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審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 N3
管理番号 1388445 
総通号数
発行国 JP 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2022-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2022-03-07 
確定日 2022-08-09 
意匠に係る物品 細胞画像解析装置 
事件の表示 意願2020− 20748「細胞画像解析装置」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の主な経緯
本願は、令和2年(2020年)9月29日の意匠登録出願であって、その後の手続の主な経緯は以下のとおりである。
令和 3年 5月17日付け :拒絶理由の通知
7月 2日 :期間延長請求書の提出
7月 2日 :面接
7月30日 :意見書の提出
11月30日付け :拒絶査定
令和 4年 3月 7日 :審判請求書の提出

第2 本願意匠
本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は、物品の部分について意匠登録を受けようとする意匠登録出願であり、願書及び願書に添付した図面によれば、意匠に係る物品を「細胞画像解析装置」とし、その形状、模様若しくは色彩若しくはこれらの結合(以下「形状等」という。)を願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり、「実線で表した部分が、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」(以下「本願意匠部分」という。)としたものである(別紙第1参照)。

第3 原査定における拒絶の理由
原査定における令和3年(2021年)5月17日付けの拒絶の理由は、本願意匠が、意匠法第3条第2項の規定に該当するとしたものであって、具体的な拒絶の理由は、以下のとおりである。
「本願意匠は、画像全域を横に三区分した縦長長方形の枠を、上部に余白を設けつつ、右端のもののみ横幅がやや大きくなるように配置および構成した画像部分を、細胞画像解析装置の部分意匠として意匠登録を受けようとするものですが、本願出願前より、画像全域を横に三区分した縦長長方形の枠を配置し、右端の枠にイメージを主体とする内容を表示させたものは、公然知られています(画像1ないし画像3)。また、画像全域を横に三区分した縦長長方形の枠を配置し、右端のもののみ横幅がやや大きくなるように構成したものもまた、本願出願前より公然知られています(画像4ないし画像7)。そうすると、本願意匠は、本願出願前より公然知られた画像(画像1)を基にして、枠の左方の領域を詰め、縦長長方形の枠の横幅の構成を若干変えたものを、細胞画像改正装置の部分意匠として表したにすぎず、本願意匠の意匠登録を受けようとする部分が極めてシンプルな枠のみであることも併せて考慮すると、当業者であれば容易に創作できたものと認められます。
(中略)

画像1(別紙第2参照):
大韓民国意匠商標公報 2013年 2月 1日13−04号
電子計算機(登録番号30−0678945)の画像
(特許庁意匠課公知資料番号第HH25406859号)
(中略)

画像2(別紙第3参照):
独立行政法人工業所有権情報・研修館が2014年3月24日に受け入れた
2013 Mobile Computing Solutions
第13頁所載
タッチパネル式データ表示機の画像
(特許庁意匠課公知資料番号第HD25040156号)
(中略)

画像3(別紙第4参照):
大韓民国意匠商標公報 2012年 3月19日12−06号
携帯電話機(登録番号30−0634520)の画像
(特許庁意匠課公知資料番号第HH24408486号)
(中略)

画像4(別紙第5参照):
独立行政法人工業所有権情報・研修館が2019年1月22日に受け入れた
MAXIMUM PC 7号
第19頁所載
PC用ソフトウェアのデータ管理機能の画像
(特許庁意匠課公知資料番号第HB30040005号)
(中略)

画像5(別紙第6参照):
独立行政法人工業所有権情報・研修館が2018年8月21日に受け入れた
膨大な点群データをリアルタイムに表現 超高速点群データビューア
geoverse MDM.
第2頁所載
PC用ソフトウェアのデータ管理機能の画像
(特許庁意匠課公知資料番号第HC30040005号)
(中略)

画像6(別紙第7参照):
独立行政法人工業所有権情報・研修館が2016年11月22日に受け入れた
SAS Visual Data Mining and Machine Learning
第2頁所載
PC用ソフトウェアのデータ管理機能の画像
(特許庁意匠課公知資料番号第HD28040017号)
(中略)

