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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 L3
管理番号 1388441 
総通号数
発行国 JP 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2022-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2022-02-08 
確定日 2022-08-16 
意匠に係る物品 住宅 
事件の表示 意願2021− 4768「住宅」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯

本願は、意匠法4条2項の規定の適用を受けようとし、建築物の部分について意匠登録を受けようとする、令和3年(2021年)3月8日の意匠登録出願であって、その後の主な手続の経緯は、以下のとおりである。

令和 3年(2021年) 7月15日付け 拒絶理由通知書
同年 8月23日 意見書の提出
同年 11月11日付け 拒絶査定
令和 4年(2022年) 2月 8日 審判請求書の提出

第2 本願の意匠

本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は、意匠に係る建築物を「住宅」とし、その形状等(形状、模様若しくは色彩若しくはこれらの結合)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであって、「実線で表した部分が、意匠登録を受けようとする部分である。「A−A線断面図」、「D−D部分のB−B線断面図」及び「D−D部分のC−C線断面図」を含めて、意匠登録を受けようとする部分を特定している。一点鎖線は、意匠登録を受けようとする部分とその他の部分との境界を示す線である。」としたものである(以下、本願意匠において建築物の部分として意匠登録を受けようとする部分を「本願部分」という。)。(別紙第1参照)

第3 原査定の拒絶の理由及び引用意匠

原査定の拒絶の理由は、本願意匠は、その出願前に日本国内又は外国において公然知られ、頒布された刊行物に記載され、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の意匠(以下「引用意匠」という。)に類似するものであるから、意匠法3条1項3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)に該当する、というものである。

引用意匠(別紙第2参照)
表題 積水ハウス ビエナ世田谷展示場
媒体のタイプ [online]
検索日 2021年7月6日
情報の情報源 インターネット
情報のアドレス
URL:https://min-myhome.jp/images/branch/262/photo1_320.jpeg
から把握される住宅の意匠の本願意匠について部分意匠として意匠登録を受けようとする部分に相当する部分

第4 当審の判断

1 本願意匠と引用意匠の対比

(1)意匠に係る建築物
本願意匠の意匠に係る建築物は「住宅」であり、引用意匠の意匠に係る建築物も「住宅」であるから、本願意匠及び引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る建築物は、一致する。

(2)本願部分と引用意匠において本願部分と対比する部分の用途及び機能
本願部分と引用意匠において本願部分と対比する部分、すなわち本願部分に相当する部分(以下、「引用部分」といい、本願部分と引用部分を合わせて「両部分」という。)の用途及び機能については、共に、建物正面(ファサード)に設けられる、壁面の正面(以下「正面壁部」という。)とその片側側面の一部、庇の鼻隠し面(以下「庇部」という。)、袖壁の正面(以下「袖壁部」という。)とその片側側面の一部、及び横架状の構造材の正面(以下「横架部」という。)であるから、両部分の用途及び機能は、一致する。

(3)両部分の位置、大きさ及び範囲
(3−1)位置
ア 正面壁部は、正面視中央やや左に位置しているから、一致する。

イ 庇部は、正面壁部の上方に位置しているから、一致する。

ウ 袖壁部は、本願部分は正面視左端に位置しているのに対し、引用部分は正面視右端に位置しているから、相違する。

エ 横架部は、本願部分は正面視左端寄りに位置しているのに対し、引用部分は正面視右端寄りに位置しているから、相違する。

(3−2)大きさ及び範囲
ア 正面壁部は、本願部分は、ファサード全体の約1/4の大きさであるのに対し、引用部分は、約1/3の大きさであるから、相違する。

イ 庇部、袖壁部及び横架部の大きさは、いずれもほぼ一致する。

(4)両部分の形状等
両部分の形状等については、主として、以下のとおりの共通点及び相違点がある。
ア 共通点
(ア)全体は、庇部の一方端が袖壁部の側面と接し、横架部の一方端が袖壁部の側面と、他方端が正面壁部の側面とそれぞれ接して、全体として各部が連接しているものである点、
(イ)正面において、略縦長帯状の袖壁部の縦辺の上端近傍に、略横長帯状の庇部を水平に配置し、庇部の下端近傍でやや袖壁部寄りに略矩形状の正面壁部を配置し、袖壁部の縦辺の下方寄りに、略横長帯状の横架部を形成している点において、共通する。

