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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 G2
管理番号 1395286 
総通号数 15 
発行国 JP 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2023-03-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2022-07-05 
確定日 2023-02-28 
意匠に係る物品 自動車用車輪 
事件の表示 意願2021−21672「自動車用車輪」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の主な経緯
本願は、2021年(令和3年)4月5日のアメリカ合衆国への出願に基づくパリ条約による優先権の主張を伴う、令和3年10月5日の意匠登録出願であって、その後の手続の主な経緯は以下のとおりである。

令和 3年10月 5日 :上申書の提出
12月14日付け :拒絶理由の通知
令和 4年 1月 7日 :電話による応対
1月12日 :電話による応対
3月22日 :意見書の提出
3月25日付け :拒絶査定
7月 5日 :審判請求書の提出
7月 5日 :代理人受任届の提出
8月30日付け :手続補正指令
9月 9日 :手続補正書の提出
11月 2日付け :手続却下の処分

第2 本願意匠
本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は、願書及び願書に添付した図面によれば、意匠に係る物品を「自動車用車輪」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形状等」ともいう。)を願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり「実線で表した部分が部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」としたものである(別紙第1参照)。

第3 原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は、本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するとしたものであって、拒絶の理由に引用された意匠(以下「引用意匠」といい、本願意匠と併せて「両意匠」ともいう。)は、下記のとおりである(別紙第2参照)。

引用意匠
米国特許商標公報 2014年 1月21日
自動車用ホイール(登録番号US D697858S)の意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HH26301140号)

なお、上記拒絶理由通知書において、引用された意匠が「自動車用ホイール(登録番号US D697858S)の意匠」と記載されており、本願部分に相当する部分を引用していることが明記されていないが、この点は、拒絶理由通知書中の対比内容に記載されているように、本願意匠が部分について意匠登録を受けようとする出願であって、これとの比較において引用意匠についても、本願部分に相当する部分を引用していることは明らかであって、請求人は引用部分を認識した上で審判請求書を記載しているので、このまま審理することとする。

第4 当審の判断
1.本願意匠
本願意匠は、上記「第2」の願書の記載及び願書に添付した図面の記載の内容によると、以下のとおりである。
なお、形状の認定にあたっては、添付図面の「正面図」側を前側、「背面図」側を後側とする。

(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は「自動車用車輪」である。

(2)本願部分の位置、大きさ及び範囲、並びに用途及び機能
本願意匠に係る物品のうち、意匠登録を受けようとする部分(以下「本願部分」という。)は、リム部とリム部前側に形成されたディスク部から成る自動車用車輪の、ディスクの表面部分であって、自動車用車輪の前側に位置し、自動車用車輪のディスクの表面部分の範囲で、自動車用車輪の直径と同じ大きさであって、自動車用車輪のディスクの表面部分の用途及び機能を有するものである。

(3)本願部分の形状等
(3−1)基本的構成
〔形状A1〕外形状は正円形で、中央に正円形のハブ部を設け、中央のハブ部から外周に向かって10本のスポークを放射状に等間隔に配置している。
〔形状A2〕放射状になっているスポークとスポークの間には、開口部があり、当該開口部の周面は、スポーク前側面から後側の開口部に向かって斜面になっている(以下「凹部」ともいう。)。
〔形状A3〕ハブ部には、ホイールナット用の円孔(以下「ホール」ともいう。)を等間隔に5つ設置している。
(3−2)具体的形状
〔形状A4〕正面視において上側略中央に位置する(おおむね12時の方向に位置する)スポークにて、スポークにおける前側面の形状を認定すると、右側辺が直線で、左側辺は内周側が右側辺と平行で、ディスク部の半径の約1/2の位置で約30度左側に折れた屈折線であって、スポーク前側面は略漏斗形状になっている。
〔形状A5〕スポーク前側面は鉛直面である最前面であって、最前面に位置するハブ穴(ボア)を塞ぐセンターキャップまで届くスポーク(スポーク前面が長いスポーク)と、最前面がハブ部に設けたホールの手前までのスポーク(スポーク前面が短いスポーク)が、交互に表れるように配置している。
〔形状A6〕凹部の前側形状のうち、外周側は、ディスク部最外周に接するようにした円弧状である。
〔形状A7〕形状A4とA6により、スポークとスポークの間の凹部の前側形状は、略直角台形状である。
〔形状A8〕形状A5の、ホールの手前までのスポークにより、略直角台形状の2つの凹部がハブ部におけるホールの位置で連結し、V字状を成している。
〔形状A9〕凹部の後側に表れる開口部は、形状A7で認定した凹部前側形状とおおむね相似形の略直角台形状であり、全ての開口部の面積はおおむね同じ大きさである。
〔形状A10〕凹部は、中間色(ミディアムグレイ)の斜面のみで構成している。
〔形状A11〕ハブ部は、最前面に位置するセンターキャップ及びセンターキャップまで届くスポークの最前面、並びにやや後側に位置するホール(2つの凹部の連結点)で構成している。
〔形状A12〕エアバルブが表れていない。

