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審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 H7
管理番号 1395288 
総通号数 15 
発行国 JP 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2023-03-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2022-08-09 
確定日 2023-03-07 
意匠に係る物品 エレベータのかご用操作盤 
事件の表示 意願2021− 13970「エレベータのかご用操作盤」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
令和3年(2021年)6月28日 意匠登録出願
令和4年(2022年)1月20日付け 拒絶理由通知書
同年 3月 9日 意見書
同年 4月27日付け 拒絶査定
同年 8月 9日 審判請求書

第2 本願意匠
本願は物品の部分について意匠登録を受けようとする出願であって、本願意匠の意匠に係る物品は、本願の願書の記載によれば「エレベータのかご用操作盤」であり、本願意匠の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下、「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形状等」という。)は、願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりであり、願書の「意匠の説明」の欄には「「D−D、E−E部分拡大図」において、墨で塗りつぶした部分が、意匠登録を受けようとする部分であり、一点鎖線は意匠登録を受けようとする部分(当審注:以下「本願部分」という。)とその他の部分の境界のみを示す線である。」と記載されている(別紙第1参照)。

第3 原査定における拒絶の理由
原査定における拒絶の理由は、本願意匠が、出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」ともいう。)が日本国内又は外国において公然知られ、頒布された刊行物に記載され、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった形状等又は画像に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので、意匠法第3条第2項の規定に該当するとしたものであって、具体的には、以下のとおりである。

「この意匠登録出願の意匠は、エレベータの操作盤であって、ボタン横に配置したセンサの上に、上に凸の方向に緩やかに湾曲した略円弧を縦に3つ並べたマークを配置したものと認められます。
しかしながら、ボタン横にセンサを配置したエレベータの操作盤は、意匠1にみられるように本願出願前に公知です。また、センサの上にマークを配置したものは、意匠2にみられるように本願出願前に公知です。また、上に凸の方向に湾曲した略円弧を縦に3つ並べたマークは、画像1にみられるように本願出願前に公知です。また、湾曲した円弧を並べるマークについて、その長さや曲がり具合を種々にすることが画像2−3にみられるように本願出願前に一般的に行われています。
そうすると、本願意匠は、ボタン横にセンサを配置したエレベータの操作盤、センサの上にマークを配置、上に凸の方向に湾曲した略円弧を縦に3本並べたマークといういずれも本願出願前に公知の態様を組み合わせ、マークについて、本願出願前に一般的に行われているように長さや曲がり具合を変更したものに過ぎず、当業者であれば容易に創作をすることができたものです。
(中略)
意匠1
特許庁発行の意匠公報記載
意匠登録第1674847号の意匠

意匠2
表題
SDM Magazine
Camden Video Series Supports SureWave Touchless Switches
媒体のタイプ
[online]
掲載年月日
令和 2年 7月20日
検索日
令和 4年 1月19日
情報の情報源
インターネット
情報のアドレス
https://www.sdmmag.com/articles/98321-camden-video-series-supports-surewave-touchless-switches
の上部の写真の手前側、センサの上に手を模したマークが配置されたタッチレススイッチの意匠

画像1
表題
iStock
Wifiインターネットアイコンサインセット
媒体のタイプ
[online]
掲載年月日
令和 1年 9月15日
検索日
令和 4年 1月19日
情報の情報源
インターネット
情報のアドレス
https://www.istockphoto.com/jp/%E3%83%99%E3%82%AF%E3%82%BF%E3%83%BC/wifi%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%8D%E3%83%83%E3%83%88%E3%82%A2%E3%82%A4%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%BB%E3%83%83%E3%83%88-%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%99%E3%82%AF%E3%83%88%E3%83%AB-gm1174830347-326887289
に表された9個のアイコンのうち中央のアイコンの画像

画像2
表題
Depositphotos
無線標識アイコン セット
媒体のタイプ
[online]
掲載年月日
平成26年12月 3日
検索日
令和 4年 1月19日
情報の情報源
インターネット
情報のアドレス
https://jp.depositphotos.com/59452803/stock-illustration-wireless-sign-icons-set.html
に表された16個のアイコンのうち一番左上のアイコンの画像

画像3
表題
pixabay
Wi-Fi インターネット
媒体のタイプ
[online]
掲載年月日
平成28年 9月 8日
検索日
令和 4年 1月19日
情報の情報源
インターネット
情報のアドレス
https://pixabay.com/ja/illustrations/wi-fi-%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%8D%E3%83%83%E3%83%88-%E7%84%A1%E7%B7%9A-1655553/
に表されたアイコンの画像」

第4 当審の判断
以下、本願意匠が意匠法第3条第2項の規定に該当するか否か、すなわち、本願意匠が、この意匠の属する分野における通常の知識を有する者が容易に創作することができたものであるか否かについて検討する。

1 本願意匠
(1)本願意匠について
本願意匠の意匠に係る物品(以下「本願物品」という。)は、接触及び非接触により操作することが可能な「エレベータのかご用操作盤」であって、エレベータのかご内に配されるかご用の部品であり、操作盤内には、行き先の階を選ぶための8個のボタンが設けられている。
(2)本願部分の位置、大きさ及び範囲
本願部分の位置、すなわち、一点鎖線で囲われた部分の位置は、行き先の階を選ぶための最も上のボタンの左に配されたセンサー部の真上であり、正面視縦横比が約14:1である本願意匠を垂直方向で約2:3に内分する位置にある。また、一点鎖線で囲われた部分の大きさ及び範囲については、本願部分の横幅が、本願意匠の横幅の約1/10である。
(3)本願部分の用途及び機能
本願部分の内側には、墨で塗りつぶした模様が表されており、本願の願書の記載によれば、当該模様は「操作ボタンに触れずにセンサに指を近づけることでエレベータの行先階を選ぶことができることをピクトグラムで示唆するもの」であるから、本願部分の用途及び機能は、非接触によって行先階を選ぶ操作が可能であることを示すものである。
(4)本願部分の形状等
a 模様全体
墨で塗りつぶした模様の全体は、上に凸の弧状帯が同心円状に上下に3つ等間隔に配置されている。
b 弧状帯の態様
弧状帯の太さは3つとも同じであって、その太さは弧状帯同士の間隔と同じであり、弧状帯の左右の端部は直線状に表されている。
c 弧状帯の角度と比率
3つの弧状帯は約90度弧状であり、最も小さい弧状帯の半径は、最も大きい弧状帯の半径の約1/2である。
d 余地部も含めた縦横比
弧状帯周囲の余地部も含めた、一点鎖線で囲われた部分(意匠登録を受けようとする部分)の縦横比は、約2:3である。

