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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 K1
管理番号 1385240 
総通号数
発行国 JP 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2022-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-09-29 
確定日 2022-05-25 
意匠に係る物品 シノ付きラチェットハンドル 
事件の表示 意願2020− 9443「シノ付きラチェットハンドル」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 事案の概要

1 手続の経緯
本願は,令和2年(2020年)5月13日の意匠登録出願であって,同年12月24日付けの拒絶理由の通知に対し,令和3年(2021年)2月15日に意見書が提出されたが,同年6月24日付けで拒絶査定がなされ,これに対して,同年9月29日に拒絶査定不服審判の審判請求がなされ,同年10月28日に手続補正書(補正対象書類:審判請求書)が提出されたものである。

2 本願意匠の願書及び添付図面の記載
本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとする意匠登録出願であり,その意匠は,意匠に係る物品を「シノ付きラチェットハンドル」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形状等」という。)を,願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり(以下「本願意匠」という。),部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を,「各図において実線で示した部分が意匠登録を受けようとする部分である。」(以下「本願部分」という。)としたものである(別紙第1参照)。

3 原査定の拒絶の理由及び引用意匠
原査定の拒絶の理由は,本願意匠が,その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠に類似するものであるから,意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当する,というものである。
拒絶理由通知において引用された意匠は,独立行政法人工業所有権総合情報館が2001年4月2日に受け入れた,内国雑誌「新製品情報」2001年4月1日4号の第62頁に所載のラチェットレンチの意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HA13005684号)であり,その形態を,同刊行物に記載されたとおりとしたものである(以下「引用意匠」という。)(別紙第2参照)。
以下,本審決では,引用意匠において本願部分と対比,判断する部分,すなわち,本願部分に相当する部分を,「引用部分」という。

第2 当審の判断

1 本願意匠と引用意匠の対比
(1)意匠に係る物品の対比
本願意匠の意匠に係る物品は,六角ボルト等を締めたり緩めたりすることに用いられ,また,ボルト穴の位置合わせや番線を縛ることにも用いられる手動用の工具であり,ラチェット機構により効率よくボルトを締めたり緩めたりする機能を有する工具であるから,本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は,その用途及び機能が共通するものである。

(2)本願部分と引用部分の用途及び機能の対比
本願部分の用途及び機能は,その柄の一端にラチェット機構を内設した幅広な部分(以下「ヘッド部」という。)を設け,このヘッド部の正面側に,各種ソケットレンチを取り付けるための角ドライブを突設したソケットレンチ用のラチェットハンドルとして,また,その柄の他端にボルト穴の位置合わせや番線を縛るための突先部分を形成したシノとして用いられるものであり,ソケットレンチを取り付けることでラチェット機構により効率よくボルトを締めたり緩めたりできるラチェットハンドルの機能及びシノの機能を有するものである。
一方,引用部分の用途及び機能は,ヘッド部の正面側及び背面側に,2種類の大きさのソケットを突設した両口ソケットタイプのラチェットレンチとして,また,その柄の他端にボルト穴の位置合わせや番線を縛るための突先部分を形成したシノとして用いられるものであり,ラチェット機構により効率よくボルトを締めたり緩めたりできるラチェットレンチの機能及びシノの機能を有するものである。
そうすると,本願部分と引用部分(以下「両部分」という。)の用途及び機能は,シノとしての用途及び機能は一致するものの,本願部分は,各種ソケットレンチを取り付けることで様々な大きさのボルトを締めたり緩めたりできるラチェットハンドルであり,引用部分は,2種類の大きさのボルトを締めたり緩めたりできるラチェットレンチであるから,この点において両部分の用途及び機能は相違するものである。

(3)両部分の位置,大きさ及び範囲の対比
両部分は,いずれもヘッド部正面側の角ドライブ及びその根元部分に該当する中央部分及び縁部分,ヘッド部背面側の縁部分,ヘッド部平面側及び底面側に突出した切り替えレバーの部分及び当該レバーをヘッド部に取り付けている軸の部分,ヘッド部左側面側中央部分に表れている小円の部分,並びに柄の正面側及び背面側の切り欠かれた部分であるから,両部分の位置,大きさ及び範囲は一致する。

(4)両部分の形状等の対比
両部分の形状等を対比する(以下,対比のため,引用意匠も本願意匠の図面の向きに合わせることとする。)と,その形状等には,主として以下の共通点及び相違点が認められる。

ア 形状等の共通点
(共通点1)両意匠は,全体を,略細長板状体の柄の左側に,正面視が柄より幅広のヘッド部を一体的に形成し,柄の右側に細長い略円錐状のシノを一体的に形成した点が共通する。
(共通点2)両意匠は,ヘッド部の形状等を,水滴の上方部分を水平に切り欠いたような形状を横向きに配したような厚みが略均一な板状体に形成した点が共通する。
(共通点3)両意匠は,柄の形状等を,その正面側及び背面側を,平面視横長隅丸等脚台形状に切り欠いて,その厚みをヘッド部及びシノの根元部分より薄くした略横長板状体としたものであって,ヘッド部及びシノとの接合部分には,それぞれ湾曲した傾斜面が表れている点が共通する。

