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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 C1
管理番号 1392128 
総通号数 12 
発行国 JP 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2022-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2022-06-28 
確定日 2022-11-11 
意匠に係る物品 一組の運輸機器セット 
事件の表示 意願2021− 7794「一組の運輸機器セット」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 事案の概要

1 手続の経緯
本願は、意匠法第4条第2項の規定の適用を受けようとする、令和3年(2021年)4月14日の意匠登録出願であって、その後の主な手続の経緯は、以下のとおりである。
令和3年(2021年) 7月20日 :早期審査に関する事情説明書の提出
同 年 7月20日付け:早期審査に関する報告書
同 年 9月27日付け:拒絶理由通知の送付
同 年 10月27日 :意見書の提出
令和4年(2022年) 3月31日付け:拒絶査定
同 年 6月28日 :審判請求書の提出
同 年 7月28日 :早期審理に関する事情説明書の提出
同 年 8月10日付け:早期審理に関する報告書

2 本願意匠の願書及び添付図面の記載
本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は、意匠に係る物品を「一組の運輸機器セット」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状、模様又は色彩の結合」を「形状等」という。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである(別紙第1参照)。

3 原査定の拒絶の理由及び引用意匠
原査定の拒絶の理由は、本願意匠が、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠に類似するものであるから、意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当する、というものである。
拒絶理由通知において引用された意匠(以下「引用意匠」という。)は、日本国特許庁発行の意匠公報(公報発行日:令和2年2月3日)に記載された、意匠登録第1652307号(意匠に係る物品、一組の自動車用フロアマット)の内、運転席用フロアマット、センター用フロアマット及び助手席用フロアマットで構成される一組の運輸機器(自動車用フロアマット)セットの意匠である(別紙第2参照)。

第2 当審の判断

1 本願意匠と引用意匠の対比
(1)意匠に係る物品の対比
本願意匠の意匠に係る物品は、「一組の運輸機器セット」であり、引用意匠の意匠に係る物品は、「一組の自動車用フロアマット」であって、その記載は異なるが、いずれも自動車の運転席の足元、助手席の足元、及び運転席と助手席の間のセンターの部分に敷設される自動車用フロアマットのセットからなる「一組の運輸機器セット」であるから、本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、その用途及び機能が一致するものである。

(2)形状等の対比
両意匠の形状等を対比する(以下、対比のため、引用意匠も本願意匠の図面の図の表示及び向きに合わせることとする。)と、その形状等には、主として以下の共通点及び相違点が認められる。

ア 形状等の共通点
(ア)組物の意匠全体について
(共通点1−1)両意匠は、全体の構成を、運転席の足元に敷くフロアマット(以下「運転席用マット」という。)、助手席の足元に敷くフロアマット(以下「助手席用マット」という)、及び運転席と助手席の間のセンター部分に敷くマット(以下「センター用マット」という。)の3種類のフロアマットからなる構成とした点が共通する。
(共通点1−2)両意匠は、全てのフロアマットの外周部分に、細幅な縁取りを、全周に亘って形成した点が共通する。
(イ)運転席用マットについて
(共通点2−1)両意匠は、運転席用マットの形状等を、略矩形板状体の底面部分(以下「底面板」という。)の右辺部分を除く周囲に、垂直若しくは傾斜面からなる壁面部分(以下「壁面部」という。)を形成し、全体を略トレイ状に形成した点が共通する。
(共通点2−2)両意匠は、底面板の具体的な形状等を、平面視において、上辺部略中央部分を略U字状に切り欠き、その略U字状切り欠きの上辺部右側略中央部分に略ハット状の突出部分を形成し、上辺部左側角部を略鈎状に切り欠き、下辺部左側角部を斜めに切り欠き、下辺部右側部分を内側に湾曲するように僅かに切り欠き、右辺部の内側部分に平面視略倒立「し」の字状の断面視略半円状の突条部を1条形成した略変形矩形板状体とした点が共通する。
(共通点2−3)両意匠は、壁面部の具体的な形状等を、底面板の上辺部及び右辺部を除いた外周部分には、外に向かって傾斜する略一定の幅の傾斜面を形成し、底面板の上辺部略U字状の切り欠き部分には、平面視略U字状の垂直な曲面を立設し、その左右には平面視略凸状に表れる傾斜の緩い幅広で高さのある傾斜部分(以下「上辺部凸状傾斜部」という。)を形成し、底面板の上辺部左側角部の略鈎状の切り欠き部分には、右側面側を略直角台形状の僅かな傾斜面とし、正面側を略長方形状の急な傾斜面とした高さのある角面を立設した点が共通する。
(共通点2−4)底面板の中央やや右側部分に、その平面視を、左上部分を直角台形状に切り欠いた略変形六角形状とし、その表面部分に縦筋模様を9条形成したヒールパットを配設し、底面板の左下部分に、マット固定用の円孔部を、間隔をあけて斜めの配置で2つ形成した点が共通する。
(ウ)助手席用マットについて
(共通点3−1)両意匠は、助手席用マットの形状等を、略矩形板状体の底面板部の左辺部分を除く周囲に、垂直若しくは傾斜面からなる壁面部を形成し、全体を略トレイ状に形成した点が共通する。
(共通点3−2)底面板の具体的な形状等を、上辺部左側角を斜めに切り欠き、上辺部右側角を斜めの波線からなる略等脚台形状に切り欠き、下辺部右側部分を斜めに切り欠き、下辺部を略波状に形成し、左辺部の内側部分に平面視略倒立J字状の断面視略半円状の突条部を1条形成した略変形矩形板状体とした点が共通する。
(共通点3−3)両意匠は、壁面部の具体的な形状等を、底面板の左辺部を除いた外周部分に、外に向かって傾斜する略一定の幅の傾斜面を形成したものであって、底面板の上辺部左側角部の略等脚台形状の切り欠き部分に形成された壁面部分のみ略垂直面とした点が共通する。
(エ)センター用マットについて
(共通点4)両意匠は、センター用マットの形状等を、平面視を下方部分が拡がる略変形凸状板状体とし、その左右端部を底面側に僅かに湾曲した形状等とした点が共通する。