2 意匠1及び意匠2並びに画像1ないし画像3
原査定における拒絶の理由で引用された意匠1及び意匠2並びに画像1ないし画像3について、以下のとおり認定する(本願意匠の向きに合わせて認定する)。なお、これらの意匠や画像の出典や公知日などについては、前記第3に記載したとおりである。

(1)意匠1(別紙第2参照)
意匠1の意匠に係る物品は、操作ボタンを押下、又は、センサーに手などをかざすことにより、行先階登録をすることができる「エレベータ用操作器」であり、6個の操作ボタンの右にセンサー部が配されており、そのセンサー部内に模様が表されている。同模様は、センサー部に指を近づけることでエレベータの行先階が登録できることを示唆するものであると推認される。同模様は、左右対称であって、左側の模様は、左に凸の弧状帯が同心円状に左右に3つ配置されており、弧状帯の太さは、外側:中央:内側が約1:2:3であって、弧状帯の左右の端部は直線状に表されている。また、3つの弧状帯は約80度弧状であり、最も小さい弧状帯の半径は、最も大きい弧状帯の半径の約1/1.5である。

(2)意匠2(別紙第3参照)
意匠2の意匠に係る物品は「タッチレススイッチ」であり、意匠2を紹介する記事の末尾に「Camden Door Controls」との記載があるので、扉を開くスイッチであると推認される。縦長長方形板の正面中央のセンサーの上に模様が表されており、同板の上部と下部には、ネジ孔と推認される部分があるので、この物品は壁面などに取り付けられるものであると認められが、同模様は、右手の形を模したものであり、親指の上には、4本の平行線が表されている。

(3)画像1(別紙第4参照)
画像1は、Wifiインターネットアイコンであって、その模様は、上に凸の弧状帯が同心円状に上下に3つ等間隔に配置されたものである。弧状帯の太さは3つとも同じであって、その太さは弧状帯同士の間隔と同じであり、弧状帯の左右の端部は直線状に表されている。また、3つの弧状帯は約90度弧状であり、最も小さい弧状帯の半径は、最も大きい弧状帯の半径の約1/3である。

(4)画像2(別紙第5参照)
画像2は、無線標識アイコンであって、その模様は、右上に凸の弧状帯が同心円状に上下に3つ等間隔に配置されたものである。弧状帯の太さは3つとも同じであって、その太さは弧状帯同士の間隔と同じであり、弧状帯の左右の端部は直線状に表されている。また、3つの弧状帯は約100度弧状であり、最も小さい弧状帯の半径は、最も大きい弧状帯の半径の約1/1.5である。

(5)画像3(別紙第6参照)
画像1は、Wi−Fi インターネットのアイコンであって、その模様は、円形模様と、その上に配された3つの弧状帯から成る。弧状帯は、上に凸であって同心円状に上下に等間隔に配置されている。弧状帯の太さは3つとも同じであって、その太さは弧状帯同士の間隔と同じであり、弧状帯の左右の端部は直線状に表されている。また、3つの弧状帯は約90度弧状であり、最も小さい弧状帯の半径は、最も大きい弧状帯の半径の約1/3である。円形模様は、弧状帯の左右の端部の延長線上よりも内側に配されている。

3 創作非容易性の判断
Wi−Fiなどの無線を示す模様として、3つの弧状帯を同心円状に配置したものは、画像1ないし画像3のように本願の出願前に公然知られているものの、画像1及び画像2は、本願部分の模様のように、最も小さい弧状帯の半径が最も大きい弧状帯の半径の約1/2ではなく、また、画像3は、円形模様と3つの弧状帯が合体したものであるから、本願部分の模様とは異なるものである。
また、本願部分の模様は、行き先の階を選ぶための最も上のボタンの左に配されたセンサー部の真上に表されたものであるところ、「エレベータのかご用操作盤」の物品分野においてそのような位置に非接触によって行先階を選ぶ操作が可能であることを示す模様を表した意匠は、本願の出願前に見られない。例えば、意匠1に見られる模様は、センサー部内に同模様が表されている点で本願部分の模様の位置と異なっており、意匠2の模様の用途及び機能も、扉を開く操作を行う点で本願部分の用途及び機能と異なっている。
したがって、原査定における拒絶の理由で引用された意匠に基づいて、当業者が容易に本願意匠の創作をすることができたということはできない。

第5 むすび
以上のとおりであって、本願意匠は、意匠法第3条第2項が規定する、意匠登録出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られ、頒布された刊行物に記載され、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった形状等又は画像に基づいて容易に意匠の創作をすることができたとはいえないものであるから、原査定の拒絶の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
別掲












審決日 2023-02-22 
出願番号 2021013970 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (H7)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 内藤 弘樹
特許庁審判官 小林 裕和
藤澤 崇彦
登録日 2023-03-15 
登録番号 1739830 
代理人 弁理士法人酒井国際特許事務所 

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