2.引用意匠
引用意匠は、上記「第3」の公知資料の記載内容によると、以下のとおりである。
なお、形状の認定にあたっては、本願意匠と向きを合わせて認定する。

(1)意匠に係る物品
引用意匠の意匠に係る物品は「自動車用ホイール」である。

(2)引用部分の位置、大きさ及び範囲、並びに用途及び機能
引用意匠中、本願部分に相当する部分(以下「引用部分」といい、本願部分と併せて「両部分」ともいう。)は、リム部とリム部前側に形成されたディスク部から成る自動車用ホイールの、ディスクの表面部分であって、自動車用ホイールの前側に位置し、自動車用ホイールのディスクの表面部分の範囲で、自動車用ホイールの直径と同じ大きさであって、自動車用ホイールのディスクの表面部分の用途及び機能を有するものである。

(3)引用部分の形状等
(3−1)基本的構成
〔形状B1〕外形状は正円形で、中央に正円形のハブ部を設け、中央のハブ部から外周に向かって10本のスポークを放射状に等間隔に配置している。
〔形状B2〕放射状になっているスポークとスポークの間には、開口部があり、当該開口部の周面は、スポーク前側面から後側の開口部に向かって斜面になっている(以下「凹部」ともいう。)。
〔形状B3〕ハブ部には、ホイールナット用の円孔(以下「ホール」ともいう。)を等間隔に5つ設置している。
(3−2)具体的形状
〔形状B4〕正面視において上側略中央に位置する(おおむね12時の方向に位置する)スポークにて、スポークにおける前側面の形状を認定すると、右側辺がごく緩やかな曲線で、左側辺はディスク部の半径の約1/2の位置でごく僅かに屈曲した屈曲線であって、スポーク前側面はごく僅かに左に傾いた倒立角形状(「角」:つの。ホーン(horn)。)のものと、その隣には、右側辺が緩やかな曲線で、左側辺はディスク部の半径の約1/2の位置で僅かに屈曲した屈曲線であって、スポーク前側面は左に傾いた倒立角形状のものを交互に表れるように配置している。
〔形状B5〕スポークは、その前側面が、ディスク部の半径の約1/2の位置までの外周側が鉛直面である最前面であり、そこから内周側は、後側に位置するハブ部まで後退する斜面となり、ハブ部に接している。
〔形状B6〕凹部の前側形状のうち、外周側は、一点でディスク部最外周に接して徐々に離れていき、略二等辺三角形状の隙間が形成されている。
〔形状B7〕形状B4とB6により、スポークとスポ−クの間の凹部の前側形状は、内周側先端がホールに接するゆがんだ長方形のものと、内周側先端がホールとホールの間に位置するゆがんだ直角台形状のものが交互に表れている。
〔形状B8〕形状B5により、全ての凹部がハブ部で連結しており、ハブ部におけるホールの位置で2つの凹部が連結してV字状を成すようなことはない。
〔形状B9〕凹部の後側に表れる開口部は、形状B7で認定した、ゆがんだ長方形側のものが、牙のように見えるゆがんだ略二等辺三角形状で、その面積は小さく、ゆがんだ直角台形状側のものが、凹部前側形状とおおむね相似形の略直角台形状で、その面積はやや大きい。
〔形状B10〕凹部の外周側は、斜面の下端に僅かな鉛直面を設けている。
〔形状B11〕ハブ部は、最前面より後側に位置した平坦面(へいたんめん)であって、中央にハブ穴を設けている。
〔形状B12〕前形状がゆがんだ直角台形状である凹部の1つには、外周側の斜面の一部を欠いてエアバルブを設けている。

