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審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 H7
管理番号 1383275 
総通号数
発行国 JP 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2022-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-06-29 
確定日 2022-03-15 
意匠に係る物品 情報端末 
事件の表示 意願2019− 24254「情報端末」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
本願は、パリ条約による優先権(最初の出願:アメリカ合衆国、2019年7月29日)を主張する、令和1年(2019年)10月30日の意匠登録出願であって、その主な手続の経緯は以下のとおりである。
令和2年 7月29日付け 拒絶理由の通知
同年10月29日 意見書の提出
令和3年 3月26日付け 拒絶査定
同年 6月29日 拒絶査定不服審判の請求

第2 本願意匠
本願は、物品の部分について意匠登録を受けようとする意匠登録出願であり、本願意匠の意匠に係る物品は、本願の願書の記載によれば「情報端末」であり、本願意匠の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下、「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」ともいう。)は願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりであって、願書の「意匠の説明」には、「実線で表わした部分およびグラデーションを有する部分が、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」と記載されている。

第3 原査定における拒絶の理由
原査定における拒絶の理由は、本願意匠が、出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」ともいう。)が日本国内又は外国において公然知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたと認められるので、意匠法第3条第2項の規定に該当するとしたものであって、具体的には、以下のとおりである。
「本願意匠は、使用者の操作に連動して表示される画像について、ディスプレイの短辺の左右中央の位置に、明度の異なる複数の弧状の帯を中心から外側に向かい明度を徐々に下げるようにグラデーション状に配置したものを、部分意匠として意匠登録を受けようとするものです。
本願出願前より、ディスプレイの一辺の左右中央の位置に、使用者の操作に連動してグラデーション状の画像を表示することは、公然知られており(画像1)、また、その形態について、ディスプレイの短辺の左右中央の位置に、明度の異なる複数の弧状の帯を中心から外側に向かい明度を徐々に下げるようにグラデーション状に配置することも公然知られています(画像2)。
そうすると、本願意匠は、公然知られた画像要素に僅かな改変を加え、それらを単純に組み合わせたにすぎず、当業者であれば容易に創作できたものと認められます。
(中略)

画像1:
特許庁発行の意匠公報記載
意匠登録第1590184号の意匠
(意匠に係る物品、テレビジョン受像機)に現れる画像

画像2:
米国特許商標公報 2017年10月31日
携帯情報端末機(登録番号US D801364S)の画像
(特許庁意匠課公知資料番号第HH29327911号)」

第4 当審の判断
以下において、本願意匠の意匠法第3条第2項の該当性、すなわち、本願意匠が当業者であれば容易に創作することができたか否かについて検討し、判断する。

1 本願意匠の認定
当審では、本願意匠について、以下のとおり認定する。
(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品(以下「本願物品」という。)は「情報端末」であり、願書の「意匠に係る物品の説明」には、以下のとおり記載されている。
「本物品は、表示部を備える情報端末である。この情報端末はユーザの動作を検知可能であり、ユーザの動作を情報端末が検知することで表示部を操作することができる。正面図に表れている画像は、ユーザの動作を検知可能な状態であることをユーザに知らせる機能を有する。」
この記載によれば、本願物品は、ユーザーの動作を検知することができる情報端末であって、ユーザーの動作によって操作することができるものである。
(2)「正面図」に表された画像
上記(1)のとおり本願物品はユーザーの動作を検知可能であると説明されていること、及び正面図に表された画像がユーザーに対して動作が検知可能な状態であることを知らせる機能を有していることから、本願物品の「正面図」に表された画像(以下「本願画像」という。)は、物品の機能を果たすために必要な表示を行う画像であると認められる。
本願意匠において部分意匠として意匠登録を受けようとする部分は、本願画像内で「実線で表わした部分およびグラデーションを有する部分」(以下「本願画像部分」という。)である。
(3)本願画像部分の用途及び機能
上記(1)の願書の記載によれば、本願画像部分の用途及び機能は、ユーザーに対して動作が検知可能な状態であることを知らせることである。
(4)本願画像における本願画像部分の位置、大きさ及び範囲
本願画像(縦横比は約1.9:1)は、薄型板状の本願物品の正面部中央の位置にあり、そのほぼ一杯の大きさ及び範囲を占めている。
本願画像部分の外枠は、本願画像の外枠の左角部と、それに連なる左端上部及び上端(右角部を除く)に一致しており、その左端上部の縦幅は本願画像の縦幅の約1/7.5であり、上端の横幅は本願画像の横幅の約5/6である。
(5)本願画像部分の形態
ア 全体の形状
本願画像部分の外枠は、右側に倒れた角部が丸い略L字状であり(水平部をL字長辺、垂直部をL字短辺という。)、L字長辺の下方に、グラデーション部が張り出すように表されている
イ グラデーション部の形状
グラデーション部は、全体が、下向きの略蒲鉾形状であり、その縦横比は約1:3.5である。
グラデーション部は5層から成り、上から順に、横幅の小さい黒色の略横長長円形状部、濃い灰色の略扁平弧状帯部、やや濃い灰色の略扁平弧状帯部、やや薄い灰色の略扁平弧状帯部、及び薄い灰色の略扁平弧状帯部が形成されており、4つの略扁平弧状帯部の横幅は次第に長くなっている。
ウ 外枠の縦横比、グラデーション部とL字短辺の縦幅の関係
L字短辺:L字長辺の長さの比は約1:3.5であり、グラデーション部の高さ幅は、L字短辺の長さの約3/4である。

