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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 H1
管理番号 1390637 
総通号数 11 
発行国 JP 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2022-11-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2022-07-28 
確定日 2022-10-25 
意匠に係る物品 ヒーターランプ 
事件の表示 意願2021−14101「ヒーターランプ」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の主な経緯
本願は、令和3年(2021年)6月29日の意匠登録出願であって、その後の手続の主な経緯は以下のとおりである。

令和 3年12月28日付け :拒絶理由の通知
令和 4年 2月14日 :意見書の提出
2月14日 :手続補足書の提出
5月16日付け :拒絶査定
7月28日 :審判請求書の提出
7月29日 :手続補足書の提出

第2 本願意匠
本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は、願書及び願書に添付した図面代用写真によれば、意匠に係る物品を「ヒーターランプ」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合を願書の記載及び願書に添付した図面代用写真に現したとおりとしたものである(別紙第1参照)。

第3 原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は、本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するとしたものであって、拒絶の理由に引用された意匠(以下「引用意匠」といい、本願意匠と併せて「両意匠」ともいう。)は、下記のとおりである(別紙第2参照)。

引用意匠
特許庁発行の意匠公報記載
意匠登録第1225651号
(意匠に係る物品、白熱ランプ)の意匠

第4 当審の判断
1.本願意匠
本願意匠は、上記「第2」の願書の記載及び願書に添付した図面代用写真の内容によると、以下のとおりである。

(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は「ヒーターランプ」である。

(2)本願意匠の形状
〔形状A1〕本願意匠は、上から順に、おおむね円筒状で透明体のバルブ部、略直方体のベース部及び細い円柱状のピン2本から成るものである。
〔形状A2〕バルブ部、ベース部及びピンの高さの比率は、約3:1:1である。
〔形状A3〕バルブ部の本体は、約3:1の縦長の略円筒状であって、その上面中央には先のとがった円筒状の突出部が設けてあり、本体下端は、前後から(正面側と背面側から)押し潰したように平らにしたものである。
〔形状A4〕バルブの内部においては、(A4−1)中心に直線状の棒状材(心材)を1本立て、(A4−2)その上下2か所に水平にした円筒状部材を設け、(A4−3)その間に8本のフィラメントを縦に配置しているものである。
〔形状A5〕各々のフィラメントは、ごく細い繊条を螺旋状にしたものであって、螺旋状の径は細いものであり、その長さはバルブ部の高さの約8分の3である。
〔形状A6〕ベース部は、扁平な直方体部の下に円板状部を設けたものであって、直方体部の前後面には、深い3本の横溝と深い8本の縦溝をしつらえているものである。
〔形状A7〕ピンは、直径:長さが約1:4である。

2.引用意匠
(1)意匠に係る物品
引用意匠の意匠に係る物品は「白熱ランプ」である。

(2)引用意匠の形状
〔形状B1〕引用意匠は、上から順に、おおむね円筒状で透明体のバルブ部、略直方体のベース部及び細い円柱状のピン2本から成るものである。
〔形状B2〕バルブ部、ベース部及びピンの高さの比率は、約3:1:1である。
〔形状B3〕バルブ部の本体は、約3:1の縦長の略円筒状であって、その上面中央には先が丸い円筒状の突出部が設けてあり、本体下端は、前後から押し潰したように平らにしたものである。
〔形状B4〕バルブの内部においては、(B4−1)背面側に回り込むようにした側面視で縦長「コ」字状の棒状材を1本立て、(B4−2)その下1か所に水平にした円筒状部材を設け、(B4−3)その上に1本のフィラメントを縦に配置しているものであって、(B4−4)フィラメントの両側面にフィラメント支持部材を配置している。
〔形状B5〕このフィラメントは、やや太い繊条を螺旋状にしたものであって、螺旋状の径は太いものであり、その長さはバルブ部の高さの約7分の3である。
〔形状B6〕ベース部は、扁平な直方体部の下に円板状部を設けたものであって、直方体部の前後面には、深い3本の横溝と深い8本の縦溝をしつらえているものである。
〔形状B7〕ピンは、直径:長さが約1:4であって、中央やや上に段差を設けたものである。

3.両意匠の対比
(1)意匠に係る物品の対比
本願意匠に係る物品は「ヒーターランプ」であり、引用意匠に係る物品は「白熱ランプ」である。

(2)両意匠の形状の対比
両意匠の形状を対比すると、以下に示す主な共通点と相違点が認められる。
ア.共通点について
〔共通点1〕両意匠共に、上から順に、おおむね円筒状で透明体のバルブ部、略直方体のベース部及び細い円柱状のピン2本から成るものである。(形状A1とB1)
〔共通点2〕バルブ部、ベース部及びピンの高さの比率は、約3:1:1である。(形状A2とB2)
〔共通点3〕バルブ部の本体は、約3:1の縦長の略円筒状であって、その上面中央には円筒状の突出部が設けてあり、本体下端は、前後から押し潰したように平らにしたものである。(形状A3とB3)
〔共通点4〕バルブの内部においては、(4−1)1本の棒状材を立て、(4−2)水平にした円筒状部材を設け、(4−3)フィラメントを縦に配置しているものである。(形状A4とB4)
〔共通点5〕ベース部は、扁平な直方体部の下に円板状部を設けたものであって、直方体部の前後面には、深い3本の横溝と深い8本の縦溝をしつらえているものである。(形状A6とB6)
〔共通点6〕ピンは、直径:長さが約1:4である。(形状A7とB7)

