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審決分類 審判 査定不服  意48条1項3号非創作者無承継登録意匠 取り消して登録 H7
管理番号 1385252 
総通号数
発行国 JP 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2022-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-11-10 
確定日 2022-05-10 
意匠に係る物品 エアーコンディショナー用リモートコントローラー 
事件の表示 意願2020− 11381「エアーコンディショナー用リモートコントローラー」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
本願は、意匠登録第1604099号を本意匠とし、物品の部分について意匠登録を受けようとする関連意匠の意匠登録出願であって、主な手続の経緯は以下のとおりである。
令和2年(2020年) 6月 9日 意匠登録出願
令和3年(2021年) 4月23日付け 拒絶理由通知
同年 6月10日 意見書の提出
同年 8月10日付け 拒絶査定
同年 11月10日 審判請求書の提出

第2 本願の意匠
本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は、意匠に係る物品を「エアーコンディショナー用リモートコントローラー」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状等」という。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり、物品の部分について「部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を実線で、それ以外の部分を破線で表している。」(以下「本願部分」という。)としたものである。(別紙第1参照)

第3 本意匠
本意匠(以下「本願意匠」と併せて「本関両意匠」という。)は、物品の部分について意匠登録を受けようとし、平成29年(2017年)11月17日に意匠登録出願されたものであり、平成30年(2018年)4月20日に意匠権の設定の登録がなされ(意匠登録第1604099号)、同年5月21日に発行された意匠公報に掲載されたとおりのものであって、物品の部分について「部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を実線で、それ以外の部分を破線で表している。」としたものである(以下、本意匠について意匠登録を受けようとする部分を「本意匠部分」といい、「本願部分」と併せて「本関両部分」という。)(別紙第2参照)。

第4 原査定の拒絶の理由及び引用意匠
原査定の拒絶の理由は、本願意匠が、その出願の日前の他の意匠登録出願であってその出願後に意匠法20条3項又は同法66条3項の規定により意匠公報に掲載された意匠登録第1647817号の意匠(以下「引用意匠」という。)(別紙第3参照)の一部と同一又は類似するものと認められるので、意匠法3条の2の規定に該当するとしたものであって、具体的には、以下のとおりである。
「特許庁発行の意匠公報記載
意匠登録第1647817号の意匠
(意匠に係る物品、エアーコンディショナー用リモートコントローラー)の意匠
のうち本願意匠の意匠登録を受けようとする部分に相当する部分(ボタン、ディスプレイ、上面の送信部を除き、更に、左右側面、上下面を一周するように表れる正面側部材と背面側部材の境界以外の凹凸部分や模様、部材間の境界線を除いた部分)

この意匠登録出願の意匠の意匠登録を受けようとする部分と引用意匠のそれに相当する部分(以下、「両意匠部分」といいます。)とを比較すると、正面視横幅がやや大きい縦長矩形、側面視縦長矩形で、平面視は、側面中央やや正面側の位置から正面に向けては内側に緩やかに湾曲し正面の直線と角を持ってつながり、当該側面中央やや正面側の位置から背面側に向けては内側にやや急に湾曲し、背面の短い直線と滑らかにつながった形状となっている点で主に共通し、正面視の縦横比について、引用意匠のそれに相当する部分は横幅が僅かに小さくなっている点で主に相違しています。
上記共通点は、両意匠部分の基調を形成し、需要者に共通の印象を強く与えるのに対し、上記相違点は、相違の程度が小さく、需要者に与える相違の印象が微弱であるため、両意匠部分は類似すると認められます。

なお、本願意匠の意匠登録を受けようとする部分と願書に記載した本意匠の意匠登録を受けようとする部分とを比較すると、本願意匠の意匠登録を受けようとする部分は正面視で横幅がやや大きい縦長矩形であるのに対し、願書に記載した本意匠の意匠登録を受けようとする部分は正面視で横幅が小さめの縦長矩形であり、正面視の縦横比が大きく異なっている点で主に相違しており、当該相違点は、相違の程度が大きく、両意匠の意匠登録を受けようとする部分に相違の印象を強く与えるため、本願意匠は願書に記載した本意匠に類似しないと認められます。(本願意匠は関連意匠と認められないため、意匠法第10条第3項の規定が適用されず、そのため、先の意匠登録出願の出願人と出願人が同一であっても、当該先の意匠登録出願の意匠登録に係る意匠公報(秘密にすることを請求した意匠に係る意匠公報であって、願書の記載及び願書に添付した図面等の内容が掲載されたものを除く。)の発行の日以後に本願が出願された場合には、意匠法第3条の2の規定の適用対象になり得ます。)」

