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審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 N3
管理番号 1383277 
総通号数
発行国 JP 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2022-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-08-11 
確定日 2022-03-10 
意匠に係る物品 防災支援システム機能付き電子計算機 
事件の表示 意願2020− 11524「防災支援システム機能付き電子計算機」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
本願は、令和2年6月10日の意匠登録出願であって、その後の主な経緯は以下のとおりである。
令和3年 1月18日付け:拒絶理由の通知
令和3年 5月14日付け:拒絶査定
令和3年 8月11日 :審判請求書の提出

第2 本願意匠(願書及び添付図面の記載)
本願の意匠は、意匠に係る物品を「防災支援システム機能付き電子計算機」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形状等」という。)を願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであって、本願意匠において部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を「表示画面に表された画像のうち、青色で着色した以外の部分が意匠登録を受けようとする部分である。」(以下「本願部分」という。)としたものである(別紙第1参照)。

第3 原査定の拒絶の理由及び引用意匠
原査定の拒絶の理由は、本願意匠が、出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が日本国内又は外国において公然知られ、頒布された刊行物に記載され、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった形状等(形状、模様若しくは色彩若しくはこれらの結合)又は画像に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので、意匠法第3条第2項の規定に該当する、というものである。

また、この拒絶の理由には、以下のとおりの付記がなされたものである。

「本願意匠は、防災支援システム機能付き電子計算機の画面下方のツールバーに配置されたアイコンについて、部分意匠として意匠登録を受けようとするものですが、本願出願前より、画面下方のツールバーに配置された太い四本線からなるアイコンは公然知られており(画像1)、ある図形の右下に「i」を円で囲んだものを配置して一つのアイコンとすることもまた、公然知られており(画像2)、太い四本線と他のシンプルな図形を組み合わせて一つのアイコンとすることも公然知られています(画像3、画像4)。
そうすると、本願意匠は、本願出願前より公然知られた画像(画像1)を基に、その右下に「i」を円で囲んだものを配置したアイコンについて、部分意匠として表したにすぎず、当業者であれば容易に創作できたものと認められます。
(中略)
画像1:
電気通信回線の種類 インターネット
掲載確認日(公知日) 2018年12月13日
受入日 特許庁意匠課受入2018年12月20日
掲載者 Privage App Co.,Ltd.
表題 「BoardVille」をApp Storeで
掲載ページのアドレス https://itunes.apple.com/jp/app/boardville/id1 436187749?mt=8
に掲載された「スマートフォン用ソフトウェアのカタログ機能」の画像 (特許庁意匠課公知資料番号第HJ30133641号)

画像2:
電気通信回線の種類 インターネット
掲載確認日(公知日) 2017年 8月16日
受入日 特許庁意匠課受入2018年 1月22日
掲載者 Google Play
表題 Ultimate mPOS Admin − Google Play の Android アプリ
掲載ページのアドレス https://play.google.com/store/apps/details?id=ultimatetek.posadmin
に掲載された「スマートフォン用ソフトウェアの情報提供機能」の画像のうち、画面中央右側に現れるアイコン
(特許庁意匠課公知資料番号第HJ29090961号)

画像3:
独立行政法人工業所有権情報・研修館が2017年 7月 7日に受け入れた
環境計測機器 製品案内カタログ PRODUCT CATALOG 2017
所載
空気環境測定器の画像のうち、上から2段目、右端の枠の中に現れたアイコン
(特許庁意匠課公知資料番号第HC29010474号)

画像4:
大韓民国意匠商標公報 2014年 4月23日14−12号
携帯情報端末機(登録番号30−0740377)に現れるアイコン
(特許庁意匠課公知資料番号第HH26418007号)」

第4 当審の判断
1 本願意匠の認定
(1)本願意匠の意匠に係る物品
本願意匠は、意匠に係る物品を「防災支援システム機能付き電子計算機」とするものである。

(2)本願部分の用途及び機能
本願部分は、他の画像に遷移する指示を出す用途及び機能を有するものと認められる。

(3)本願部分の位置、大きさ及び範囲
本願部分は、正面視の高さ及び横幅のそれぞれ約19/20を占め、高さ対横幅の比率が約16:9である表示部にあらわされた画像の一部であり、正面視全体の上から約9/10、右から約1/3の位置にある、正面視全体の高さの約1/20、横幅の約1/10を占める部分である。

(4)本願部分の形状等
本願部分は、白い背景、(ア)4つの黒い隅丸横長長方形からなる図形(以下「図形A」という。)と、当該図形に重なるように組み合わせた、(イ)中央に白い「i」字状の図形が描かれた黒い円の図形(以下「図形B」という。)からなり、それぞれの図形の具体的な形状等及びぞれぞれの図形の関係は以下のとおりである。

(ア)図形A
図形Aは、高さ対横幅の比率を約3:20とする4つの隅丸横長長方形を、その高さの約1/3ずつ間隔をとり、平行に配したものと認められる。

(イ)図形B
図形Bは、円の中央付近に、円の直径の約3/5の高さ、約3/20の横幅の「i」字状の図形があらわされたものと認められる。「i」字状の図形については、円と隅丸四角形からなる、文字を構成する線の端部に飾りを設けない態様とするものである。