イ 形状等の相違点
(相違点1)本願意匠の運転席用マットの壁面部は、高く立設し、全体が深皿の略トレイ状としているのに対し、引用意匠の運転席用マットの壁面部は低く立設し、全体が浅いトレイ状としている点で、両意匠は相違する。
(相違点2)本願意匠の運転席用マットにおける左右の上辺部凸状傾斜部の形状等は、突出部分の角部が角張って形成され、側面視において、傾斜面の上端部分が上方に向かって湾曲し、その先端部分が略垂直な傾斜になるように形成しているのに対し、引用意匠の左右の上辺部凸状傾斜部の形状等は、突出部分の角部が平面視丸みを帯びており、側面視において、ほぼ一定の傾斜で傾斜面を形成している点で、両意匠は相違する。
(相違点3)本願意匠の助手席用マットの壁面部は、高く立設し、全体が深皿の略トレイ状としているのに対し、引用意匠の助手席用マットの壁面部は、低く立設し、全体が浅いトレイ状としている点で、両意匠は相違する。
(相違点4)本願意匠の助手席用マットの壁面部上辺側部分の形状等は、側面視において、先端部分が略垂直な傾斜面になるように形成しているのに対し、引用意匠の助手席用マットの壁面部上辺側部分の形状等は、側面視において、ほぼ一定の傾斜で傾斜面を形成している点で、両意匠は相違する。
(相違点5)本願意匠のセンター用マットの平面視の形状等は、その上辺部中央やや右側部分に平面視略U字状の切り欠きを形成し、その上辺部左側部分を右下がりの略円弧状に切り欠き、その上辺部右側部分を尖塔状になるように切り欠いた形状からなる略変形縦長長方形板状体の左右辺部下端部分に、略直角三角形状の突出部分を形成した形状等としているのに対し、引用意匠のセンター用マットの平面視の形状等は、その上辺部右側部分に角部を隅丸とした平面視略レの字状の切り欠きを形成し、下辺部の左右端部分を斜めに切り欠いた形状からなる略変形横長長方形板状体の左右辺部下端部分に、略正三角形状の突出部分を形成した形状等としている点で、両意匠は相違する。
(相違点6)本願意匠のセンター用マットの正面視若しくは背面視の形状等は、底面側に僅かに湾曲した左右端部を除いた板状体部分を平坦に形成しているのに対し、引用意匠のセンター用マットの正面視若しくは背面視の形状等は、使用時には平坦状となるものの、底面側に僅かに湾曲した左右端部を除いた板状体部分の中央部分を底面側に凹ませて、板全体が略波状にうねって形成している点で、両意匠は相違する。

