開口部周辺にゴム素材を用いて、履き口を絞り(以下「形態d」とする)、(ii)踵部分の縫い目を隠す生地(タテバチ)を付けずに縫い目が見えるようにした(以下「形態e」とする)。また、(iii)アッパー部分の下側が皺にならずに綺麗に見えるようにソール部分の縁をアッパー部分より外側になるようにしている(以下「形態f」とする)。
それまで、履き口をゴムで絞ったデザインのものはなかった。請求人が提出している資料においても、本件登録意匠のようなデザインのものはなかった(甲3)。また、これまでは踵部分を綺麗に見せるため、タテバチを付けるのが通常であったが、軽量化のためにあえてこれを付けないことによって、これまでとは異なるデザインのものとなった。
以上の通り、本件登録意匠の形状が創作されるに至った背景としては、パンプス型の短靴の機能を充実させるという側面があったことは勿論であるが、一方で、短靴の美観としても、従前にはない斬新なものとなった。
オ 請求人の関与について
本件登録意匠のソール部分に、高田産業がヒカリ技研に製造を発注したものが使用されていることは事実である。
しかし、アッパー部分は、被請求人が全く独自に考案しており、請求人が本件登録意匠の全体的な形成に寄与することは、物理的にあり得ない。実際、被請求人は、本件登録意匠を創作するにあたって、請求人とは何のやり取りもしていない。

