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審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 L3
管理番号 1392123 
総通号数 12 
発行国 JP 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2022-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2022-03-07 
確定日 2022-10-28 
意匠に係る物品 複合建築物 
事件の表示 意願2020− 17394「複合建築物」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
本願は、意匠法第4条第2項の規定の適用を受けようとする、令和2年(2020年)8月20日の意匠登録出願であって、その主な手続の経緯は以下のとおりである。
令和3年 3月26日付け 拒絶理由の通知
同年 5月12日 意見書の提出
同年12月14日付け 拒絶査定
令和4年 3月 7日 拒絶査定不服審判の請求
同年 8月 4日付け 審尋
同年 9月 1日 回答書及び手続補正書の提出

第2 本願意匠
本願は、建築物の部分について意匠登録を受けようとする意匠登録出願であり、本願意匠の意匠に係る建築物は、本願の願書の記載によれば「複合建築物」であり、本願意匠の形状等(形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合)は願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりである。

第3 原査定における拒絶の理由
原査定における拒絶の理由は、本願意匠が、その意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られ、頒布された刊行物に記載され、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった形状等(形状、模様若しくは色彩若しくはこれらの結合)又は画像に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められまるので、意匠法第3条第2項の規定に該当するとしたものであって、具体的には、以下のとおりである。
「本願意匠は、複合建築物に係るものであり、正面視右方の4枚横並びに連続した横長方形状の窓のうちの左方2面を意匠登録を受けようとする部分としたもので、当該窓部表面には、任意に透明度を変化させられる調光シートが貼付されていますが、建築物の分野では、正面側に複数枚横並びに連続した横長方形状の窓を設けた建築物が本願出願前より公然知られており(意匠1)、窓ガラスの表面に調光シートを貼付する手法が本願出願前よりすでに行われています(意匠2、意匠3)。当業者であれば、当該手法を用いて、必要に応じて調光シートを建築物の窓部に貼付することが、特段困難とは言えませんので、本願意匠の意匠登録を受けようとする部分は、意匠1の横並びに連続した横長方形状の窓部の表面に調光シートを貼付したものに過ぎず、当業者にとって容易に創作できたものと認められます。
(中略)

意匠1
特許庁総合情報館が1996年 9月 3日に受け入れた
アメリカ意匠公報:オフィシャルガゼット 1996年 6月18日3号
第2417頁所載
建築物の意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HH09055132号)
のうち、横方向に並列した横長方形状の窓部のうちの連続した2つの窓

意匠2
特許庁発行の公開特許公報記載
特開2018−151417
図1乃至図3に表された引き違い窓の意匠

意匠2(当審注:「意匠3」の誤記である。)
特許庁発行の意匠公報記載
意匠登録第1642157号の意匠」

第4 請求人の主張と審尋への回答
1 審判請求書における主張
請求人は、審判請求書において、以下の主張をした。
(1)各窓に面したカウンターに関連して
各窓によって任意に透過率を調整することができるため、各窓に面したカウンター等を利用する各使用者がそれぞれ所望の透過率を選択することができる。(調光シートの透過率が変化した状態の一例を示す参考図3参照)
例えば、所定の窓部に面したカウンターで道路を眺めながらくつろぎたい場合は、当該窓部の調光シートを眩しくない程度の透過率に少し下げることができる。もしカウンター等で飲食する際に、通行人の目線が気になるような場合は、当該窓部の調光シートの透過率を0%として不透明にし、外から見えないようにすることもできる。
また、一般に、カウンターの使用者は、他の使用者とは少し距離をとって単独で使用することが多く、使用者毎にその目的が異なることが想定される。
このため、本願意匠においては、透明状態から不透明状態まで任意に透明度を調整することができる調光シートを各窓に貼付し、各窓で任意に調光可能となるようにしたのである。
(2)配線部との関係について
調光窓の場合、一般的な窓とは異なり、給電部および配線部が必須となるため、意匠の創作にあたっては、これらの位置や形状にも配慮する必要がある。
本願意匠の配線部は、各窓の側面に細長く形成することで配線部を目立ちにくくし、窓の連続性や解放感をできる限り阻害しないように工夫されている。
本願意匠においては、透明部を示す参考正面図に示すとおり、調光シートが貼付されている大きな窓部は横方向に連続すると共にその上下にも窓部を備えており、間には細い桟しか表れていない。
すなわち、配線部は各窓の桟に沿って細長く配置される以外に配置場所がなく、当業者であれば当然に、細長い配線部が形成されることが理解できるといえる。

