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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 J7
管理番号 1386233 
総通号数
発行国 JP 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2022-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2022-01-19 
確定日 2022-06-28 
意匠に係る物品 注射器用ガスケット 
事件の表示 意願2021−2918「注射器用ガスケット」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の主な経緯
本願は,令和3年(2021年)2月10日の意匠登録出願であって,その後の手続の主な経緯は以下のとおりである。

令和 3年 6月28日付け :拒絶理由の通知
8月16日 :意見書の提出
8月17日 :手続補足書の提出
10月18日付け :拒絶査定
令和 4年 1月19日 :審判請求書の提出
1月20日 :手続補足書の提出

第2 本願意匠
本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付した図面によれば,意匠に係る物品を「注射器用ガスケット」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合を願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり「実線で表した部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。正面図,右側面図,上方から見た斜視図,下方から見た斜視図に表された一点鎖線は,意匠登録を受けようとする部分とその他の部分との境界のみを示す線である。」としたものである(別紙第1参照)。

第3 原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するとしたものであって,拒絶の理由に引用された意匠(以下「引用意匠」といい,本願意匠と併せて「両意匠」ともいう。)は,下記のとおりである(別紙第2参照)。

引用意匠:
この意匠登録出願前,2014年12月11日,国際事務局において発行された国際公開第2014/196056号,[図3]−[図4]に記載の「ガスケット3」のうち,本願意匠に該当する部分の意匠

第4 当審の判断
1.本願意匠
本願意匠は,上記「第2」の願書の記載及び願書に添付した図面の記載の内容によると,以下のとおりである。

(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は「注射器用ガスケット」である。

(2)本願部分の位置,大きさ及び範囲,並びに用途及び機能
本願意匠に係る物品のうち,意匠登録を受けようとする部分(以下「本願部分」という。)は,直径:縦長さが約1:1の注射器用ガスケットの,先端側2分の1の部分である。
本願部分は,注射器用ガスケットの,先端側2分の1の部分の位置,大きさ及び範囲であって,当該部分の用途及び機能を有するものである。

(3)本願部分の形状
下部から上部側に向かって漸次拡径するラッパ状部分(倒立円錐台形状部分)と,ラッパ状部分の上に位置する円筒状部分と,円筒状部分の上に位置する円錐台状部分から成るものである。
円錐台状部分の中央頂面に凹部を設けている。
下から,ラッパ状部分:円筒状部分:円錐台状部分の長さの比率は,約3:1:1である。
円錐台状部分の斜面の角度が,約10度である。
凹部は,下方に向かって先細りの倒立状態の尖頭アーチ形状であり,その深さは,ガスケットの直径の約12分の1である。

2.引用意匠
引用意匠は,上記「第3」の特許協力条約に基づいて公開された国際出願の内容によると,以下のとおりである。

(1)意匠に係る物品
引用意匠の意匠に係る物品は「注射器用ガスケット」である。

(2)引用部分の位置,大きさ及び範囲,並びに用途及び機能
引用意匠中,本願部分に相当する部分(以下「引用部分」といい,本願部分と併せて「両部分」ともいう。)は,直径:縦長さが約1:1の注射器用ガスケットの,先端側2分の1の部分である。
引用部分は,注射器用ガスケットの,先端側2分の1の部分の位置,大きさ及び範囲であって,当該部分の用途及び機能を有するものである。

(3)引用部分の形状
下部から上部側に向かって漸次拡径するラッパ状部分と,ラッパ状部分の上に位置する円筒状部分と,円筒状部分の上に位置する円錐台状部分から成るものである。
円錐台状部分の中央頂面に凹部を設けている。
下から,ラッパ状部分:円筒状部分:円錐台状部分の長さの比率は,約2:1:2である。
円錐台状部分の斜面の角度が,約20度である。
凹部は,円弧状であり,その深さは,ガスケットの直径の約30分の1である。