第5 当審の判断
1 本願意匠と引用意匠の類否判断
以下、本願意匠と引用意匠を「両意匠」という。また、引用意匠のうち本願意匠の意匠登録を受けようとする部分に相当する部分を「引用部分」といい、「本願部分」と併せて「両意匠部分」という。
(1)両意匠の対比
ア 両意匠の意匠に係る物品の対比
両意匠は、いずれも、エアコンを遠隔操作する「エアーコンディショナー用リモートコントローラー」であるから、意匠に係る物品は、一致する。
イ 両意匠部分の用途及び機能の対比
両意匠部分は、いずれも、リモコンのディスプレイや操作ボタンを除いた筐体の部分であるから、用途及び機能は、一致する。
ウ 両意匠部分の位置、大きさ及び範囲の対比
両意匠部分は、いずれも、破線で描かれた以下の各部分、すなわち、正面上部のディスプレイ、正面中央の複数のボタン、背面四方のごく小さい足、背面上部の壁掛けフック孔、背面中央やや下の指当て、その下の乾電池蓋の境界、平面の送信デバイス、を除いた筐体の部分であるから、位置、大きさ及び範囲は、一致する。
エ 両意匠部分の形状等の対比
両意匠部分には、主として、以下の共通点及び相違点がある。
(ア)共通点
両意匠部分は、全体を正背に扁平な略縦長直方体の背面から左右側面まで一体に繋がる緩やかな湾曲面とし、周側面のやや正面寄りに沿って極細の縦溝を1条形成したものである点において共通する。
(イ)相違点
a 正面の縦横の長さの比率について、本願部分は約2.56:1であるのに対し、引用部分は約2.8:1で、引用部分の方が、本願部分よりやや縦長である点、
b 正面の分割線の有無について、引用部分は、正面の上下中央やや下寄りに横の分割線を設けているのに対し、本願部分は、分割線は設けていない点において相違する。
(2)両意匠の類否判断
以上の共通点及び相違点が、両意匠部分の類否判断に与える影響を評価し、総合して、本引両意匠の類否を意匠全体として検討し、判断する。
両意匠は、筐体を手に持ちエアコンを遠隔操作するリモコンであるから、需要者は、筐体の形状等に注目するエアコン等の購入者に加え、エアコン等の販売業者や取引業者が含まれる。したがって、筐体全体の形状等が需要者の注意を惹く部分といえる。
ア 両意匠の意匠に係る物品の類否判断
両意匠とも、用途及び機能が一致するから、同一である。
イ 両意匠部分の用途及び機能の評価
両意匠部分とも、用途及び機能が一致するから、同一である。
ウ 両意匠部分の位置、大きさ及び範囲の評価
両意匠部分とも、位置、大きさ及び範囲が一致するから、同一である。
エ 両意匠部分の形状等の共通点及び相違点の評価
(ア)共通点の評価
共通点のうち、周側面に沿って形成された1条の極細の縦溝については、両意匠部分以外にもごく普通に見られる態様であるから、格別、需要者の注意を引くものとはいえず、両意匠部分の類否判断に与える影響は微弱なものであるが、全体を正背に扁平な略縦長直方体の背面から左右側面まで一体に繋がる緩やかな湾曲面としている点は、両意匠部分に共通する特徴となっており、需要者に共通の美感を起こさせるものであるから、この共通点が、両意匠部分の類否判断に与える影響は大きい。
(イ)相違点の評価
まず、相違点aについて、すなわち、正面の縦横の長さの比率として、本願部分は約2.56:1、引用部分は約2.8:1としている点についてであるが、これは、物品全体の大きさに照らして比率の差が僅かであって、前記の共通点に掲げた全体を略縦長直方体とした共通する形状等に包摂される程度のわずかな改変に過ぎないものであって、部分全体から見れば軽微な相違であるから、需要者が特に注目するものとはいえず、相違点aが両意匠部分の類否判断に与える影響は小さい。
次に、相違点bについて、すなわち、引用部分は、正面の上下中央やや下寄りに横の分割線を設けているのに対し、本願部分は、そのような分割線を設けていない点についてであるが、そのような分割線を設けることも設けないことも、リモコンの物品の分野においては、例を挙げるまでもなくありふれたものであって、需要者の注意を特に引くものとはいえず、相違点bが両意匠部分の類否判断に与える影響は小さい。
オ 両意匠部分の類否判断
そうすると、両意匠部分の形状等における共通点及び相違点の評価に基づき、両意匠部分全体として総合的に観察した場合、両意匠部分は、共通点が、両意匠部分の類否判断に与える影響が大きいのに対して、相違点a及び相違点bが、両意匠部分の類否判断に与える影響は小さく、これら相違点に係る形状等が相まって生じる視覚的効果を考慮しても、部分全体の類否判断に与える影響は、共通点が与える共通の印象を覆すには至らないものであるから、両部分の形状等は類似するものである。
したがって、意匠に係る物品が同一で、両部分の用途及び機能が同一で、両部分の位置、大きさ及び範囲が同一であって、その形状等において類似するから、両意匠は類似する。

