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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 C1 |
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管理番号 | 1395282 |
総通号数 | 15 |
発行国 | JP |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2023-03-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2022-06-15 |
確定日 | 2023-02-10 |
意匠に係る物品 | 一組の運輸機器セット |
事件の表示 | 意願2021− 7594「一組の運輸機器セット」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 事案の概要 1 手続の経緯 本願は、意匠法第4条第2項の規定の適用を受けようとする、令和3年(2021年)4月12日の意匠登録出願であって、その後の主な手続の経緯は、以下のとおりである。 令和3年(2021年) 7月26日 :早期審査に関する事情説明書 の提出 同 年 7月27日付け:早期審査に関する報告書 同 年 9月27日付け:拒絶理由通知の送付 同 年 11月 8日 :期間延長請求書の提出 令和4年(2022年) 1月 7日 :意見書(1回目)の提出 同 年 1月17日 :意見書(2回目)の提出 同 年 3月15日付け:拒絶査定 同 年 6月15日 :審判請求書の提出 同 年 9月14日付け:審尋 同 年 10月21日 :審尋に対する回答書の提出 同 年 10月21日 :手続補正書(補正対象書類: 図面)の提出 同 年 11月 4日 :上申書の提出 2 本願意匠の願書及び添付図面の記載 本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は、意匠に係る物品を「一組の運輸機器セット」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状、模様又は色彩の結合」を「形状等」という。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである(別紙第1参照)。 3 原査定の拒絶の理由及び引用意匠 原査定の拒絶の理由は、本願意匠が、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠に類似するものであるから、意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当する、というものである。 上記の拒絶理由通知の記載は、以下のとおりであり、引用された意匠(以下「引用意匠」という。)の形状等は、同ウェブページに記載されたとおりとしたものである(別紙第2参照)。 「本願意匠と引用意匠を比較すると、共に複数枚の略平板状体により全体を構成するものであって、平面視における概しての輪郭形状、具体的には、運転席用フロアマットにつき、四隅それぞれが内側へ凹んでいる点や、助手席用フロアマットにつき、左上隅からその右側にかけてと、左上隅から下側にかけてのそれぞれが略「ノ」の字状を呈している点等において共通しており、さらに、運転席用フロアマットにつき、右上隅に横方向に延びる柱状の膨出部を形成した点等の立体形状における特徴も共通しています。これらは意匠の基調を構成するものであって、意匠の類否判断に極めて大きな影響を及ぼすと認められます。 一方、両意匠は、主として運転席側フロアマットの平面視左上部の形状に相違が見受けられますが、これは意匠全体からすると部分的な箇所におけるものであって、前記の共通点による両意匠に共通する美感を変更せしめる程のものであると評価することはできません。 したがって、両意匠は類似するものと認められます。 (引用意匠) 著者の氏名 たまカラ 表題 APIO 3Dトレイマット のパーツレビュー | ジムニー(たまカラ) | みんカラ 掲載箇所 (添付画像参照) 媒体のタイプ [online] 掲載年月日 2021年 2月 6日 検索日 [2021年 9月 9日検索] 情報の情報源 インターネット 情報のアドレス URL:https://minkara.carview.co.JP/userid/262014/car/2911947/10988143/parts.aspx に掲載された写真中上部に位置する、運転席用フロアマット及び助手席用フロアマットからなる一組の運輸機器(自動車用フロアマット)セットの意匠」 第2 当審の判断 1 本願意匠と引用意匠の対比 (1)意匠に係る物品の対比 本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、いずれも「一組の運輸機器セット」であるから一致するものである。 (2)形状等の対比 両意匠の形状等を対比する(以下、対比のため、引用意匠も本願意匠の図面の図の表示及び向きに合わせることとする。)と、その形状等には、主として以下の共通点及び相違点が認められる。 ア 形状等の共通点 (ア)組物の意匠全体について (共通点1−1)両意匠は、全体の構成を、運転席の足元に敷くフロアマット(以下「運転席用フロアマット」という。)及び助手席の足元に敷くフロアマット(以下「助手席用フロアマット」という)の2種類のフロアマットからなる構成とした点が共通する。 (共通点1−2)両意匠は、全てのフロアマットを、一定の厚みからなる板状体で構成している点が共通する。 (イ)運転席用フロアマットについて (共通点2−1)両意匠は、当該フロアマットの形状等を、板状体からなる底面部分(以下「底面板」という。)の周囲に、垂直面若しくは傾斜面からなる壁面部分(以下「壁面部」という。)を形成し、全体を深い略トレイ状に形成した点が共通する。 (共通点2−2)両意匠は、平面視において、底面板の中央やや右側部分の表面部分に、9条の縦筋模様が表れる略隅丸長方形薄板状のヒールパットを1つ配設し、底面板の下方部分に、マット固定用の円孔部を、間隔をあけて2つ形成した点が共通する。 (共通点2−3)両意匠は、平面視において、底面板の、壁面部の右上角部の内側にあたる部分に、略四角錐台状の凸状部を形成した点が共通する。 (共通点2−4)両意匠は、背面側に形成された壁面部を、その他の壁面部より高くなるように形成した点が共通する。 (ウ)助手席用フロアマットについて (共通点3−1)両意匠は、当該フロアマットの形状等を、板状体からなる底面板の周囲に、垂直面若しくは傾斜面からなる壁面部を形成し、全体を深い略トレイ状に形成した点が共通する。 (共通点3−2)両意匠は、平面視における底面板の具体的な形状等を、その上辺左側部分を略ノの字状に切り欠き、右上角部をジグザグ状とし、左辺部分を下半分から僅かに幅が広がる形状とし、右辺部分を僅かに略逆「く」の字状となる略直線状とし、右下角部を大きく斜めに切り欠いた、略変形六角形状の板状体とした点が共通する。 (共通点3−3)両意匠は、壁面部の具体的な形状等を、外に向かって傾斜する傾斜面を、底面板の外周部分に沿って略帯状に形成したものであって、背面側に形成された壁面部をその他の部分より高くなるようにして形成した点が共通する。 イ 形状等の相違点 (相違点1)本願意匠の全てのフロアマットの外周部分には、縁取り部分を形成していないのに対し、引用意匠の全てのフロアマットの外周部分には、別部材からなる一定の細幅の縁取り部分を形成している点で、両意匠は相違する。 (相違点2)本願意匠は、底面板の具体的な形状等を、平面視において上辺部中央部分に幅広な略倒レの字状の突状部分を配し、左下角部分を斜めに切り欠き、右下角部分を略鈎状に切り欠いた、上方に幅広な突状部分を有する略変形板状体としているのに対し、引用意匠は、上方右角部を略鈎状に切りかき、上方左寄りの部分に略台形状の突条部分を配し、左下角部分を斜めに切り欠き、右下角部分を略鈎状に切り欠いた、略変形L字状板状体としている点で、両意匠は相違する。 (相違点3)本願意匠の運転席用フロアマットの左上角部の壁面部の形状等は、底面板の略鈎状の切り欠き部分に沿って、右側面側を略直角台形状の僅かな傾斜面とし、正面側を略長方形状の急な傾斜面とした高さのある角面を立設しているのに対し、引用意匠の運転席用フロアマットの左上角部の壁面部の形状等は、底面板の斜めの切り欠き部分に沿って、略長方形状の僅かな傾斜面を立設している点で、両意匠は相違する。 (相違点4)本願意匠は、運転席用フロアマット及び助手席用フロアマットの底面板の背面側略半分の部分を、側面視において僅かに上方に屈折させて形成しているのに対し、引用意匠の該部位の形状は不明である点で、両意匠は相違する。 2 両意匠の類否判断 (1)意匠に係る物品についての判断 両意匠の意匠に係る物品は、同一である。 (2)形状等についての判断 両意匠の意匠に係る物品は、自動車のフロアパネルに敷いて使用されるフロアマットであって、使用時(乗車時)にフロアマットがずれたり捲れたりしないように、その自動車の床の形状に合わせて形成されるものであるから、この物品を購入する一般消費者である需要者は、フロアパネルの形状に合わせて加工された部分の形状等を注視して観察することとなる。 