画像7(別紙第8参照):
米国特許商標公報 2013年 7月 9日
ディスプレースクリーン用画像(登録番号US D685811S)
(特許庁意匠課公知資料番号第HH25313852号)
(中略)」

第4 請求人の主な主張
これに対し、請求人は、審判を請求し、要旨以下のとおり主張した。
1 本願意匠が登録されるべき理由
(1)本件意匠の要旨
1)本願意匠に係る物品は、細胞画像解析装置であって、細胞培養プレートの各ウェル内を撮影した細胞画像を格納し、閲覧または解析する機能を備え、選択した画像中の細胞の状態や数を得る用途に用いられるものである。
2)意匠登録を受けようとする部分は3つのフレームで構成され、左フレームは、「培養プロジェクトの名称」等を一覧表示する機能を有し、フレーム内のプロジェクト名称等の一つを選択する用途であり、中央フレームは、ユーザが左フレーム内で選択した情報に紐づく「細胞画像の名称」を一覧表示する機能を有し、フレーム内の細胞画像の名称の一つを選択する用途である。右フレームは、ユーザが中央フレーム内で選択した情報に紐づく「細胞画像データ」を表示する機能を有し、細胞の状態を視覚的に確認する用途である。
3)意匠登録を受けようとする部分の形状は、いずれも縦長長方形の枠であって、右フレームのみ横幅がやや大きく設定されている。
4)本願意匠物品「細胞画像解析装置」全体に占める、意匠登録を受けようとする各部分の位置・大きさ・範囲について、各部分が左右方向に間隔をあけて配置され、各部分の幅は、左フレームと中央フレームは物品全体の約1/4、右フレーム部分は物品全体の約1/3である。さらに、各部分の上部に余白が設けられており、各部分の高さは、いずれも物品全体の約3/4となっている。

(2)引用画像
拒絶査定は、主引用とする画像1(以下引用画像)の要旨は、
1)X線診断を用途とし、X線画像を表示する機能を備えた画像である。
2)表示フレームの形状は、左、中央、右フレーム共に、同一幅の長方形である。
3)左及び中央フレームの用途機能は不明であり、右フレームも用途は不明であるが、X線画像を表示する機能を備えている。
4)画像全体に占める3つのフレーム部分の位置は、画面の右下であり、画面全体の8割程度の大きさであって、画面上側と左側に別のメニューが表示されて、その他の範囲を当該部分が占めている。
以上の特徴により生じる美観が、画像1の意匠の要旨である。

(3)本願意匠と引用画像との対比
上記認定した本願意匠と引用画像とは、少なくとも以下の点で相違する。
1)本願意匠が「細胞画像解析装置」であるのに対し、引用画像はX線診断用途及びX線画像を表示させるものであるため、用途及び機能が異なる。
2)本願意匠の意匠登録を受けようとする部分の形態は、右フレームのみ横幅がやや大きく設定されているのに対して、引用画像は全ての左、中央、右フレームの全てが均等幅の長方形である点において相違する。
3)意匠登録を受けようとする部分の用途機能について、左フレームはプロジェクトの名称等を一覧表示、選択し、中央フレームは細胞画像の名称等を一覧表示、選択し、右フレームは細胞画像データを表示する機能や用途があるのに対し、引用画像は、いずれのフレームも用途機能が不明である点において相違する。
4)画面全体に占める、意匠登録を受けようとする部分の位置が、本願意匠が中央やや下側であるのに対して、引用画像は、右下である点や引用画像は、左側にも別のメニューが表示されるエリアが存在し、意匠登録を受けようとする3つのフレーム部分の画面全体に占める範囲が異なる。

