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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 G2
管理番号 1393154 
総通号数 13 
発行国 JP 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2023-01-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2022-03-23 
確定日 2022-12-13 
意匠に係る物品 自動車用フロントオーバーフェンダー 
事件の表示 意願2021−9447「自動車用フロントオーバーフェンダー」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の主な経緯
本願は、意匠法第4条第2項の規定の適用を受けようとする、令和3年(2021年)5月6日の意匠登録出願であって、その後の手続の主な経緯は以下のとおりである。

令和 3年 5月17日 :新規性の喪失の例外証明書提出書の提出
9月 8日付け :拒絶理由の通知
9月21日 :電話応対
9月29日 :電話応対
10月15日 :手続補正書及び意見書の提出
12月23日付け :拒絶査定
令和 4年 3月23日 :審判請求書の提出
4月19日 :電話応対
10月28日 :電話応対

第2 本願意匠
本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は、願書及び願書に添付した図面によれば、意匠に係る物品を「自動車用フロントオーバーフェンダー」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合を願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである(別紙第1参照)。

第3 原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は、本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するとしたものであって、拒絶の理由に引用された意匠(以下「引用意匠」といい、本願意匠と併せて「両意匠」ともいう。)は、下記のとおりである(別紙第2参照)。

引用意匠
特許庁発行の意匠公報記載
意匠登録第1607874号
(意匠に係る物品、乗用自動車)の意匠中、フロントフェンダーの意匠

第4 当審の判断
1.本願意匠
本願意匠は、上記「第2」の願書の記載及び願書に添付した図面の記載の内容によると、以下のとおりである。

(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は「自動車用フロントオーバーフェンダー」である。

(2)本願意匠の形状
「使用状態を示す参考図」から、「正面図」において右側を「前」、左側を「後」とする。
また、各部の寸法の値は、上底部略中央の縦幅(縁部、張り出し部及び略鉛直面部を合わせた縦長さ)を18とした場合の寸法である。
〔形状A1〕外周側から順に、略鉛直面状態の縁部、張り出しつつ内周側に向かう斜面となっている張り出し部、及び略鉛直面部から成るものである。
〔形状A2〕張り出し部と略鉛直面部は、山折り状態で、稜線が現れる(以下「山折り稜線」ともいう。)。
〔形状A3〕全体の大まかな正面視形状は、等脚台形の下底と右脚の下方を取り除いたような形状であり、オーバーフェンダー外周側外形線、オーバーフェンダー内周側外形線、及び山折り稜線は、脚が僅かに外周側に凸の曲線、上底が本の僅かに外周側に凸の曲線で、上底の両端にある2つの角が丸くなった等脚台形状の、左側脚、上底と僅かな右側脚の部分で構成された形状である。
〔形状A4〕張り出し部における、張り出し幅(右側面図における略鉛直面部から縁部までの横幅のこと。)は約9である。
〔形状A5〕縁部の縦幅は約2、張り出し部の縦幅は約9、略鉛直面部の縦幅は約7である。
〔形状A6〕上底部略中央における内周側外形線から後側脚部下端までの長さは、約50である。
〔形状A7〕上底部略中央における張り出し部の縦断面形状は、車体に取り付けた使用状態において水平から約55度の傾斜の、凸曲線状である。
〔形状A8〕後側脚部の下端は水平である。
〔形状A9〕前側脚部の下端は、略水平であって、先端は前方向に向かって上向き斜めである。
〔形状A10〕張り出し部には、張り出し部の外周側外形線に接するように、おおむね等間隔に、正面視でU字状の段差を7つ設けている。

2.引用意匠
(1)意匠に係る物品
引用意匠の意匠に係る物品は、乗用自動車の右側フロントフェンダーに取り付けられた「自動車用フロントオーバーフェンダー」である。
なお、原審における拒絶理由通知書には「(意匠に係る物品、乗用自動車)の意匠中、フロントフェンダーの意匠」と記載されていたが、当該記載は、「自動車用フロントオーバーフェンダー」の誤記と認める。
この点につき、本件請求人は、引用意匠に係る物品が実質的には「自動車用フロントオーバーフェンダー」であることを理解して、審判請求書にて請求理由を主張しているから、このまま継続して審理するものとする。

