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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 M1 |
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管理番号 | 1386222 |
総通号数 | 7 |
発行国 | JP |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2022-07-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2021-08-13 |
確定日 | 2022-05-30 |
意匠に係る物品 | 布地 |
事件の表示 | 意願2020− 7420「布地」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、令和2年(2020年)4月8日(パリ条約による優先権主張 2019年10月16日 アメリカ合衆国)の意匠登録出願であって、令和3年(2021年)1月27日付けの拒絶理由の通知に対し、同年5月6日に意見書が提出されたが、同年5月11日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年8月13日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 第2 本願の意匠 本願は、物品の部分について意匠登録を受けようとする意匠登録出願であり、その意匠(以下「本願意匠」という。)は、意匠に係る物品を「布地」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形状等」ともいう。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり、本願意匠において物品の部分として意匠登録を受けようとする部分(以下「本願部分」という。)を、「実線で表した部分が、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。一点鎖線は、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分とその他の部分との境界のみを示す線である。」とし、「この意匠は、上下左右に連続するものである。『意匠登録を受けようとする部分の拡大図』に表した意匠の大きさは、縦約10cmである。」としたものである(別紙第1参照)。 第3 原査定の拒絶の理由及び引用意匠 原査定の拒絶の理由は、本願意匠は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠に類似するものであるから、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)に該当する、というものであって、拒絶の理由に引用された意匠(以下、「引用意匠」といい、引用意匠の本願部分に対応する部分を「引用部分」という。)は、大韓民国が平成21年(2009年)9月2日に発行した大韓民国意匠商標公報09―17号に記載された、建築物用防水シート(登録番号30−0538332)の意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HH21426886号)であり、その形状等を、同公報に記載されたとおりとしたものである(別紙第2参照)。 第4 対比 1 意匠に係る物品の対比 本願意匠の意匠に係る物品は、内容物(服飾品においては身体など)を覆って保護し、かつ装飾する服飾品や、身の回り品などに広く用いられる「布地」であって、引用意匠の意匠に係る物品は、屋根や外壁などに用い、内側の水蒸気は排出し、外側からは雨などが家屋内部に侵入しないよう防護する「建築物用防水シート」であるから、本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、シート状体であって、内容物を覆い保護するという点については共通するものの、その使用される対象並びに主たる用途及び機能は共通しない。 2 本願部分と引用部分の用途及び機能の対比 本願部分と引用部分(以下「両部分」という。)は、いずれもシート状体の表面部分であるから、覆うことによって対象物を保護する用途及び機能においては共通する点はあるものの、これを使用する対象が大きく相違し、本願部分は、人体などを覆って保護し、かつ装飾するものであって、引用部分は、屋根や外壁に雨などが侵入しないよう防護するものであるから、両部分の用途及び機能は共通しないものである。 3 両部分の位置、大きさ及び範囲の対比 両部分は、いずれもシート状体である全体の、表面の任意に区画した部分以外の部分を除く部分であって、本願部分は、全体が上下左右に連続するものであるから、位置は、全体の略中央の表面であり、範囲については、全体の内、任意に区画した範囲であって、表面図に(連続する元の図として)表された布地上においては、その縦方向約7/10、横方向約6/11の範囲であると認められる。引用部分は、本願部分に対応する部分であるから両部分の位置及び範囲は、概ね一致するが、大きさについては、本願部分はその「意匠の説明」から縦方向約10cmのものとしているから掌程度の大きさのものであるのに対し、引用部分は、不明である点で相違する。 4 両部分の形状等の対比 両部分の形状等を対比すると、両部分の形状等には、主として以下の共通点及び相違点が認められる。 (1)両部分の形状等の共通点 基本的構成態様 (共通点A)両部分は、シート状体表面に、縦横列共に、大小の円形部を交互に並べ、千鳥状のドット柄を形成したものである点、 具体的構成態様 (共通点B)両部分の大小の円形部は、ごく薄い凸状である点で共通する。 (2)両部分の形状等の相違点 具体的態様 (相違点a)大小の円形部の大きさについて、本願部分は、表面視で大小の円形部の直径の長さ比が7:2であるのに対して、引用部分は、7:3である点、 (相違点b)ドット柄を構成する大小の円形部の配置間隔について、本願部分は、表面視で一つの円形部から上下左右に隣接する円形部までの間隔が1:1:1:1の長さ比であって、上下左右が等間隔で配されたものであるのに対し、引用部分は1:1:2.6:2.6であって、上下の間隔に対し、左右の間隔が長い比率で配されたものである点で両意匠は相違する。 第5 判断 1 意匠に係る物品の類否判断 両意匠の意匠に係る物品は、「布地」と「建築物用防水シート」であるから、服飾品や、身の回り品などに広く用いられるものと、屋根や外壁などに用い、雨などが家屋内部に侵入しないよう防護するものとでは、その主たる用途及び機能が共通せず、両意匠の意匠に係る物品は、類似しない。 2 両部分の用途及び機能の類否判断 両部分の用途及び機能は共通しないものであるから、類似しない。 3 両部分の位置、大きさ及び範囲の評価 両部分の位置、大きさ及び範囲については、両部分は、物品全体の形態の中における位置及び範囲は、概ね一致するから同一であるが、大きさについては、本願部分は掌程度のものであって、引用部分は、大きさは不明であるから、同一又は当該意匠の属する分野においてありふれた範囲内のものということはできない。 4 両部分の形状等の共通点及び相違点の評価 両意匠の意匠に係る物品の需要者は、共通せず、本願意匠の需要者は主に服飾品や身の回り品などを布地を用いて製造する者であって、その布地の素材など製品への適合性や、最終的な使用者の好みなどを考慮して、その選択をするものであるから、視覚的な装飾性の点などからも表面態様に注意を払うといえる。 一方、引用意匠は、家屋などの施工業者などがその需要者であって、屋根や外壁などに用い、最終的には、外装部材の内側で雨などが家屋内部に侵入しないよう防護するものであるから、その施工しやすさや、用途に適したものであるかの点に注意を払い、表面態様も、防水及び通気機能の点から注視して観察するといえる。 引用意匠の向きは本願意匠の向きに合わせて認定する(引用意匠の「正面図」を「表面図」とする。)。 (1)両部分の形状等の共通点 まず、(共通点A)は、両部分全体の態様に係るものではあるが、シート状態の表面に大小の円形部からなるドット柄を施したものは本願意匠の属する「布地」の物品分野に限らず、よく見受けられるものであるから、この共通点が両部分の類否判断に与える影響は小さい。 次に(共通点B)は、両部分共にごく薄く形成されたものであって、両部分がそれぞれ属する分野において、表面にごく薄い凸状部を形成したものも、そうでないものもどちらもよく見られる態様であるからこの共通点が両部分の類否判断に与える影響は小さい。 (2)両部分の形状等の相違点 まず、(相違点a)は、大小の円形部の大きさについて、本願部分は、表面視で大小の円形部の直径の長さ比が7:2であるのに対して、引用部分は、7:3である点であるが、この点は、全面に施された大小の円形部の具体的態様に関わる相違であるから両部分の類否判断に及ぼす影響は大きい。 次に、(相違点b)については、本願部分は、表面視で一つの円形部から上下左右に隣接する円形部までの間隔が等間隔で配されたものであって、バランス良く大小の円形部が配されている印象であるのに対し、引用部分は、上下の間隔に対し、左右の間隔が2.6倍長い間隔で配されたものであって、上下に間隔が詰まり、横に引き延ばされた間隔で円形部が配されているとの印象を与えるから、それは、需要者が注視する表面の、ドット柄を構成する円形部の具体的な配置態様の相違であって、視覚的に別異の印象を与え、両部分の類否判断に及ぼす影響は大きい。 そうすると、形状等における相違点の(相違点a)及び(相違点b)は、類否判断に及ぼす影響はいずれも大きいものであるから、両部分の類否判断に及ぼす影響は、総じて大きいものであって、両部分の形状等の類否判断を決定付けるものであるのに対して、形状等の共通点の(共通点A)及び(共通点B)の両部分の類否判断に与える影響は、いずれも小さく、それら(共通点A)及び(共通点B)があいまっても、共通点の両部分の類否判断に与える影響は総じて小さいものであるから、相違点が共通点を凌駕し、両部分は類似しない。 5 両意匠の類否判断 したがって、両意匠は、意匠に係る物品が類似せず、両部分の位置及び範囲は同一であるとしても、両部分の大きさは同一の範囲のものとはいえず、また、形状等においても、両部分は類似しないものであるから、これらは、両部分の類否判断を決定付け、本願意匠は引用意匠に類似しない。 第6 むすび 以上のとおり、本願意匠は、引用意匠に類似せず、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないものである。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2022-05-10 |
出願番号 | 2020007420 |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(M1)
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最終処分 | 01 成立 |
特許庁審判長 |
内藤 弘樹 |
特許庁審判官 |
渡邉 久美 江塚 尚弘 |
登録日 | 2022-06-16 |
登録番号 | 1718131 |
代理人 | 野村 信三郎 |
代理人 | 野間 悠 |
代理人 | 阿部 寛 |
代理人 | 黒川 朋也 |