3.両意匠の対比
(1)意匠に係る物品の対比
本願意匠に係る物品も,引用意匠に係る物品も,共に「注射器用ガスケット」である。

(2)両部分の位置,大きさ及び範囲,並びに用途及び機能の対比
両部分共に,直径:縦長さが約1:1の注射器用ガスケットの,先端側2分の1の部分であり,注射器用ガスケットの,先端側2分の1の位置,大きさ及び範囲であって,当該部分の用途及び機能を有するものである。

(3)両部分の形状の対比
両部分の形状を対比すると,以下に示す共通点と相違点が認められる。
ア.共通点について
(ア)下部から上部側に向かって漸次拡径するラッパ状部分と,ラッパ状部分の上に位置する円筒状部分と,円筒状部分の上に位置する円錐台状部分から成る点。
(イ)円錐台状部分の中央頂面に凹部を設けている点。

イ.相違点について
(ア)ラッパ状部分:円筒状部分:円錐台状部分の長さの比率につき,本願部分は,約3:1:1であるのに対して,引用部分は,約2:1:2である点。
(イ)円錐台状部分の斜面の角度につき,本願部分は,約10度であるのに対して,引用部分は,約20度である点。
(ウ)凹部の形状につき,本願部分は,下方に向かって先細りの倒立状態の尖頭アーチ形状であるのに対して,引用部分は,円弧状である点。
(エ)ガスケットに対する凹部の深さにつき,本願部分は,約12分の1であるのに対して,引用部分は,約30分の1である点。

4.判断
(1)意匠に係る物品の類否判断
両意匠の,意匠に係る物品は,いずれも「注射器用ガスケット」であるから,一致している。

(2)両部分の位置,大きさ及び範囲,並びに用途及び機能の評価
両部分共に,直径:縦長さが約1:1の注射器用ガスケットの,先端側2分の1の部分であり,注射器用ガスケットの,先端側2分の1の位置,大きさ及び範囲であって,当該部分の用途及び機能を有するものであるから,両部分の位置,大きさ及び範囲,並びに用途及び機能は一致している。

(3)両部分における形状の評価
ア.共通点について
共通点(ア)は,両部分を大まかに捉えたものであり,大まかに捉えた程度においては,この物品分野においてありふれた形状であるから,この共通点が両部分の類否判断に及ぼす影響は,小さい。
共通点(イ)は,需要者にとって関心を持つ部分における共通点であって,一定程度の共通感を生み出すものであるが,具体的には相違点(ウ)及び相違点(エ)の相違を内包するものであるから,両部分の類否判断に及ぼす影響は,小さい。

イ.相違点について
相違点(ア)は,相違点(イ)と相まって,本願部分は量感(ボリューム)が先端に寄っているとの印象(イメージ)を醸し出しているのに対して,引用部分は,量感が後ろに下がっているとの印象を醸し出しているものであるから,本願部分と引用部分では,別異の印象を生じさせているといえ,両部分の類否判断に与える影響は大きい。
相違点(ウ)及び相違点(エ)については,プランジャの先端に取付け,注射器のシリンジ内にある使用状態においては,見えにくい部分の相違ではあるが,機能的には需要者にとって関心を持つ部分における形状の相違であるから,両部分の類否判断に与える影響は大きい。

(4)小括
そうすると,両部分の形状については,その共通点及び相違点の評価に基づくと,上記のとおり,共通点は,類否判断に及ぼす影響が小さいものであるのに対して,相違点によって類否判断に及ぼす影響は大きいものといえるものであり,両部分の形状は,類似するとは認められないものである。

(5)両意匠における類否判断
以上のとおり,両意匠は,意匠に係る物品が一致し,両部分の位置,大きさ及び範囲,並びに用途及び機能は一致している。
しかし,上記のとおり,両部分の形状は,類似するとは認められないものである。
よって,本願意匠と引用意匠とは類似するとはいえない。

5.結び
以上のとおりであって,本願意匠は,引用意匠に類似するとはいえず,原査定の引用意匠をもって,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできず,本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審が更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。

別掲



審決日 2022-06-15 
出願番号 2021002918 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (J7)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 刈間 宏信
特許庁審判官 正田 毅
橘 崇生
登録日 2022-07-13 
登録番号 1720417 
代理人 特許業務法人創成国際特許事務所 

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