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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 K2
管理番号 1388437 
総通号数
発行国 JP 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2022-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-12-24 
確定日 2022-08-23 
意匠に係る物品 釣竿用リールシート 
事件の表示 意願2020− 16425「釣竿用リールシート」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由
第1 主な手続の経緯

本願は、令和2年(2020年)8月5日の意匠登録出願であって、主な手続きの経緯は以下のとおりである。

令和3年(2021年) 4月28日付け 拒絶理由通知
同年 6月18日 意見書の提出
同年 9月27日付け 拒絶査定
同年 12月24日 拒絶査定不服審判の請求

第2 本願の意匠

本願は、物品の部分について意匠登録を受けようとする意匠登録出願であり、その意匠(以下「本願意匠」という。)は、意匠に係る物品を「釣竿用リールシート」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下、「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形状等」という。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり、意匠登録を受けようとする部分(以下「本願部分」という。)を「実線で表した部分が部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」としたものである(別紙第1参照)。

第3 原査定の拒絶の理由及び引用の意匠

原査定の拒絶の理由は、本願意匠が、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の意匠(以下「引用意匠」という。)に類似するものであるから、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)に該当する、というものである。

引用意匠(別紙第2参照)
特許庁発行の意匠公報記載
意匠登録第0878155号の類似意匠登録第2号
(意匠に係る物品、釣竿用リールシート)の意匠の、本願の意匠登録を受けようとする部分の相当部分

第4 当審の判断

1 意匠に係る物品の対比
本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、「釣竿用リールシート」であるから、一致する。

2 本願部分と引用意匠において本願部分と対比する部分の用途及び機能の対比
本願部分と引用意匠において本願部分と対比する部分、すなわち本願部分に相当する部分(以下、「引用部分」といい、本願部分と引用部分を合わせて「両部分」という。)の用途及び機能については、共に、釣竿に取付けられ、リールフットを挟み込むことで釣用リールを釣竿に固定するために用いられる、リールフットを差し込むための部分であるから、両部分の用途及び機能は、一致する。

3 両部分の位置、大きさ及び範囲の対比
両部分の位置について、本願部分は、リールシートの端部に配置されているのに対し、引用部分は、リールシートの中央付近に配置されているから、両部分の位置は相違する。また、両部分の大きさ及び範囲についても、本願部分は、リールシート全体の約1/3の大きさであるのに対し、引用部分は、リールシート全体の約1/2の大きさであるから、両部分の大きさ及び範囲は相違する。

4 両部分の形状等の対比
両部分の形状等については、主として、以下のとおりの共通点及び相違点がある。
なお、対比のため、引用意匠の図の向きを本願意匠の図の向きに合わせるものとする。

(1)両部分の形状等の共通点
両部分は、全体を、真ん中付近を膨らませた略短円筒形状の正面視上端中央右寄りから下端左隅まで斜めに切り欠いたものであって、その筒内の上端を、リールフットを差し込むための孔としている点において共通する。

(2)両部分の形状等の相違点
(相違点a)正面視、縦、横及び右端の径の比率について、本願部分は約1:2.1:0.75であるのに対し、引用部分は約1:2.5:0.66で、引用部分の方が横長である点、
(相違点b)切り欠きについて、本願部分は、正面視略凹弧状に形成しているのに対し、引用部分は略横長S字状に形成している点において相違する。

類否判断

(1)意匠に係る物品の類否判断
両意匠の意匠に係る物品は、いずれも「釣竿用リールシート」であるから、同一である。

(2)両部分の用途及び機能の類否判断
両部分の用途及び機能は、同一である。

(3)両部分の位置、大きさ及び範囲の評価
両部分の位置、大きさ及び範囲は相違するものの、双方共に、当該物品分野においてありふれた範囲内のものであって、この相違が両部分の類否判断に与える影響は小さい。

(4)両部分の形状等の共通点及び相違点の評価
両意匠は、釣り竿に取り付けられるリールシートであるから、需要者は、主に使用者である釣具ユーザー及び釣具販売業者等の取引者と認められる。
したがって、当該釣竿用リールシートを使用する際に視認する、正面、背面及び平面の態様について評価し、かつそれ以外の形状等も併せて、各部を総合して意匠全体として形状等を評価することとする。

ア 両部分の形状等の共通点の評価
共通点について、この種物品の分野において、全体を、真ん中付近を膨らませた略短円筒形状の正面視上端中央右寄りから下端左隅まで斜めに切り欠いたものであって、その筒内の上端を、リールフットを差し込むための孔としているものは、下記の参考意匠に見られるように、本願の出願前から公然知られていることから、共通点は、両意匠にのみ見られる特有の態様とはいえず、両意匠の類否判断に与える影響は小さい。

参考意匠(別紙第3参照)
特許庁発行の意匠公報記載
意匠登録第0878176号の類似意匠登録第5号
(意匠に係る物品、釣竿用リールシート)の意匠

イ 両部分の形状等の相違点の評価
(相違点a)は、本願部分はやや短小な印象を持つのに対し、引用部分は横長の印象であり、一見して異なる視覚的印象となって、需要者に異なる美感を起こさせるものであり、両部分の類否判断に与える影響は大きい。
(相違点b)は、切り欠きを、正面視略凹弧状とした本願部分と、略横長S字状とした引用部分とは、一見して異なる態様といえ、上面の目に付く箇所であることを踏まえると、需要者の注意を強く引くものといえるから、相違点が両部分の類否判断に与える影響は大きい。

ウ 両部分の形状等の類否判断
両部分の形状等における共通点及び相違点の評価に基づき、意匠全体として総合的に観察し、判断した場合、共通点が両部分の類否判断に与える影響は小さいものであるのに対し、(相違点a)及び(相違点b)は、両部分の類否判断に与える影響は大きいものである。
したがって、両部分の形状等を全体として総合的に観察した場合、両部分の形状等は、共通点に比べて、相違点が与える影響が大きいものであるから、両部分の形状等は類似しない。

6 小括
以上のとおり、両意匠は、意匠に係る物品並びに両部分の用途及び機能は同一であり、その位置、大きさ及び範囲は相違するものの、双方共に、当該物品分野においてありふれた範囲内のものであって、この相違が両部分の類否判断に与える影響は小さい。また、形状等においては、共通点が未だ両部分の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対して、相違点が両部分の類否判断に与える影響は共通点のそれを凌駕しており、意匠全体として見た場合、両部分は、需要者に異なる美感を与えているというべきであるから、本願意匠は、引用意匠に類似するということはできない。

第6 むすび

以上のとおりであって、原査定の引用意匠をもって、本願意匠は、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから、原査定の拒絶の理由によって、本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。

また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。

別掲






審決日 2022-08-10 
出願番号 2020016425 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (K2)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 内藤 弘樹
特許庁審判官 外山 雅暁
渡邉 久美
登録日 2022-09-01 
登録番号 1724354 
代理人 永芳 太郎 
代理人 吉田 親司 

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