(4)創作非容易性
(ア)部分意匠の要旨を創作したことが立証できていないこと
1)本願意匠は、上記の通りの部分意匠の要旨から成るものであって、「意匠」を創作することが容易というためには、この部分意匠の要旨が創作できたことを示す必要があるが、物品の用途機能については、「細胞画像改正装置の部分意匠として表したにすぎず」と認定するのみで、非類似物品間における転用が容易であることの理由についての立証を欠いている。
2)意匠登録を受けようとする部分の用途機能については、そもそも言及すらされていない。
3)意匠登録を受けようとする部分の形態の相違点は「縦長長方形の枠の横幅の構成を若干変えた」という創作活動のみを指摘し、それが容易であることの立証を欠く。
4)画像全体に占める当該部分の位置大きさ範囲は、「左方の領域を詰め」との認定にとどまり、当該事項が容易であることの立証を欠く。
以上の通り、当該拒絶理由と同じ理由で成された拒絶査定は、本願意匠の要旨を創作できたことの立証が十分でなく、違法として取り消されるべきものである。
(イ)物品間の転用が創作容易でないこと
本件引用画像は医用画像であって、細胞画像解析の画像ではなく、用途機能が異なる形態である。また、医用機器から細胞画像解析装置に、形態の転用をするような商慣行も存在していない。よって、本件については、物品間の転用が創作容易である理由がない。
更に、X線診断の分野で用いられる形状を、「細胞画像解析」の形状として採用することは、商慣行上一般的ではなく、ありふれた手法とは言えない。
X線診断装置の需要者は、主に病棟で撮影を行うレントゲン技師や撮影された画像を基に診断を行う医師であり、一方、細胞画像解析装置の需要者は、臨床検査医学に従事している研究者であり、それぞれ需要者が大きく異なっている。それぞれの需要者にとって、美観を起こす形状等、求められる用途機能を満たす形状等は異なる。
従って、当業者であっても、X線診断用途の画像1を、物品の枠を超えた細胞画像解析装置の構成要素として利用・転用すること自体がありふれた手法とは言えず、創作容易とは言えないものと確信している。
(ウ)意匠登録を受けようとする部分の用途機能自体がどの引用画像にも存在しないこと
仮に、引用画像における均等幅の長方形から成る各フレームを、細胞画像解析装置に適用することに至る理由があったとしても、引用されたどの画像についても、本願意匠における3つのフレームの用途機能を全て表したものがなく、これら画像からは、如何にしても本願意匠における意匠登録を受ける部分の用途機能を構成することができない。
(エ)意匠登録を受けようとする部分の形態とすることに創作性があること
仮に意匠登録を受ける部分である各フレームの用途機能を本願意匠と同一となるように構成した意匠が他に存在していたとしても、引用画像における均等幅の長方形の横幅比率を変更し、右フレームのみ横幅を他のフレームに比べて大きくする理由がない。他の画像4〜6等には、他の分野における画像で右フレームの幅を大きくするものが示されているが、各フレームに表示されている画像の用途機能は画像1〜6でそれぞれ異なり、各フレームの用途機能に併せて、その比率や形状をデザインされているものと思料する。
(オ)意匠登録を受けようとする部分の位置大きさ範囲に創作性があること
引用画像は、左側にも別のメニューが表示されるエリアが存在し、画面全体に占める、意匠登録を受けようとする部分の位置が右下であるところ、これを本願発明のように中央やや下側に配置することは、何らかの創作性が必要となると言える。

(5)手続違背
拒絶査定は、拒絶理由通知の理由により拒絶すべきものとされているが、拒絶理由通知で認定していない事実を新たに追加しているものと認められ、新たに拒絶理由を通知すべきところ、本件拒絶査定は当該通知を欠く手続違背の違法が存在する。

2 むすび
本願意匠に係る物品、意匠登録を受けようとする部分の用途機能、意匠登録を受けようとする部分の形状等、さらに本願意匠物品「細胞画像解析装置」全体に占める、意匠登録を受けようとする各部分の位置・大きさ・範囲、これら4つの要素のすべてが合わさった意匠から生じる美観には創作非容易性があるものと思料する。