2 本関両意匠の類否判断
(1)本関両意匠の対比
ア 本関両意匠の意匠に係る物品の対比
本関両意匠は、いずれも、エアコンを遠隔操作する「エアーコンディショナー用リモートコントローラー」であるから、意匠に係る物品は、一致する。
イ 本関両部分の用途及び機能の対比
本願両部分は、いずれも、リモコンのディスプレイや操作ボタンを除いた筐体の部分であるから、用途及び機能は、一致する。
ウ 本関両部分の位置、大きさ及び範囲の対比
本関両部分は、いずれも、破線で描かれた以下の各部分、すなわち、正面約3分の1の大きさの上部ディスプレイ、正面中央の複数のボタン、背面四方のごく小さい足、背面上部の壁掛けフック孔、背面中央やや下の指当て、その下の乾電池蓋の境界、平面の送信デバイス、を除いた筐体の部分であるから、位置、大きさ及び範囲は、一致する。
エ 本関両部分の形状等の対比
本関両部分には、主として、以下の共通点及び相違点がある。
(ア)共通点
本関両部分は、全体を正背に扁平な略縦長直方体の背面から左右側面まで一体に繋がる緩やかな湾曲面とし、周側面のやや正面寄りに沿って筐体の分割線を1条形成したものである点において共通する。
(イ)相違点
a 正面の縦横の長さの比率について、本願部分は約2.6:1であるのに対し、本意匠部分は約3.7:1で、本意匠部分の方が、本願部分より縦長である点、
b 筐体の分割線について、本願部分が極細の縦溝であるのに対し、本意匠部分は直線である点において相違する。
(2)本関両意匠の類否判断
以上の共通点及び相違点が、本関両部分の類否判断に与える影響を評価し、総合して、本関両意匠の類否を意匠全体として検討し、判断する。
ア 本関両意匠の意匠に係る物品の類否判断
本関両意匠とも、用途及び機能が一致するから、同一である。
イ 本関両部分の用途及び機能の評価
本関両部分とも、用途及び機能が一致するから、同一である。
ウ 本関両部分の位置、大きさ及び範囲の評価
本関両部分とも、位置、大きさ及び範囲が一致するから、同一である。
エ 本関両部分の形状等の共通点及び相違点の評価
(ア)共通点の評価
共通点のうち、周側面に沿って形成された1条の筐体の分割線については、本関両部分以外にも、ごく普通に見られる態様であるから、格別、需要者の注意を引くものとはいえず、本関両部分の類否判断に与える影響は微弱なものであるが、全体を正背に扁平な略縦長直方体の背面から左右側面まで一体に繋がる緩やかな湾曲面としている形状等は、本関両部分に共通する特徴となっており、需要者に共通の美感を起こさせるものであるから、この共通点が、本関両部分の類否判断に与える影響は大きい。
(イ)相違点の評価
まず、相違点aについて、すなわち、正面の縦横の長さの比率として、本願部分は約2.6:1、本意匠部分は約3.7:1としている点についてであるが、いずれの縦横比もごく普通に見られるものであって、需要者が特に注目するものとはいえず、相違点aが本関両部分の類否判断に与える影響は小さい。
次に、相違点bについて、すなわち、本願部分は、筐体の分割線を極細の縦溝としているのに対し、本意匠部分は、直線としている点についてであるが、前記の共通点に述べたように、極細の縦溝も、直線も、いずれもごく普通に見られる態様であるから、需要者の注意を特に引くものとはいえず、相違点bが本関両部分の類否判断に与える影響は小さい。
オ 本関両意匠の類否判断
そうすると、本関両部分の形状等における共通点及び差異点の評価に基づき、本関両部分全体として総合的に観察した場合、本関両部分は、共通点が、本関両部分の類否判断に与える影響が大きいのに対して、相違点a及び相違点bが、本関両部分の類否判断に与える影響は小さく、これら相違点に係る形状等が相まって生じる視覚的効果を考慮しても、部分全体の類否判断に与える影響は、共通点が与える共通の印象を覆すには至らないものであるから、本関両部分の形状等は類似するものである。
したがって、意匠に係る物品が同一で、本関両部分の用途及び機能が同一で、本関両部分の位置、大きさ及び範囲が同一であって、その形状等において類似するから、両意匠は類似する。

3 小括
本願意匠は、引用意匠に類似するものの、本意匠にも類似するから、意匠法10条3項の規定により原審拒絶理由である同法3条の2の適用が除外され、同法10条1項に該当する。

第6 むすび
以上のとおりであって、本願意匠は、意匠法10条1項に該当するものであるから、原査定の拒絶理由によって、本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。
また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
別掲




審決日 2022-04-13 
出願番号 2020011381 
審決分類 D 1 8・ 16- WY (H7)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 内藤 弘樹
特許庁審判官 正田 毅
宮田 莊平
登録日 2022-05-19 
登録番号 1716058 
代理人 倉谷 泰孝 
代理人 松井 重明 
代理人 村上 加奈子 

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