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審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 H7
管理番号 1384317 
総通号数
発行国 JP 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2022-05-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-08-24 
確定日 2022-04-05 
意匠に係る物品 自動車用情報表示機 
事件の表示 意願2020− 3385「自動車用情報表示機」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯

本願は、原出願である意匠登録出願(意願2018−6406、出願日:平成30(2018年)年3月26日)から分割を重ねた直近の原出願(意願2019−27378、出願日:令和1年(2019年)12月10日)から、令和2年(2020年)2月21日(パリ条約による優先権主張2017年9月27日、アメリカ合衆国)に、意匠法第10条の2第1項の規定により分割された意匠登録出願であって、その主な手続の経緯は以下のとおりである。

令和 2年 3月 5日付け:1回目の拒絶理由の通知
令和 2年 7月10日 :手続補正書の提出
令和 2年10月29日付け:2回目の拒絶理由の通知
令和 3年 2月10日 :意見書の提出
令和 3年 5月17日付け:拒絶査定
令和 3年 8月24日 :審判請求書の提出

第2 本願の意匠

本願は、物品の部分について意匠登録を受けようとする意匠登録出願であり、その意匠は、意匠に係る物品を「自動車用情報表示機」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状等」ともいう。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであって(以下「本願意匠」という。)、当該意匠登録を受けようとする部分を、「実線で表された部分が部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」(以下「本願画像部分」という。)としたものである(別紙第1参照)。

第3 原審の拒絶の理由及び引用意匠

この意匠登録出願の意匠は、下記に示すように、出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められますので、意匠法第3条第2項の規定に該当する、というのであり、具体的には以下のとおりである。

「この意匠登録出願の意匠は、自動車用情報表示器に係る画像について意匠登録を受けようとするものであり、複数の矩形の領域であって、上から縦幅がやや大きい横長矩形、縦幅が小さい横長矩形、2行2列の同形同大の矩形群を全体の左右の位置が揃うように配置し、それぞれに異なる種類の情報を表示させたものについて、意匠登録を受けようとするものと認められます。
しかしながら、複数の矩形の領域であって、上から縦幅がやや大きい横長矩形、縦幅が小さい横長矩形、2列の矩形群を全体の左右の位置が揃うように配置したものは、画像1にみられるように本願出願前に公然知られています。また、2行2列の同形同大の矩形群は画像2(下部)にみられるように本願出願前に公然知られています。また、複数の矩形の領域において、それぞれに異なる種類の情報を表示させることは、画像1(上部、横長矩形の部分)、画像2にみられるように、画像の分野で本願出願前に一般的に行われています。
そうすると、本願意匠は、本願出願前に公然知られた、複数の矩形の領域であって、上から縦幅がやや大きい横長矩形、縦幅が小さい横長矩形、2列の矩形群を全体の左右の位置が揃うように配置したものにおける2列の矩形群の部分を、本願出願前に公然知られた2行2列の同形同大の矩形群とし、本願出願前に一般的に行われているように矩形の領域それぞれに異なる種類の情報を表示させ、自動車用情報表示器に係る画像としたものに過ぎないため、当業者であれば容易に創作できたものです。

画像1
中華人民共和国意匠公報 2016年 7月 6日
携帯情報端末機(公開番号CN303739148S)
(特許庁意匠課公知資料番号第HH28004482号)
の主視図において表示部に表示された画像

画像2
中華人民共和国意匠公報 2015年 2月11日15−06号
携帯情報端末機(公開番号CN303102092S)
(特許庁意匠課公知資料番号第HH27000768号)
の表示部に表示された画像 」

第4 当審の判断

以下において、本願意匠の意匠法第3条第2項の該当性、すなわち、本願意匠が当該物品の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)であれば容易に創作することができたか否かについて検討し、判断する。

1 本願意匠の認定

(1)意匠に係る物品
本願意匠に係る物品は、自動車の車内において、情報の表示及び操作を行う「自動車用情報表示機」である。

(2)本願画像部分の用途及び機能
本願画像部分は、自動車の車内において、経路案内、音楽再生、電話及び気象に関する情報や、自動車の診断情報等に関する情報の表示及び操作する用途及び機能を有する。

(3)本願画像部分の位置、大きさ及び範囲
本願画像部分は、表示画面全体のうち、上端からやや下がった位置から下端付近までほぼ横幅いっぱいに僅かな間隔を空けて配された複数の矩形の表示画像及び操作画像の領域である。

(4)本願画像部分の形状等
本願画像部分は、表示画像及び操作画像を、大小合わせて6個を縦横の幅を揃え、近接して配置したものであって、上端に、縦横の長さの比率を約1:2とする略横長長方形の表示画像を配置し、その下に縦横の長さの比率を約1:6とする略横長長方形の表示画像を配置し、その配下に、左右に等分され、縦横の長さの比率を約6:7の同形同大の略横長長方形の表示画像及び操作画像を2行2列配置したものである。

