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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 J1 |
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管理番号 | 1387565 |
総通号数 | 8 |
発行国 | JP |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2022-08-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2022-04-01 |
確定日 | 2022-07-19 |
意匠に係る物品 | 試料分析機 |
事件の表示 | 意願2021− 3995「試料分析機」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 主な手続の経緯 令和3年(2021年) 2月26日 意匠登録出願 同年 7月20日付け 拒絶理由通知書 同年 9月 3日 意見書提出 同年 12月24日付け 拒絶査定 令和4年(2022年) 4月 1日 審判請求書提出 第2 本願の意匠 本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は、意匠に係る物品を「試料分析機」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状等」という。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり、本願意匠において物品の部分として意匠登録を受けようとする部分(以下「本願部分」という。)を、「実線で表した部分が、意匠登録を受けようとする部分である。」としたものである。(別紙第1参照) 第3 原査定の拒絶の理由及び引用の意匠 原査定の拒絶の理由は、本願意匠は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の意匠(以下「引用意匠」という。)に類似するものであるから、意匠法3条1項3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)に該当する、というものである。 引用意匠(別紙第2参照) 特許庁発行の意匠公報記載 意匠登録第1419311号 (意匠に係る物品、検体分析機)の本願意匠に該当する部分の意匠 第4 当審の判断 1 本願意匠と引用意匠の対比 (1)意匠に係る物品 本願意匠の意匠に係る物品は「試料分析機」であり、引用意匠の意匠に係る物品は「検体分析機」であって、表記は一部異なるが、どちらも、血液などの試料を分析するための機器であるから、本願意匠及び引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、一致する。 (2)本願部分と、引用意匠において本願部分と対比する部分の用途及び機能、並びに位置、大きさ及び範囲 本願部分と、引用意匠において本願部分と対比する部分、すなわち本願部分に相当する部分(以下、「引用部分」といい、本願部分と引用部分をあわせて「両部分」という。)は、検体を吸引し、分析機本体に取り込む用途及び機能を有するものであって、当該分析機本体の正面(化粧面)の部分であるから、両部分の用途及び機能、並びに位置、大きさ及び範囲は一致する。 (3)両部分の形状等 両部分の形状等については、主として、以下のとおりの共通点及び相違点がある。 ア 共通点 (ア)基本的構成態様 両部分は、正面視略隅丸縦長長方形の鉛直面で、略上下中央に側面視略縦長S字状の斜め段差を形成し、下の面を一段奥に凹ませたもの(以下、上下の面をそれぞれ「上面」及び「下面」といい、段差を「段差面」という。)である点、 各部の態様として、 (イ)縦横の長さの比率 両部分は、縦横の長さの比率を、約2:1としている点、 (ウ)スリット 両部分は、真ん中付近に、左右端近くまで切り欠いた略横長帯状のスリットを形成している点、 (エ)区画 両部分は、上面と段差面の境界に水平な区画線を形成し、下面右寄りの下端近傍に小区画を3つ縦に近接して形成している点において共通する。 イ 相違点 (ア)外縁の突条の有無 引用部分は、外縁に沿って小さな突条を形成しているのに対し、本願部分は、外縁を含め全体が平滑面である点、 (イ)スリット (イ−1)スリットの外形状について、本願部分は、下端両隅を弧状に形成しているのに対し、引用部分は、上端両隅を弧状に形成している点、 (イ−2)スリットの位置について、本願部分は、段差面の上寄りに配置し、スリットの上端が区画線と接しているのに対し、引用部分は、上面の下端に配置し、スリットの下端が区画線と接している点、 (ウ)小区画 本願部分は、3つの小区画のうち、上がごく小さな略円形状で、真ん中及び下が上の区画より2倍程度大径の略円形状であるのに対し、引用部分は、上が略横長矩形状で、真ん中及び下が上の区画と横幅が同じで3倍程度縦長の略矩形状で、3つの小区画の外側に略隅丸縦長長方形の枠を設けている点において相違する。 