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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 H1
管理番号 1390629 
総通号数 11 
発行国 JP 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2022-11-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2022-06-07 
確定日 2022-10-11 
意匠に係る物品 ヒューズ 
事件の表示 意願2021− 874「ヒューズ」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯

本願は、令和3年(2021年)1月18日の意匠登録出願であって、その後の主な手続の経緯は、以下のとおりである。

令和 3年(2021年)10月22日付け 拒絶理由通知
同年 12月 1日 意見書の提出
令和 4年(2022年) 3月 3日付け 拒絶査定
同年 6月 7日 審判請求書の提出
同年 6月 8日 手続補足書の提出

第2 本願の意匠

本願は、物品の部分について意匠登録を受けようとする意匠登録出願であり、本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は、意匠に係る物品を「ヒューズ」とし、その形状等(形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり、本願意匠において意匠登録を受けようとする部分(以下「本願部分」という。)を、「実線で表された部分が、部分意匠として登録を受けようとする部分である。」としたものである。(別紙第1参照)

第3 原査定の拒絶の理由及び引用の意匠

原査定の拒絶の理由は、本願意匠は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の意匠(以下「引用意匠」という。)に類似するものであるから、意匠法3条1項3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)に該当する、というものである。

引用意匠(別紙第2参照)
掲載者 日経XTECH
表題 Liイオン2次電池に向けた表面実装型保護素子、
リテルヒューズが発売
媒体のタイプ [online]
掲載年月日 2020年 5月13日
検索日 2021年10月14日検索
情報の情報源 インターネット
情報のアドレス https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/news/18/07833/
に掲載された「ヒューズ」の意匠のうち、本願意匠に相 当する部分」

第4 当審の判断

以下、引用意匠を本願意匠の図面の向きに合わせて対比する。
なお、本願の願書に添付された図面において、「斜視図1」、「正面図」、「背面図」、「右側面図」、「左側面図」、「平面図」及び「底面図」に表された意匠と、「斜視図2」に表された意匠とを対比すると、破線で表現された部分の位置が異なるが、本願の願書に添付された図面を総合的に判断して、「斜視図2」における破線での表現が誤記であると判断し、「斜視図1」、「正面図」、「背面図」、「右側面図」、「左側面図」、「平面図」及び「底面図」の記載から、本願意匠は、筐体上面の平面視左上及び右下に位置する破線で表された部分、筐体の左右側面中央部の破線で表された部分、加えて「内部構造省略のA−A線端面図」及び「内部構造省略のB−B線端面図」にて表現された筐体下面の破線で表された部分を除いた部分を、意匠登録を受けようとする部分と認定する。

1 本願意匠及び引用意匠の対比

以下、本願意匠と引用意匠を「両意匠」という。また、引用意匠のうち本願意匠の意匠登録を受けようとする部分に相当する部分を「引用部分」といい、「本願部分」と併せて「両意匠部分」という。

(1)意匠に係る物品
両意匠は、いずれも、電子機器等の過充電や過電流を遮断するための「ヒューズ」であり、意匠に係る物品は、一致する。

(2)両意匠部分の用途及び機能の対比
両意匠部分は、いずれも、本願意匠において破線で表現された部分を除いた電極部を備える基台及び筺体の部分であり、両意匠部分の用途及び機能は一致する。

(3)両意匠部分の位置、大きさ、及び範囲の対比
両意匠部分は、いずれも、破線で描かれた以下の各部分、すなわち筐体上面における、平面視左上及び右下に位置する破線で表現された部分及び平面視左右中央部に位置する破線で表現された部分、「内部構造省略のA−A線端面図」及び「内部構造省略のB−B線端面図」にて表現された、筐体下面の破線部を除いた基台及び筺体の部分であり、位置、大きさ、及び範囲は、一致する。

(4)両意匠部分の形状等の対比
両意匠部分には、主として、以下の共通点及び相違点がある。

ア 共通点
(ア)基本的構成態様
全体は、略長方形板状で三方に略半円形状の切欠きを有する基台部、当該基台部より一回り小さく、基台部の上部に隙間を伴い設けられた筺体部、及び基台部底面に設けられた3つの電極部からなるものである点。