(2)引用意匠の形状
公報記載の「左側面図」において右側を「前」、左側を「後」とする。
また、各部の寸法の値は、上記(1)に合わせて、本願意匠の上底部略中央の縦幅を18とした場合の寸法である。
〔形状B1〕外周側から順に、張り出しつつ内周側に向かう斜面となっている張り出し部、及び略鉛直面部から成るものである。
〔形状B2〕張り出し部と略鉛直面部は、山折り状態で、稜線が現れる(以下「山折り稜線」ともいう。)。
〔形状B3〕全体の大まかな正面視形状は、等脚台形の下底と右脚の下方を取り除いたような形状であり、オーバーフェンダー外周側外形線、オーバーフェンダー内周側外形線、及び山折り稜線は、脚が僅かに外周側に凸の曲線、上底が本の僅かに外周側に凸の曲線で、上底の両端にある2つの角が丸くなった等脚台形状の、左側脚、上底と僅かな右側脚の部分で構成された形状である。
〔形状B4〕張り出し部における、張り出し幅(正面図における略鉛直面部からオーバーフェンダー外周外形線までの横幅のこと。)は約12である。
〔形状B5〕張り出し部の縦幅は約11、略鉛直面部の縦幅は約6である。
〔形状B6〕上底部略中央における内周側外形線から後側脚部下端までの長さは、約60である。
〔形状B7〕上底部略中央における張り出し部の縦断面形状は、水平から約50度の傾斜の、ごく僅かな凸曲線状である。
〔形状B8〕後側脚部の下端の形状は、連続するサイドスカートとのパーティングライン(部品と部品の合わせ目)が確認できないため、不明である。
〔形状B9〕前側脚部の下端は、略水平であって、先端は前方向に向かって上向き斜めである。
〔形状B10〕張り出し部に、正面視でU字状の段差を設けていない。

3.両意匠の対比
(1)意匠に係る物品の対比
意匠に係る物品は、両意匠共に「自動車用フロントオーバーフェンダー」である。

(2)両意匠の形状の対比
両意匠の形状を対比すると、以下に示す主な共通点と相違点が認められる。
ア.共通点について
〔共通点1〕外周側から順に、張り出しつつ内周側に向かう斜面となっている張り出し部、及び略鉛直面部から成るものである。(形状A1とB1)
〔共通点2〕張り出し部と略鉛直面部は、山折り状態で、稜線が現れる。(形状A2とB2)
〔共通点3〕全体の大まかな正面視形状は、等脚台形の下底と右脚の下方を取り除いたような形状であり、オーバーフェンダー外周側外形線、オーバーフェンダー内周側外形線、及び山折り稜線は、脚が僅かに外周側に凸の曲線、上底が本の僅かに外周側に凸の曲線で、上底の両端にある2つの角が丸くなった等脚台形状の、左側脚、上底と僅かな右側脚の部分で構成された形状である。(形状A3とB3)
〔共通点4〕前側脚部の下端は、略水平であって、先端は前方向に向かって上向き斜めである。(形状A9とB9)

イ.相違点について
〔相違点1〕張り出し部の外周につき、本願意匠は、縁部があるのに対して、引用意匠には、無い。(形状A1とB1)
〔相違点2〕張り出し部における、張り出し幅につき、本願意匠は、約9であるのに対して、引用意匠は、約12である。(形状A4とB4)
〔相違点3〕各部の寸法につき、本願意匠は、縁部の縦幅は約2、張り出し部の縦幅は約9、略鉛直面部の縦幅は約7であるのに対して、引用意匠は、張り出し部の縦幅は約11、略鉛直面部の縦幅は約6である。(形状A5とB5)
〔相違点4〕上底部略中央における内周側外形線から後側脚部下端までの長さにつき、本願意匠は、約50であるのに対して、引用意匠は、約60である。(形状A6とB6)
〔相違点5〕上底部略中央における張り出し部の縦断面形状につき、本願意匠は、水平から約55度の傾斜の、凸曲線状であるのに対して、引用意匠は、水平から約50度の傾斜の、ごく僅かな凸曲線状である。(形状A7とB7)
〔相違点6〕後側脚部の下端の形状につき、本願意匠は、水平であるのに対して、引用意匠は、不明である。(形状A8とB8)
〔相違点7〕張り出し部の段差につき、本願意匠は、張り出し部の外周側外形線に接するように、おおむね等間隔に、正面視でU字状の段差を設けているのに対して、引用意匠は、段差を設けていない。(形状A10とB10)

