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審決分類 |
審判 査定不服 2項容易に創作 取り消して登録 N3 |
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管理番号 | 1385238 |
総通号数 | 6 |
発行国 | JP |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2022-06-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2021-09-28 |
確定日 | 2022-05-10 |
意匠に係る物品 | スケール認識用画像 |
事件の表示 | 意願2020− 8375「スケール認識用画像」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、令和2年(2020年)4月23日の意匠登録出願であって、その後の主な手続の経緯は、以下のとおりである。 令和 2年(2020年) 6月 8日付け 拒絶理由の通知(1回目) 同年 9月15日 意見書の提出 同年 9月15日 手続補正書の提出 同年 12月17日付け 拒絶理由の通知(2回目) 令和 3年(2021年) 4月 1日 意見書の提出 同年 4月 1日 手続補正書の提出 同年 6月22日付け 拒絶査定 同年 9月28日 審判請求書の提出 第2 本願の意匠 本願は、2019年10月24日のアメリカ合衆国への出願に基づくパリ条約による優先権の主張を伴い、画像の部分について意匠登録を受けようとする意匠登録出願であり、本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は、願書の意匠に係る物品の欄の記載を「スケール認識用画像」とし、その画像を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載したとおりとしたものである。 第3 原審の拒絶の理由及び引用した意匠 原審における拒絶の理由は、本願意匠は、出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者(以下、「その意匠の属する分野における通常の知識を有する者」を「当業者」という。)が日本国内又は外国において公然知られ、頒布された刊行物に記載され、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった形状、模様若しくは色彩若しくはこれらの結合又は画像に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので、意匠法3条2項の規定に該当するとしたものであって、具体的には、以下のとおりである。 「本願意匠は、距離や範囲などを認識するためのスケールとして、画面中央に極小の小円とその外側に大きな円周を設け、その小円及び円周が消えるように徐々に変化させ、最終的に消滅させ、それと併せ、画面上部に横長角丸長方形を設ける、とした画像について、部分意匠として意匠登録を受けようとするものです。 本願意匠のような小円と円周の組み合わせは、本願出願前より公然知られており(意匠1)、スケールを示す円周と、横長角丸長方形の組み合わせもまた、本願出願前より公然知られています(意匠2、意匠3)。 円周が徐々に消えるように変化させることは本願出願前より公然知られています(意匠4)。ここで、本願意匠のように、小円及び円周といったシンプルな図形が消えるように徐々に変化させ、最終的に消滅させるといった変化の態様は、意匠4に見られる変化の先に十分に想到できる態様であるといえます。 なお、出現と消滅が逆ではありますが、無の状態から、円周を出現させることは、本願出願前より公然知られています(意匠5)。これは、円周が有る場面と無い場面とを切り替えるために、そのつなぎとして、形態の漸次的な変化を伴っているにすぎず、本願意匠においても同様に、円周を漸次的に変化させ最終的に消滅させることに、円周の有無といった場面の転換以上の意味を見い出せず、これを踏まえると、本願意匠と意匠4の違い(最終的に消滅するかしないか)について、ことさら、創作的な特徴を見出すことはできません。 そうすると、本願意匠は公然知られた形態や変化の態様を組み合わせて、そこに容易に想到できる僅かな改変を施し、部分意匠として表したにすぎず、当業者であれば容易に創作できたものと認められます。 