(ウ)図形Aと図形Bの関係
図形Aの右下方に図形Bが重なるように組み合わせており、図形Bの下方が約1/4、右方が約1/10それぞれ図形Aからはみ出している。また、図形Bの図形Aと重なる部分の上端は図形Aの(上下方向の)中心よりも上まで重なっており、左端は図形Aの(左右方向の)中心よりも左まで重なっている。図形Aと図形Bが重なる部分には、間隔が図形Bの直径の約1/24の幅で設けられている。

2 原査定における拒絶理由通知において示された画像
原査定における拒絶の理由の説示に用いられた画像1ないし画像4について、以下のように認定する。

(1)画像1(別紙第2参照)
ア 用途及び機能
画像1は、携帯情報端末機に用いられるソフトウェアの画像であり、画像右下の4つの横長長方形からなるアイコン(以下「画像1アイコン」という。)及び「More」と記載された部分は、画像1アイコンに関係する画像に遷移する指示を出す用途及び機能を有するものと認められる。

イ 画像1アイコンの位置、大きさ、範囲
画像1アイコンは、高さ対横幅の比率が約3:2である画像のうち、上から約9/10、右から約1/3の位置にあり、画像全体の高さの約1/20、横幅の約1/10を占めている。

ウ 画像1アイコンの形状等
画像1アイコンは、黒い背景に、高さ対横幅の比率が約3:25の、4つの白い横長長方形を、その高さと同程度ずつ間隔をとり、平行に配したものと認められる。

(2)画像2(別紙第3参照)
ア 用途及び機能
画像2は、携帯情報端末機に表示されたソフトウェアにおける中央右側にあらわれるアイコン用画像であり、当該アイコン用画像に関係する画像に遷移する指示を出す用途及び機能を有するものと認められる。

イ 位置、大きさ、範囲
画像2は、高さ対横幅の比率が約5:3のソフトウェアの画像のうち、上から約3/5、右から約1/4の位置にあり、画像全体の高さの約3/20、横幅の約1/4を占めている。

ウ 形状等
画像2は、白い背景上の灰色の略格子状図形(以下「図形2A」という。)と、当該図形に重なるように組み合わせた、中央に白い「i」字状の図形が描かれた灰色の円の図形からなる(以下「図形2B」という。)。

(ウ−1)図形2A
図形2Aは、縦方向が等間隔に5段、横方向が、左から約3:4:3となる3列の格子状で、最下段の左側が格子部分の約1割はみだし、最下段中央の線が描かれていないものである。

(ウ−2)図形2B
図形2Bは、中央に白い「i」字状の図形が描かれた黒い円状の図形であり、「i」字状の図形は円状の図形の直径の約7/10の高さ、約1/10の横幅である。また、「i」字状の図形の文字は、その構成する線の端部に小さな飾りのある態様とするものである。

(ウ−3)図形2Aと図形2Bの関係
図形2Aの右下方に図形2Bが重なるように組み合わせており、下端が揃い、図形2Bの直径の約1/3が図形2Aの右方にはみ出しており、図形2Bの図形2Aと重なる部分の上端は図形2Aの(上下方向の)中心よりも下側、左端は図形2Aの(左右方向の)中心よりも右側である。また、図形2Aと図形2Bが重なる部分には、間隔が図形2Bの直径の約1/5の幅で設けられている。

(3)画像3(別紙第4参照)
ア 用途及び機能
画像3は、空気環境計測器の表示部に表示された画像における右下に表示されたアイコン用画像であり、当該アイコン用画像に関係する画像に遷移する指示を出す用途及び機能であるものと認められる。

イ 位置、大きさ、範囲
画像3は、空気環境計測器の正面中央の高さ対横幅の比率が約3:5の表示部に表示された画像のうち、上から約2/3、右から約1/10の位置にあり、画像全体の高さの約1/6、横幅の約1/10を占めている。

ウ 形状等
画像3は、紫色の背景上に3つの白い横長長方形を平行に配した図形(以下「図形3A」という。)と、当該図形に重なるように組み合わせた、左側の辺の短い略「v」字状の図形(以下「図形3B」という。)からなる。

(ウ−1)図形3A
図形3Aは、高さ対横幅の比率を約3:20とする3つの白い横長長方形を、その高さの約3/2ずつ間隔をとり、平行に配したものと認められる。

(ウ−2)図形3B
図形3Bは、左辺が水平から時計回りに約40度、右辺が水平から反時計回りに約53度それぞれ傾いた、左辺対右辺の長さの比率が約5:8である、左側の辺の短い略「v」字状の態様とするものである。

(ウ−3)図形3Aと図形3Bの関係
図形3Aの右下方に図形3Bが重なるように組み合わせており、図形3Bの下方が約1/3、右方が約3/10それぞれ図形3Aからはみ出しており、図形3Bの図形3Aと重なる部分の上端は図形3Aの(上下方向の)中心付近であり、左端は図形3Aの(左右方向の)中心よりも左側である。図形3Aと図形3Bが重なる部分には、図形3Bの横幅の約1/8の間隔が設けられている。