(4)請求人の無効理由にはいずれも理由がないことについて
ア 無効理由1〜3(意匠法3条1項1号、3号、同法3条2項)について
(ア)はじめに
請求人は、本件登録意匠のうちソール部分を意匠の要部であることを前提として、先行意匠と同一であること(無効理由1)、あるいは類似していること(無効理由2)、さらに創作容易であること(無効理由3)を理由として、その無効を主張している。
しかし、請求人は、意匠の要部にかかる解釈がそもそも誤っている。したがって、これを前提とするその余の議論に関しては反論するまでもなく理由がないが、一応、認否反論しておく。
(イ) 意匠の要部について
知財高裁平成23年3月28日(裁判所WEBSITE)は、「意匠の類否を判断するに当たっては、意匠を全体として観察することを要するが、この場合、意匠に係る物品の性質、用途、使用態様、さらに公知意匠にはない新規な創作部分の存否等を参酌して、取引者・需要者の最も注意を惹きやすい部分を意匠の要部として把握し、登録意匠と相手方意匠が、意匠の要部において構成態様を共通にしているか否かを観察することが必要である」としている(茶園成樹編「意匠法」106頁)。
この点、本件登録意匠にかかる物品は「短靴」である。通常は、ソール面を下にして、踵の足入れ部から片方ずつ足を挿入する方法によって履く。短靴の使用者が、歩行時にソール部を目にすることはない。せいぜいアッパー部分に留まる。短靴の使用者以外の第三者が、ソール部及びその底面を目にする可能性までは否定できないが、基本的にはアッパー部しか目にしない。
また、販売時も、例えばランニングシューズのようにソールの意匠・形状、あるいは機能が、タイムに死活的に大きな影響を与えるような場合はさておき、本件登録意匠のような短靴のような場合、ソール面の意匠に着目して、購入の是非を判断する者はいない。
したがって、ソール部が本件登録意匠の一部を構成していることを否定するものではないが、一方で、ソール部が「取引者・需要者の最も注意を惹きやすい部分」であるとはいえない。それは、短靴であれば、やはりアッパー部であることは否定できない。
(ウ)前記第2の1(1)「エ 本件意匠登録を無効にすべき理由(無効理由1 意匠法第3条第1項第2号違反、無効理由2 同第3号違反、無効理由3 同条第2項違反)」の「(i)」について
本件登録意匠がソール部とアッパー部からなり、特徴A〜Fまでの特徴があることは認め、その余は争う。
前記の通り、アッパー部について、形態d〜fの特徴がある。
(エ) 同じく「(ii)」について
インターネット上の「ラックラックパンプス」の表示及びこれが特徴A〜Fまでの特徴を有していること認め、その余は否認する。
甲4に表示されている「ラックラックパンプス」の製造元は被請求人ではない。商品名の欄にも「GS−001」と記載されており、高田産業の用いる型式とは異なる。これは高田産業の関与していないところで勝手に製造されたものである。
(オ)同じく「(iii)」の「A」について
公知資料1及び2の記載については認め、その余は争う。
そもそも、公知資料番号HJ2401203200及びHJ250139800に記載された意匠は、本件登録意匠の登録の際に、新規性、創作非容易性等の判断の際に参考とした資料として、請求人に通知されており、本件登録意匠はその上で適法に意匠登録されている。
公知資料1における意匠(請求人が先行周辺意匠1ア、同イ、同ウと主張する意匠)は、いずれも履き口をテープで巻いており、俯瞰した際にソール部がアッパー部に隠れるようになっている。本件登録意匠の特徴である形態d〜fのような特徴はなく、トリコロールが施されている点や、中敷きのアーチ(土踏まず部分の盛り上がり)がない点でも本件登録意匠とは異なる。
公知資料2における意匠(請求人が先行周辺意匠2と主張する意匠)は、踵部分にクッションが入っており、プルストラップが付いている。また、中敷きの踵部分にはヒールカップという穴が空いた形態となっている(甲2の2第1枚目の先行周辺意匠2の画像の2つ下の左側の画像)。画像不鮮明であるため、判別が難しいが、本件登録意匠の特徴である形態d〜fのような特徴もない。
したがって、前記公知資料における意匠は、いずれも本件登録意匠のアッパー部とは全く異なる意匠である。
(カ)同じく「B」について
請求人が主張する先行周辺意匠3、4、5の記載が存在すること自体は認め、その余は否認ないし争う。
先行周辺意匠3として主張されている意匠は、履き口を浅めにして、開口部を広くとり、さらに履き口をテープで巻いている。俯瞰した際にソール部がアッパー部に隠れるようになっている。リボン部分は、テープ状のものではなく、紐状のもので作成されている。さらに、リボンの前方にチャームが施されている点や、中敷きのアーチがない点でも本件登録意匠とは異なる。
先行周辺意匠4として主張されている意匠は、画像が不鮮明で判別し難いが、つま先部分を絞ったデザインとなっており、いわゆる「くしゅくしゅ感」が表現されている。履き口をテープで巻き、俯瞰した際にソール部がアッパー部に隠れるようになっている。リボン部分は、テープ状のものではなく、紐状のもので作成されている。
先行周辺意匠5として主張されている意匠は、画像が不鮮明で判別困難であるが、少なくとも履き口をテープで巻いていることは見て取れる。
また、いずれの意匠においても本件登録意匠の特徴である形態d〜fのような特徴もない。
請求人は、一般的なバレーシューズ型であるなどと主張するが、前記の通り、形態d〜fの特徴は一般的なものではなく、高田産業において新規に創作したものである。
したがって、請求人が主張する先行周辺意匠3、4、5は本件登録意匠とは異なった美観を有するものであり、また本件登録意匠の創作性が低いなどということはない。
(キ) 同じく「C」について
後述の通りである。
(ク) 同じく「(iv)」について
認める。
なお、本件登録意匠には、形態a〜cのほか、形態d〜fが認められる。
既に述べた通り、甲4に表示されている「ラックラックパンプス」の製造元は被請求人ではない。すなわち、本件登録意匠の創作者であり、意匠登録を受ける権利を有する被請求人の意に反して公開されたものであり、被請求人は前記商品の取扱日から6月以内に本件登録意匠を出願している。したがって、仮に甲4に表示されている意匠が本件登録意匠に同一又は類似の先行意匠と認められるとしても、新規性喪失の例外(平成30年法33号による改正前の意匠法4条1項)に該当する。
(ケ)同じく「(v)」について
否認ないし争う。
アッパー部にも新規性、創作非容易性は認められ、アッパー部が本件登録意匠の要部でないとはいえない。
(コ) 同じく「(vi)」について
争う。
請求人は、「甲4および甲5を組み合わせると容易に本件登録意匠を被請求人が創作できる」としている。しかし、被請求人が本件登録意匠を創作するに至った経緯は、前述の通りであり、形態d〜fも付加されている事実を踏まえていない。
(サ)同じく「(vii)」について
争う。
イ 無効理由4〜6(意匠法3条1項1号、3号、同法3条2項)について
(ア)はじめに
請求人は、本件登録意匠のうちソール部分を意匠の要部であることを前提として、先行意匠と同一であること(無効理由4)、あるいは類似していること(無効理由5)、さらに創作容易であること(無効理由6)を理由として、その無効を主張している。
しかし、請求人は、意匠の要部にかかる解釈がそもそも誤っている(前記ア(イ))。したがって、これを前提とするその余の議論に関しては反論するまでもなく理由がないが、一応、認否反論しておく。
(イ)前記第2 1(1)「オ 本件意匠登録を無効にすべき理由(無効理由4 意匠法第3条第1項第1号違反、無効理由5 同第3号違反、無効理由6 同条第2項違反)」の「(i)」について
既に述べた通りである。
(ウ)同じく「(ii)」の「A」について
第1段落について、製造図面(甲5)が、本件登録意匠のソール部にかかるものであることは認める。その余は、不知。
第2段落について、前記ソールを、ヒカリ技研が高田産業に販売したことがあること、また、ヒカリ技研が、キャッスルシューズ及び株式会社Iコーポレーションに前記ソールを販売したことがあることについては認める。公知となったかどうかについては、争う。
ただし、ヒカリ技研が高田産業に初めて前記ソールを納品したのは、2013年(平成25年)10月7日のことである(甲7にも、平成25年5月8日という記載はない)。
第3段落〜第11段落については、認める。
(エ)同じく「(ii)」の「B」について
不知。
なお、請求人はエバロン云々の議論をしているが、結局はE.V.Aの一種であり、E.V.A自体、技術的には特段真新しいものではなく、中国や韓国においては、既に一般的に使用されていた素材にすぎないことは、前述の通りである。
なお、ゴム化学新聞(甲10)は、依頼すれば比較的容易に記事化してもらえる業界紙のひとつである。
(オ)同じく「(iii)」について
既に述べた通りである。
(カ)同じく「(iv)」について
認める。
なお、本件登録意匠には、形態a〜cのほか、形態d〜fが認められる。
(キ)同じく「(v)」について
争う。
ソール部のみが、本件登録意匠の要部ではない。また、「ソール」と「短靴」とは別の物品である。
(ク)同じく「(vi)」について
争う。
請求人は「前記に示す甲5に、先行周辺意匠1ア、同イ、同ウ、2乃至5と甲4を組み合わせると、容易に被相続人(ママ)は、本件登録意匠を創作することが可能である」としている。しかし、被請求人が、本件登録意匠を創作するに至った経緯は、前述の通りであり、形態d〜fも付加されている事実を踏まえていない。
(ケ)同じく「(vii)」について
争う。
ウ 無効理由7(意匠法15条・特許法38条)について
(ア)はじめに
請求人は、本件登録意匠に関して、請求人が共同創作者であることを前提に、意匠登録を受ける権利が共有にかかる場合について定めた意匠法15条1項・特許法38条に違反する旨主張する。
しかし、請求人は、本件登録意匠の創作には関与しておらず、理由がない。
以下、請求人の主張について認否・反論する。
(イ)前記第2の1(1)「カ 本件意匠登録を無効にすべき理由(無効理由3 共同出願違反 意匠法第15条で準用する特許法第38条違反)」の「(i)」、「(ii)」について
争う。
なお、本件登録意匠の要旨(「(ii)」)についての認否等は、前述の通りである。
(ウ)同じく「(iii)」の「A」について
否認する。
本件登録意匠が作成されるに至った経緯については、既に述べた通りである。ソール部分についても、請求人が創作した事実はない。
(エ)同じく「B」について
当事者間で文書(甲13〜15)がやり取りされた事実、及び各文書の記載文言については、認める。
その余については、否認ないし争う。
請求人は、「意匠権の帰属を合意すること」と「意匠登録を受ける権利の譲渡を受けること」を同義とし、さらに、「意匠権の帰属を合意すること」が、「請求人が創作者であること」、「本件登録意匠が共同創作であること」を前提とするものであるとしているが(同15頁)、請求人独自の解釈というべきであり理由がない。
(オ)同じく「C」について
高田産業とヒカリ技研との間で、本件ソールについての取引がなされていたことについては認める。
その余については、争う。
同月頃以降、取引を停止するに至った経緯については、既に述べた。
(カ)同じく「D」について
否認、ないし争う。
まず、遅くとも2010年(平成22年)頃までの段階で(請求書からは時期が明らかではない)、アッパーとソールを接着させる短靴の製造実績がないという事実は誤りである。同年の段階で、ゴム靴(サーモプラスティック・ラバー、通称TRの意味と解釈した)以外に、E.V.Aを使用した短靴についても、多数の製造実績を有していた。
また、請求人がエバロンソール接着工程にかかる一般的説明事項としている内容(甲16記載の工程)は、高田産業が株式会社ノーテープ商事との間で試行錯誤の上、完成したものである。請求人は、関与していない。むしろ、高田産業は、同社に対し、前記内容をヒカリ技研に開示したことについて抗議すら行っているくらいである。
さらに、「接着面を一部削って均一性を保つなどのノウハウ」とあるが、高田産業を含む大阪府下のケミカルシューズメーカーでこのような工程を採用しているところは皆無と思われる。無駄に不良を発生させるだけだからである。
ところで、そもそも製造方法の如何は、あくまで技術的な領域に留まり、「視覚を通じて美観を起こされるもの」(意匠法2条1項)であるところの意匠の創作とは関連がない。
いずれにせよ、本件登録意匠を、請求人が被請求人と共同して創作したとする事実はない。
(キ)同じく「(iv)」の「A」について
請求人は、本件登録意匠に関して意匠登録を受ける権利が請求人にも帰属していたことを前提として議論を進めている。しかし、既に述べたように、その前提自体が誤っている。以下においては、前提となる認識が齟齬していることを前提に議論する。
まず、本件登録意匠について、出願の事実を請求人が認識していたかどうかについては不知。
前記ソールについて、いわゆる「止め型」ではないとする点については否認する。前記ソールの製造にあたって、高田産業が金型代を負担していないことは認めるが、当該事実が、いわゆる「在り型」であったことを意味するものではない。「止め型」にするのか「在り型」にするのかは、取引毎に取り決められるものであり、金型代の負担は、その際の考慮要素の一つにすぎない。今回の場合、高田産業からヒカリ技研に依頼して作成してもらったものではなく、むしろ高田産業においてヒカリ技研からの要望に応えたものである。その結果、金型代の負担の如何にかかわらず「止め型」とされるに至った(甲15)。そもそも、ヒカリ技研は、「在り型」に関しては「EVARON」との刻印を入れているが、今回のソールには入れていない。
なお、「T−030」と記載されたソールについては、高田産業でも把握していない。ヒカリ技研も高田産業も関与していないところで勝手に製造されている疑いが濃厚である。
(ク)同じく「B」について
この点についても、本件登録意匠に関して、請求人が被請求人と共同して創作にあたったことを前提とする議論である。しかし、その前提自体が誤っている。
また、請求人が指摘する裁判例(知財高裁平成25年3月28日)が存在すること自体は争わないが、本審判事件への引用としては相当疑問である。被請求人が、本件登録意匠について、共同創作者であると認めたことは一度もない。
(ケ)同じく「(v)」について
争う。

