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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 C5 |
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管理番号 | 1394039 |
総通号数 | 14 |
発行国 | JP |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2023-02-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2022-06-17 |
確定日 | 2023-01-24 |
意匠に係る物品 | カップホルダー |
事件の表示 | 意願2021− 2264「カップホルダー」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、令和3年(2021年)2月2日の意匠登録出願であって、その後の主な手続の経緯は、以下のとおりである。 令和 3年(2021年)10月 1日付け 拒絶理由通知 同年 12月 8日 意見書の提出 令和 4年(2022年) 3月14日付け 拒絶査定 同年 6月17日 審判請求書の提出 第2 本願の意匠 本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は、意匠に係る物品を「カップホルダー」とし、その形状等(形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである。(別紙第1参照) 第3 原査定の拒絶の理由及び引用意匠 原査定の拒絶の理由は、本願意匠は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の意匠(以下「引用意匠」という。別紙第2参照。)に類似するものであるから、意匠法3条1項3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)に該当する、というものである。 「本願の意匠と引用意匠は、具体的な表記は異なるものの、いずれも飲料用のカップを把持する目的で用いられるホルダーである点において、意匠に係る物品の用途及び機能が共通します。またその形態についても、凸弧状を呈する頂部の湾曲曲率及び表面模様の有無という部分的な違いはあるものの、全体を逆円錐台形状のコップ(グラス)を人手で握る様を模した輪郭形状の平板とし、その指部にあたる箇所に4つの同大円孔を形成してなる特徴的な形状が顕著に共通しており、意匠全体として需要者に強い共通の視覚的印象を与えるものといえますので、本願の意匠は引用意匠に類似するものと認められます。 引用意匠 米国特許商標公報 2019年 8月 6日 飲み物運搬容器(登録番号US D855406S Drinks carrier)の意匠 (特許庁意匠課公知資料番号第HH31318074号)」 第4 当審の判断 以下、引用意匠を本願意匠の図面の向きに合わせて対比する。また、引用意匠は破線で表現された部分も併せて本願意匠に対応する形状等を認定する。 1 本願意匠及び引用意匠の対比 以下、本願意匠と引用意匠を「両意匠」という。 (1)意匠に係る物品 両意匠は、いずれも、飲料用のカップを保持・運搬する目的で用いられるホルダーであり、意匠に係る物品は、一致する。 (2)両意匠の形状等 両意匠の形状等については、主として、以下の共通点及び相違点がある。 ア 共通点 (ア)基本的構成態様 全体は、略縦長矩形状を基調とした平板で、正面視において、左辺縁部は3つの緩やかな波形の凸部(以下「左辺凸部」という。)、右辺縁部は中央よりやや上部に緩やかな1つの半円形の凸部(以下「右辺凸部」という。)を形成し、同径の4つの円孔(以下「孔部」という。)を配したものである点。 (イ)孔部の構成配置及び比率 孔部は、左辺凸部に近接するように3つの円孔を縦並びに配し、右辺凸部に近接するように1つの円孔を配し、正面視における横幅に対する孔部の径の比率を約4:1としている点。 イ 相違点 (ア)正面視頂部の形状等 本願意匠の頂部がドーム状をなしているのに対し、引用意匠の頂部は略平坦状をなしている点。 (イ)表面に施された模様の有無 本願意匠は、表裏面にカップを手で握る模様が付されており、具体的には、孔部の周縁に指先模様が描かれ、正面視左下部には小指の指先模様が描かれ、各指先の模様には皺に相当する細線が表現され、カップはドーム状の蓋部分を有する略逆円錐台形状に表現されているのに対し、引用意匠には表面及び裏面ともに模様が一切付されていない点。 2 類否判断 (1)意匠に係る物品 両意匠の意匠に係る物品は、ともに、飲料用のカップを保持・運搬するための「カップホルダー」であり、同一である。 (2)両意匠の形状等の共通点及び相違点の評価 両意匠の意匠に係る物品は、飲料用のカップを保持・運搬するための「カップホルダー」であり、需要者は、屋外イベント等の場でカップ状の飲料を購入する者であると想定される。 したがって、まず、需要者が使用時に最も注意を払う、表面全体から受ける視覚的印象について評価し、かつそれ以外の形状等も併せて、各部を総合して意匠全体として評価することとする。 ア 共通点の評価 まず、共通点(ア)について、両意匠に共通する基本的構成態様については、板状に4つの円孔を設けたカップホルダーは例を挙げるまでもなく本願出願前から公知であり、全体の輪郭形状を概括的に捉えた場合における共通性に止まり、両意匠の類否判断に与える影響は小さい。 次に、共通点(イ)について、孔部の構成配置に係る場合の共通性に止まり、板状に本願と同様の構成配置及び比率で4つの円孔を設けたカップホルダーも例を挙げるまでもなく本願出願前から公知であることからも、この共通点が、両意匠の類否判断に与える影響は小さい。 イ 相違点の評価 まず、相違点(ア)について、表面の輪郭形状は通常の使用の状態において見えやすい部分に係る相違であり、本願意匠の頂部がドーム状であるのに対し、引用意匠の頂部は略平坦状をなしている点で相互に明確な相違があると評価せざるを得ず、この相違は両意匠の類否判断に一定程度の影響を与えるものといえる。 相違点(イ)について、表面の態様はカップを保持して使用する際に最も目につく部分であり、本願意匠は表裏面に人の手を模した指先やカップを表現した具象的な模様が広い領域にわたり施されているのに対し、引用意匠は模様が一切付されていない点は、一見して視覚的印象が大きく異なるため、大きな相違と評価せざるを得ず、この相違が両意匠の類否判断に与える影響は非常に大きい。 (3)意匠の形状等の類否判断 両意匠の形状等における共通点及び相違点の評価に基づき、意匠全体として総合的に観察し判断した場合、共通点(ア)ないし(イ)が両意匠の類否判断に与える影響は小さいのに対して、相違点(イ)が両意匠の類否判断に与える影響は大きく、相違点(ア)も両意匠の類否判断に一定程度の影響を与えるものといえる。 したがって、両意匠の形状等を総合的に観察した場合、共通点に比べて、相違点がもたらす影響の方が大きいものであるから、両意匠の形状等は類似しない。 3 小括 以上のとおり、両意匠は、意匠に係る物品は同一であるが、両意匠の形状等においては、共通点が未だ両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対して、相違点が類否判断に与える影響は共通点のそれを凌駕しており、意匠全体として観察した場合、両意匠は、需要者に異なる美感を与えているというべきであるから、本願意匠は、引用意匠に類似するということはできない。 第5 むすび 以上のとおり、原査定の引用意匠をもって、本願意匠は、意匠法3条1項3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから、原査定の拒絶の理由によって、本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。 また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2023-01-06 |
出願番号 | 2021002264 |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(C5)
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最終処分 | 01 成立 |
特許庁審判長 |
小林 裕和 |
特許庁審判官 |
藤澤 崇彦 江塚 尚弘 |
登録日 | 2023-01-30 |
登録番号 | 1736200 |
代理人 | 弁理士法人白浜国際特許商標事務所 |