(イ)基台部
基台部は、短辺中央部に1箇所、両長辺中央部に2箇所の計3箇所に、略半円形状の切欠き(以下、「切欠き」という。)を設けたものであり、短辺全長に対する切欠きの半径の長さの比率を略1:0.06とし、長辺と短辺と幅の厚みの比率を、略16:12:1としている点。

(ウ)筐体部
筐体部は、略長方形板状を基調とし、平面視において左上角部及び右下角部に略四半円状の僅かな段差部を設け、左右側面中央部に括れを設けた態様をなしている。筐体部は、平面視において基台部より一回り小さく、基台部の長辺に対する筐体部の長辺の比率を、略1:0.9とし、基台部の短辺に対する筐体部の短辺の比率を略1:0.8としている点。

(エ)電極部
電極部は、基台部の裏面の一方の短辺中央部に1箇所(以下、「短辺側の電極」という。)、両長辺中央部に2箇所配され、基台部と同じ位置に切欠きを有し、両長辺側の電極部には、それぞれ円形のサイドスルーホールを2つ有する点。

イ 相違点
(ア)筐体部の形状等
筐体部の形状等について、本願部分は平面視において略長方形板状の4つの端部が鋭角状をなしているのに対し、引用部分は緩やかな角丸状をなしている点。

(イ)基台部と筺体部とが接する部分の形状等
基台部と筺体部とが接する部分について、本願部分は正面図及び背面図により略中央部に略長矩形状の輪郭の隙間が視認でき、筺体部の全幅に対する隙間の幅の比率を略4:1としており、右側面図及び左側面図においては略扁平シルクハット状の輪郭の隙間が視認できる。それに対して、引用部分は基台部と筺体部とが、ある程度の隙間を設けて接合している態様であると推測できるものの、側面視における具体的態様が視認できず、隙間の具体的形状等や基台部と筺体部とがどのように接合しているのか不明である点。

(ウ)電極の端部の形状等
略長矩形を基調とした電極の角にあたる端部について、本願部分は直線で切り欠いた面取り状をなしているのに対し、引用部分は角丸状をなしている点。

(エ)短辺側の電極のサイドスルーホールの有無
短辺側の電極の面は、本願部分はフラットな無模様であるのに対し、引用部分は円形のサイドスルーホールを1つ有する構成である点。

(オ)基台部に対する電極の構成配置
電極の構成配置について、本願部分は基台部裏面のみに電極が配されているのに対し、引用部分は基台部裏面から側面及び表面にわたって略「コ」字状に電極を配する構成である点。

類否判断

(1)意匠に係る物品
両意匠の意匠に係る物品は、ともに、電子機器等の過充電や過電流を遮断するための「ヒューズ」であり、同一である。

(2)両意匠部分の用途及び機能、並びに位置、大きさ、及び範囲
両意匠部分の用途及び機能、位置、大きさ、及び範囲は同一である。

(3)両意匠部分の形状等の共通点及び相違点の評価
両意匠の意匠に係る物品は、電子機器等の過充電や過電流を遮断するための「ヒューズ」であり、需要者は、主に、電子部品の取引業者や販売業者が想定される。
したがって、まず、需要者が最も注意を払う、この種物品の分野において機能や性能の差を表現する部分や電極の構成等について評価し、かつそれ以外の形状等も併せて、各部を総合して意匠全体として評価することとする。

ア 共通点の評価
まず、共通点(ア)について、両意匠部分に共通する基本的構成態様については、この種物品の分野において下記の参考意匠1及び2に見られるとおり、本願の出願前から公然知られており、両意匠のみが有する態様とはいえないことから、需要者が格別注目するものとはいえず、両意匠の類否判断に与える影響は小さい。

参考意匠1(別紙第3参照)
特許庁が2016年7月25日に発行した
公開特許公報2016−134317
【発明の名称】ヒューズ素子及び回路モジュール
【図2】、【図3】及び【図5】に表された、ヒューズの意匠