2 「口頭審理陳述要領書」及び「口頭審理陳述要領書(2)」における主張
(1)「口頭審理陳述要領書」
アはじめに
(ア) 本審判の概略
本審判は、本件登録意匠(甲1)について、(i)新規性を欠くこと(意匠法第3条第1項第2号違反、同第3号違反)、(ii)創作非容易性を欠くこと(意匠法3条第2号違反)、(iii)共同出願違反(意匠法15条1項・特許法38条違反)の各無効事由があることを理由として、これを無効とする審決を求めるものである。
(イ)本審判の争点
本審判の争点は、概ね、次の通りである。
A 本件登録意匠の創作経緯
本件登録意匠は、高田産業が作成した木型「T−23」に基づくものであり、これを基に、請求人の主張する「HE−23」が作成されたに過ぎず、被請求人は創作の補助者に過ぎないのではないか。
B 本件登録意匠の要部
本件登録意匠の要部はソール部のみか。
C 本件登録意匠の新規性・創作非容易性
本件登録意匠のアッパー部に新規性・創作非容易性が認められるか。請求人が主張する先行意匠及び先行周辺意匠の存在が本件登録意匠の新規性・創作性を否定することになるか。
D 本件登録意匠のソール部が「止め型」か否か
本件登録意匠のソールの製造について「止め型」であったのか「在り型」であったのか。
(ウ)前記の各争点についての被請求人の主張は、既に提出した2020年9月28日付答弁書において明らかにしている。本書面においては、請求人から提出された弁駁書を踏まえて、主張を補充する。
イ 本件登録意匠の創作経緯
(ア)はじめに
本件登録意匠の創作経緯については、既に詳細に主張した(前記1(3)
)。請求人は弁駁書において、「HE−23」の創作経緯や高田産業での本件登録意匠と同様の短靴の創作経緯について新たに主張をしているため、これに対して反論する。
(イ)「T−23」について
「T−23」は、高田産業において創作したアルミ製の木型であり、請求人が主張する通り「ラスト」と呼ばれるものである(乙1)。
「靴の世界に於けるラストとは、『靴の良し悪しは、最終的に靴型で決まる』という意味で『LAST』と呼ばれるようになったそうです。これがメーカーの宝とも言われるラストのお話でした。」(甲29の4頁目)
と記載されている通り、メーカーにとって「ラスト」は靴の製造に欠かせない高価なものであり、非常に重要なものである。
高田産業は、2007年(平成19年)4月16日、「T−23」の木型の製造をヒロノアルミに依頼し、現在その木型の元となった型はヒロノアルミに預けている(乙2)。
(ウ)ソール部の製作
高田産業が製造しているケミカルシューズは、木型を使用してこれに合うアッパーとソールを発注して製造するものである。ソール部を発注する際には、この木型と合わせてボール型を発注先に交付して行う。
本件登録意匠のソール部についても、2013年(平成25年)頃、ヒカリ技研からE.V.A素材を用いた商品を開発したいので協力してほしい旨の申し出を受け、高田産業がヒカリ技研に対して、「T−23」の木型とボール型を交付した。
(エ)「HE−23」の図面(甲5)の製作経緯
前記の通り、ソール部は、木型(ラスト)に合わせて製作される。
請求人は、「HE−23」の図面を2010年(平成22年)10月6日に作成したと主張しているが、高田産業が「T−23」の木型を提供する前に、これと完全に一致するソール部の図面を制作することは、客観的に不可能である。
請求人は、「HE−23」の図面(甲5)が、同日、製作されたと主張するが、同図面が、同日成立したとする事実については、否認する。
なお、「T−23」という型番は、高田産業における短靴の木型の23番目を意味している。「HE−23」という型番は、この「T−23」の数字部分を用いたものであると考えられる。
(オ)本件登録意匠の創作
A 「止め型」の合意
高田産業は、ヒカリ技研に対して、2013年(平成25年)頃、「T−23」に合うソール部の製作を指示した。
高田産業とヒカリ技研との間で行った「止め型」の合意においては、高田産業から近隣に所在するケミカルシューズの製作会社には販売しないように伝え、ヒカリ技研がこれを承諾したものである。特に、「高田産業の本拠地である大阪市生野区周辺のケミカルシューズ製作会社には絶対に販売しないように」ということを念を押していた。一方で、ケミカルシューズ以外は、価格帯も異なり、高田産業の競争相手とはならないため、販売を特に禁止していない。
請求人が主張している株式会社I.コーポレーションと株式会社キャッスルシューズはいずれも革靴の製作を行う業者である。高田産業は、ヒカリ技研から株式会社I.コーポレーションに本件登録意匠と同一のソール部を販売することの承諾を求められたことがあったが、同社が革靴の製作会社であったため、承諾した。
なお、請求人は、株式会社I.コーポレーションに比して高田産業に販売する単価が安いことを指摘しているが、業界においてケミカルシューズが革靴より安価であることは常識である。ケミカルシューズは単価が安い代わりに販売数が多いことから、大量に発注し原価を抑える必要があるため安価に仕入れを行うことができるという事情がある。
B アッパー部とソール部の接合について
請求人は、アッパー部とソール部の接合について、高田産業にノウハウを提供したと主張している(前記第2の1(1)カ(iii)D)。しかし、請求人はそのような関与を行っていないことは既に述べた通りである(前記1(4)ウ(カ))。この点について、請求人がさらに事実と異なる主張を繰り返すので(前記第2の2(1)イ(エ))、反論する。
そもそも、高田産業は、2010年(平成22年)頃には、既にゴム靴以外にも、E.V.Aを使用した短靴についても、多数の製造実績を有していた。
請求人は、中敷きの素材を「二段ボール」から「テキソンボール」に変えることを提案したと主張している。しかし、本件登録意匠の短靴に使用されている中敷きの素材は「二段ボール」でも「テキソンボール」でもない。確かに、「二段ボール」は「テキソンボール」に比して硬質なものであるが、「テキソンボール」も弾力性はなく、本件登録意匠の短靴の最も重要な要素である屈曲性という要請に応えられる素材ではない。本件登録意匠の短靴の中敷きは、朝日実業から仕入れている弾力性を有する素材であるところ、請求人がこれを感知していないという事実からも、請求人が、実際には、本件登録意匠の創作に関与していないことが裏付けられる。
(カ)小括
以上の通り、本件登録意匠は、高田産業が作成した木型「T−23」に基づくものであり、これを基に、請求人の主張する「HE−23」が作成されたに過ぎず、請求人は創作の補助者に過ぎない。
ウ 本件登録意匠の要部
本件登録意匠の要部は、ソール部のみではないことについては既に主張した通りである(前記1(4)ア(イ))。
また、本件登録意匠においてはソール部の伸縮性を生かした中敷きを試行錯誤し、アッパー部とソール部との接着工程においても高田産業が創意工夫して行ったものである(前記1(4)ウ(カ))。
エ 本件登録意匠の新規性・創作非容易性
本件登録意匠についての公知資料や請求人の主張する先行周辺意匠との相違点については既に主張した通りであり(前記1(3)エ、1(4)ア(エ)ないし(カ)、アッパー部や接合方法等にも新規性・創作非容易性が認められる。
なお、請求人は、「ラックラックパンプス」の製造元が被請求人でなければ、何ら秘密保持義務等があるはずなく、甲4により公知に至ったとして新規性喪失の例外(意匠法4条第1項)の要件を満たさないと主張する(弁駁書12頁)。しかし、同項の「意に反して」とは、「自己の意思の支配が及ばない状況で公知になった場合」と解されており(茶園成樹編「意匠法」第2版73頁)、「ラックラックパンプス」に刻印されている型番が高田産業で用いられているものではないこと等から盗用されたものであることは明らかである。したがって、新規性喪失の例外の要件を満たす。
オ 本件登録意匠のソール部が「止め型」か否か
本書「イの(オ)A」で主張した通り、本件登録意匠は「止め型」である。
カ まとめ
本件登録意匠は、ソール部のみが要部ではない。また、高田産業がヒカリ技研に対して、「T−23」の木型に合わせたソール部の製作を依頼したものであり、請求人は、本件登録意匠の創作の補助者に過ぎず、共同して創作したものではない。高田産業と請求人との間では「止め型」の合意をしており、本件登録意匠の意匠権は被請求人に帰属している。
したがって、請求人の主張はいずれも理由がないものであり、本件審判の請求は成り立たない。