第5 当審の判断
以下において、本願意匠の意匠法第3条第2項の該当性、つまり、本願意匠が当業者であれば容易に創作することができたか否かについて、検討し、判断する。

1 本願意匠と引用意匠の認定
(1)本願意匠と引用意匠の意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は、「細胞画像解析装置」であって、医療等研究において撮影した細胞画像の管理に用いられ、研究課題ごとに整理された細胞画像データを必要に応じて画像データを表示して解析するためのものであり、引用意匠の画像1は、大韓民国意匠商標公報の登録番号30−0678945によると、意匠の名称を「画像デザインが表示されたコンピュータモニタ」としており、意匠に係る物品は「電子計算機」である。
拒絶理由通知書に示されている画像2の意匠に係る物品は、ポータルサービスを表示する「タッチパネル式データ表示器」であって、意匠に係る物品は「電子計算機」と認められ、画像3は、大韓民国意匠商標公報の登録番号30−0634520によると、意匠の名称を「画像デザインが表示された携帯電話」としており、意匠に係る物品は「電子計算機」である。
拒絶理由通知書に示されている画像4及び画像5、画像6は、いずれもデータ管理機能の画像が表示されていることから、意匠に係る物品は「電子計算機」であり、画像7は、米国特許商標公報の登録番号USD685811Sによると、意匠の名称を「コンピュータで生成されたユーザーインターフェースを表示したコンピュータディスプレイ画面」としており、意匠に係る物品は「電子計算機」である。
よって、画像1ないし画像7の意匠に係る物品は、いずれも汎用のアプリケーション等の画像が表示され、多種多様な計算と処理ができる汎用の「電子計算機」と認められる。

(2)本願意匠部分と引用意匠の本願意匠部分に相当する部分(以下、「引用意匠部分」という。)の用途及び機能、並びに位置、大きさ及び範囲
本願意匠部分は、医療等の研究用に撮影したデータを整理格納している画面や撮影データを表示する画面の外枠を示すために用いられ、操作する画面の枠を左側の枠から右の枠へと順に操作して画面内が選択可能となったことを視覚的に表す機能のものと認められる。
また、本願意匠部分は、正面視において左と右、下に細幅の周縁部ができるように、画面全体のほぼ横全幅に3つの縦長長方形枠を、上辺を水平にして横に並べ、本願意匠部分の3つの枠の上に、横全副に細長い略長方形状の表示部ができるようにやや下に配置し、左側の枠及び中央の枠をほぼ同じ大きさの縦長長方形として、右側の枠は左側及び中央の枠よりもやや幅を大きくした縦長長方形の枠を設けたものである。
一方、画像1の引用意匠部分は、大韓民国で登録された意匠登録の内容によると、権利者がソウル大学病院であり、医療における診断等に用いられるデータ管理と撮影データが表示された画像と認められるが、操作方法や画面遷移する方法の記載はなく、画像の用途及び機能は不明なものである。
また、略横長長方形状の画面全体の左側に、高さ方向全高に略長方形の表示部を設け、3つの縦長長方形フレームを近接させて上辺が水平になるように横に並べ、それら3つのフレームほぼ周形状の上に横全幅に細長い略長方形状の表示部ができるように配置したものとしている。
画像2の引用意匠部分は、ポータルサービス等を表示し、画面をタッチして操作し、サービスを選択する用途と機能の画像である。
また、略横長長方形状の画面全体の左と右、下に太幅の周縁部と上にはそれらよりもさらに太幅の表示部ができるように、画面中央やや下寄りに3つの縦長長方形フレームを近接させて上辺が水平になるように横に並べて配置したものとしている。
画像3の引用意匠部分は、携帯電話の画面をタッチして操作し、データを選択し表示する用途と機能の画像である。
また、画像3の引用意匠部分には周縁部がなく、略横長長方形状の画面全体に3つの縦長長方形フレームを近接させて上辺が水平になるように横に並べて配置したものとしている。
画像4の引用意匠部分は、データを管理し表示する画像と認められるが、操作方法や画面遷移する方法の記載はなく、画像の用途及び機能は不明なものであり、略横長長方形状のウインドウ枠のメニューバーの下に3つの縦長長方形フレームを近接させて上辺が水平になるように横に並べ、周縁部を設けずに、3つの縦長長方形の幅を右、中央、左フレームの順に大きくして配置したものとしている。
画像5の引用意匠部分は、データを選択し表示する画像と認められるが、操作方法や画面遷移する方法の記載はなく、画像の用途及び機能は不明なものであり、略横長長方形状のウインドウ枠のタイトルバー及びメニューバーの下に3つの縦長長方形フレームを近接させて上辺が水平になるように横に並べ、周縁部を設けずに、3つの縦長長方形図形の幅を右、中央、左フレームの順に大きくして配置したものとしている。
画像6の引用意匠部分は、データを選択し表示する画像と認められるが、操作方法や画面遷移する方法の記載はなく、画像の用途及び機能は不明なものであり、略横長長方形状のウインドウ枠のタイトルバーの下に大小のタブフレームを水平に並べ、大きいタブフレーム内に2つのタブフレームを水平に並べて配置したものである。
画像7の引用意匠部分は、電子計算機等に各種のデータを一覧で表示、選択する用途と機能の画像と認められるが、操作方法や画面遷移する方法の記載はなく、画像の用途及び機能は不明なものであり、略横長長方形状のウインドウ枠のタイトルバーの下に3つの縦長長方形フレームを近接させて上辺が水平になるように横に並べ、周縁部を設けずに配置し、3つの縦長長方形図形の幅を右と中央のフレームをほぼ同じ大きさとし、左フレームを中央のフレームよりもやや幅広の大きさとしているものである。