3.両意匠の対比
(1)意匠に係る物品の対比
本願意匠に係る物品は「自動車用車輪」であり、引用意匠に係る物品は「自動車用ホイール」である。

(2)両部分の位置、大きさ及び範囲、並びに用途及び機能の対比
本願部分は、自動車用車輪のディスクの表面部分であって、自動車用車輪の前側に位置し、自動車用車輪のディスクの表面部分の範囲で、自動車用車輪の直径と同じ大きさであって、自動車用車輪のディスクの表面部分の用途及び機能を有するものであるのに対して、引用部分は、自動車用ホイールのディスクの表面部分であって、自動車用ホイールの前側に位置し、自動車用ホイールのディスクの表面部分の範囲で、自動車用ホイールの直径と同じ大きさであって、自動車用ホイールのディスクの表面部分の用途及び機能を有するものである。

(3)両部分の形状等の対比
両部分の形状等を対比すると、以下に示す共通点と相違点が認められる。
ア.共通点について
〔共通点1〕外形状は正円形で、中央に正円形のハブ部を設け、中央のハブ部から外周に向かって10本のスポークを放射状に等間隔に配置している。(形状A1とB1)
〔共通点2〕放射状になっているスポークとスポークの間には、開口部があり、当該開口部の周面は、スポーク前側面から後側の開口部に向かって斜面になっている。(形状A2とB2)
〔共通点3〕ハブ部には、ホイールナット用の円孔を等間隔に5つ設置している。(形状A3とB3)

イ.相違点について
〔相違点1〕正面視において上側略中央に位置するスポークの、スポークにおける前側面の形状につき、本願部分は、右側辺が直線で、左側辺は内周側が右側辺と平行で、ディスク部の半径の約1/2の位置で約30度左側に折れた屈折線であって、スポーク前側面は略漏斗形状になっており、かつ、スポーク前面は鉛直面である最前面であって、センターキャップまで届くスポークと、最前面がハブ部に設けたホールの手前までのスポークが、交互に表れるようにしているのに対して、引用部分は、右側辺がごく緩やかな曲線で、左側辺はディスク部の半径の約1/2の位置でごく僅かに屈曲した屈曲線であって、スポーク前側面はごく僅かに左に傾いた倒立角形状(とうりつつのけいじょう)のものと、その隣には、右側辺が緩やかな曲線で、左側辺はディスク部の半径の約1/2の位置で僅かに屈曲した屈曲線であって、スポーク前側面は左に傾いた倒立角形状のものが交互に表れるように配置しており、かつ、ディスク部の半径の約1/2の位置までの外周側が鉛直面である最前面であり、そこから内周側は、後側に位置するハブ部まで後退する斜面となり、ハブ部に接している。(形状A4と5、及び形状B4と5)
〔相違点2〕凹部の前側形状につき、本願部分は、凹部前側の外周側は、ディスク部最外周に接するようにした円弧状であって、凹部前側の全体形状は略直角台形状であるのに対して、引用部分は、凹部前側の外周側は、一点でディスク部最外周に接して徐々に離れていき、略二等辺三角形状の隙間が形成されており、内周側先端がホールに接するゆがんだ長方形のものと、内周側先端がホールとホールの間に位置するゆがんだ直角台形状のものが交互に表れている。(形状A6と7及び形状B6と7)
〔相違点3〕凹部につき、本願部分は、略直角台形状の2つの凹部がハブ部におけるホールの位置で連結し、V字状を成しているのに対して、引用部分は、全ての凹部がハブ部で連結しており、ハブ部におけるホールの位置で2つの凹部が連結してV字状を成すようなことはない。(形状A8とB8)
〔相違点4〕開口部につき、本願部分は、凹部前側形状とおおむね相似形の略直角台形状であり、全ての開口部の面積はおおむね同じ大きさであって、中間色の斜面のみで構成しているのに対して、引用部分は、ゆがんだ長方形側のものが、牙のように見えるゆがんだ略二等辺三角形状で、その面積は小さく、ゆがんだ直角台形状側のものが、凹部前側形状とおおむね相似形の略直角台形状で、その面積はやや大きく、加えて、凹部の外周側は、斜面の下端に僅かな鉛直面を設けている形状であって、色彩は不明である。(形状A9と10及び形状B9と10)
〔相違点5〕ハブ部につき、本願部分は、最前面に位置するセンターキャップ及びセンターキャップまで届くスポークの最前面、並びにやや後側に位置するホール(2つの凹部の連結点)で構成しているのに対して、引用部分は、最前面より後側に位置した平坦面であって、中央にハブ穴を設けている。(形状A11とB11)
〔相違点6〕エアバルブにつき、本願部分は、表れていないのに対して、引用部分は、前形状がゆがんだ直角台形状である凹部の1つには、外周側の斜面の一部を欠いてエアバルブを設けている。(形状A12とB12)