(2)「口頭審理陳述要領書(2)」
前記審判事件に関し、「T−23」に関する主張について訂正及び主張の補充をする。
ア 乙1の1枚目、2枚目について
乙1の1枚目、2枚目は、「T−23」ではなく、ラストの見本として別の型番ものを写真撮影したものであった。1枚目、2枚目と3枚目以降では、明らかに質感も異なる。そこで、乙1の1枚目、2枚目が「T−23」であるとする主張は誤りであったので、訂正する。
イ 乙1の3枚目ないし6枚目について
乙1の3枚目ないし6枚目に撮影されているものが「T−23」のラストである。
なお、「T−23」についてサンダル用型であると主張する(前記第2の3(1)エ(エ))が、これは短靴用の型である。
「T−23」の特徴として、つま先から踵までの長さが長いという特徴があるところ、これはつま先部分にゆとりをもたせて履きやすくするという目的がある。一方サンダルのつま先部分は空いており、つま先部分にゆとりをもたせる必要はない。請求人は、「M」という刻印は、サンダルに行われるものであると主張するが、短靴であっても、製造の際に「M」サイズを製作することはある。「T−23」は当初、「S」、「M」、「L」、「LL」の4サイズを製造しており、その後24.0のサイズを追加し、それぞれセンチの表記に改めたものである。また、短靴は、サンダルと異なり、底とアッパーをつなぎ合わせる「つりこみ」という作業が必要であるため、1個の製品を作成するのにラストが必要な作業時間が長い。そのため、ラストの個数は複数必要となる。高田産業においては、「T−23」のラストを複数保有している。