2 引用画像の認定
原査定における拒絶の理由で引用された画像について、以下のとおり認定する。なお、引用された画像の出典や公知日などについては、前記第3のとおりであり、形態については、主として本願画像部分に対応する部分の形態を認定する。
(1)画像1(別紙第2参照)
ア 意匠1の用途及び機能
各種の情報を表示するためのリモコン操作によって出現する発光様表示の用途及び機能は、その各種の情報表示にユーザーの注意を向けさせることであると解される。
イ 画像1の形態
全体が上向きで扁平な略山形状であり、白色で表されて、下端から上端にいくにつれて薄くなっている。出現後大きくなって縦横比が約1:6になった後に、全体が薄くなって消失する。
(2)画像2(別紙第3参照)
ア 画像2の用途及び機能
画像2の用途及び機能は、音の反響(Reverb)や音量を可視化することであると推認される。
イ 画像2の形態
全体が、下向きの略半円形状であり、その縦横比は約1:2である。
3層から成り、上から順に、横幅の小さい濃い灰色の略半円形部、やや濃い灰色の略半円状帯部、及びやや薄い灰色の略半円状帯部が形成されており、2つの略半円状帯部の横幅は次第に長くなっている。

3 本願意匠の創作非容易性について
本願意匠が意匠法第3条第2項の規定に該当するか否か、すなわち、当業者であれば容易に本願意匠の創作をすることができたか否かについて検討する。
本願画像部分の用途及び機能が、ユーザーに対して動作が検知可能な状態であることを知らせることであるところ、画像1及び画像2の用途及び機能はそれとは異なるから、そのような用途及び機能を有する画像の形態が本願の出願前に公然知られているかについては明らかではない。
そして、本願画像部分のグラデーション部の形態についても、全体を下向きの略蒲鉾形状にして、上から順に、横幅の小さい黒色の略横長長円形状部、濃い灰色の略扁平弧状帯部、やや濃い灰色の略扁平弧状帯部、やや薄い灰色の略扁平弧状帯部、及び薄い灰色の略扁平弧状帯部を形成した形態は、画像1及び画像2には表されていない。そうすると、当業者が、画像1及び画像2の形態に基づいて、本願画像部分の形態を容易に創作することができたということはできない。
したがって、原査定における拒絶の理由で引用された画像に基づいて、当業者が容易に本願意匠の創作をすることができたということはできない。

第5 むすび
以上のとおりであって、本願意匠は、意匠法第3条第2項が規定する、意匠登録出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に創作をすることができたとはいえないものであるから、原査定の拒絶の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
別掲






審決日 2022-02-28 
出願番号 2019024254 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (H7)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 北代 真一
特許庁審判官 江塚 尚弘
小林 裕和
登録日 2022-03-29 
登録番号 1711875 
代理人 特許業務法人深見特許事務所 

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