(3)本願意匠部分と引用意匠部分(以下、本願意匠部分と引用意匠部分を合わせて「両意匠部分」という。)の形態
両意匠部分の形状等については、主として、以下の通りの共通点及び差異点がある。
ア 共通点
画面全体に対して縦長長方形状の複数のフレームを近接させて上辺が水平になるように横に並べた形状等としている点において共通する。
イ 差異点
本願意匠部分の3つの縦長長方形状の枠は、画面の左と中央の枠をほぼ同じ形状とし、右の枠を右と中央の枠よりも幅の広い縦長長方形状とし、3つの枠全体で縦横比を12:16程度としているのに対し、画像1ないし画像3の引用意匠部分の3つの縦長長方形状は、3つの縦長長方形状のいずれのフレームもほぼ同じ幅と高さの形状としている点が相違する。
また、画像4ないし画像6の引用意匠部分の3つの縦長長方形状は、右、中央、左フレームの順で幅を徐々に大きくしたもので3つの枠の形状がそれぞれ異なるものである点が相違する。
画像7の引用意匠部分の3つの縦長長方形状は、3つのフレーム全体で縦横比を3:4程度としている点が相違する。
また、本願意匠部分の3つの縦長長方形状の枠は、明確な線で描画して構成しているが、画像1ないし画像5の引用意匠部分は、明調子と暗調子の色の明るさの違いでフレームとしている点が相違する。

2 本願意匠の創作の容易性について
(1)出願前に公然知られた形状等
まず、本願意匠部分のような画面全体に対して縦長長方形状フレームを3つ横に上辺を水平にして並べた形状とすることは、引用意匠部分に表されているように、本願の出願前に既に公然知られた態様である。