3 被請求人の「上申書」における主張
甲第5号証の形式的証拠力について次のとおり上申する。
(1)甲第5号証の形式的証拠力については否認する。
甲第5号証は、請求人が令和2年5月19日付証拠説明書記載の作成日付(2010年10月6日)とは異なる日時に作成されたものであり、真実作成されたものではない。

(2)高田産業は、2007年(平成19年)4月16日に「T−23」(乙1の3枚目以降)の木型の製造を依頼した(乙2)。高田産業は、2013年(平成25年)頃、ヒカリ技研からE.V.A素材を用いた商品を開発したいので協力してほしい旨の申し出を受けた。ヒカリ技研は、E.V.A素材の活用を模索したものの、上手くいかなかったため、高田産業に商品開発の協力を依頼した。
本件登録意匠のようなケミカルシューズの製造をする際には、ソール部はラストに合わせて製作される。本件登録意匠のソール部の製造においても、高田産業がヒカリ技研へラストを提供して、これに合うソール部の製作を発注した。「T−23」のソール部と甲第5号証で示されている図面は完全に一致している。ソール部の型は、靴によって様々であるが、例えば、「T−23」の特徴であるつま先から踵までの長さが長いという特徴と甲第5号証の図面が一致している。そして、両者が偶然一致することはありえない。
すなわち、高田産業が2013年(平成25年)以降にヒカリ技研に「T−23」のラストを提供した後に甲第5号証に示される図面が製作されている。
しかし、甲第5号証の作成日付は、2010年(平成22年)10月6日となっており、図面の右上部にスタンプ様のもので日付の刻印がされている。前記の通り、高田産業が「T−23」を提供する前に、甲第5号証に示される図面が製作されることはあり得ないから、甲第5号証は、真実作成されたものではない(前記2(1)イ(エ)及び2(2)イ 参照)。

4 被請求人添付の証拠
乙第1号証 「T―23」のアルミ製の木型(ラスト)(3枚目ないし6枚 目)の写真
乙第2号証 「T−23」の元の木型の写真

第4 口頭審理
当審は、本件審判について、令和3年(2021年)3月22日に口頭審理を行った。審判長は、本件審判において請求人が主張する本件登録意匠の登録の無効理由について、前記第2の1(1)ウ(ア)ないし(キ)のとおりとし、甲第1号証ないし甲第43号証、乙第1号証及び乙第2号証について取り調べた。請求人及び被請求人は、後日上申書を提出することとなった。(令和3年3月22日付け「第1回口頭審理調書」)

第5 当審の無効理由通知
当審は、請求人及び被請求人の主張について審理し、更に請求人が申し立てない理由についても審理したところ、本件登録意匠の意匠登録に無効理由が認められたので、その無効理由を、被請求人に対して、令和3年(2021年)8月2日付け無効理由通知書により通知し、期間を指定して意見書の提出を求めたが、被請求人からの応答はなかった。併せて、その審理の結果を、請求人に対して、同日付け職権審理結果通知書により通知し、期間を指定して意見書の提出を求めたが、請求人からの応答はなかった。

当無効理由通知書及び職権審理結果通知書により通知した無効理由は、同内容であり、本件登録意匠が、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記2の意匠(以下「引用意匠」という。)に類似するものと認められ、意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するから、本件の意匠登録が同法同条同項の規定に違反してされたものであり、意匠法第48条第1項第1号の規定に該当するので無効とすべきものであるとの理由であり、具体的には以下のとおりである。