4.判断
(1)意匠に係る物品の類否判断
本願意匠の意匠に係る物品は「自動車用車輪」である。
対して、引用意匠の意匠に係る物品は「自動車用ホイール」である。
「車輪」とは、広辞苑によると「車の輪。」であり、ホイールまたはタイヤを付けた状態のホイールと考えられるが、本願意匠の形状からすると、ホイールのみのものであることは明らかであって、自動車用ホイールと推定できる。
よって、表記は異なるが、本願意匠の意匠に係る物品と引用意匠の意匠に係る物品は、共通していると認められる(以下、共に「自動車用ホイール」という。)。

(2)両部分の位置、大きさ及び範囲、並びに用途及び機能の評価
本願部分と引用部分はともに、自動車用ホイールのディスクの表面部分であって、自動車用ホイールの前側に位置し、自動車用ホイールのディスクの表面部分の範囲で、自動車用ホイールの直径と同じ大きさであるから、両部分の位置、大きさ及び範囲は共通する。
本願部分と引用部分はともに、自動車用ホイールのディスクの表面部分の用途及び機能を有するものであるから、両部分の用途及び機能は共通する。

(3)両部分における形状等の評価
ア.共通点について
共通点1のうち、「外形状は正円形」というのは、この物品においては当然の形状であるから、両部分の類否判断に与える影響は無く、「中央に正円形のハブ部を設け、中央のハブ部から外周に向かって10本のスポークを放射状に等間隔に配置している」の点は、両部分を大まかに捉えたものであり、大まかに捉えた程度においては、この物品分野において出願前から見られる形状であるから、この共通点が両部分の類否判断に及ぼす影響は小さい。
共通点2及び共通点3は、両部分を大まかに捉えたものであり、大まかに捉えた程度においては、この物品分野において出願前から見られる形状であるから、この共通点が両部分の類否判断に及ぼす影響は小さい。

イ.相違点について
相違点1ないし5については、相まって、本願部分は、正面視で全体的に直線によってシャープな造形であって、なおかつ、鉛直な一平面である最前面のディスク部に、2つ一組でV字状を成す略直角台形状の凹部が彫り込まれたような形状であるのに対して、引用部分は、正面視で全体的に曲線によって柔らかな造形であって、なおかつ、各スポークにおける前側面の内周側が後側に位置するハブ部まで後退する斜面となり、斜めから見た場合に立体的である、という相違であるから、この種物品の意匠的要部において、両部分に別異の印象を生じさせているといえ、両部分の類否判断に与える影響は、とても大きいといえる。
相違点6は、僅かな相違といえ、両部分の類否判断に与える影響は小さい。

(4)両部分における形状等の類否判断
以上のとおり、共通点は、両部分の類否判断に与える影響が、無いまたは小さいものであり、これらの共通点によっては、両部分の類否判断を決するものといえないのに対して、相違点1ないし5の相違が相まって、需要者に別異の印象を起こさせるものであるから、両部分の類否判断を決するものといえる。
そうすると、本願部分の形状と引用部分の形状は、類似するとは認められない。

(5)両意匠における類否判断
以上のとおり、両意匠は、意匠に係る物品が共通し、両部分の位置、大きさ及び範囲、並びに用途及び機能は共通していると認められる。
しかし、上記のとおり、両部分の形状等は、類似するとは認められないものである。
よって、本願意匠と引用意匠とは類似するとはいえない。

5.結び
したがって、本願意匠は、引用意匠に類似するとはいえず、原査定の引用意匠をもって、本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできず、本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また、当審が更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲



審決日 2023-02-14 
出願番号 2021021672 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (G2)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 刈間 宏信
特許庁審判官 渡邉 久美
橘 崇生
登録日 2023-03-15 
登録番号 1739831 
代理人 弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK 

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