参考意匠2(別紙第4参照)
特許庁が2017年8月24日に発行した
公開特許公報2017−147162
【発明の名称】ヒューズ素子
【図2】に表された、ヒューズの意匠

次に、共通点(イ)ないし共通点(エ)についても、上記の参考意匠1及び2に見られるように本願の出願前から公然知られており、両意匠部分のみが有する特徴とはいえないことから、格別需要者の注意を引くものとはいえず、これらの共通点は、いずれも両意匠部分の類否判断に与える影響は小さい。

イ 相違点の評価
まず、相違点(ア)について、筐体部は電子回路に取り付けた際に最も見えやすい部分であり、本願部分は平面視において略長方形板状の4つの端部が鋭角状をなしているのに対し、引用部分は緩やかな角丸状をなしている点で視覚的印象が異なり、相違点(ア)は両意匠部分の類否判断に一定程度の影響を与えるものといえる。

相違点(イ)について、本願部分は基台部と筺体部との間における隙間や接合の態様が、断面図も含めて明瞭に表現されているのに対し、引用部分は基台部と筺体部との隙間の具体的形状等や接合の態様が視認できず、不明である点は大きな相違と評価せざるを得ず、表面実装形のヒューズの創作において、薄型の全体形状を実現するための造形的工夫が表れる側面視の態様は、需要者が注意して観察する部分であり、相違点(イ)の相違が両意匠部分の類否判断に与える影響は大きい。

相違点(ウ)について、略長矩形を基調とした電極の角にあたる端部について、本願部分は直線で切り欠いた面取り状をなしているのに対し、引用部分は角丸状をなしている点は、ごく小さな端部における造形処理に係る相違であり、相違点(ウ)の相違が両意匠部分の類否判断に与える影響は小さい。

相違点(エ)について、本願部分はフラットな無模様であるのに対し、引用部分は円形のサイドスルーホールを1つ有する構成である点は、視覚的に及ぼす影響もごく僅かな細部にかかる相違で、且つ基台部裏面の電極をフラットとしたものもスルーホールを設けたものも本願出願前から一般的に見られる態様であり、本願部分の態様を新規な特徴とも評価できないため、相違点(エ)の相違が両意匠部分の類否判断に与える影響は小さい。

相違点(オ)について、本願部分は基台部裏面のみに電極が配されているのに対し、引用部分は基台部裏面から側面及び表面にわたって略「コ」字状に電極を配する構成である点は、電子回路に取り付けた際にも視認できる部分に係る相違であり、基台部に対する電極部の構成配置において相互に明確な相違があると評価せざるを得ないため、相違点(オ)の相違が両意匠部分の類否判断に与える影響は大きい。

(4)両意匠部分の形状等の類否判断
両意匠部分の形状等における共通点及び相違点の評価に基づき、意匠部分全体として総合的に観察し判断した場合、共通点(ア)ないし(エ)が両意匠部分の類否判断に与える影響は小さいのに対して、相違点(イ)及び(エ)が両意匠部分の類否判断に与える影響は大きく、相違点(ア)も両意匠部分の類否判断に一定程度の影響を与えるものといえる。
したがって、両意匠部分の形状等を総合的に観察した場合、共通点に比べて、相違点がもたらす影響の方が大きいものであるから、両意匠部分の形状等は類似しない。

3 小括

以上のとおり、両意匠は、意匠に係る物品は同一で、両意匠部分の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲も同一であるが、両意匠部分の形状等においては、共通点が未だ両意匠部分の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対して、相違点が類否判断に与える影響は共通点のそれを凌駕しており、意匠全体として観察した場合、両意匠部分は、需要者に異なる美感を与えているというべきであるから、本願意匠は、引用意匠に類似するということはできない。

第5 むすび

以上のとおり、原査定の引用意匠をもって、本願意匠は、意匠法3条1項3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから、原査定の拒絶の理由によって、本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。

また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。

別掲







審決日 2022-09-28 
出願番号 2021000874 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (H1)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 藤澤 崇彦
江塚 尚弘
登録日 2022-10-25 
登録番号 1728956 
代理人 村松 由布子 
代理人 杉村 憲司 
代理人 杉村 光嗣 

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