イ 相違点
(ア)全体
本願部分は、正面壁部を前面に配置し、袖壁部を正面壁部の僅かに後方に配置し、庇部を袖壁部より後方に配置し、横架部を庇部よりさらに奥まった位置に配置しているのに対し、引用部分は、袖壁部を前面に配置し、正面壁部をそのやや後方に配置し、横架部を正面壁部よりやや後方に配置し、庇部を横架部よりさらに奥まった位置に配置している点、
(イ)正面壁部
本願部分は、略正方形の平坦面であるのに対し、引用部分は、全体を略横長長方形とし、その中央下端寄りを略横長長方形に開口し窓を取り付けているものであって、全体及び開口部の縦横の長さの比率は、それぞれ約1:2、約1:2.5で、開口部は、全体の約1/3の大きさである点、
(ウ)横架部
本願部分は、縦横の長さの比率が、約1:3.5であるのに対し、引用部分は、約1:9で、引用部分の方が2倍以上横長である点において、相違する。

類否判断
以上の共通点及び相違点が両意匠の類否判断に与える影響を評価・総合して、両意匠の類否を意匠全体として検討し、判断する。

(1)意匠に係る物品の類否判断
両意匠の意匠に係る物品は、同一である。

(2)両部分の用途及び機能の類否判断
両部分の用途及び機能は、同一である。

(3)両部分の位置、大きさ及び範囲の評価
両部分の位置については、正面壁部及び庇部は同一であるが、袖壁部及び横架部は相違し、大きさ及び範囲については、庇部、袖壁部及び横架部は同一であるが、正面壁部は相違する。しかしながら、これら位置、大きさ及び範囲の相違は、当該意匠の属する分野において、いずれもありふれた範囲内のものであるから、両部分の類否判断にほとんど影響を与えない。

(4)両部分の形状等の共通点及び相違点の評価
以下、両部分の形状等について検討する。
ア 両部分の形状等の共通点の評価
この種、建築物の分野において、正面壁部、袖壁部、庇部及び横架部が連接してなるものや、正面において、略縦長帯状の袖壁部の縦辺の上端に、略横長帯状の庇部を水平に配し、庇部の下に略矩形状の正面壁部を配置し、正面壁部と袖壁部の間に略横長帯状の横架部を形成したものは、両部分の他にも見られる態様であり(例えば、意匠登録第1553659号の意匠。)、両部分のみに共通する態様とはいえないことから、上記の共通点は、両部分の形状等を概括的に捉えた場合の共通する態様といわざるを得ず、これらの共通点が、両部分の類否判断に与える影響は小さいものである。

イ 両部分の形状等の相違点の評価
相違点(ア)について、正面壁部を前面に押し出してアクセントとしている本願部分は、正面壁部を袖壁部と庇部の奥に配した引用部分と比較すると、ファサード全体として見た場合の需要者に与える視覚的印象は全く異なるものといえ、また、庇部と横架部の位置が前後方向で逆になっている点も、需要者に異なる印象を与えているから、両部分の類否判断に与える影響は大きい。
相違点(イ)について、略正方形の平坦面である本願部分と、全体を略横長長方形とし、その中央下端寄りを略横長長方形に開口し窓を取り付けたものである引用部分とは、一見して異なる態様で、上記の相違点(ア)と相まって、需要者の注意を強く引くものといえるから、両部分の類否判断に与える影響は大きい。
相違点(ウ)について、引用部分は、本願部分よりも2倍以上横長ではあるが、常套的になされる改変の範囲内であり、横架部の配される箇所が、奥側でさほど目立つものではないことを考慮すると、格別、需要者の注意を払うものとはいえないことから、両部分の類否判断に与える影響は小さい。

ウ 両部分の形状等の評価
以上のとおり、共通点が両部分の類否判断に与える影響は小さいものであるのに対し、相違点のうち、相違点(ウ)が両部分の類否判断に与える影響は小さいものであるが、相違点(ア)及び相違点(イ)が両部分の類否判断に与える影響は大きいものであるから、相違点全体が相まって両部分の類否判断に与える影響は大きいものである。

3 小括
したがって、両意匠は、意匠に係る物品は同一で、両部分の用途及び機能が同一で、位置、大きさ及び範囲も同一か、両部分の類否判断にほとんど影響を与えないものであるが、形状等においては、共通点が未だ両部分の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対して、相違点が両部分の類否判断に与える影響は共通点のそれを凌駕しており、意匠全体として見た場合、両部分は、視覚的印象を異にするというべきであるから、本願意匠は、引用意匠に類似するということはできない。

第5 むすび

以上のとおりであって、原査定の引用意匠をもって、本願意匠は、意匠法3条1項3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから、原査定の拒絶の理由によって、本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。

また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。

別掲





審決日 2022-08-02 
出願番号 2021004768 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (L3)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 外山 雅暁
内藤 弘樹
登録日 2022-09-15 
登録番号 1725683 
代理人 伊東 忠彦 
代理人 伊東 忠重 

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