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審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 N3
管理番号 1388434 
総通号数
発行国 JP 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2022-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-09-10 
確定日 2022-08-05 
意匠に係る物品 文書間の関連を示す画像を表示可能な情報端末機 
事件の表示 意願2020− 9436「文書間の関連を示す画像を表示可能な情報端末機」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯

本願は、意匠法第4条第2項の規定(新規性喪失の例外)の適用を受けようとする、令和2年(2020年)5月13日の意匠登録出願であって、その主な手続の経緯は以下のとおりである。

令和 2年 6月 9日付け:新規性の喪失の例外証明書提出書の提出
令和 3年 2月12日付け:拒絶理由の通知
同年 3月30日 :意見書の提出
同年 6月 3日付け:拒絶査定
同年 9月10日 :審判請求書の提出

第2 本願の意匠

本願は、物品の部分について意匠登録を受けようとする意匠登録出願であり、その意匠は、意匠に係る物品を「文書間の関連を示す画像を表示可能な情報端末機」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下、「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形状等」ともいう。)は願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであって(以下「本願意匠」という。)、当該意匠登録を受けようとする部分を、「実線で表した部分は、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」(以下「本願画像部分」という。)としたものである(別紙第1参照)。

第3 原査定の拒絶の理由及び引用意匠

この意匠登録出願の意匠は、下記に示すように、出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので、意匠法第3条第2項の規定に該当する、というのであり、具体的には以下のとおりである。

「本願意匠は、ノード(ネットワーク上の「点」)として大きさの異なる円を用いて、そのノードを「節」となる直線又は曲線で結び、個々の「点」に相当する円の周りに、長さの異なる円周を設ける、とした態様に、意匠の特徴を有するといえます。
しかしながら、本願出願前より、大きさの異なる円と線からなる図表は、種々のものが公然知られています。(意匠1ないし意匠4)
また、円と線からなる図表のうち、個々の「点」に相当する円の周りに、長さの異なる円周を設けることもまた、本願出願前より公然知られています。(意匠5、意匠6)
そうすると、本願意匠は、本願出願前より公然知られた意匠1を基に、公然知られた態様(意匠5、意匠6)となる改変を加えたものを、情報端末機の画像として表したにすぎず、当業者であれば容易に創作できたものと認められます。

意匠1:
特許庁発行の意匠公報記載
意匠登録第1588687号の意匠
(意匠に係る物品、アイデア発想を支援するためのコンテンツのマッピン グ機能付電子計算機)
意匠2:
特許庁発行の意匠公報記載
意匠登録第1646151号の意匠
(意匠に係る物品、人脈情報表示機能付き電子計算機)
意匠3:
電気通信回線の種類 インターネット
掲載確認日(公知日) 2016年 8月17日
受入日 特許庁意匠課受入2016年 8月30日
掲載者 Solvedge
表題 SE HealthMXMを App St oreで
掲載ページのアドレス
https://itunes.apple.com/jp/app/se-healthmxm/id1120690768?mt=8
に掲載された「スマートフォン用ソフトウェアの情報提供機能」の画像の意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HJ28102186号)

意匠4:
中華人民共和国意匠公報 2015年12月 2日15−48号
携帯用情報端末機(公開番号CN303479391S)の画像の意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HH27008205号)

意匠5:
DM/093629 2016年12月 9日
データ表示機用ディスプレイスクリーン画像(登録番号DM/09362 9)の意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HH28516254号)

意匠6:
米国特許商標公報 2017年10月31日
携帯情報端末機(登録番号US D801370S)の画像の意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HH29327917号)」

第4 当審の判断

以下において、本願意匠の意匠法第3条第2項の該当性、すなわち、本願意匠が当該物品の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」ともいう。)であれば容易に創作することができたか否かについて検討し、判断する。

1 本願意匠の認定

(1)意匠に係る物品
本願意匠に係る物品は、願書の意匠に係る物品の説明によれば、ネットワークにより膨大な数の文書の中から類似する文書で構成される文書群(クラスタ)に分類して、文書間の関連を示す画像を表示することができる「文書間の関連を示す画像を表示可能な情報端末機」である。

(2)本願画像部分の用途及び機能
本願画像部分は、願書の意匠に係る物品の説明によれば、円形や直線又は曲線などの図形によって、文書間の関連性を表示する用途及び機能を有する。