2 両意匠の類否判断
(1)意匠に係る物品についての判断
両意匠の意匠に係る物品は、一致するから同一のものである。

(2)形状等についての判断
両意匠の意匠に係る物品は、自動車のフロアパネルに敷いて使用されるフロアマットであって、使用時(乗車時)にフロアマットがずれたり捲れたりしないように、その自動車の床の形状に合わせて形成されるものであるから、この物品を購入する一般消費者である需要者は、フロアパネルの形状に合わせて加工された細かな部分の形状等を注視して観察することとなる。
したがって、両意匠の類否判断にあたっては、需要者が注視して観察するフロアパネルと接触する底面板や壁面部の具体的な形状等が、需要者の注意を惹く部分であるとの前提に基づいて、両意匠の共通点及び相違点が類否判断に及ぼす影響について、以下評価することとする。

ア 共通点の評価
(共通点1−1)の全体の構成、及び(共通点1−2)の全てのフロアマットの外周部分の形状等については、この種物品にごく普通に見られる組合せや形状等であって、両意匠のみに認められる格別の特徴とはいえないから、この(共通点1−1)及び(共通点1−2)が意匠全体の美感に与える影響は小さい。
(共通点2−1)の運転席用マットの形状等、(共通点2−2)の底面板の具体的な形状等、(共通点2−3)の壁面部の具体的な形状等、及び(共通点2−4)のヒールパット及び円孔部の形状等及び配置態様については、底面板の形状等を、上辺部略中央部分を略U字状に切り欠き、その略U字状切り欠きの上辺部右側略中央部分に略ハット状の突出部分を形成し、上辺部左側角部を略鈎状に切り欠き、下辺部左側角部を斜めに切り欠き、下辺部右側部分を内側に湾曲するように僅かに切り欠き、右辺部の内側部分に平面視略倒立「し」の字状の断面視略半円状の突条部を1条形成し、その中央やや右側部分に、その表面部分に縦筋模様を9条形成した略変形六角形状ヒールパット及びマット固定用の円孔部を、間隔をあけて斜めの配置で2つ形成したものとし、壁面部の形状等を、底面板の上辺部及び右辺部を除いた外周部分には、外に向かって傾斜する略一定の幅の傾斜面を形成し、底面板の上辺部略U字状の切り欠き部分には、平面視略U字状の垂直な曲面を立設し、その左右に上辺部凸状傾斜部を形成し、底面板の上辺部左側角部の略鈎状切り欠き部分には、右側面側を略直角台形状の僅かな傾斜面とし、正面側を略長方形状の急な傾斜面とした高さのある角面を立設し、全体を略トレイ状としたものは、以下の参考意匠に示すように本願意匠の出願前に既に見られるものであるから、これらの形状等からなる運転席用マットの形状等は、両意匠のみに認められる格別の特徴とはいえず、この(共通点2−1)ないし(共通点2−4)が意匠全体の美感に与える影響は小さい。
(共通点3−1)の助手席用マットの形状等、(共通点3−2)の底面板の具体的な形状等、(共通点3−3)の壁面部の具体的な形状等については、上辺部左側角を斜めに切り欠き、上辺部右側角を斜めの波線からなる略等脚台形状に切り欠き、下辺部右側部分を斜めに切り欠き、下辺部を略波状に形成し、左辺部の内側部分に平面視略倒立J字状の断面視略半円状の突条部を1条形成し、壁面部の形状等を、底面板の左辺部を除いた外周部分に、外に向かって傾斜する略一定の幅の傾斜面を形成し、上辺部左側角部の略等脚台形状の切り欠き部分に形成された壁面部分のみ略垂直面とし、全体を略トレイ状に形成したものは、上記参考意匠に示すように本願意匠の出願前に既に見られるものであるから、これらの形状等からなる助手席用マットの形状等は、両意匠のみに認められる格別の特徴とはいえず、この(共通点3−1)ないし(共通点3−3)が意匠全体の美感に与える影響は小さい。
(共通点4)のセンター用マットの形状等については、両意匠の平面視の形状等を概括的に捉えた場合の共通点にすぎないものであり、その左右端部を底面側に僅かに湾曲した形状等も、フロアパネル中央部分のトンネル状突条部の形状等に合わせて僅かに湾曲させたものは、この種物品においてごく普通に見られるものであるから、特段の特徴とはいえず、この(共通点4)が意匠全体の美感に与える影響は小さい。

