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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 B1
管理番号 1382418 
総通号数
発行国 JP 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2022-03-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-08-20 
確定日 2022-02-21 
意匠に係る物品 障害児用肌着 
事件の表示 意願2020− 8032「障害児用肌着」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
本願は、出願日を令和2年3月31日とする意匠登録出願であって、その後の手続の経緯は以下のとおりである。

令和2年 9月18日付け 拒絶理由の通知
令和2年11月 9日 意見書の提出
令和3年 5月18日付け 拒絶査定
令和3年 8月20日 拒絶査定不服審判の請求
令和3年 8月20日 手続補正書及び上申書の提出

第2 本願の意匠
本願の意匠は、意匠に係る物品を「障害児用肌着」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形状等」という。)を願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり(以下「本願意匠」という。)、物品の部分として意匠登録を受けようとする部分を、「図中実線及び一点鎖線で表した部分が、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」(以下「本願部分」という。)としたものである(別紙第1参照)。

第3 原査定の拒絶の理由及び引用意匠
原査定の拒絶の理由は、本願意匠が、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠に類似するものであるから、意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当する、というものである。
そして、その引用意匠は、特許庁発行の意匠公報記載(意匠登録第1615482号、意匠に係る物品、患者衣)の意匠の上衣の袖部上面の衿から袖の肘程度までの部分(以下「引用部分」という。)としたものである(別紙第2参照)。

第4 当審の判断
以下において、本願意匠の意匠法第3条第1項第3号の該当性、すなわち、本願意匠が引用意匠に類似する意匠であるか否かについて検討し、判断する。

なお、請求人は、拒絶査定不服審判の請求と同日に、願書添付図面に「A−A拡大断面図」を追加するとともに、「正面図」を変更する補正を行っているが、この補正は、出願当初の意匠に変更を加えるものではないため、要旨を変更するものではない。

1 対比
(1)意匠に係る物品の対比
本願意匠の意匠に係る物品は、「障害児用肌着」であり、主に肢体に障害を持つ児童に用いるための肌着であり、首、両腕及び両足を通す開口部を有しており、首開口部の襟ぐりから肘部に亘る袖部の一部、及び両足の開口部の間が開閉可能な構造とするものである。
引用意匠の意匠に係る物品は、「患者衣」であり、患者が入院中に着用する患者用の上衣であり、首、両腕及び胴体を通す開口部を有しており、首開口部の襟ぐりから袖先に亘る袖部の全て、及び前身頃側の首開口部から胴体開口部にかけて開閉可能な構造とするものである。

そして、本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、本願意匠が障害児用の肌着であるのに対し、引用意匠が入院患者用の上衣とするものであるが、いずれも開口部に開閉できる構造を有する衣服とする点で共通する。

(2)本願部分と引用部分の用途及び機能の対比
本願部分は、襟ぐりから肘部までの袖部の一部を、面ファスナーによって開閉可能とし、肘部において開閉部を綴じた用途及び機能とするものである。
引用部分は、襟ぐりから袖先に亘る袖部の全てを、面ファスナーによって開閉可能とするもののうち、「肘程度まで」とするものであるから、綴じ部を有さない、開閉可能部のみの用途及び機能とするものである。

そして、本願部分と引用部分(以下「両部分」という。)は、襟ぐりから袖部に亘り面ファスナーによって開閉可能とする点において共通するものの、本願部分は肘部において開閉部を綴じているのに対し、引用部分は綴じ部を有していない点で相違する。

(3)両部分の位置、大きさ及び範囲の対比
両部分の位置、大きさ及び範囲は、いずれも襟ぐりから肘部に亘る袖部の前身頃及び後身頃の上部とするものであり、共通する。

(4)両部分の形状等の対比
両部分の形状等を対比すると、その形状等には、以下のとおりの共通点及び相違点が認められる。

ア 共通点
襟ぐりから肘部に亘る間の袖部の開閉部の態様について、
(ア)後身頃の袖部上端部に横長長方形状の面ファスナーを複数均等に配した点。
(イ)前身頃の袖部上端部の裏側(着衣時に体に接する側)に横長長方形状の面ファスナーを複数均等に配した点。
(ウ)綴じる際には、後身頃の上に前身頃が覆う態様とする点。

イ 相違点
(ア)開閉部における袖部の態様について
本願部分は、襟ぐりから肘部に亘る開閉部が肘部で止まり、袖先側が綴じられている構成とするのに対し、引用部分は、本願部分のような綴じ部を有していない構成とする点。
(イ)開閉部の重なり部について
本願部分は、開閉部の上端を、正面視において袖部上端からやや下の位置とするのに対し、引用部分は、袖部の頂部の位置とする点。
(ウ)面ファスナーの裏面側の態様について
本願部分は、面ファスナーの裏面側に横長長方形状の面ファスナーに沿ったミシン目が表れているのに対し、引用部分の面ファスナーの裏面にはミシン目が表れていない点。