(4)画像4(別紙第5参照)
画像4の掲載された大韓民国意匠商標公報によると、当該登録意匠は画像が表示されている携帯情報端末であり、図1.1にアイコン画像が表示された携帯情報端末の図、参考図1.1にその拡大図が示されており、「デザインの説明」の欄の2.の2行目において、参考図1.1は出願のデザインに黒色を適用した場合の拡大図である旨が掲載されている。

ア 用途及び機能
画像4は、携帯情報端末機の表示部にあらわされた画像における中央に表示されたアイコン用画像であり、当該アイコン用画像に関係する画像に遷移する指示を出す用途及び機能であるものと認められる。

イ 位置、大きさ、範囲
画像4は、図1.1の高さの約4/5、横幅の約9/10を占め、高さ対横幅の比率が約5:3の表示部に表れる画像の一部であり、図1.1の上下、左右の中心付近にある、図1.1全体の高さの約1/6、横幅の約2/7を占める部分である。

ウ 形状等
画像4は、形状線のみで表されたものであり、円と、その円の中央付近に、3つの横長長方形を、平行に配した図形(以下「図形4A」という。)と、当該図形に重なるように組み合わせた、回転した矢印状の図形(以下「図形4B」という。)からなる。

(ウ−1)図形4A
図形4Aは、高さ対横幅の比率を約3:15とする3つの横長長方形を、その高さの約1/2ずつ間隔をとり、平行に配したものと認められる。

(ウ−2)図形4B
図形4Bは、直径の約1/6の幅の線について、上方を線幅と同程度開け、当該間隔部左側に長辺が線幅の約2倍である、垂直等辺三角形を矢尻部として備え、当該間隔部右側が垂直に切断したようになった、回転した矢印状の図形と認められる。

(ウ−3)図形4Aと図形4Bの関係
図形4Aの右下方に図形4Bが重なるように組み合わせており、図形4Bの下方が約2/5、右方が約3/10それぞれ図形4Aからはみ出している。また、図形4Bの図形4Aと重なる部分の上端は図形4Aの(上下方向の)中心よりも下側であり、左端は図形4Aの(左右方向の)中心よりも右側である。図形4Aと図形4Bが重なる部分には、図形4Bの円弧部との間では間隔が図形4Bの円弧部分の直径の約1/6の幅で設けられており、また、矢尻部付近は、図形4Aの上から2つめの横長長方形の中央右下を垂直に切り欠たようになっている。

3 本願意匠の創作非容易性について
本願意匠が意匠法第3条第2項の規定に該当するか否か、すなわち、当業者であれば容易に本願意匠の創作をすることができたか否かについて検討する。
まず、本願部分の位置、大きさ、範囲については、拒絶理由通知書において示された画像1のうち画像1アイコンは本願部分と同様の画像の右下方に同程度の大きさで示されていることから、本願部分の画像の位置、大きさ、範囲について、特段の創作性を認めることはできない。
そして、本願意匠の形状等について、図形Aのように、アイコン等に用いる図形として、3つ又は4つの横長長方形又は線を平行に配するものは、本願の出願前に広く知られている(例えば画像1アイコン、画像3の図形3A及び画像4の図形4A)。また、これら横長長方形の四隅を丸くすることや、高さと横幅の比率を変えることも広く行われている。
また、図形Bのように、アイコン等に用いる図形として、円の中心付近に文字や図形を配するものは広く知られており、「i」字状の図形を配したものについても、この意匠の出願前から知られており(例えば画像2の図形2B)、特段の創作性を認めることはできない。
さらに、図形Aと図形Bの組み合わせについて、一方の図形の右下方に他方の図形が重なるように組み合わせることは、本願の出願前に広く知られている(例えば画像2、画像3及び画像4)。また、重なった図形が下方及び右方からはみ出すものについても、この意匠の出願前から知られている(例えば画像3及び画像4)。

しかしながら、本願意匠は、図形Aの横長長方形を、その高さの約1/3ずつ間隔をとっている点、並びに図形Aと図形Bの組み合わせ方に関し、図形Aと図形Bが重なる部分に、間隔を図形Bの直径の約1/24の幅で設けている点、及び図形Bの上端が図形Aの(上下方向の)中心よりも上まで、かつ、左端が図形Aの(左右方向の)中心よりも左まで重なっている点については、いずれも画像1アイコン、画像2、画像3及び画像4に見られないものであるから、本願部分の形状等は、特にその図形の組み合わせ方について、独自の着想によって創出したものといえる。したがって、本願意匠は、原査定における拒絶の理由で引用された形状等に基づいて、当業者が容易に創作をすることができたということはできない。

第5 むすび
以上のとおりであって、本願意匠は、原審が示した理由によっては意匠法3条2項に規定する意匠に該当しないものであるから、この拒絶の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。

また、当審において、更に審理した結果、他に拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
別掲





審決日 2022-02-24 
出願番号 2020011524 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (N3)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 北代 真一
特許庁審判官 渡邉 久美
大峰 勝士
登録日 2022-03-24 
登録番号 1711482 
代理人 原田 雅美 
代理人 渡邉 知子 

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