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審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 F4
管理番号 1383279 
総通号数
発行国 JP 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2022-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-08-26 
確定日 2022-03-15 
意匠に係る物品 包装用容器 
事件の表示 意願2020−7305「包装用容器」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 手続の主な経緯
本願は,意願2020−7298号(不服2021−11395)の意匠を本意匠とする関連意匠に係る,令和2年(2020年)4月7日の意匠登録出願であって,その後の手続の主な経緯は以下のとおりである。

令和3年 1月27日付け:拒絶理由の通知
令和3年 3月29日 :意見書の提出
令和3年 6月22日付け:拒絶査定
令和3年 8月26日 :審判請求書の提出
令和3年10月19日付け:審尋
令和3年11月25日 :回答書の提出

第2 本願意匠
本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付した図面によれば,意匠に係る物品を「包装用容器」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合を願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり,「実線で表した部分が部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。A−A線断面図を含めて,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を特定している。」としたものである(別紙第1参照)。

第3 原審の拒絶の理由
原審における拒絶の理由は,本願意匠が,出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られ,頒布された刊行物に記載され,又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった形状等又は画像に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので,意匠法第3条第2項の規定に該当するとしたものであって,具体的には,以下のとおりである。
「本願の意匠は,意匠に係る物品を包装用容器とし,その形態は,容器本体と蓋からなる三角柱を基本として,底面を正三角形の各頂点に丸みをもたせた変形三角形状とし,底面から中間部にかけて当該各頂点部の張り出しを漸次減じた断面形状となるように,かつ,中間部から天面にかけては,底面の三角形の略扁平部にあたる側を漸次張り出しつつ,天面の形状を底面と合同な逆三角形となるように,それぞれの断面をゆるやかに変化させて周側面を構成した態様のものであり,本願においては,容器本体の細口突出部を除く外形状について意匠登録を受けようとするものです。
しかしながら,この種物品分野においては,全体を正三角形の各頂点に丸みをもたせた変形三角柱とした態様のものは,引用意匠1に示すように,また,底面を任意の幾何学形状とし,底面から中間部にかけて当該幾何学形状の膨出部の張り出しを漸次減じた断面形状となるように,かつ,中間部から天面にかけては,底面形状の略扁平部にあたる側を漸次張り出しつつ,天面の形状を底面と合同な幾何学形状となるように,それぞれの断面をゆるやかに変化させて周側面を構成した態様のものは,引用意匠2に示すように,いずれも本願出願前に頒布された刊行物に記載されています。
そうすると,本願の意匠は,頒布された刊行物に記載された,引用意匠1に見られる変形三角柱を元にしつつ,引用意匠2に見られる変形手法を適用することで全体を構成することができたものと認められますので,この種物品について通常の知識を有する者であれば,容易にその意匠の創作をすることができたといわざるを得ません。

引用意匠1
大韓民国意匠商標公報 2017年11月 3日17−35号
リップグロス容器(登録番号30−0929566)の意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HH29438998号)

引用意匠2
特許庁発行の意匠公報記載
意匠登録第1143111号の意匠
(意匠に係る物品,包装用容器)」

第4 当審の判断
以下において,本願意匠の意匠法第3条第2項の該当性,つまり,本願意匠が当業者であれば容易に創作することができたか否かについて,検討し,判断する。

1.本願意匠の認定
(1)本願意匠の意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は,「包装用容器」であって,容器本体とキャップから成るものである。

(2)本願部分の位置,大きさ及び範囲,並びに用途及び機能
本願意匠に係る物品のうち,意匠登録を受けようとする部分(以下「本願部分」という。)は,包装用容器のうち,容器本体上端にあるディスペンサーを除いた部分である。
本願部分は,包装用容器からディスペンサーを除いた大きさ及び範囲であって,包装用容器からディスペンサーを除いた用途及び機能を有している。