類否判断
(1)両意匠の意匠に係る物品の類否判断
両意匠の意匠に係る物品は、本願意匠が障害児用の肌着であるのに対し、引用意匠が入院患者用の上衣とするものであるが、いずれも開口部に開閉可能な構造を有する衣服とする点で共通しており、類似する。

(2)両部分の用途及び機能の類否判断
両部分の用途及び機能は、襟ぐりから袖部に亘り面ファスナーによって開閉可能とする点において共通しておいるが、開閉部の一方に綴じ部を有するか否かにおいて相違しており、この点が、両部分の用途及び機能に及ぼす影響は軽視することができない。
よって、両部分の用途及び機能は類似しない。

(3)両部分の位置、大きさ及び範囲の評価
両部分の位置、大きさ及び範囲は、共通する。

(4)両部分の形状等の類否判断
ア 共通点及び相違点の評価
両意匠は、開口部に開閉可能な構造を有する衣服であることから、需要者は、その開閉部の態様に着目し、使用目的に即したものであるか等も含め、その構成についても注視するものということができる。
(ア)共通点の評価
共通点(ア)及び(イ)のように、後身頃及び前身頃の袖部上端部に面ファスナーを複数均等に配して開閉部とした態様は、下記参考意匠1のように、衣服の分野においてはよく見られる態様であり、両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。
また、共通点(ウ)のように、後身頃の上に前身頃が覆う態様とする点は、引用意匠のほかにも、下記参考意匠2のように、本願意匠の出願前から公然知られており、両意匠の類否判断に及ぼす影響は限定的なものにすぎない。
(イ)相違点の評価
相違点(ア)は、本願意匠のように、襟ぐりからの開閉部を袖先までの袖部全体としない点については、参考意匠2(図5及び図6)にも見られるが、本願意匠のように、肘部までとするものではない。開閉部が肘部で綴じられた構成であることが、肢体に障害を持つ児童に用いるための肌着に持つ意味は、使用目的に即して需要者が注視する点であることを考慮すると、この特徴は、本願部分独自の態様であり、両部分の形状等の類否判断に及ぼす影響は大きい。
相違点(イ)は、本願部分のように、開閉部の上端を、正面視において袖部上端からやや下の位置とする態様は、参考意匠1のほか、参考意匠2(図4)にも見られるように、本願部分独自のものということはできず、また、その位置も、頂部から僅かに下がっている程度のものであるから、この点が両部分の形状等の類否判断に及ぼす影響は限定的である。
相違点(ウ)は、面ファスナーの取り付け態様としては一般的なものであり、この点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。

参考意匠1(別紙第3参照)
特許庁発行の公開特許公報記載
特開2002―180311号
【発明の名称】注射・点滴用衣服
において願書及び各図面に示す「注射・点滴用衣服」の意匠

参考意匠2(別紙第4参照)
特許庁発行の公開特許公報記載
特開2019―143262号
【発明の名称】医療用上衣
において願書及び各図面に示す「医療用上衣」の意匠

イ 総合評価に基づく両部分の形状等の類否判断
両部分の形状等における共通点及び相違点の評価に基づき、両部分の形状等全体を総合的に観察し、判断する。

前記ア(イ)に説示したとおり、相違点(イ)及び相違点(ウ)が両部分の形状等の類否に及ぼす影響は限定的、あるいは小さいものであるが、相違点(ア)が及ぼす影響は大きく、この相違点は、需要者に両部分の形状等を異なるものとする印象を与えるものと認められる。
これに対し、前記ア(ア)に説示したとおり、共通点(ア)及び(イ)は、いずれも衣服の分野でよく見られる態様にすぎず、共通点(ウ)も、本願部分の出願前から公然知られた態様であり、両部分の形状等の類否判断に及ぼす影響は限定的なものにすぎないことから、両部分の形状等全体を総合的に観察した場合、両部分の形状等が類否判断に及ぼす影響は、共通点よりも相違点の方が大きく、両部分の形状等は類似しない。

(5)小括
両意匠は、意匠に係る物品が類似し、両部分の位置、大きさ及び範囲が共通するものであるが、両部分の用途及び機能、及び形状等は類似しない。
したがって、両意匠は類似しない。

第5 むすび
以上のとおり、本願意匠は、引用意匠に類似せず、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないものである。したがって、原査定の拒絶の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。

別掲












審決日 2022-02-01 
出願番号 2020008032 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (B1)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 正田 毅
北代 真一
登録日 2022-03-14 
登録番号 1710460 
代理人 原 信海 

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