2 審尋と回答
(1)審尋
審判合議体は、上記1の請求人の主張を踏まえて、以下の点について審尋を行った。
ア 本願部分とその周辺の部分の垂直方向の立体形状については、願書添付図面の限りでは十分明確に特定して認識することができない。特に、窓部を支える横桟や、窓部に面したカウンターがどのように窓部に接合しているかが不明である。
イ 調光シートは、窓部の縁に若干の余地部(隙間)を設けて貼付されており、この余地部を設けることの技術的な意味(例:電気伝導体である桟から離す)、又は施工上の効果(例:窓部への貼付のし易さ)などが不明である。
(2)回答
これに対して、請求人は、回答書を提出して以下のとおり回答し、併せて垂直方向の端面図を追加する補正を行った。
ア この意匠登録出願について意匠登録を受けようとする部分とその周辺の部分の垂直方向の立体形状を明確にするため、本回答書と同日付で手続補正書を提出した。
具体的には、「a−a’,b−b’部分拡大図」にC−C端面指示線およびD−D端面指示線を追加すると共に、「a−a’,b−b’,c−c’部分におけるC−C拡大端面図」および「a−a’,b−b’,c−c’部分におけるD−D拡大端面図」を追加した。かかる補正は、出願時の願書および図面から直接的に導き出せる意匠の要旨を変更しない範囲の補正である。
イ a−a’,b−b’部分拡大図に示す通り、調光シートの左端部は窓の縦桟に接触し、上端、下端、右端部には、窓桟との間に若干の余地部(以下の赤色部分)が設けられている。
調光シートは通電によって光の透過率を変化させるものであるから、電気を調光シートへ供給するための配線(電線)が必要である。
本願意匠の配線部は、各窓の縦桟部に細長く形成されている。各窓の調光シートは、縦桟部に配置された電線から電気の供給を受けるため、左端部は縦桟部に接触して貼付されている。
余地部の技術的な意味の1つとして、窓桟は一般的にアルミニウムなどの金属により構成されており電気伝導体である場合が多いので、電気の供給を受ける左端部以外は余地部を設けることにより、調光シートから窓桟に電気が流れることがないように安全性を確保していることが挙げられる。
余地部の施工上の効果の1つとして、建築物の窓ガラス一面にくまなく水分を吹き付けた後に調光フィルムを貼付する水貼りの最終工程において、窓ガラスと調光フィルム間に残存する余剰水分と気泡の逃げ道を確保するため余地部が設けられていることが挙げられる。

第5 当審の判断
以下において、本願意匠の意匠法第3条第2項の該当性、すなわち、本願意匠が当業者であれば容易に創作することができたか否かについて検討し、判断する。
1 本願意匠の認定
当審では、本願意匠について、以下のとおり認定する(別紙第1参照)。
(1)意匠に係る建築物
本願意匠の意匠に係る建築物(以下「本願建築物」という。)は「複合建築物」であり、願書の「意匠に係る物品の説明」には、以下のとおり記載されている。
「この建築物は複合建築物であって、店舗やオフィス等に使用されるものである。本願意匠において意匠登録を受けようとする部分は店舗の窓部の一部である。当該店舗とは、例えばコンビニエンスストア等であって、各部の名称を示す参考A−A拡大断面図に示すように、調光シートが貼付された透明な窓部を有している。調光シートの透過率が変化した状態の一例を示す各参考図として一例を示すように、各調光シートは、通電によって光の透過率を変化させ、透明状態から不透明状態まで任意に透明度を調整することができる。このため、窓部に面したカウンター等で飲食する際に、外から見えないよう不透明にする等の使用方法が可能である。」
また、願書の「意匠の説明」には、以下のとおり記載されている。
「左側面図は右側面図と対称に表れるため、省略する。意匠登録を受けようとする部分を実線で、それ以外の部分を破線で表している。一点鎖線は意匠登録を受けようとする部分とそれ以外の部分との境界のみを表すものである。透明部を示す参考正面図において、薄墨を付した部分(窓部)は透明である。調光シートの透過率が変化した状態の一例を示す各参考図において、調光シートに施された濃淡は透過率の変化を表しており、薄い方が透過率が高く、濃い方が透過率が低いことを示している。」
これらの願書の記載によれば、本願建築物は、店舗やオフィス等に使用されるものであって、透明な窓部に貼付された調光シートの透過率を通電によって変化させ、窓部に面したカウンター等で飲食する人物を外から見えないようにするものである。
(2)本願建築物の部分
本願建築物の部分として意匠登録を受けようとする部分は、実線で表わした部分であって一点鎖線で区画された部分(以下「本願部分」という。)である。
本願部分は、縦桟と横桟に囲われ、左右に並んだ2つの窓部とその中間の縦桟から成り、窓部と縦桟の上端付近は除かれている。
(3)本願部分の用途及び機能
上記(1)の願書の記載によれば、本願部分の用途及び機能は、調光シートの透過率を変化させて、飲食する人物を外から見えないようにすることである。
(4)本願部分の位置、大きさ及び範囲
本願部分は、略直方体状の本願建築物の正面部右下の窓において、3つの縦桟で区画された水平方向4つの区画のうち、左側の2つの区画であって、かつ2つの横桟に囲まれた中間に位置している。また、正面から見て、本願部分の横幅は、本願意匠の横幅の約1/4.6の大きさ及び範囲を占めている。
(5)本願部分の形状等
本願部分は、正面視縦横比が約1:3であって、中央に細幅の縦桟が配されて、左右に同形同大の窓部が上下の横桟(破線であり本願部分を構成しない)と外側の縦桟(破線であり本願部分を構成しない)に接して配されている。窓部(縦横比は約2:3)は透明であり、窓部の内側表面には調光シートが添付されて、窓部の外側(正面側)からその調光シートの縁が透けて見えている。正面から見て、調光シートの左端は左側の縦桟に接しており、右側の縦桟及び下側の横桟と調光シートとの間には、若干の余地部がある。また、窓部の内側から見ると、調光シートの下端は、カウンター(破線であり本願部分を構成しない)に隠れている。