4.判断
(1)意匠に係る物品の類否判断
意匠に係る物品は、両意匠共に「自動車用フロントオーバーフェンダー」であるから、一致している。

(2)両意匠における形状の評価
ア.共通点について
共通点1は、自動車用オーバーフェンダーにおいては、略鉛直面部が無いものもあるが、略鉛直面部があるものも多々見られ、両意匠のみの特徴とは認められないから、両意匠の類否判断に与える影響は、小さい。
共通点2は、張り出し部と略鉛直面部を山折り状態ではなく、緩やかな湾曲面でつないだものもあるが、山折り状態で稜線が現れるものも見られることから、両意匠のみの特徴とは認められず、両意匠の類否判断に与える影響は、小さい。
共通点3は、様々な正面視形状のオーバーフェンダーがある中で、両意匠のみの特徴と認められ、強い共通感を生み出しているが、この共通感は、正面視のみのものであって、相違点2、3及び5の相違を内包しているものであるから、両意匠の類否判断に与える影響は、一定程度にとどまるものである。
共通点4は、前側脚部の下端部という端部における共通点であるから、両意匠の類否判断に与える影響は、小さい。

イ.相違点について
本願意匠は、購入した市販車の、車体の全幅を小さくするために既存のノーマルパーツを取り外した上で、取り付けるいわゆる改造パーツであって、相違点2は、本願意匠を購入する需要者の一番の目的を達成させるための相違であるから、この相違は、両意匠の類否判断に与える影響が、大きいといえる。
相違点3は、相違点2によって生じる各部の寸法差であって、その差は僅かであるが、相違点5と相まって、本願意匠を購入する需要者に対する訴求力を高めるものと認められ、需要者にとっては、両意匠に別異の印象を生じさせているといえ、両意匠の類否判断に与える影響は、大きい。
相違点4は、ノーマルパーツである引用意匠は、サイドスカートに届くものであるのに対して、本願意匠は、サイドスカートに届かない長さであるから、僅かな寸法差であっても、本願意匠を購入する需要者にとっては、両意匠に別異の印象を生じさせているといえ、両意匠の類否判断に与える影響は、一定程度認められる。
相違点1及び相違点7について、本願意匠では、縁部と、ビス孔があるように見せている7つのU字状の段差によって、ノーマルパーツを外して、わざわざ改造パーツを後付けしていることを、一見して分からせる演出効果が認められる。
これに対して引用意匠では、正規の乗用自動車全体のデザインコンセプトにのっとって、全体で美感を起こさせるように仕上げた乗用自動車の一部であるフロントオーバーフェンダーとして、シンプルで美しく整った印象を与えるから、別異の印象を生じさせているといえ、両意匠の類否判断に与える影響は、とても大きい。
相違点6は、後側脚部の下端部という端部における相違点であるから、両意匠の類否判断に与える影響は、小さい。

(3)両意匠における形状の類否判断
以上のとおり、共通点は、両意匠の類否判断に与える影響が、一定程度にとどまるものまたは小さいものであり、この共通点によっては、両意匠の類否判断を決するものといえないのに対して、相違点1ないし3、5及び7によって、需要者に別異の印象を起こさせるものであるから、両意匠の類否判断を決するものといえる。
そうすると、本願意匠の形状と引用意匠の形状は、類似するとは認められない。

(4)両意匠における類否判断
よって、両意匠は、意匠に係る物品は一致するが、上記のとおり本願意匠と引用意匠の形状は類似するものではないから、本願意匠と引用意匠は類似するとはいえない。

5.結び
したがって、本願意匠は、引用意匠に類似せず、原査定の引用意匠をもって、本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできず、本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また、当審が更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。

別掲





審決日 2022-12-01 
出願番号 2021009447 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (G2)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 刈間 宏信
特許庁審判官 正田 毅
橘 崇生
登録日 2022-12-22 
登録番号 1733654 
代理人 林 郁夫 

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