(2)本願意匠の創作の容易性について
本願意匠は、医療等研究において撮影した細胞画像の管理及び表示する装置であり、物品の一部として画像部分を部分意匠として意匠登録を受けようとするものであるが、一方で、画像1ないし画像7はいずれも汎用のアプリケーション等を操作、表示する電子計算機であるから、意匠に係る物品は相違し、本願意匠の当業者は、医療等研究機関などの意匠分野に属する通常の知識を有する者であって、画像1ないし画像7の当業者は、汎用のアプリケーション等を操作、表示する電子計算機の意匠分野に属する通常の知識を有する者であると認められ、本願意匠と引用意匠の当業者も相違する。
また、本願意匠部分は、医療研究用の撮影データを整理、格納している画面や撮影データを表示する画面の外枠を示すために用いられ、表示されたデータの選択方法等の機能が明らかであるが、本願出願前より公然知られた引用意匠は、医療における診断等に用いられるデータ管理と撮影データが表示された画像と認められるものの、操作方法や画面遷移する方法が不明であり、本願意匠の当業者である医療等研究機関などの意匠分野に属する通常の知識を有する者が、画像1ないし画像7から本願意匠の用途や機能に見られる手法を容易に創作することができたものということはできない。
次に、本願意匠部分の形状等の具体的構成態様について検討すると、正面視において左と右、下に細幅の周縁部、本願意匠部分の3つの枠の上に、細長い略長方形状の表示部ができるように配置し、画面全体のほぼ横全幅に3つの縦長長方形枠を、上辺を水平にして横に並べ、3つの縦長長方形の枠のうち、撮影データを表示する右枠を最も大きくしたものとしているのに対し、画像1の引用意匠部分は、画面全体に対し、下と右は細幅の周縁部となるように配置しているものの、左には縦長略長方形の表示部と上にも横長略長方形状の表示部が設けられるように画面全体に対して右下寄りに配置しており、本願意匠部分とは異なる態様である。次に、画像2の引用意匠部分は、画面中央やや下寄りに3つの縦長長方形フレームの上辺を水平にして横に並べて配置し、さらには、画像3ないし画像7の引用意匠部分は、ウインドウ枠のタイトルバーやメニューバーの下に3つのフレームを周縁部がないように配置してものであって、本願意匠部分とは異なる態様であり、画像1ないし画像7に示された様々なフレームの態様からデータ選択や表示の視認がしやすいように本願意匠部分の3つの枠を採用することは、当業者であれば容易に着想できたということはできないものである。
また、本願意匠部分の3つの縦長長方形状の枠は、明確な線で構成し、右側の枠を最も大きくして細胞データを大きく表示できるようにしているが、画像1ないし画像3の引用意匠部分は、3つのフレームはほぼ同じ大きさの形状で明調子と暗調子の色の明るさの違いでフレームを表しており、画像4ないし画像6は、右、中央、左フレームの順に大きくした形状で明調子と暗調子の色の明るさの違いでフレームを表しており、いずれも本願意匠部分とは異なる態様である。また、画像7と本願意匠部分と3つの枠の形状が類似するとはいえ、縦横比が異なっており、本願意匠が研究データを選択、表示する画像を構成する上で、これら様々なフレームの態様からデータ選択や表示の視認がしやすいように本願意匠部分の3つの枠を採用し創作することは、当業者であれば容易に着想できたということはできないものである。
そして、これらの相違は、細胞画像解析装置の分野における通常の知識に基づいて創作を加えたとしても、本願意匠部分の態様とすることは容易にできたとはいえず、当業者であれば容易に着想できたということはできないものである。
そうすると、本願意匠は、ありふれた手法を用いて僅かに改変した程度のものとはいえないから、本願意匠は、当業者が公然知られた形状に基づいて容易に創作することができたものではない。

3 むすび
したがって、本願意匠は、原査定における拒絶の理由で示した意匠を基にしては、意匠法第3条第2項の規定に該当しないので、原査定における拒絶の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また、当審が更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲








審決日 2022-07-27 
出願番号 2020020748 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (N3)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 上島 靖範
正田 毅
登録日 2022-09-02 
登録番号 1724469 
代理人 岸本 雅之 
代理人 江口 裕之 
代理人 妹尾 明展 
代理人 阿久津 好二 
代理人 渡辺 由佳子 

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