したがって、両意匠の類否判断にあたっては、需要者が注視して観察するフロアパネルと接触する底面板や壁面部の具体的な形状等が、需要者の注意を惹く部分であるとの前提に基づいて、両意匠の共通点及び相違点が類否判断に及ぼす影響について、以下評価することとする。 ア 共通点の評価 (共通点1−1)の全体の構成、(共通点1−2)のフロアマットを一定の厚みの板状体で構成している点、(共通点2−1)の運転席用フロアマットや(共通点3−1)の助手席用フロアマットの概略的な形状等については、この種物品の構成態様や形状等にごく普通に見られるものであって、両意匠のみに認められる格別の特徴とはいえないから、これらの共通点が意匠全体の美感に与える影響は小さい。 (共通点2−2)のヒールパット及び円孔部の形状及び配置態様等については、この種物品分野において特段特徴のないものであって、両意匠のみに認められる格別の特徴とはいえないから、この(共通点2−2)が意匠全体の美感に与える影響は小さい。 (共通点2−3)の運転席用フロアマットの底面板における凸状部の部分については、底面板右上のごく一部に形成された特段目立たない形状の共通性であって、需要者の目を惹くものとはいえないから、この(共通点2−3)が意匠全体の美感に与える影響は小さい。 (共通点2−4)の運転席用フロアマットの壁面部、及び(共通点3−3)の助手席用フロアマットの壁面部の具体的な形状等については、壁面部を略帯状に形成することに特段の特徴はなく、各部位における壁面部の高さの相違も、いわれて気づく程度の共通性にすぎないから、これらの各共通点が意匠全体の美感に与える影響は小さい。 一方、(共通点3−2)の助手席用フロアマットの底面板の具体的な形状等については、これらは両意匠にのみ見られる形状等の共通性であるから、この(共通点3−2)が意匠全体の美感に与える影響は大きい。 イ 相違点の評価 (相違点1)の縁取り部分の有無については、すべてのフロアマットにおいて、目につく縁部分に施されたものであるから、この(相違点1)が意匠全体の美感に与える影響は大きい。 (相違点2)の運転席用フロアマットの底面板、及び(相違点3)の運転席用フロアマット左上角部の壁面部の具体的な形状等、並びに(相違点4)の運転席用フロアマット及び助手席用フロアマットの底面板の屈折の有無の相違については、この種物品において需要者の注意を惹くフロアパネルと接触する運転席用フロアマットの具体的な形状等に係るものであって、本願意匠のものは、左上角部を略鈎状に切り欠いて形成されたものであって、特定の車種のフロアパネルの具体的な形状に合わせて加工・形成され、当該車両にしっかり固定されるものとの印象を与えるのに対し、引用意匠のものは、本願意匠と同一の車両に敷設させる場合、確実に固定ができないものとの印象を与えるのであるから、底面板の背面側略半分の部分を、側面視において僅かに上方に屈折させて形成している点も含め、該部位の具体的な形状等の相違に係る(相違点2)ないし(相違点4)が意匠全体の美感に与える影響は非常に大きい。 ウ 形状等の類否判断 両意匠の形状等における各共通点及び相違点についての個別評価に基づき、全ての共通点及び相違点を総合的に観察した場合、両意匠の助手席用フロアマットの底面板の具体的な形状等の共通性が両意匠の類否判断に与える影響は大きいとしても、需要者が注視して観察する運転席用フロアマットの底面板及び壁面部の具体的な形状等や両フロアマットに施された縁取り部分の有無の相違が、意匠全体の美感に与える影響は非常に大きいものであって、上記の相違点によって両意匠は需要者に異なる美感を起こさせるものといえるから、両意匠の形状等は類似しないものであるといえる。 (3) 小括 以上のとおり、両意匠は、意匠に係る物品が同一であるが、その形状等において類似しないから、本願意匠と引用意匠が類似するということはできない。 第3 むすび 上記のとおりであって、本願意匠は、引用意匠に類似せず、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないものである。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2023-01-31 |
出願番号 | 2021007594 |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(C1)
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最終処分 | 01 成立 |
特許庁審判長 |
小林 裕和 |
特許庁審判官 |
江塚 尚弘 渡邉 久美 |
登録日 | 2023-02-16 |
登録番号 | 1737640 |
代理人 | 大田 英司 |
代理人 | 永田 良昭 |
代理人 | 永田 元昭 |