1 本件登録意匠(別紙第1参照)
本件の意匠登録は、平成29年(2017年)5月26日に意匠登録出願(意願2017−11248)され、平成30年(2018年)1月12日に意匠権の設定の登録(意匠登録第1596866号)がなされたものであって、その意匠は、意匠に係る物品を「短靴」とし、願書及び願書に添付した図面の記載によれば、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下、「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)は、願書及び願書に添付した図面の記載のとおりとしたものである。
本件登録意匠の形態は、具体的には以下のとおりである。
基本的構成態様
(1)右足用靴であって、全体は、開口部となる履き口部を設けた、甲部、かかと部及び周側面部により構成する「アッパー部」と、靴底となる「ソール部」から成り、履き口部が装着時のくるぶしより低い短靴型としたものである。
具体的構成態様
(2)履き口部の形態は、平面視で全体の横方向3分の2強ほどの長さの略扁平楕円形状の開口部を巡る縁部であって、正背面視では、かかと側からつま先方向に向かい、緩やかに下側に傾斜し、履き口部の縁部外周は縁部に沿って帯状布を配し、帯状布に沿って略ジグザグ状のステッチを施している。
(3)甲部の形態は、履き口側の端部がつま先に向かって略円弧状の平面視で太めの略三日月状であって、周側面と一体に形成され、つま先寄りでやや上向きに成る甲面を形成し、甲部履き口側中央には、蝶結び状の細幅のリボン飾りが施されている。
(4)アッパー部のかかと部の形態は、左側面視で略山状であって、縦方向略中央に、縫合部を設け、正背面視で、つま先側を略円弧状のステッチ部で区切って、かかと側の上方は内傾しつつ、下方は丸みを帯びて、平面視で略放物線状に立設している。
(5)アッパー部のかかと部以外の周側面部の形態は、正面から背面にかけてつま先部を外側へ丸みをもって巡り、平面視で左に約90度回転した略U字状に立設したものであって、正背面視でつま先に向けて先細る略くさび状に立設し、正背面視で僅かにたわんだものと認められ、履き口寄りには、しわ部分が認められる。
(6)ソール部は底面視で土踏まず側に僅かに湾曲して幅が細くなった略落花生状形状の板状体であって、
(7)正背面視で、ソール部は略くさび状で、つま先側は厚みが薄く、かかと側に向けて漸次厚くなっており、つま先側はやや上方に向けて反っている。つま先側から中程まで及びかかと側の周側面はなめらかで外方にやや膨出しており、その間の中間部は上方に向けて末広がりの略横長扁平逆台形状で、僅かに落ち込み、表面は細かなダイヤ状の凹凸が施され、底面寄りには、ほぼ等間隔に設けられた溝部がつま先側から中程までは深めに、かかと側はやや浅めに設けられている。
(8)足裏部は、甲裏部、土踏まず部及びかかと裏部の大きく3つに分けられ、
(8−1)甲裏部は、つま先側先方に略半月状のつま先裏部を区画し、その余の土踏まず部までの甲裏部を、底面視で縦方向略5等分に、土踏まず部との境界となる溝部は、ほぼ直線状で、その他の溝部は僅かにつま先側に湾曲した溝部として、計6本の溝部で分割し、横方向には、靴の外形の湾曲に沿って外方に湾曲した溝部が上側2本下側2本の計4本設けて、5分割し、縦方向の溝部とあわせて、変形升目状に計25個に分割している。また、横方向の、上から1列目、3列目及び5列目の分割面上には、略円形状の溝部(外側は円形で内側は6角形)を設け、中央に浅い小円状凹部を設けている。
(8−2)土踏まず部は、底面視、上寄り及び下寄りに内方に湾曲した帯状部を設け、その周囲は帯状部面より落ち込んでおり、上下の帯状部の間の撥状凹部には「22.0」及び、「MADE IN JAPAN」の文字部が配されている。
(8−3)かかと裏部は、かかと側先方に略半月状のかかと先裏部を区画し、その余の土踏まず部までのかかと裏部を、底面視、縦方向略2等分に、僅かにかかと側に湾曲した溝部として、計3本の溝部で分割し、横方向には、僅かに外方に湾曲した溝部を2本設けて、3分割し、縦方向の溝部とあわせて、変形升目状に計6個に分割している。またすべての分割面上には、略円形状の溝部を設け、中央に浅い小円状凹部を設けている。
(9)また、足裏部表面について、足裏部の凹部と略円形状の溝部内を除いて、表面に滑り止めを施しており、つま先裏部及びかかと先裏部には、先方側の外形状に沿って、列状に、小突起状部を多数施し、その他の面には、細かなダイヤ状の凹凸を施している。
(10)アッパー部の外側全体は白みを帯びた金色であり、内側も白みを帯びた金色であって、ソール部は、黒灰色である。

2 引用意匠(別紙第2参照)
引用意匠は、株式会社セシールによって運営されるカタログ通販セシール(cecile)オンラインショップ「cecile」に掲載されたデジタルカタログ「美・健康のエッセンス Beauty&Health 2016 VOL.3」51頁の左端列商品紹介コーナー所載の「ラックラック 4 空飛ぶパンプス」として示された(ゴールド95及びブラック35)「パンプス」の意匠及びその記載。
(なお、ゴールド95及びブラック35は、同品番の色違いのものを表していると認められる。引用意匠は、基本的に、上段画像部のモデル着用の4、ゴールド95として示された靴に基づいて認定するが、背面及び右側面を斜め上からの画像であるので、平面視、背面視、右側面視及び底面視の形態については、下段画像部の赤丸囲い数字1ないし9に示された画像からも認定する。)
出力日 2021年7月28日
カタログ掲載URL
https://www.cecile.co.jp/fst/digicata/65301/sp.html
また、本カタログの公開時期について、本カタログは表紙に有効期限「2017.3.31」と記載されているが、タイトルに「2016 VOL.3」とあるように、カタログ商品の販売開始は2016年と認められ、そして、株式会社 PR TIMES運営のプレスリリース配信サービスサイト「PR TIMES」の2016年6月28日の掲載記事(URL https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000623.000003084.html)(参考文献(別紙第3参照))に「セシールより、幅広・甲高にも対応した足に優しい13機能パンプスを新発売」と題し、「・・・『Beauty & Health 2016 VOL.3』およびセシールオンラインショップ(http://www.cecile.co.jp/)において、2016年秋冬の新商品として、セシール企画の幅広・甲高にも対応した足に優しい13機能パンプスの他、この秋冬も引き続き話題の「スーパーフード」や「水素」に関連した各種アイテムを、2016年7月1日より新発売します。」と紹介されており、この記事から、遅くとも2016年7月から本カタログの掲載商品は販売を開始され、カタログ及びデジタルカタログは、消費者が商品購入の際に商品を選び、商品内容を確認するために用いられるものであるから、同時期に本カタログも公開されたと認められ、上記意匠は、本件登録意匠出願前に公然知られたものと認められる。
引用意匠の形態は、具体的には以下のとおりである。
引用意匠の図面の向きは、本件登録意匠の図面の向きにあわせて認定する。
基本的構成態様
(1)右足用靴であって、全体は、開口部となる履き口部を設けた、甲部、かかと部及び周側面部により構成する「アッパー部」と、靴底となる「ソール部」から成り、履き口部が装着時のくるぶしより低い短靴型としたものである。
具体的構成態様
(2)引用意匠のサイトに掲載の画像は斜め上方向からの画像であるが、履き口部の形態は、平面視で全体の横方向3分の2強ほどの長さの略扁平楕円形状の開口部を巡る縁部であって、背面視では、かかと側からつま先方向に向かい、緩やかに下側に傾斜し、履き口部の縁部外周は縁部に沿って帯状布を配しており、帯状布に沿ってステッチを施している。
(3)甲部の形態は、履き口側の端部がつま先に向かって略円弧状の平面視で太めの略三日月状であって、周側面と一体に形成され、つま先寄りでやや上向きに成る甲面を形成し、甲部履き口側中央には、蝶結び状の細幅のリボン飾りが施されている。
(4)かかと部の形態は、左側面視から観察できないが、右方向から見て、略山状であって、かかと側の上方は内傾しつつ、平面視、略放物線状に立設し、背面視で、つま先側を略円弧状のステッチ部で区切っていると認められる。
(5)アッパー部のかかと部以外の周側面部の形態は、正面から背面にかけてつま先部を外側へ丸みをもって巡り、平面視、左に約90度回転した略U字状に立設したものであって、背面視でつま先に向けて先細る略くさび状に立設し背面視で僅かにたわんだものと認められる。
(6)ソール部は底面視で土踏まず側に僅かに湾曲して幅が細くなった略落花生状形状の板状体であって、
(7)背面視でソール部は略くさび状で、つま先側は厚みが薄く、かかと側に向けて漸次厚くなっており、つま先側はやや上方に向けて反っている。つま先側から中程まで及びかかと側の周側面はなめらかで外方にやや膨出しており、その間の中間部は上方に向けて末広がりの略横長扁平逆台形状で、僅かに落ち込み、表面は細かな凹凸が施され、底面寄りには、ほぼ等間隔設けられた溝部がつま先側から中程まで設けられている。
(8)足裏部は、甲裏部、土踏まず部及びかかと裏部の大きく3つに分けられ、
(8−1)甲裏部は、つま先側先方に略半月状のつま先裏部を区画し、その余の土踏まず部までの甲裏部を、底面視、縦方向略5等分に、土踏まず部との境界となる溝部はほぼ直線状その他の溝部は僅かにつま先側に湾曲した溝部として、計6本の溝部で分割し、横方向には、靴の外形の湾曲に沿って外方に湾曲した溝部が上側2本下側2本の計4本設けて、5分割し、縦方向の溝部とあわせて、変形升目状に計25個に分割している。また、横方向の、上から1列目、3列目及び5列目の分割面上には、略円形状の溝部を設けている。
(8−2)土踏まず部は、底面視、上寄り及び下寄りに内方に湾曲した帯状部を設け、その周囲は帯状部面より落ち込んでおり、上下の帯状部の間の撥状凹部には文字部が配されている。
(8−3)かかと裏部は、かかと側先方に略半月状のかかと先裏部を区画し、その余の土踏まず部までのかかと裏部を、底面視、縦方向略2等分に、僅かにかかと側に湾曲した溝部として、計3本の溝部で分割し、横方向には、僅かに外方に湾曲した溝部を2本設けて、3分割し、縦方向の溝部とあわせて、変形升目状に計6個に分割している。またすべての分割面上には、略円形状の溝部を設けている。
(9)また、足裏部表面について、足裏部の凹部と略円形状の溝部内を除いて、表面に滑り止めに細かな凹凸を施している。
(10)色彩については、アッパー部は、外側全体は白みを帯びた金色であり、内側も白みを帯びた金色であって、ソール部は、黒灰色である。

