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審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 J7
管理番号 1386237 
総通号数
発行国 JP 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2022-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2022-02-14 
確定日 2022-06-10 
意匠に係る物品 縫合針 
事件の表示 意願2020− 26697「縫合針」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の主な経緯
本願は、意匠法第4条第2項の規定の適用を受けようとする、令和2年(2020年)12月11日の意匠登録出願であって、その後の手続の主な経緯は以下のとおりである。
令和 3年 1月 8日 :新規性の喪失の例外証明書の提出
9月 1日付け :拒絶理由の通知
10月20日 :意見書の提出
11月 5日付け :拒絶査定
令和 4年 2月14日 :審判請求書の提出

第2 本願意匠
本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は、願書及び願書に添付した図面によれば、意匠に係る物品を「縫合針」とし、その形状、模様若しくは色彩若しくはこれらの結合(以下「形状等」という。)、建築物の形状等又は画像を願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである(別紙第1参照)。

第3 原査定における拒絶の理由
原査定における令和3年(2021年)9月1日付けの拒絶の理由は、本願意匠が、出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られ、頒布された刊行物に記載され、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった形状等又は画像に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので、意匠法第3条第2項の規定に該当するとしたものであって、具体的には、以下のとおりである。
「意匠1には、先細りかつ直線状の先端部分(直針部15)と、先端部分に連続する円弧状の中間部分と、中間部分に連続する直線状の基端部分(直針部15a)とを有する縫合針が表されています。また、意匠1が表された実用新案登録第3072045号の段落【0019】には、「前記直針状に形成した直針部15aの長さは適当に設定できるものあるが、この実施の形態では図1の実施の形態と同様に針本体11の全長の約1/6の長さに形成したものが開示されている。」と記載されており、基端部分の長さを変更することが示唆されているといえます。
よって、本願意匠は、意匠1における直線状の基端部分の長さを適宜変更する(長くする)ことにより、当業者が容易に創作をすることができたものです。
(中略)
意匠1(別紙第2参照)
特許庁発行の登録実用新案公報記載
実用新案登録第3072045号
【図4】に表された「針本体11」の意匠」

第4 当審の判断
以下において、本願意匠の意匠法第3条第2項の該当性、つまり、本願意匠が当業者であれば容易に創作することができたか否かについて、検討し、判断する。

1 本願意匠の認定
(1)本願意匠の意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は、「縫合針」であって、医療手術に用いられるもので、施術における縫合動作を容易かつ安定及び安全に行うようにするものである。

(2)本願意匠の形状
本願意匠は、主に以下の形状を認めることができる。
〔全体の構成〕全体は、先端部・中間部・基端部の3つの部分から成っている。
〔形状A〕全体の形状を、細い棒状とし、縫合する糸を付ける基端から直線状の基端部を有し、中間部を湾曲させて、先端部を鋭利な先端とし、背面視で略「し」の字形状としている。
〔形状B〕先端部の具体的な形状は、母線の長い円錐台形状としている。
〔形状C〕正面視で縫合針の中間部を基端から先端部に向けて曲率を変え、先端部側で曲率半径を小さくして曲がり具合を徐々にきつくした曲線状としている。
〔形状D〕基端部は、棒状直線状で縫合針全体の約1/3の長さである。

2 本願意匠の創作の容易性について
(1)出願前に公然知られた形状
本願意匠の出願前に公然知られたものと認められる意匠1の形状は、以下のとおりである。
〔全体の構成〕全体は、先端部・中間部・基端部の3つの部分から成っている。
〔形状a〕全体の形状を、細い棒状とし、縫合する糸を付ける基端から針尖端に向けて湾曲させ、先端部を鋭利な先端とし、側面視で略半円弧形状としている。
〔形状b〕先端部の具体的な形状は、断面を略三角形とした略三角錐形状(いわゆる三角針)で1つの側面を底辺に向けて湾曲させている。
〔形状c〕正面視で縫合針の中間部を基端から先端部に向けてほとんど曲率を変えずに略半円弧形の曲線状としている。
〔形状d〕基端部を、長さの短い棒状直線状としている。

(2)本願意匠の創作の容易性について
本願意匠の全体の構成は、本願の出願前に公然知られた意匠1の形状を縫合針の分野の当業者が、モチーフとして容易に創作をすることができたものと認められる。
形状A及び形状Bは、背面視で略「し」の字形状として先端部の形状を円錐台形状としているか、側面視で略半円弧形状として略三角錐形状としているかの違いはあるが、意匠1の登録実用新案第3072045号の【考案が解決しようとする課題】【0012】(別紙第2参照)の「また、針本体を断面円形状に形成した丸針、針本体の針先部を断面三角形状に形成した三角針、及び前期針先部の断面形状を三角形以外の多角形状等に形成した異形断面針等、全ての種類の弯曲縫合針が含まれる。」とあるように、公報が発行された平成12年当時から針先を円錐台形状にするか三角錐形状もしくは多角錐形状にすることは、当業者が容易に創作をすることができたものと認められる。
しかし、本願意匠の形状Cは、当業者が需用者の縫合針の使用態様と針の損傷の防止を考慮し、縫合針の中間部の曲率を変化させて先端部側で曲率半径を小さくして曲がり具合を徐々にきつくした曲線状とすることは、本願の出願前の公然知られた形状に基づいて容易に意匠の創作をすることができたとまではいえない。
また、基端部の直線状の形状Dについては、意匠1が表された実用新案登録第3072045号の【考案が解決しようとする課題】【0019】(別紙第2参照)に「前記直針状に形成した直針部15aの長さは適当に設定できるものあるが、図1と同様に針本体11の約1/6の長さにしたものが開示されている。」と記載されているように、図3(別紙第2参照)の縫合針の実施例に限らず、図4の縫合針においても、縫合針の分野において、基端部の長さを適宜変更することは本願の出願前からありふれた手法と認められるが、当業者が需用者の使いやすさを考慮し、全体の形態が背面視で略「し」の字形状となるように、基端部の直線部の長さを任意に選ぶことは、創作が容易とまではいえない。

3 結び
したがって、本願意匠は、原査定における拒絶の理由で示した意匠を基にしては、意匠法第3条第2項の規定に該当しないので、原査定における拒絶の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また当審が更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲




審決日 2022-05-25 
出願番号 2020026697 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (J7)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 正田 毅
山田 繁和
登録日 2022-06-22 
登録番号 1718631 
代理人 山本 知生 
代理人 本山 泰 
代理人 山川 茂樹 
代理人 小池 勇三 

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