(参考意匠)
米国の非営利団体である「The Internet Archive」が運営する、ウェブアーカイブである「Wayback Machine」により2016年8月7日付けで保存・公開されている、以下のウェブサイトに記載された意匠
・著者の氏名/名称 ユーアイ通商株式会社
・表題 フロアマット
・掲載箇所 UI VEHICLE 3Dラバーマット
・媒体のタイプ [online]
・検索日 [2022年10月5日検索]
・情報の情報源 インターネット
・情報のアドレス インターネット・アーカイブURL
https://web.archive.org/web/20160807144702/http:/www.ui-vehicle.com/html/page29.html
における「一組の自動車用フロアマット」の意匠


イ 相違点の評価
(相違点1)の運転席用マットの壁面部の高さ、及び(相違点2)の上辺部凸状傾斜部の形状等の相違については、本願意匠のものは、壁面部全体が高く形成され、左右の上辺部凸状傾斜部の形状等が、突出部分の角部が角張り、側面視において、傾斜面の上端部分が上方に向かって湾曲し、その先端部分を略垂直な傾斜となるように形成した全体が深い略トレイ状のものであって、車体のフロアパネルの窪んだ部分の形状にしっかり嵌まり込んで固定されるものとの印象を与えるのに対し、引用意匠のものは、全体が浅い略トレイ状のものであって、フロアパネルの窪んだ部分にずれないように敷設できるものとの印象を与えるから、需要者に別異の美感を起こさせる(相違点1)及び(相違点2)が意匠全体の美感に与える影響は大きい。
(相違点3)の助手席用マット壁面部の高さ、及び(相違点4)の壁面部上辺側部分の形状等の相違については、本願意匠のものは、壁面部全体が高く形成され、壁面部の上辺側傾斜面の上端部分に略垂直な傾斜面部分が形成された全体が深い略トレイ状のものであって、車体のフロアパネルの窪んだ部分の形状にしっかり嵌まり込んで固定されるものとの印象を与えるのに対し、引用意匠のものは、全体が浅い略トレイ状のものであって、フロアパネルの窪んだ部分にずれないように敷設できるものとの印象を与えるから、需要者に別異の美感を起こさせる(相違点3)及び(相違点4)が意匠全体の美感に与える影響は大きい。
(相違点5)のセンター用マットの平面視の形状等、及び(相違点6)のセンター用マットの正面視若しくは背面視の形状等の相違については、本願意匠のセンター用マットの形状等は、車体のセンタークラスターからフロアパネルに続く略柱状部分の形状や、フロアパネル中央部分のトンネル状突条部の形状に合わせて隙間のない形状となるように加工されたものであるとの印象を与えるのに対して、引用意匠のセンター用マットの形状等は、マットの左側上部において、車体の略柱状部分との間に隙間が生じるように加工され、マット自体も波打った形状のものであるとの印象を与えるものであることから、両意匠は需要者に別異の印象を与えることとなるため、この(相違点5)及び(相違点6)が意匠全体の美感に与える影響は大きい。

ウ 形状等の類否判断
両意匠の形状等における各共通点及び相違点についての個別評価に基づき、全ての共通点及び相違点を総合的に観察した場合、両意匠は、需要者が注視して観察する運転席用マット及び助手席マットの壁面部の具体的な形状等や、センター用マットの具体的な形状等の相違が、意匠全体の美感に与える影響が大きいのに対し、両意匠の全体の構成や本願意匠の出願前に既に見られる各マットの形状等の共通性が両意匠の類否判断に与える影響は小さく、上記の相違点によって両意匠は需要者に異なる美感を起こさせるものといえるから、両意匠を全体として観察した場合には、両意匠の形状等は類似しないものである。

(3) 小括
以上のとおり、両意匠は、意匠に係る物品が同一のものであるが、その形状等において類似しないから、本願意匠と引用意匠が類似するということはできない。

第3 むすび

上記のとおりであって、本願意匠は、引用意匠に類似せず、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないものである。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。

別掲









審決日 2022-10-26 
出願番号 2021007794 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (C1)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 渡邉 久美
江塚 尚弘
登録日 2022-12-02 
登録番号 1731936 
代理人 永田 元昭 

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