(3)本願画像部分の位置、大きさ及び範囲
本願画像部分の位置は、表示画面全体の中央やや右上の位置で、表示画面全体の約1割の大きさ及び範囲を占めている。

(4)本願画像部分の形状等
本願画像部分の認定に際し、願書に添付した【参考正面図】の実線Aで囲われた範囲(以下「画像領域」という。)内において、本願画像部分の形状等を認定するものとする。

本願画像部分は、
ア 画像領域内において、略円形模様(以下「大円」という。)を右端寄りの上下中央やや下に1個配し、大円の直径の約1/3径の略円形模様(以下「小円1」という。)を略左右中央やや下に1個配し、小円1より若干小径の略円形模様(以下「小円2」という。)を左寄りの上下中央やや上、右寄りの上下中央、右寄りの上下中央やや上にそれぞれ1個ずつ、合計3個配し、小円2より若干小径の略円形模様(以下「小円3」という。)を、画像領域を上下左右に4等分した左上のエリアに2個、右上のエリアに4個、左下のエリアに4個、右下のエリアに1個の合計11個配し、小円3よりさらに小径の略円形模様(以下「小円4」という。)を左上エリアに1個、右上エリアに2個、左下エリアに2個、右下エリアに1個の合計6個配置している。

イ すべての円の外縁に沿って、同心二重円の1/6径から1/4径程度の円弧状の線分を配している。

ウ すべての円は、直線若しくは曲線又はその両方で円周同士を任意に結んでおり、具体的には、大円は12本、小円1は5本ないし8本、小円2ないし小円4は、2本ないし12本の直線又は曲線で繋がっており、それぞれの線の合計は、直線が45本で、曲線が5本である。

2 引用意匠の認定

画像1(別紙第2参照)

ア 画像1の意匠に係る物品
画像1の意匠に係る物品は、キーワードを略円形のコンテンツとしてマッピング表示し、コンテンツ同士の関係性を線で結んで表し、コンテンツの重要性を円の大きさで示して表する用途及び機能を有する「アイデア発想を支援するためのコンテンツのマッピング機能付電子計算機」である。

イ 画像1の形状等
画像1は、略横長長方形の表示画面において、中央で接する左右2つの円形座標軸を配し、軸の中に複数の略円形模様が散在しているものであって、左側の個人の円座標軸においては、中心に略円形模様を配し、その下に一回り小さな略円形模様を一部重ねて設け、左の中心の略円形模様の下から中央に伸びる略凹弧状の放物線を形成し、左右2つの円座標軸の内側には、左側円座標軸の中心の略円形模様の約1/4、約1/6の径の略円形模様がそれぞれ11個と6個、さらに小さな点状模様が複数個散在し、そのうちの一部の円形模様同士を直線で結んでいるものである。

(2)画像2(別紙第3参照)

ア 画像2の意匠に係る物品
画像2の意匠に係る物品は、人的ネットワーク情報を顔写真付きの円と人脈の有無を線で表示し、登録人物の照会や検索を行う「人脈情報表示機能付き電子計算機」である。

イ 画像2の形状等
画像2は、略横長長方形の表示画面の中央のエリアにおいて、上下中央に3個の同径の略円形模様を等間隔に水平に配し、その3個の略円形模様の約1/2の径の略円形模様を上方のエリアに6個、下方のエリアに7個配し、略円形模様同士を直線で結んでいるものである。

(3)画像3(別紙第4参照)

ア 画像3について
画像3は、医療情報を提供する「スマートフォン用ソフトウェアの情報提供機能の画像」である。

ウ 画像3の形状等
画像3は、略縦長長方形の表示画面において、上下中央やや下に略円形模様を配し、その略円形模様より一回り小さな6個の同径の略円形模様を、中央の略円形模様の外周に等間隔で配置し、これらの略円形模様の周りに37個の点状の略円形模様を配し、略円形模様同士を直線で結んでいるものである。

画像4(別紙第5参照)