3 対比
本件登録意匠と引用意匠の対比
(1)物品について
本件登録意匠は「短靴」であって、引用意匠は「パンプス」であって、表記は相違するが、共に履き口部が装着時のくるぶしより低い短靴型としたものであるから、本件登録意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、同一である。
(2)形態について
ア 共通点
基本的構成態様について
(A)右足用靴であって、全体は、開口部となる履き口部を設けた、甲部、かかと部及び周側面部により構成する「アッパー部」と、靴底となる「ソール部」から成り、履き口部が装着時のくるぶしより低い短靴型としたものである点、
具体的構成態様について
(B)履き口部の形態は、平面視で全体の横方向3分の2ほどの長さの略扁平楕円形状の開口部を巡る縁部であって、背面視では、かかと側からつま先方向に向かい、緩やかに下側に傾斜し、履き口部の縁部外周は縁部に沿って帯状布を配し、帯状布に沿ってステッチを施している点、
(C)甲部の形態は、履き口側の端部がつま先に向かって略円弧状の平面視で太めの略三日月状であって、周側面と一体に形成され、つま先寄りでやや上向きに成る甲面を形成し、甲部履き口側中央には、蝶結び状の細幅のリボン飾りが施されている点、
(D)アッパー部のかかと部の形態は、略山状であって、背面視でかかと側の上方は内傾しつつ、下方は丸みを帯びて、平面視で略放物線状に立設し、つま先側を略円弧状のステッチ部で区切っている点、
(E)アッパー部のかかと部以外の周側面部の形態は、正面から背面にかけてつま先部を外側へ丸みをもって巡り、平面視、左に約90度回転した略U字状に立設したものであって、背面視でつま先に向けて先細る略くさび状に立設し、正背面視で僅かにたわんだものと認められる点、
(F)ソール部は底面視で下方に僅かに湾曲して幅が細くなった略落花生状形状の板状体である点、
(G)アッパー部のかかと部以外の周側面部の形態は、背面視でつま先側はやや上方に向けて反っており、つま先側から中程まで及びかかと側の周側面はなめらかで外方にやや膨出しており、その間の中間部は、上方に向けて末広がりの略横長扁平逆台形状で、僅かに落ち込み、表面は細かな凹凸が施され、底面寄りには、ほぼ等間隔設けられた溝部がつま先側から中程まで設けられている点、
(H−1)甲裏部は、つま先側先方に略半月状のつま先裏部を区画し、その余の土踏まず部までの甲裏部を、底面視、縦方向略5等分に、土踏まず部との境界となる溝部はほぼ直線状で、その他の溝部は僅かにつま先側に湾曲した溝部として、計6本の溝部で分割し、横方向には、靴の外形の湾曲に沿って外方に湾曲した溝部が上側2本下側2本の計4本設けて、5分割し、縦方向の溝部とあわせて、変形升目状に計25個に分割している。また、横方向の、上から1列目、3列目及び5列目の分割面上には、略円形状の溝部を設けている点、
(H−2)土踏まず部は、底面視、上寄り及び下寄りに内方に湾曲した帯状部を設け、その周囲は帯状部面より落ち込んでおり、上下の帯状部の間の撥状凹部には文字部が配されている点、
(H−3)かかと裏部は、かかと側先方に略半月状のかかと先裏部を区画し、その余の土踏まず部までのかかと裏部を、底面視、縦方向略2等分に、僅かにかかと側に湾曲した溝部として、計3本の溝部で分割し、横方向には、僅かに外方に湾曲した溝部を2本設けて、3分割し、縦方向の溝部とあわせて、変形升目状に計6個に分割している。またすべての分割面上には、略円形状の溝部を設けている点、
(I)また、足裏部表面について、足裏部の凹部と略円形状の溝部内を除いて、表面に滑り止めに細かな凹凸を施している点、
(J)色彩については、アッパー部は、外側全体は白みを帯びた金色であり、内側も白みを帯びた金色であって、ソール部は、黒灰色である点が共通する。
イ 相違点
具体的構成態様について
(a)アッパー部の履き口部について、本件登録意匠が帯状布に沿って略ジグザグ状のステッチを施しているに対し、引用意匠は、ステッチ部が略ジグザグ状とは看取できない点、
(b)アッパー部のかかと部の形態について、本件登録意匠は、左側面視で、縦方向略中央に縫合部を設けているのに対し、引用意匠は、かかと部左側面視の態様は不明である点、
(c)アッパー部のかかと部以外の周側面部の形態について、本件登録意匠は、履き口寄りには、しわ部分が認められるのに対し、引用意匠は僅かにたわんだものと認められるが、しわ部分は認められない点、
(d)本件登録意匠は、ソール部の正背面視の中間部及び、足裏部の凹部と略円形状の溝部内を除いて、表面に滑り止めに細かなダイヤ状の凹凸が施され、つま先裏部及びかかと先裏部には小突起状部を多数施し、略円形状の溝部の中央に浅い小円状凹部を設けているのに対し、引用意匠は細かな凹凸が施されていると認められるが、略円形状の溝部の中央の凹部の有無及び細かな凹凸の細部は看取できない点で相違する。