2 引用意匠の認定

(1)画像1(別紙第2参照)

ア 画像1の意匠に係る物品
画像1の意匠に係る物品は、携帯情報端末機である。

イ 画像1の用途及び機能
画像1の意匠のうち、本願画像部分の創作非容易性の判断の根拠となる部分(以下「画像1部分」という。)の用途及び機能は、時間、天気、気温、万歩計といった各種情報を表示すると共に、プログラムと通信を実行する用途及び機能を有するものである。

ウ 画像1部分の形状等
画像1部分は、表示画像及び操作画像を、表示画面全体のうち、上端から表示画面下端付近までほぼ横幅いっぱいに僅かな間隔を空けて複数の矩形の大小合わせて5個を縦横の幅を揃え、近接して配置したものであって、上端に、縦横の長さの比率を約1:2とする略横長長方形の表示画像を配置し、その下に縦横の長さの比率を約1:4とする略横長長方形の表示画像を配置し、その配下に、左右に等分し、左右の縦幅が同じとなるように、右側に、縦横の長さの比率が約2:3の同形同大の略横長長方形の操作画像を縦に2つ配置し、左側に、縦横の長さの比率が約2:3の略縦長長方形の操作画像を1つ配置したものである。

(2)画像2(別紙第3参照)

ア 画像2の意匠に係る物品
画像2の意匠に係る物品は、携帯情報端末機である。

イ 画像2の用途及び機能
画像2の意匠のうち、本願画像部分の創作非容易性の判断の根拠となる部分(以下「画像2部分」という。)の用途及び機能は、各種情報を表示すると共に、プログラムと通信を実行する用途及び機能を有するものである。

ウ 画像2部分の形状等
画像2部分は、表示画像を、表示画面全体のうち、上端から表示画面下端付近までほぼ横幅いっぱいに僅かな間隔を空けて複数の矩形の大小合わせて7個を縦横の幅を揃え、近接して配置したものであって、上端に、縦横の長さの比率を約1:8とする略横長長方形の操作画像を2つ配置し、その下に縦横の長さの比率を約2:3とする略横長長方形の操作画像を配置し、その配下に、左右に等分し、左右の縦幅が同じとなるように、縦横の長さの比率を約2:3の同形同大の略横長長方形の表示画像を2行2列配置したものである。

3 本願意匠の創作非容易性の判断

本願意匠が意匠法第3条第2項の規定に該当するか否か、すなわち、当業者であれば容易に本願意匠の創作をすることができたか否かについて検討する。
まず、本願意匠に係る物品が自動車用情報表示機であって、この種物品分野において、本願画像部分のように、経路案内、音楽再生、電話及び気象に関する情報の表示及び操作する用途及び機能を有するものが、本願の出願前に既に見受けられるから、本願画像部分のこれらの用途及び機能に特段の創作性を認めることはできない。
また、本願画像部分の位置、大きさ及び範囲について、表示画面全体のうち、上端からやや下がった位置から下端付近までほぼ横幅いっぱいに僅かな間隔を空けて配された複数の矩形の表示画像及び操作画像の領域としたものが、例えば画像1や画像2に見られるように本願の出願前より公然知られたものであり、特段の創作性を認めることはできない。
そして、本願画像部分の形状等について、上から縦幅がやや大きい横長長方形、縦幅が小さい横長長方形、2列の矩形群を左右の等分し、縦横の幅が揃うように配置したものが、画像1にみられるように本願出願前に公然知られ、本願画像部分の下方のような2行2列の同形同大の略横長長方形群を、縦横の幅が揃うように配置したものが、画像2にみられるように本願出願前に公然知られていることから、特段の創作性を認めることはできない。
しかし、本願画像部分は、上記した機能及び用途以外に、本願の出願前にこの種物品分野において見受けられなかった自動車の診断情報等に関する情報の表示及び操作する機能を有しており、この機能を考慮して表示画像及び操作画像を配置しているものであるから、当業者にとって、格別の創作を要したものといわざるを得ない。
したがって、本願意匠は、原査定における拒絶の理由で引用された意匠に基づいて、当業者が容易に創作をすることができたということはできない。

第5 むすび

以上のとおりであって、本願意匠は、意匠法第3条第2項が規定する、意匠登録出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状等に基づいて容易に創作をすることができたとはいえないものであるから、原査定の拒絶の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。

別掲




審決日 2022-03-16 
出願番号 2020003385 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (H7)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 内藤 弘樹
特許庁審判官 渡邉 久美
上島 靖範
登録日 2022-05-10 
登録番号 1715308 
代理人 胡田 尚則 
代理人 鶴田 準一 
代理人 三橋 真二 
代理人 南山 知広 
代理人 渡辺 陽一 
代理人 川崎 典子 
代理人 青木 篤 

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