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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 H7
管理番号 1385253 
総通号数
発行国 JP 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2022-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-11-18 
確定日 2022-05-10 
意匠に係る物品 コンピュータ 
事件の表示 意願2020− 5011「コンピュータ」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯

本願は、令和2年(2020年)3月13日(パリ条約による優先権主張2019年10月14日、中華人民共和国)の意匠登録出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

令和3年(2021年) 1月14日付け:拒絶理由の通知
同年 4月26日 :意見書の提出
同年 8月25日付け:拒絶査定
同年 11月18日 :審判請求書の提出

第2 本願意匠

本願意匠は、意匠に係る物品を「コンピュータ」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである(別紙第1参照)。

第3 原査定の拒絶の理由及び引用意匠

原査定の拒絶の理由は、本願意匠は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の意匠に類似するものであるから、意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることができない意匠)に該当する、というものである。
拒絶の理由に引用された意匠(以下「引用意匠」という。)は、下記のとおりである(別紙第2参照)。

引用意匠
以下のウェブサイトに掲載された「モバイルノートパーソナルコンピュータ」の意匠

表題 HUAWEI MateBook 13は魅力的な定番モバイルノートPCだ!!
媒体のタイプ [online]
掲載年月日 2019年3月22日
検索日 2021年1月13日
情報の情報源 インターネット
情報のアドレス https://pc.watch.impress.co.jp/topics/huawei1903/

第4 対比

1 意匠に係る物品の対比
本願意匠の意匠に係る物品は、「コンピュータ」であり、引用意匠の意匠に係る物品は「モバイルノートパーソナルコンピュータ」であるが、いずれも持ち運び可能な、いわゆるノート型のパーソナルコンピュータであるから、本願意匠と引用意匠(以下、「両意匠」という。)の物品の用途及び機能は共通する。

2 形態の対比
以下、対比のため、引用意匠の向きを本願意匠の図の向きに合わせて認定する。

(1)形態の共通点
(共通点1)両意匠全体は、ディスプレイが略枠一杯に配設された略隅丸横長長方形板状蓋部と、上面にキーボードの各キー及び略隅丸横長長方形状のトラックパッドを配設した、蓋部と略同大の本体部を、正面視上辺の左右端部に配設したヒンジ部で連結して二つ折り可能な構成とする点で共通する。
(共通点2)閉蓋状態における周側面は、蓋部と本体部が間隔を開けて略面一状の垂直面を形成する点で共通する。
(共通点3)蓋部は、ディスプレイの枠の幅について、下辺の幅が他の辺の幅より広い点で共通する。
(共通点4)本体部は、上面のややヒンジ寄りにキーボードを、その直下略中央にトラックパッドを配するもので、キーボードの各キーを、上面から一段下がった凹状面に配し、本体部上面と略面一とする点で共通する。また、キーボードは、テンキーが省略されたキー配列である点で共通する。
(共通点5)ヒンジ部は、開蓋状態において、本体部上辺の横長凹状部に横長棒状材が嵌合して表れる点で共通する。

(2)形態の相違点
(相違点1)全体構成について、閉蓋状態の正面視における縦横比が、本願意匠が約1:1.5であるのに対し、引用意匠は約1:1.4である点。
(相違点2)閉蓋状態における周側面について
(相違点2−1)側面視において、本願意匠が平面側で脚部を除く全高のほとんどを、底面側でも脚部を除く全高の約2/3を垂直面とするのに対し、引用意匠は平面側で脚部を除く全高の約5/7を、底面側では約1/2を垂直面とする点。
(相違点2−2)側面視において、本願意匠が蓋部上方にごく細幅の斜面状面取を形成するのに対し、引用意匠はなだらかな曲面を形成する点。
(相違点3)蓋部について
(相違点3−1)構成について、本願意匠が、表示部の上面側にヒンジ側にやや伸張したカバー材を配し、開蓋状態においてヒンジ側両端部に段差が表れるのに対し、引用意匠は、表示部の上面側にカバー材が嵌合し、開蓋状態においてはヒンジ部端部における段差の有無が不明である点。
(相違点3−2)蓋部上面について、本願意匠が全体が平坦面であって外縁にごく細幅の斜面状面取を形成するのに対し、引用意匠は中央部は平坦面であるが外縁周辺部ではなだらかな曲面を形成し、特に底面側を蓋部上面略中央から底面側に向かって漸次傾斜するごくなだらかな曲面状に形成する点。
(相違点4)本体部について
(相違点4−1)構成について、本願意匠が、基台部に対して上面及び周側面を連続して被覆するカバー材を配するのに対し、引用意匠は、不明である点。
(相違点4−2)背面(設置状態においては底面)の脚部について、本願意匠が、背面上方に横長トラック形状に隆起した凸状部に、側面視略円弧状の材を嵌合した隆起部と、下方左右に、側面視略円弧状の材を配するのに対し、引用意匠は、四隅に略扁平円形状の材を配する点。
(相違点4−3)キーボード及びその周辺について、本願意匠は、横幅をヒンジ部の横幅と略同幅として左右に余地部を配し、右側の余地部の上方に電源ボタンと推認される円形ボタンを配するのに対し、引用意匠は、本体部の横幅略いっぱいに配して余地部をわずかな縁程度とし、キーボード右上に円形の電源ボタンを配する点。
(相違点4−4)キー配列について
(相違点4−4−1)キーの数について、最上段のファンクションキーについては、本願意匠は引用意匠より1つ多く、上から2段目、4段目、下から2段目の略正方形状のキーについては、本願意匠は引用意匠より1つ少なく、最下段のスペースキー左側の略正方形状のキーについては、本願意匠は引用意匠より1つ少なく、右側の略正方形状のキーについては、本願意匠は引用意匠より2つ少ない点。
(相違点4−4−2)キーの形状について、(ア)引用意匠のバックスペースキーに相当するキーは、本願意匠が略横長長方形状であるのに対し、引用意匠は略正方形状であり、(イ)引用意匠のエンターキーに相当するキーは、本願意匠が上下2つの横幅の異なる略長方形状であるのに対し、引用意匠は略鈎状であり、(ウ)引用意匠の右側のシフトキーに相当するキーは、本願意匠は縦横比が約1:2.5の略長方形状であるのに対し、引用意匠は約1:1.5の略長方形状であり、(エ)引用意匠のスペースキーに相当するキーは、本願意匠は縦横比が約1:6の略長方形状であるのに対し、引用意匠は約1:3の略長方形状である点。