2 類否判断 以上の共通点及び相違点が両意匠の類否判断に与える影響の評価に基づき、総合的に観察して、両意匠の類否を意匠全体として検討し、判断する。 (1)意匠に係る物品 両意匠の意匠に係る物品は、同一である。 (2)両部分の用途及び機能、並びに位置、大きさ及び範囲の類否判断 両部分の用途及び機能、並びに位置、大きさ及び範囲は、同一である。 (3)両部分の形状等の共通点及び相違点の評価 ア 共通点の評価 この種物品の分野において、縦横の長さの比率を、約2:1とする、正面視略隅丸縦長長方形の鉛直面で、略上下中央に段差面を形成し、真ん中付近に、左右端近くまで切り欠いた略横長帯状のスリットを形成し、上面と段差面の境界に水平な区画線を形成し、下面右寄りの下端近傍に小区画を3つ縦に近接して形成したものは、下記の参考意匠に見られるように、本願の出願前から公然知られていることから、共通点(ア)ないし共通点(エ)は、両部分にのみ見られる特有の態様とはいえず、両部分の類否判断に与える影響は小さい。 参考意匠(別紙第3参照) 特許庁発行の意匠公報記載 意匠登録第1587255号 (意匠に係る物品、塗抹標本作製機)の意匠 イ 相違点の評価 まず、相違点(ア)の外縁の突条の有無について、当該突条がごく小さなもので、さほど目立つものではないことに加え、この種物品の分野において、突条を形成したものも、突条を形成せず全体を平滑面としたものも、どちらもごく普通に見受けられることから、格別需要者の注意を引くものとはいえず、両部分の類否判断に与える影響は小さい。 次に、相違点(イ)のスリットについて、当該スリットは、全体の真ん中付近に配置され、非常に目立つものであるところ、本願部分のように、(イ−1)スリットの下端両隅を弧状に形成したものや、(イ−2)スリットを段差面の上寄りに配置し、その上端が区画線と接しているものは、本願部分以外には見られないものであり、需要者に異なる美感を起こさせるものといえるから、両部分の類否判断に与える影響は大きい。 また、相違点(ウ)小区画について、下面右寄りの下端近傍に形成される比較的小さな区画ではあるが、3つの小区画を大小の略円形状とした本願部分と、大小の略矩形状とし外側に枠を設けた引用部分とは、一見して異なる視覚的印象となって、需要者に異なる美感を起こさせるものといえるから、両部分の類否判断に与える影響は大きい。 ウ 形状等の類否判断 両部分の形状等における共通点及び相違点の評価に基づき、意匠全体として総合的に観察し判断した場合、共通点は、両部分の類否判断に与える影響は小さいものであるのに対し、相違点(ア)が、両部分の類否判断に与える影響は小さいものの、相違点(イ)及び相違点(ウ)が、両部分の類否判断に与える影響は大きいものである。 したがって、両部分の形状等を全体として総合的に観察した場合、両部分の形状等は、共通点に比べて、相違点が与える影響の方が大きいものであるから、両部分の形状等は類似しない。 (4)小括 以上のとおり、両意匠は、意匠に係る物品は同一で、両部分の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲も同一であるが、形状等においては、共通点が未だ両部分の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対して、相違点が両部分の類否判断に与える影響は共通点のそれを凌駕しており、意匠全体として見た場合、両部分は、需要者に異なる美感を与えているというべきであるから、本願意匠は、引用意匠に類似するということはできない。 第5 むすび 以上のとおりであって、原査定の引用意匠をもって、本願意匠は、意匠法3条1項3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから、原査定の拒絶の理由によって、本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。 また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2022-07-06 |
出願番号 | 2021003995 |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(J1)
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最終処分 | 01 成立 |
特許庁審判長 |
小林 裕和 |
特許庁審判官 |
田村 佳孝 内藤 弘樹 |
登録日 | 2022-07-28 |
登録番号 | 1721719 |
代理人 | 宮園 博一 |