意匠1: 電気通信回線の種類 インターネット 掲載確認日(公知日) 2018年 3月 5日 受入日 特許庁意匠課受入2018年 3月19日 掲載者 Google Play 表題 Viaparents Kids Friendly − Google Play の Android アプリ 掲載ページのアドレス https://play.google.com/store/apps/details?id=com.viap.viaparents に掲載された「スマートフォン用ソフトウェアの情報提供機能」の画像 (特許庁意匠課公知資料番号第HJ29136399号) 意匠2: 電気通信回線の種類 インターネット 掲載確認日(公知日) 2019年10月11日 受入日 特許庁意匠課受入2019年10月24日 掲載者 AVS Car Security 表題 「Freetrack GPS Tracking」をApp Storeで 掲載ページのアドレス https://apps.apple.com/jp/app/freetrack-gps-tracking/id1470346174 に掲載された「スマートフォン用ソフトウェアの地図機能」の画像 (特許庁意匠課公知資料番号第HJ31118216号) 意匠3: 特許庁普及支援課が2009年10月15日に受け入れた 大韓民国意匠商標公報 2009年 9月 3日09−17号 携帯型電子計算機(登録番号30−0538672)の画像 (特許庁意匠課公知資料番号第HH21426206号) 意匠4: DM/082326 2013年12月13日 グラフィカルユーザーインターフェース(登録番号DM/082326) (特許庁意匠課公知資料番号第HH25512217号) 意匠5: 特許庁発行の意匠公報記載 意匠登録第1563724号の意匠 (意匠に係る物品、モバイルフォン)」 第4 当審の判断 以下、本願意匠の意匠法3条2項の該当性、すなわち、本願の意匠が当業者であれば容易に創作することができたか否かについて検討し、判断する。 1 本願意匠(別紙第1参照) (1)本願意匠について 本願意匠(スケール認識用画像)は、例えば、スマートフォン等の表示画面上に表された地図情報等において、目標からの距離や範囲等を認識するための操作画像であって、表示する物品を特定しない画像意匠(以下「本願画像意匠」という。)である。 (2)本願画像意匠の当該意匠登録を受けようとする部分の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲 本願画像意匠の当該意匠登録を受けようとする部分(以下「本願画像部分」という。)の用途及び機能は、外枠(フレーム)内に、文字入力エリアと目標からの距離や範囲等を認識するためのスケールを表示するものであり、その位置、大きさ及び範囲は、上記フレーム及びその内部の上端近くに配置した図形(文字入力エリア)と中央に設けた図形(スケール)である。 (3)本願画像部分の画像 ア 「画像図」に表された画像 (ア)画像の構成態様 略縦長長方形のフレームの内部において、上端近くの横幅いっぱいに略横長隅丸長方形の図形を設け(以下「文字入力エリア」という。)、中央に大小2つの略円形を同心円状に配置した図形(以下、「二重円図形」といい、外側の円を「大円」、内側の円を「小円」という。)を設けたものである。 (イ)各部の長さ等の比率 フレームの縦(高さ)横の長さの比率は約2:1で、文字入力エリアの縦横の長さの比率は約1:7で、二重円図形の小円の径は大円の径の約1/34で大円の径はフレームの横の長さの約3/5強である。 イ 「画像図が変化した第1状態を示す図」に表された画像 画像の構成態様及び各部の長さの比率は、「画像図」に表された画像からの変化はないが、図形のうち、二重円図形の線の太さが半分程度に細くなっている。 ウ 「画像図が変化した第2状態を示す図」に表された画像 画像の構成態様及び各部の長さの比率は、「画像図」に表された画像からの変化はないが、図形のうち、二重円図形の線の太さが1/3程度に細くなっている。 エ 「画像図が変化した第3状態を示す図」に表された画像 (ア)画像の構成態様 画像の構成態様のうち、「画像図」に表された画像から、図形のうち、二重円図形が消失している。 (イ)フレーム及び文字入力エリアの長さの比率 フレーム及び文字入力エリアの長さの比率は、いずれも「画像図」に表された画像の比率と同一である。 2 引用意匠の認定 (1)意匠1(別紙第2参照) ア 意匠1について 意匠1は、スマートフォン等の表示画面上に表示した地図情報等において、目標からの距離や範囲等を認識するための操作画像であって、表示する物品を特定しない画像意匠である。 イ 意匠1の画像 意匠1の画像は、略縦長長方形のフレームの内部において、上端から上下に分割する略横長帯状のエリアを3行形成し、そのエリアの下側全体を地図情報等の表示エリアとしたものであって、当該エリア内の中央付近に、ほぼフレームの横幅いっぱいに二重円図形を設けたものである。 (2)意匠2(別紙第3参照) ア 意匠2について 意匠2は、スマートフォン等の表示画面上に表示した地図情報等において、目標からの距離や範囲等を認識するための操作画像であって、表示する物品を特定しない画像意匠である。 イ 意匠2の画像 意匠2の画像は、略縦長長方形のフレームの内部において、上端から上下に分割する略横長帯状のエリアを形成し、その中央下端寄りに略横長隅丸長方形の図形を設けて文字入力エリアとし、下端から上下に分割する略横長長方形のエリアを形成し、その内部中央下端寄りに略横長隅丸長方形の図形を設け、中央に地図情報等を表示するエリアを設け、当該エリア内の中央に、フレームの横幅よりやや小径の二重円図形を設けたものである。 (3)意匠3(別紙第4参照) ア 意匠3について(4つの画像のうち、右上の画像について認定する。) 意匠3は、スマートフォン等の表示画面上に表示した地図情報等において、目標からの距離や範囲等を認識するための操作画像であって、表示する物品を特定しない画像意匠である。 