第5 判断

1 意匠に係る物品の類否判断
両意匠の意匠に係る物品は、用途及び機能が共通するから、類似する。

2 形態の共通点及び相違点の評価
両意匠の意匠に係る物品は、いずれも持ち運び可能な、いわゆるノート型のパーソナルコンピュータであって、近年ではリモートワークを意識した、薄型で軽量、二つ折りに閉蓋して片手で持ち運び可能なものが主流となっていることから、需要者は、作業中の利便性のみならず、不使用時及び持ち運ぶ際の外観を考慮した物品全体の美感という観点から、両意匠に係る物品を観察するということができる。
したがって、作業上の利便性という観点からは、開蓋状態全体の態様を斜め上方から見た態様が需要者の注意を強く惹く部分であるとともに、不使用時及び持ち運ぶ際の外観を考慮した物品全体の美感という観点からは、閉蓋状態の物品全体の態様が需要者の注意を強く惹く部分であるということができる。

(1)形態の共通点
(共通点1)は、両意匠の形態を概括的に捉えた場合の共通点にすぎないものであり、類否判断に与える影響は小さい。
(共通点2)ないし(共通点5)は、いずれもこの物品分野では一般的にみられるものの、使用時に目に入りやすい箇所であるから、類否判断に一定程度の影響を与える。

(2)形態の相違点
(相違点1)については、構成比率のこの程度の相違は、この物品分野において常識的な範囲内のものであるから、類否判断に与える影響は小さい。
(相違点2)については、閉蓋状態における周側面の態様は、二つ折りの閉蓋時に薄型板体となるこの種物品においては物品全体の印象に大きな影響を与えるものであり、また、需要者が持ち運び時及び開蓋時に指をかける際に注目する箇所でもあるところ、(相違点2−1)の垂直面の割合の相違及び(相違点2−2)の形態の具体的な相違が類否判断に与える影響は大きい。
(相違点3−1)については、本願意匠独自の態様とはいえないが、蓋部全体の構成及び使用時に目に触れやすい箇所に係る相違であるから、類否判断に一定程度の影響を与える。
(相違点3−2)については、閉蓋時に物品のほとんどの範囲を占める箇所における相違であり、また、本願意匠の蓋部上面が平坦面のみによるものであるのに対し、引用意匠の蓋部上面は主になだらかな曲面によるものであることから、需要者に与える印象を大きく左右し、類否判断に与える影響は大きい。
(相違点4−1)については、本願意匠独自の態様とはいえないが、本体部全体の構成に係る相違であるから、類否判断に一定程度の影響を与える。
(相違点4−2)については、脚部の態様は、作業時にはほとんど看取されないものであるが、需要者に作業時の安定性を想起させ、また、持ち運ぶ際には目に触れるものであるから、類否判断に一定程度の影響を与える。
(相違点4−3)については、キーボード周縁の余地部の範囲の増減は、この物品分野では通常なされる変更の範囲内のものであるから、類否判断に与える影響は小さい。
(相違点4−4)については、(相違点4−4−1)及び(相違点4−4−2)(ア)ないし(エ)に記載のとおり、キー配列における数や一部のキーの形状に相違はあるものの、この種物品において特異な数や形状とはいえず、共通する態様の中で見られる相違にとどまるから、類否判断に与える影響は小さい。

3 両意匠の類否判断
両意匠の形態における共通点及び相違点の評価に基づき、意匠全体として総合的に観察した場合、上記第5の2(2)のとおり、相違点について、(相違点1)、(相違点4−3)及び(相違点4−4)が類否判断に与える影響は小さいものの、(相違点2−1)、(相違点2−2)及び(相違点3−2)が類否判断に与える影響は大きく、(相違点3−1)、(相違点4−1)及び(相違点4−2)は類否判断に一定程度の影響を与えるものである。
一方、共通点は、同(1)のとおり、(共通点2)ないし(共通点5)は類否判断に一定程度の影響を与えるものの、(共通点1)が類否判断に与える影響は小さい。
これら共通点及び相違点の評価を総合すると、相違点を総合した類否判断に与える影響は大きいものであって、共通する態様を考慮してもこれを凌駕し、意匠全体として観察した際に異なる美感を起こさせるものといえる。
したがって、両意匠は、意匠に係る物品が類似するが、その形態において、相違点が共通点を圧して需要者に異なる美感を起こさせるものであるから、両意匠は類似しない。

第6 むすび

以上のとおり、本願意匠は、引用意匠に類似せず、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないものである。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
別掲






審決日 2022-04-20 
出願番号 2020005011 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (H7)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 加藤 真珠
江塚 尚弘
登録日 2022-06-03 
登録番号 1717133 
代理人 伊東 忠彦 
代理人 伊東 忠重 
代理人 宮崎 修 
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