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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 L2
管理番号 1388453 
総通号数
発行国 JP 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2022-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2022-04-12 
確定日 2022-08-23 
意匠に係る物品 水口用フィルタ 
事件の表示 意願2021− 2799「水口用フィルタ」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 主な手続の経緯

本願は、令和3年(2021年)2月9日に出願された意匠登録出願であって、同年(2021年)9月16日付けの拒絶理由の通知に対し、同年10月12日に意見書が提出されたが、令和4年(2022年)1月18日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年4月12日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2 本願の意匠

本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は、意匠に係る物品を「水口用フィルタ」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下、「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形状等」という。)を願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであって、物品の部分として意匠登録を受けようとする部分を、「実線で示した部分が部分意匠として登録を受けようとする部分である。A−A線断面図及びB−B線断面図を含めて部分意匠として登録を受けようとする部分を特定している。」としたものである(以下、本願意匠において物品の部分として意匠登録を受けようとする部分を「本願部分」という。)。(別紙第1参照)

第3 原査定の拒絶の理由及び引用意匠

原査定の拒絶の理由は、本願意匠が、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠に類似するものであるから、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)に該当する、というものであり、具体的には以下のとおりである。

「本願意匠と引用意匠とは、主にフィルタ機能をもつ物品であって、外形の一部が直線で他の部分が円である球面の一部分である点で一致しており、両者は類似しています。

引用意匠
特許庁発行の公開特許公報記載
特開2019−044523
図8および関連する記載によって表された異物捕捉メッシュ48の意匠」

なお、原査定における拒絶の理由として引用した意匠について、当審は、図8に表された異物捕捉メッシュ48の意匠のうち、本願部分に相当する部分を、本願部分との対比の対象と特定し、判断する(別紙第2参照)。

第4 当審の判断

1 本願意匠と引用意匠の対比

(1)意匠に係る物品の対比
本願意匠の意匠に係る物品は、願書の【意匠に係る物品の説明】欄の記載によれば、農業用水等の水路から水を取り込む水口を形成する取水パイプに接続され、シャッター部を上下に動かして取水口の開き具合を調整し、フィルタ部を通して異物の流入を防いで水を取り込むことができる「水口用フィルタ」である。
一方、引用意匠の意匠に係る物品は、明細書の記載によれば、シンク等の排水口に設置される排水部材に取り付けられた異物を捕捉するための「異物捕捉用メッシュ」である。
そうすると、本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、その機能については、いずれも異物の流入を防ぐために用いられるものであるから、共通するが、その用途については、農業用か、住宅設備用かで異なるものであるから、両意匠に係る物品は、一致しない。

(2)本願部分と引用意匠の本願部分に相当する部分(以下「引用部分」といい、本願部分とあわせて「両部分」という。)の用途及び機能の対比
両部分は、いずれも異物の流入を防ぐためのものであるから、両部分の用途及び機能は一致する。

(3)両部分の位置、大きさ及び範囲の対比
位置については、両部分は、いずれもパイプの先端に位置しているから、一致するが、大きさ及び範囲については、周縁を除く約7割を占める範囲であるのに対し、引用部分は、約9割を占める範囲であるから、両部分の大きさ及び範囲は、一致しない。

(4)両部分の形状等の対比
両部分の形状等を対比すると、主として、以下のとおりの共通点及び相違点がある。
なお、両部分の対比のため、本願意匠の図の向きに合わせて、引用意匠の図の向きを認定する。

ア 両部分の形状等の共通点
全体が、略円形板状で、表面を略半球状に膨出している点において共通する。

イ 両部分の形状等の相違点
(相違点1)本願部分は、正面視において、右側端部を、右端から直径の約1/4の長さの位置まで垂直に切り欠いているのに対し、引用部分には、切り欠きがない点、
(相違点2)本願部分は、全体が薄肉で、表面に凹凸のない平滑面状であるのに対し、引用部分は、全体が厚肉で、表面を略枡目状としている点で相違する。

2 両意匠の類否判断

(1)意匠に係る物品の類否判断
両意匠の意匠に係る物品は、その用途が異なるから類似しない。

(2)両部分の用途及び機能の評価
両部分の用途及び機能は、同一である。

(3)両部分の位置、大きさ及び範囲の対比
両部分は、フィルタ部であって位置が同一で、大きさ及び範囲は一致しないものの、この種物品分野において、ありふれた範囲内における相違であるから、両部分の類否判断に与える影響は小さい。

(4)両部分の形状等の共通点及び相違点の評価
ア 共通点について
この種物品分野において、全体が、表面を略半球状に膨出した略円形板状としたものは、本願の出願前から、両部分以外にも一般に見られる態様であり(例えば、意匠登録第709171の水路管用フィルターの意匠。参考意匠、別紙第3参照。)、両部分にのみ見られる態様とはいえず、格別、需要者が注意を払うものではないから、共通点は、両部分の類否判断に与える影響は小さい。

イ 相違点について
(相違点1)について、この種物品分野においては、フィルタ部に切り欠きを設けたものは、本願部分の他には見られず、本願独自の特徴といえるから、需要者に異なる視覚的印象を与えているといえ、両部分の類否判断に与える影響は大きい。
(相違点2)について、本願部分は、薄肉で凹凸がなく、全体として見ると、すっきりした印象を与えているのに対し、引用部分は、厚肉で、枡目状であるから、需要者に異なる美感をもたらしており、両部分の類否判断に与える影響は大きい。

ウ 両部分の類否判断の評価
以上のとおり、両部分の形状等における共通点及び相違点の評価に基づき、意匠全体を総合的に観察した場合、共通点は、両部分の類否判断に与える影響が小さいのに対し、(相違点1)及び(相違点2)が、両部分の類否判断に与える影響は大きいものであるから、相違点全体が相まって、両部分の類否判断に与える影響は大きい。

3 小括
したがって、両意匠は、両部分の用途及び機能並びに位置は同一で、大きさ及び範囲は一致しないものの両部分の類否判断に与える影響は小さいが、両意匠に係る物品は非類似であり、また、両部分の形状等も、共通点が未だ両部分の類否判断を決定付けるまでに至らないものであるのに対して、相違点が両部分の類否判断に与える影響は共通点を凌駕しており、意匠全体として見た場合、両部分は、需要者に異なる美感を与えるというべきであるから、本願意匠は引用意匠に類似するということはできない。

第5 むすび
以上のとおり、本願意匠は、引用意匠に類似せず、意匠法3条1項3号に掲げる意匠に該当しないから、原査定の拒絶の理由によって、本願を拒絶することはできない。
また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。

別掲




審決日 2022-08-09 
出願番号 2021002799 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (L2)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 内藤 弘樹
特許庁審判官 奈良田 新一
上島 靖範
登録日 2022-08-26 
登録番号 1723924 
代理人 弁理士法人Vesta国際特許事務所 

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