イ 意匠3の画像 意匠3の画像は、略縦長長方形のフレームの内部において、上下端から上下に分割する略横長帯状のエリアを形成し、上側のエリアの中央下端寄りに両端を略半円状に形成した略横長帯状の図形を設けて文字入力エリアとし、中央に地図情報等を表示するエリアを設け、当該エリア内の中央に、フレームの横幅よりやや小径の略円形の図形を設けたものである。 (4)意匠4(別紙第5参照) ア 意匠4について 意匠4は、グラフィカルユーザーインターフェースの画像であって、表示する物品を特定しない画像意匠である。 イ 意匠4の画像 左側の画像は、フレームを略横長長方形とし、その内部中央上寄りにフレームの横の長さの約1/3の径の略円形の図形を設けたものであって、当該図形の外縁を一回り広径の略円環状に濃墨で着色している。 右側の画像は、フレームを略横長長方形とし、その内部中央やや上寄りにフレームの横の長さの約1/3の径の略円形の図形を設けたものであって、当該図形の外縁を一回り広径の略円環状に薄墨で着色している。 (5)意匠5(別紙第6参照) ア 意匠5について 意匠5は、意匠に係る物品を「モバイルフォン」とし、変化を伴う表示画像の部分を部分意匠とするものであって、その表示画面に表された画像において、電子メールや電話等の着信があったとき、表示画面内に略円形の図形が表示される携帯電話機である。 イ 意匠5の画像部分 意匠5の画像部分は、正面図及び変化後を示す正面図1ないし11に表された図形により構成されるものであって、具体的には以下のとおりである。 なお、本審決においては、12の画像のうち、正面図及び変化後を示す正面図1ないし6の画像部分について認定する。 (ア)正面図に表された画像部分 略縦長長方形のフレームの内部において、下端から上下に分割する略横長帯状のエリアを形成したものであって、その内部中央上寄りに略右倒「<」字状の模様を形成している。 (イ)変化後を示す正面図1に表された画像 正面図に表された画像部分に加え、中央やや上寄りにフレームの横の長さの約1/6の径の略円形の図形を設けたものである。 (ウ)変化後を示す正面図2に表された画像 変化後を示す正面図1に表された画像のうち、略円形の図形の径がフレームの横の長さの約1/3弱の大きさに拡大したものである。 (エ)変化後を示す正面図3に表された画像 変化後を示す正面図2に表された画像のうち、略横長帯状のエリアがわずかに上方に移動し、略円形の図形の径がフレームの横の長さの約3/5の大きさに拡大したものである。 (オ)変化後を示す正面図4に表された画像 変化後を示す正面図3に表された画像のうち、略横長帯状のエリアがわずかに上方に移動し、略円形の図形の径がフレームの横の長さの約9/10の大きさに拡大したものである。 (カ)変化後を示す正面図5に表された画像 変化後を示す正面図4に表された画像のうち、略横長帯状のエリアがわずかに上方に移動し、略円形の図形の径がフレームの横の長さの約5/4の大きさに拡大し、その上端及び左右端の一部が欠落している。 (キ)変化後を示す正面図6に表された画像 変化後を示す正面図5に表された画像のうち、略横長帯状のエリアがわずかに上方に移動し、略円形の図形の径がフレームの横の長さの約2倍弱の大きさに拡大し、見かけ上、略横長帯状のエリアに近接して円周の一部が弧状に表れている。 3 本願意匠の創作性の検討 この物品の属する分野において、略縦長長方形のフレームの内部において、上端近くの横幅いっぱいに略横長隅丸長方形の図形を設けて文字入力エリアとし、中央に二重円図形を設けた画像は、本願の出願前に公然知られているものである(意匠1、意匠2)。また、フレーム内の空白のエリアに略円形の図形が表れ、次第に拡大するよう変化する画像も、本願の出願前に公然知られているものである(意匠4)。 しかしながら、本願意匠のように、二重円図形の線の太さが、まず、半分程度の太さとなり、次に、1/3程度の太さとなった後、消失する変化を伴う画像は、本願意匠の他には見られないものであるから、本願意匠は、当業者にとって、格別の創作を要したものといわざるを得ない。 そうすると、本願意匠の態様は、この種物品分野において独自の着想によって創出したものであり、当業者が引用意匠に基づいて容易に本願意匠の創作をすることができたということはできない。 第5 むすび 以上のとおりであって、本願意匠は、原審が示した理由によっては意匠法3条2項に規定する意匠に該当しないものであるから、この拒絶の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。 また、当審において、更に審理した結果、他に拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2022-04-20 |
出願番号 | 2020008375 |
審決分類 |
D
1
8・
121-
WY
(N3)
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最終処分 | 01 成立 |
特許庁審判長 |
小林 裕和 |
特許庁審判官 |
内藤 弘樹 加藤 真珠 |
登録日 | 2022-06-07 |
登録番号 | 1717424 |
代理人 | 特許業務法人深見特許事務所 |