2 引用意匠の認定
原査定における拒絶の理由で引用された意匠について、以下のとおり認定する。なお、引用された意匠の出典や公知日などについては、前記第3のとおりであり、形状等については、主として本願部分に対応する部分の形状等を認定する。
(1)意匠1(別紙第2参照)
ア 意匠1の意匠に係る建築物
前記第3に摘示されたアメリカ意匠公報によれば、「BUILDING」との記載があり、背面にも入り口ドアがあるので、意匠1は、恐らく店舗などの建築物についての意匠であると認められる。
イ 意匠1の形状等
全体が、横長の略直方体状であって、正面(FIG.2)から見て、中央左側に両開きの入り口部が設けられ、その左側に略正方形状の窓部が3つ連なって配されて、右側にもそれと同形同大の窓部が5つ連なって配されている。窓部の高さは、建物全体(破線部を除く。以下同様。)の高さの約1/3であり、全ての窓部は建物全体の上下方向中央に位置している。入り口部と窓部との間には、窓部の幅の1/2程度の余地部が設けられ、窓部の上端の位置は、入り口部の上端の位置と同じである。窓部、入り口部、右側の窓部の上端から上には、6つの庇部が水平に連なって設けられており、左端及び右端の庇部の側面視形状は略扇状である。背面の右端寄りに、片開きの入り口ドアが設けられている。
(2)意匠2(別紙第3参照)
ア 意匠2の意匠に係る物品
前記第3に摘示された公開特許公報によれば、図1には「引き違い窓(10)が、図2には内側調光部(11)が、図3には内側フィルム(11b)が、それぞれ表されている。【0039】の記載によれば、内側フィルムを構成する調光層(21)は、電圧の大きさに応じて光透過率が変わる特性を有している。
イ 意匠2の形状等
引き違い窓は、略横長ロ字状の窓枠(13)に嵌め合わされた内側調光部と外側調光部(12)から成り、この2つの調光部は左右に摺動して引き違い窓を構成している。内側調光部は、略縦長ロ字状のサッシ枠内に嵌まったガラスの上に内側フィルムを貼ったものである。
(3)意匠3(別紙第4参照)
ア 意匠3の意匠に係る物品
意匠3の意匠に係る物品は「調光パネル」であり、前記第3に摘示された意匠公報によれば、窓ガラスの上に接着して、電気的に任意の透過率に調整して、当該窓ガラスに調光機能を付加するものである。
イ 意匠3の形状等
破線部を含む意匠3の形状等については、略縦長ロ字状のフレーム内に薄い調光フィルムが嵌まっており、フレームは、正面から見て、上と左右の幅が狭く、下の幅がそれらの約8倍になっている。

3 本願意匠の創作非容易性について
本願意匠が意匠法第3条第2項の規定に該当するか否か、すなわち、当業者であれば容易に本願意匠の創作をすることができたか否かについて検討する。
本願の出願前に、調光フィルムを窓ガラスに設けて、窓ガラスを任意の透過率に変化させることは、意匠2及び意匠3に見られるとおり、日本国内又は外国において公然知られ、頒布された刊行物に記載され、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となっている。
しかしながら、本願部分の形状等に見られるような、正面から見て調光シートの左端が左側の縦桟に接し、右側の縦桟及び下側の横桟と調光シートとの間に若干の余地部があり、窓部の内側から見て調光シートの下端が隠れている形状等は、意匠1ないし意匠2には表されていない。
また、本願部分に相当する部分が、建築物の正面部右下にあり、2つの横桟に囲まれた中間に位置している建築物が、本願の出願前に公然知られ、頒布された刊行物に記載され、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となっているかについては明らかではない。
したがって、原査定における拒絶の理由で引用された意匠に基づいて、当業者が容易に本願意匠の創作をすることができたということはできない。

第6 むすび
以上のとおりであって、本願意匠は、出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られ、頒布された刊行物に記載され、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった形状等又は画像に基づいて容易に創作をすることができたとはいえないものであるから、原査定の拒絶の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
別掲








審決日 2022-10-12 
出願番号 2020017394 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (L3)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 内藤 弘樹
特許庁審判官 小林 裕和
江塚 尚弘
登録日 2022-11-28 
登録番号 1731388 
代理人 恩田 博宣 
代理人 恩田 誠 
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