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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 D5 |
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管理番号 | 1394038 |
総通号数 | 14 |
発行国 | JP |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2023-02-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2022-05-31 |
確定日 | 2023-01-24 |
意匠に係る物品 | 便器用タンク |
事件の表示 | 意願2021− 15279「便器用タンク」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 令和 3年(2021年) 7月14日 意匠登録出願 令和 3年(2021年)10月29日付け 拒絶理由通知書 令和 3年(2021年)12月10日 意見書提出 令和 4年(2022年) 2月22日付け 拒絶査定 令和 4年(2022年) 5月31日 審判請求書提出 第2 本願意匠 本願は、物品の部分について意匠登録を受けようとする令和3年(2021年)7月14日の意匠登録出願(意願2021−15279)であって、その意匠は、願書及び願書に添付した図面の記載によれば、意匠に係る物品を「便器用タンク」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状等」という。)は、願書及び願書に添付した図面に記載したとおりとしたものであって、「各図面の表面部全面に表された濃淡は、いずれも立体表面の形状を特定するためのものである。赤色で着色を施した部分以外の部分が、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。各断面図において青色で着色された部分は、断面形状を表したものであり、意匠登録を受けようとする部分ではない。」としたものである(以下、本願について意匠登録を受けようとする部分を「本願部分」という。)(別紙第1参照)。 第3 原査定における拒絶の理由及び引用意匠 原査定における拒絶の理由は、本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)に該当するとしたものであって、拒絶の理由に引用した意匠(以下、「引用意匠」といい、本願意匠と合わせて「両意匠」という。)は、 「独立行政法人工業所有権情報・研修館が2018年 3月 2日に受け入れた シャワートイレ シートタイプカタログ 2017 第12頁所載 取付け用便器の本願意匠に相当する部分の意匠 (特許庁意匠課公知資料番号第HC30001396号)」(以下、引用意匠の本願意匠の意匠登録を受けようとする部分に相当する部分を「引用部分」という。)(別紙第2参照)。 第4 対比 両意匠の対比に当たって、本願意匠の図面の向きに引用意匠の図面の向きを合わせて認定する。 1 意匠に係る物品の対比 本願意匠の意匠に係る物品は、「便器用タンク」であるのに対し、引用意匠の意匠に係る物品は、「取付け用便器」であって、意匠に係る物品は、一致しない。 2 本願部分と引用部分の用途及び機能の対比 本願部分と引用部分(以下「両部分」という。)は、共に便器の後方に設けられた便器用タンクの上面の背面寄りの中央に設けられた吐水部の外側面の正面下端の中央に任意に区画された部分であって、その用途及び機能は、いずれも、手洗いボウル部上で便器用タンクに水を供給する吐水部の外側面の正面下端の中央部分であるから、両部分の用途及び機能は、一致する。 3 本願部分と引用部分の位置、大きさ及び範囲の対比 両部分の位置は、便器用タンクの上面の背面寄りに取り付けた吐水部の正面下端中央であるから、一致し、大きさは、便器用タンクの上面の吐水部の正面下端中央の部分であるから、おおむね一致するが、範囲は、本願部分は、正面視において全体の約1/600であるのに対し、引用部分は、正面視において全体の約1/1100であるから、一致しない。 4 両部分の形状等の対比 両部分の形状等を対比すると、主として、以下の共通点と差異点が認められる。 (1)共通点 基本的構成態様として、 (A)吐水部の正面視、下端中央の区画された外側面である点が共通し、 具体的構成態様として、 (B)縦方向に緩やかに湾曲した凹曲面である点が共通する。 (2)相違点 具体的構成態様として、 (a)本願部分は、A−A断面図視で、上方が背面方向に向けて鉛直方向から約13度傾斜して形成されているのに対し、引用部分は斜め上から図版に現されたものであって、その傾きは不明である点、 (b)本願部分は、横方向で、僅かに正面方向に湾曲した曲面であるのに対し、引用部分の横方向の面の態様は、不明である点が相違する。 第5 類否判断 以上の一致点、共通点及び相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価・総合して、両意匠の類否を意匠全体として検討し、判断する。 1 意匠に係る物品 前記、第4の1のとおり、両意匠の意匠に係る物品は、一致しないから相違するが、引用部分は、本願部分と同様、便器後方に取り付けたタンクの上面に形成される吐水部の外側面の正面下端の中央部分であるから、この相違は、両意匠の類否判断にほとんど影響を与えない。 2 用途及び機能 両部分は、いずれも、手洗いボウル部上で便器用タンクに水を供給する吐水部の外側面の正面下端の中央部分であって、両部分の用途及び機能は、一致するから同一である。 3 位置、大きさ及び範囲の評価 両部分は、位置及び大きさが一致し、範囲が相違するが、占める範囲の相違は、意匠に係る物品が完成品であるか、部品であるかの点に起因し、両部分は、便器後方に取り付けたタンクの上面に形成される吐水部の外側面の正面下端の中央部分である点は同様であって、吐水部に占める範囲としては、大差がなく、この点が両意匠の類否判断に与える影響は小さいものである。 4 両部分の形状等の評価 (1)形状等の共通点の評価 基本的構成態様としてあげた共通点(A)は、概括的共通点にとどまり、共通点(B)は、「取付け用便器」及び「便器用タンク」の物品分野において、吐水部の下端中央周辺が、縦方向に緩やかに湾曲した凹曲面であるものは、格段珍しいものではなく、この点が両部分の類否判断に与える影響は小さいものである。 したがって、共通点(A)及び(B)の両部分の類否判断に及ぼす影響は、総じて小さく、共通点全体であいまっても、両部分の類否判断を決定付けるとはいえないものである。 (2)形状等の相違点の評価 これに対して、相違点(a)及び相違点(b)は、吐水部の下端中央の外側面の具体的態様に関わる相違点であって、吐水部の下端は、需要者が洗面ボウル上で吐水部から水を手に受けて洗う際には、よく目につく部分であって、手洗いの際に吐水部が邪魔にならず、需要者は、手洗いのための空間が十分にあるか否かなどの態様にも注意を払うものであるから、本願部分について、A−A断面図視で、上方が背面方向に向けて鉛直方向から約13度傾斜し、横方向で、僅かに正面方向に湾曲した曲面であるのに対し、引用部分がその傾き及び左右方向の面の態様が不明である点は、類否判断に与える影響は大きく、これらの点が両部分の類否判断に与える影響は大きいものである。 (3)形状等の総合評価 そうすると、相違点(a)及び(b)は相違点の両部分の類否判断に及ぼす影響は、総じて大きいものであるのに対して、形状等の共通点(A)及び(B)は、共通点の両部分の類否判断に与える影響は総じて小さく、相違点が共通点を凌駕し、両部分の類否判断を決定付けるものであるから、両部分は類似しない。 したがって、両意匠の意匠に係る物品は相違するものの、両意匠の類否判断にほとんど影響を与えず、両部分は、その用途及び機能、並びに位置及び大きさが共通し、範囲の相違が両部分の類否判断に与える影響が小さいものだとしても、形状等においては、両部分は類似せず、両部分の類否判断を決定付けるものであるから、本願意匠は引用意匠に類似しない。 第6 むすび 以上のとおりであって、原査定の引用意匠をもって、本願意匠は、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから、原査定の拒絶の理由によって、本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。 また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2023-01-10 |
出願番号 | 2021015279 |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(D5)
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最終処分 | 01 成立 |
特許庁審判長 |
内藤 弘樹 |
特許庁審判官 |
渡邉 久美 江塚 尚弘 |
登録日 | 2023-01-26 |
登録番号 | 1736035 |
代理人 | 芝 哲央 |
代理人 | 瓜本 忠夫 |
代理人 | 星野 寛明 |
代理人 | 岩池 満 |
代理人 | 正林 真之 |