(3)本願部分の形状
本願部分の形状は,容器本体にキャップをはめた状態(形状A)で,おおむね縦長の柱状(形状B)であって,上から約3分の1部分がキャップ(形状C)となっている。
そして,本願部分の全体形状は,その上端が,正三角形を基として,その角を丸く,辺を僅かに外へ円弧状に膨出させた略正三角形状(いわゆる「三角おむすび形」。以下,単に「略三角形状」という。形状D)であって,上端から下端までの水平断面形状は,上端の略三角形状の角部は,徐々に突出を減じつつ角丸の半径を大きくし,下端の略逆三角形状(上端の略三角形状と,上下対称にした形状(ただし,僅かに大きい。)。以下,単に「略逆三角形状」という。)における辺(僅かに外へ円弧状に膨出した辺)に変化し,かつ,上端の略三角形状の辺部は,徐々に突出を加えつつ半径を小さくし,下端の略逆三角形状における丸い角に変化して,最終的には,本願部分の全体形状の下端は,上端より僅かに大きい,角が丸く,辺が僅かに外へ円弧状に膨出した略逆三角形状となるもの(形状E)である。
加えて,詳細には,上端面の形状につき,ごく僅かな幅の水平面状の縁部を設けた上で,その内側を僅かに膨出する膨出面としている(形状F)。

2.本願意匠の創作の容易性について
(1)出願前に公然知られた形状
本願意匠の出願前に公然知られ,頒布された刊行物に記載され,又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったものと認められる形状(以下「公然知られた形状」という。)は,以下のとおりである。
ア.引用意匠1より
〔形状1a〕容器本体とキャップから成るもの。
〔形状1b〕容器本体にキャップをはめた状態で,おおむね縦長の柱状。
〔形状1c〕上から約3分の1部分がキャップとなっている。
〔形状1d〕水平断面形状が,角が丸く,辺が僅かに外へ円弧状に膨出した略正三角形状。
イ.引用意匠2より
〔形状2a〕容器本体とキャップから成るもの。
〔形状2b〕容器本体にキャップをはめた状態で,おおむね縦長の柱状。
〔形状2c〕上から約10分の3部分がキャップとなっている。
〔形状2e〕上端が楕円形状であって,上端から下端までの水平断面形状は,楕円形のきつい曲線部(楕円の長軸側の頂点を含む部分のこと。)の突出を徐々に減じつつ,楕円形の緩い曲線部(楕円の短軸側の頂点を含む部分のこと。)の突出を徐々に加え,最終的に,上端の楕円形状の長軸と短軸を,下端の楕円形状の短軸と長軸に置き換えたような状態になる形状。
〔形状2f〕上端面を,僅かに膨出する膨出面としている形状。

(2)本願意匠の創作の容易性について
上記(1)に挙げた形状は,本願の出願前に公然知られた形状と認められる。
しかし,おおむね縦長の柱状であって,上端が,角が丸く,辺が僅かに外へ円弧状に膨出した略三角形状であって,上端から下端へ行くにつれ,その水平断面形状が,上端の略三角形状の角部を,徐々に突出を減じつつ角丸の半径を大きくし,下端の略逆三角形状における辺に変化させ,かつ,上端の略三角形状の辺部を,徐々に突出を加えつつ半径を小さくし,下端の略逆三角形状における丸い角に変化させて,最終的に,下端は,上端より僅かに大きい相似形の,角が丸く,辺が僅かに外へ円弧状に膨出した略逆三角形状となる形状は,本願の出願前の公然知られた形状とはいえない。
すなわち,〔形状2e〕のきつい曲線部や緩い曲線部を,本願意匠の形状Eの略三角形状の角部や辺と同視することはできないから,意匠2には角を辺に変化させ,辺を角に変化させるような変形手法が示されているとはいえない。
また,上端面の形状につき,ごく僅かな幅の水平面状の縁部を設けた上で,その内側を僅かに膨出する膨出面としている形状は,本願の出願前の公然知られた形状とはいえない。
そうすると,これらの形状を持つ本願意匠の形状は,本願の出願前の公然知られた形状に基づいて容易に創作をすることができたとはいえない。

3.結び
したがって,本願意匠は,原審で示した引用意匠1及び引用意匠2を基にしては,意匠法第3条第2項の規定に該当しないので,原審の拒絶の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審が更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。

別掲





審決日 2022-02-22 
出願番号 2020007305 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (F4)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 刈間 宏信
特許庁審判官 橘 崇生
正田 毅
登録日 2022-03-22 
登録番号 1711242 
代理人 特許業務法人アルガ特許事務所 

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