イ 形状等の相違点
(相違点1)本願部分のヘッド部の正面側の形状等は,その正面側に,角部分を面取りした略立方体形状の角ドライブを立設し,角ドライブの根元部分をなだらかに拡がる略ラッパ状に形成しているのに対し,引用部分のヘッド部の正面側の形状等が,その正面側に,内周面に正面視略三角形状の縦溝を12条形成した,ヘッド部より僅かに小径で略円筒形状の12角ソケットを立設している点で,両部分は相違する。
(相違点2)本願部分のヘッド部,柄及びシノの長さの比は,約1:2:1であるのに対し,引用部分のヘッド部,柄及びシノの長さの比は,約1:1.8:1.4である点で,両部分は相違する。
(相違点3)本願部分のシノの形状等は,湾曲のない直線状のシノを,柄とシノの接合部付近から底面側に向かって折曲して形成しているのに対し,引用部分のシノの形状等が,その略中央部分が僅かに湾曲したシノを,柄とシノの根元部分は一直線になるようにして形成している点で,両部分は相違する。

2 両意匠の類否判断
(1)意匠に係る物品についての判断
両意匠の意匠に係る物品は,その用途及び機能が共通するものであるから類似する。

(2)両部分の用途及び機能についての判断
両部分の用途及び機能は,ラチェットハンドルとラチェットレンチであるから相違するものである。

(3)両部分の位置,大きさ及び範囲の評価
両部分の位置,大きさ及び範囲は,物品全体の形態の中における位置,大きさ及び範囲が一致するから,同一である。

(4)両部分の形状等についての判断
両意匠の意匠に係る物品は,ボルトを締めたり緩めたりするため,ボルト穴の位置合わせや番線を縛るために用いる手動工具に係るものであって,この物品における主な需要者は,これらの工具を実際に現場で使用する者であるといえる。
そうすると,この物品の需要者は,持ちやすさや作業のしやすさといった点を重視してこの種物品を観察するものであり,作業効率に係る部分の形状等が,需要者の注意を惹く部分であるということができる。
したがって,両部分の類否判断にあたっては,手動工具として使用する際に重要な柄の部分,ボルトを締めたり緩めたりする際に重要なヘッド部の正面側部分,ボルト穴の位置合わせや番線を縛る際に重要なシノの部分が,需要者の注意を惹く部分であるとの前提に基づいて,両部分の共通点及び相違点が類否判断に及ぼす影響について評価することとする。

ア 共通点の評価
(共通点1)は部分全体の基本的な構成態様に係るものであるが,両部分の形状等を概括的に捉えた場合の共通点にすぎないものであるから,この(共通点1)が部分意匠全体の美感に与える影響は小さい。
(共通点2)のヘッド部の形状等,及び(共通点3)の柄の形状等については,ラチェット機構を有するレンチ等において本願意匠の出願前からごく普通にみられるものであるから,これらの共通点が両部分のみに認められる格別の特徴であるということはできず,これら(共通点2)及び(共通点3)が部分意匠全体の美感に与える影響も小さい。

イ 相違点の評価
(相違点1)のヘッド部の正面側の形状等の相違については,該部位は作業効率に係る部分の形状等であって,この物品の需要者の注意を強く惹く部分であるところ,角ドライブを設けることで各種ソケットレンチを取り付けることができる汎用性の高いソケットレンチとして使用可能な本願部分と,2種類の大きさの六角ボルト用ソケットが予め配設された限定的なソケットレンチである引用部分とでは,需要者に全く別異の印象を与えるものであるから,この(相違点1)が部分全体の美感に与える影響は非常に大きい。
(相違点2)のヘッド部,柄及びシノの長さの比の相違については,特にシノの部分における全長に占める長さの相違は,番線を縛る際の作業効率に大きく影響することから,需要者の注意を惹く部分に係るものであり,その相違が僅かなものであっても需要者に別異の印象を与えるものであるから,この(相違点2)が部分全体の美感に与える影響は一定程度ある。
(相違点3)のシノの具体的な形状等の相違については,直線状のシノも,その略中央部分が僅かに湾曲したシノも既に見られる形態にすぎず,このシノの形態に係る相違は,部分全体としてみれば僅かなものであるといえるが,本願部分のように柄とシノの接合部付近から折曲してシノを形成している形態は,手動工具として使用する際の持ちやすさに影響するものであるから,この折曲部分に係る相違については,部分全体の形状等の共通性に完全に埋没するものとはいえず,この(相違点3)が部分全体の美感に与える影響は一定程度ある。

ウ 両部分の形状等の類否判断
両部分の形状等における共通点及び相違点についての個別評価に基づき,両部分全体として総合的に観察した場合,両部分は,需要者の注意を惹く部分であるヘッド部の正面側の形状等の相違が,部分全体の美感に与える影響が大きく,ヘッド部,柄及びシノの長さの比の相違やシノの具体的な形状等の相違も,部分全体の美感に一定の影響を与えるのに対し,基本的な構成態様やヘッド部及び柄の形状等の共通点が部分全体の美感に与える影響は小さく,これらの共通点に係る形状等が相まって生じる視覚的効果を考慮しても,共通点が部分全体の美感に与える影響は,相違点が与える影響を覆すには至らないものであるから,本願部分の形状等と引用部分の形状等とは類似しないものである。

(5)小括
以上のとおり,両意匠は,意匠に係る物品が類似するものであり,両部分の位置,大きさ及び範囲も同一であるが,両部分の用途及び機能が相違し,その形状等において類似しないものであるから,本願意匠と引用意匠が類似するということはできない。

第3 むすび

上記のとおりであって,本願意匠は,引用意匠に類似せず,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないものである。したがって,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。

また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲


審決日 2022-04-15 
出願番号 2020009443 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (K1)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 上島 靖範
特許庁審判官 渡邉 久美
江塚 尚弘
登録日 2022-06-03 
登録番号 1717134 
代理人 北上 日出登 
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