イ.相違点について
〔相違点1〕バルブ部の本体の上面中央に設けてある突出部の先端形状につき、本願意匠は、とがっているのに対して、引用意匠は、丸い。(形状A3とB3)
〔相違点2〕バルブ内の棒状材につき、本願意匠は、直線状であるのに対して、引用意匠は、背面側に回り込むようにした側面視で縦長「コ」字状である。(形状A4−1とB4−1)
〔相違点3〕バルブ内の棒状材に設けた、水平にした円筒状部材につき、本願意匠は、上下に2か所であるのに対して、引用意匠は、下に1か所である。(形状A4−2とB4−2)
〔相違点4〕円筒状部材に配置したフィラメントにつき、本願意匠は、8本であるのに対して、引用意匠は、1本である。(形状A4−3とB4−3)
〔相違点5〕フィラメント支持部材につき、引用意匠は、フィラメントの両側面に配置しているのに対して、本願意匠は、配置していない。(形状A4とB4−4)
〔相違点6〕フィラメントにつき、本願意匠は、ごく細い繊条を螺旋状にしたものであって、螺旋状の径は細いものであり、その長さはバルブ部の高さの約8分の3であるのに対して、引用意匠は、やや太い繊条を螺旋状にしたものであって、螺旋状の径は太いものであり、その長さはバルブ部の高さの約7分の3である。(形状A5とB5)
〔相違点7〕ピンにつき、引用意匠は、中央やや上に段差を設けたものであるのに対して、本願意匠は、段差を設けていないものである。(形状A7とB7)

4.判断
(1)意匠に係る物品の類否判断
本願意匠に係る物品は「ヒーターランプ」であり、引用意匠に係る物品は「白熱ランプ」であって、表記は異なるが、共に電気抵抗のあるフィラメントに電気を流すことで、発熱・発光させる点で共通性があることから、意匠に係る物品は共通するものと認められる。

(2)両意匠における形状の評価
ア.共通点について
共通点1は、この種物品の基本的な構成であるから、両意匠の類否判断に与える影響は小さい。
共通点2は、この種物品分野において、様々な比率のものが存在することからすると若干の共通感が生じており、両意匠の類否判断に与える影響は限定的ではあるが、認められる。
共通点3は、この種物品分野において、様々な形状のものが存在することからすると共通性が認められるが、この形状は、本願の出願前に存在しているから、両意匠のみの特徴とはいえず、両意匠の類否判断に与える影響は限定的である。
共通点4は、大まかに捉えた形状における共通点であり、この程度においては、この物品分野においてありふれた形状であり、また、具体的には、相違点2ないし6の相違が含まれているから、両意匠の類否判断に与える影響は小さい。
共通点5については、同様の溝であって浅いものは、本願の出願前に存在するが、深い溝は両意匠のみの特徴であって、ベース部のみを観察した場合は強い共通感を認められるが、この種物品の意匠的要部はバルブ部であるから、全体観察においては、両意匠の類否判断に与える影響は限定的である。
共通点6は、この種物品における意匠の要部とは認められず、両意匠の類否判断に与える影響は小さい。

イ.相違点について
相違点1については、目に付きやすい位置における相違といえるが、極小部の相違であるから、両意匠の類否判断に与える影響は小さい。
相違点4ないし6については、この種物品の使用目的を達するための、性能を決する物品の要における形状及び構成の相違であり、この種物品の需要者が特に注目する部分の形状の相違といえ、両意匠の類否判断に与える影響は大きい。
相違点2及び3については、相違点4ないし6を達成するための形状に関する相違であるが、相違点4ないし6ほどは注目する部分とはいえないから、両意匠の類否判断に与える影響は限定的である。
相違点7については、各種物品の、電気的接続部となるピンの形状としては、本願意匠の形状も引用意匠の形状もありふれた形状であって、かつ、端部における局部の相違であるから、両意匠の類否判断に与える影響は小さい。

(3)両意匠における形状の類否判断
以上のとおり、共通点は、両意匠の類否判断に与える影響が、大きいといえるものは無く、この共通点によっては、両意匠の類否判断を決するものといえないのに対して、相違点4ないし6によって、需要者に別異の印象を起こさせるものであるから、両意匠の類否判断を決するものといえる。
そうすると、本願意匠の形状と引用意匠の形状は、類似するとは認められない。

(4)両意匠における類否判断
よって、両意匠は、意匠に係る物品は共通するが、上記のとおり本願意匠と引用意匠の形状は類似するものではないから、本願意匠と引用意匠は類似するとはいえない。

5.結び
したがって、本願意匠は、引用意匠に類似せず、原査定の引用意匠をもって、本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできず、本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また、当審が更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。

別掲



審決日 2022-10-12 
出願番号 2021014101 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (H1)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 刈間 宏信
特許庁審判官 正田 毅
橘 崇生
登録日 2022-11-04 
登録番号 1729714 
代理人 特許業務法人 ユニアス国際特許事務所 

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