4 判断
(1)意匠に係る物品の類否判断
両意匠の意匠に係る物品は、同一である。
(2)両意匠の形態の共通点及び相違点の評価
ア 形態の共通点の評価
共通点(A)については、右足用靴で、履き口部、甲部、かかと部及び周側面部により構成し、短靴型とした両意匠全体の基本的な形態は、短靴の物品分野において、概括的な態様にとどまり、この共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。
次に、アッパー部の共通点(B)、共通点(D)及び共通点(E)については、短靴の分野において、よく見られる形態であって、履き口部の形態、かかと部の形態及び周側面の形態それぞれが、両意匠のみに共通する特徴とはいえないが、履き口部の広い、ローヒールパンプスタイプの短靴として共通する基調を形成し、両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度あるものである。また、共通点(C)は、アッパー部で、最も目立つ甲部の形態であって、両意匠のみに共通する特徴とはいえないものの、アクセントとなるリボン飾りも含めた、太めの略三日月状の甲部の形態は、両意匠の共通する視覚的印象を強めるから、両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。
そして、ソール部について、共通点(F)はソール部として、ごく基本的な形態であって、ありふれたものにすぎず、共通点(J)は、選択的に様々な色彩を施すことは、ごく普通の造形手法であるからこれらの点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。
さらに、共通点(G)ないし(I)については、溝部、凹部、及び表面の細かな凹凸などの、ソール部の具体的形態についてであって、需要者においても、靴底部には、歩きやすさ、滑り難さなどの観点から一定の注意を払うところ、ごく細部を除く、ソール部のほとんどの形態について共通する両意匠は、需要者にソール部の歩きやすさ、滑り難さのみならず、視覚的に極めて共通するとの印象を与え、両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。
イ 形態の相違点の評価
これに対して、相違点(a)及び(c)については、履き口部のステッチ部の相違及びしわ部分の有無であって、細部の相違であり、本件登録意匠は、その略ジグザグ状のステッチとしわによって、履き口部が伸縮するものとの印象は受けるものの、引用意匠においても、その記載などから履き口の伸縮性は認められるものであるから、この点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。相違点(b)はかかと部の形態について本件登録意匠のように、縦方向略中央に縫合部を設けている形態は、この種短靴の物品分野においてはごく普通の形態であって、特に需要者の注意は引かず、この点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。相違点(d)も浅い小円状凹部などの細かな凹凸について、看取できるか否かの相違であるが、視覚的に注視して、それとわかる程度の細部の相違であるから、この点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。
そして、相違点(a)ないし相違点(d)はいずれも類否判断に及ぼす影響は小さく、総じても両意匠の類否判断を左右するほどの影響を及ぼすには至らないものである。
(3)両意匠の類否判断
そうすると、両意匠は意匠に係る物品が一致するから同一であって、形態においては、共通点(A)、共通点(F)及び、共通点(J)は両意匠の類否判断に及ぼす影響が小さいとしても、共通点(C)並びに、共通点(G)ないし共通点(I)は、大きく、共通点(B)、共通点(D)及び共通点(E)は両意匠の類否判断に一定程度の影響を及ぼすものであるから、これらの共通点は、総じて、見る者に与える共通の印象を一層強くするものであるのに対し、相違点(a)ないし相違点(d)はいずれも類否判断に及ぼす影響は小さく、総じても両意匠の類否判断を左右するほどの影響を及ぼすには至らず、相違点の印象は、共通点の印象を覆すには至らないものであるから、意匠全体として見た場合に、両意匠は類似する。

第6 当審の判断
無効理由通知書(又は職権審理結果通知書)で示したとおり、本件登録意匠は、無効理由に掲げた意匠(以下「引用意匠」という。)に類似するものと認められるので、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当し、同項柱書の規定により意匠登録を受けることができないものである。

1 本件登録意匠
前記第5の1のとおりである。

2 引用意匠
前記第5の2のとおりである。

3 本件登録意匠と引用意匠の対比
前記第5の3のとおりである。

4 本件登録意匠と引用意匠の類否判断

前記第5の4のとおりである。

5 無効理由について
引用意匠は、前記第5の2に示したとおり、本件登録意匠の意匠登録出願前に、日本国内又は外国において電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠である。
そうすると、本件登録意匠は、その意匠登録出願の出願前に、日本国内又は外国において電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠に類似するので、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当し、同項柱書の規定により意匠登録を受けることができないものである。

第7 むすび
以上のとおり、本件登録意匠は、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当し、同項柱書の規定に違反して登録されたものであるから、本件の意匠登録は、意匠法第48条第1項第1号の規定に該当し、無効とすべきものである。

審判に関する費用については、意匠法第52条で準用する特許法第169条第2項で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。

別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、この審決に係る相手方当事者を被告として、提起することができます。
















審理終結日 2021-11-02 
結審通知日 2021-11-05 
審決日 2021-11-29 
出願番号 2017011248 
審決分類 D 1 113・ 121- Z (B5)
D 1 113・ 15- Z (B5)
D 1 113・ 113- Z (B5)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 渡邉 久美
加藤 真珠
登録日 2018-01-12 
登録番号 1596866 
代理人 藤田 典彦 
代理人 井上 泰幸 
代理人 兒玉 修一 
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