ア 画像4について
画像4は、各種データを分析及び解析し、その結果を略円形模様として表示する「携帯用情報端末機の画像」である。

イ 画像4の形状等
画像4は、略縦横長長方形の表示画面の左側において、中央に大きな同心二重円を配し、その同心二重円から長さの異なる長短の複数の直線を放射状に配して、その先端に、大小さまざまの略円形模様を77個配しているものである。

画像5(別紙第6参照)

ア 画像5について
画像5は、商品開発を行う仕組みを、円形模様や線で表示する「データ表示用ディスプレイスクリーンの画像」である。

ウ 画像5の形状等
画像5は、略横長長方形の表示画面の左側寄りにおいて、中心に大きな略円形模様を配置し、この略円形模様の約1/2の径の4個の略円形模様を中心の大きな略円形模様とX字状に交差する対角線上に等間隔で配置し、大きい略円形模様と4個の略円形模様を二重直線で結び、4個の略円形模様同士を円弧線で結んでいる。さらに、この4個の略円形模様には、中心の大きい略円形模様の約1/3以下の径の小さな略円形模様が3個ないし5個ずつぶら下がって、二重直線で結んで、その小さな略円形模様同士も円弧線で結んでいるものである。
また、中心の大きな略円形模様、約1/2の径の4個の略円形模様、外周に配された約1/3以下の径の9個の略円形模様には、同心二重円からなる枠線または黒塗り太線の円弧が、略円形模様の外側に密接して配設されている。

画像6(別紙第7参照)

ア 画像6について
画像6は、顧客の情報を円と線等によって表示する「情報端末機の画像」である。

イ 画像6の形状等
画像6は、略横長長方形の表示画面において、中央やや右寄りに略円形模様を配置し、その略円形模様とほぼ同径の略円形模様を外周に6個配し、その6個の略円形模様のうちの5個には、それぞれ4個、5個、6個、8個、10個の一回り小さな略円形模様がぶら下がっており、直線あるいは二重直線で略房状に結んでいるものである。
また、中央の略円形模様、ぶら下がる23個の一回り小さな略円形模様の外側に同心二重円を設け、それぞれ内側の略円形模様と同心二重円の間の一部に斜線を施している。

3 本願意匠の創作非容易性の判断

本願意匠が、意匠法第3条第2項の規定に該当するか否か、すなわち、当業者であれば容易に本願意匠の創作をすることができたか否かについて検討する。
まず、本願画像部分の用途及び機能について、この種物品の分野において、本願画像部分のように、キーワードを略円形模様状としてマッピング表示し、コンテンツ同士の関係性を線で結んで表し、コンテンツの重要性を略円形模様の大きさで示して表示したものが、例えば画像1ないし画像6のように、本願の出願前に既に見受けられるから、特段の創作性を認めることはできない。
また、本願画像部分の位置、大きさ及び範囲について、表示画面全体のうち、右寄り上下中央やや右上のエリアに円形模様、直線及び曲線が配されたものが、例を挙げるまでもなく、本願の出願前より公然知られたものであり、特段の創作性を認めることはできない。
しかしながら、本願画像部分のように、略円形模様の外側近傍に同心二重円の円弧状線分を配し、その円弧状線分の長さにより、文献の引用件数、検索数など、影響力の大きさを表しているものは、本願の出願前には見受けられず、また、本願画像部分のように、略円形模様の大円を1個、小円1を1個、小円2を3個、小円3を11個及び小円4を6個設け、円同士を直線あるいは曲線により、同心二重円の円弧状線分を貫通して、略円形模様の円周で、大円は12本、小円1は5本ないし9本、小円2ないし小円4は2本ないし12本で結び、その線の合計を、直線が45本、曲線が5本とした態様のものも、本願の出願前に見受けられないことから、当業者にとって、格別の創作を要したものといわざるを得ない。
したがって、本願意匠は、原査定における拒絶の理由で引用された意匠に基づいて、当業者が容易に創作をすることができたということはできない。

第5 むすび

以上のとおりであって、本願意匠は、意匠法第3条第2項が規定する、意匠登録出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状等に基づいて容易に創作をすることができたとはいえないものであるから、原査定の拒絶の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。

別掲


















審決日 2022-07-20 
出願番号 2020009436 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (N3)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 内藤 弘樹
特許庁審判官 渡邉 久美
上島 靖範
登録日 2022-09-01 
登録番号 1724353 
代理人 羽切 正治 

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