• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 C5
管理番号 1395304 
総通号数 15 
発行国 JP 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2023-03-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2022-11-02 
確定日 2023-02-28 
意匠に係る物品 炊飯器 
事件の表示 意願2021− 18011「炊飯器」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 主な手続の経緯

本願は、令和3年(2021年)8月20日の意匠登録出願であって、その後の主な手続の経緯は、以下のとおりである。

令和4年(2022年) 4月18日付け 拒絶理由通知書
同年 6月 2日 意見書
同年 6月 6日付け 拒絶理由通知書
同年 7月13日 意見書
同年 8月 3日付け 拒絶査定
同年 11月 2日 審判請求書提出

第2 本願の意匠

本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は、意匠に係る物品を「炊飯器」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状等」という。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである。(別紙第1参照)

第3 原査定の拒絶の理由及び引用の意匠

原査定の拒絶の理由は、本願意匠は、出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者(以下、「その意匠の属する分野における通常の知識を有する者」を「当業者」という。)が日本国内又は外国において公然知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので、意匠法3条2項の規定に該当するとしたものであって、具体的には、以下のとおりである。

「本願の意匠は、意匠に係る物品を「炊飯器」とし、その形状は、蓋部と本体部とからなる二分割構造の炊飯器において、それらの接合周上に設けた細幅帯状部を最大幅とした、上方及び下方に向けて緩弧状に湾曲させつつ縮径してなる外周形状の筐体を基本とし、床面と平行な平坦面として形成した蓋部上面には、構成各部がいずれも隅丸矩形状を呈する操作表示部及び蒸気窓部を設けたものです。
まず、上記した炊飯器全体の基本形状は、本願意匠の意匠造形上の特徴を最も看取させるものですが、以下に示す意匠1において、本願出願前から公然知られています。
本願意匠とこの意匠1とでは、蓋部上面と周側面との接続部の態様、並びに、蓋部上面における操作表示部及び蒸気窓部の具体的態様が異なりますが、本願意匠に見られるこれらの具体的態様は、本願意匠と同様に蓋部上面を床面と平行な平坦面とした意匠2の炊飯器に見られる各部態様を意匠1に当てはめることで凡そ構成できるものと認められ、その当てはめの際に加えるべき変更、すなわち、表示部を矩形状の液晶表示部とすること及び蒸気窓を縦方向とすることについても、本願意匠と近似の全体形状を有する意匠3に見られるような、従来のこの種物品において見られる態様にすぎません。
そうすると、本願意匠は、出願前に公然知られた、基本形状を同じくする炊飯器の構成要素を部分的に寄せ集めることで構成することができたものであり、そうして構成された意匠全体としての美感にも従来と異なる着想の新しさや独創性を見いだすことはできませんので、本願意匠は、この種物品について通常の知識を有する者であれば、容易にその意匠の創作をすることができたものといわざるを得ません。

意匠1
電気通信回線の種類 インターネット
掲載確認日(公知日) 2017年10月 7日
受入日 特許庁意匠課受入2017年10月27日
掲載者 パナソニック株式会社
表題 IHジャー炊飯器 SR−KT067を発売
|プレスリリース | Panasonic
New sroom Japan
掲載ページのアドレス http://news.panasonic.com/jp/press/data/
2017/07/jn170720-2/s-jn170720-2-2.jpg
に「SR−KT067−W」として掲載された「炊飯器」の意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HJ29035628号)

意匠2
電気通信回線の種類 インターネット
掲載確認日(公知日) 2019年12月12日
受入日 特許庁意匠課受入2020年 1月10日
掲載者 シャープ株式会社
表題 KS−HF10B | 匠の火加減でおいしさ
際立つ、5.5合炊きタイプ | 炊飯器:シ
ャープ
掲載ページのアドレス https://jp.sharp/ricecooker/products/kshf1
0b/
に「KS−HF10B」として掲載された「炊飯器」の意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HJ31051177号)

意匠3
電気通信回線の種類 インターネット
掲載確認日(公知日) 2019年10月31日
受入日 特許庁意匠課受入2019年11月22日
掲載者 東芝ライフスタイル株式会社
表題 IH炊飯器 RC−5XN | ジャー炊飯器
|圧力+真空合わせ炊き−東芝ライフスタイル
掲載ページのアドレス https://www.toshiba-lifestyle.co.jp/living
/rice_cookers/5xn/
に「RC−5XN(W)」として掲載された「炊飯器」の意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HJ31041486号)」

第4 当審の判断

以下、本願意匠の意匠法3条2項の該当性、すなわち、本願意匠が当業者であれば容易に創作することができたか否かについて検討し、判断する。

1 本願意匠(別紙第1参照)

(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は、米を炊く目的で使用される電動の「炊飯器」である。

(2)本願意匠の形状等
基本的構成態様
ア 本願意匠は、全体が、本体と蓋からなる、略角丸直方体の容体であって、背面中央に設けた略横長長方形板状のヒンジによって開閉可能に形成され、上面がほぼ平坦面状である蓋部の略中央の前方寄りに、略横長長方形状の表示部を設け、更にその前方寄りに、略角丸四角形状の操作ボタンを5つ設け、蓋部の中央後方寄りに略縦長角丸長方形の蒸気孔を設け、容体の両側中央の上方寄りに平面視略逆「U」字状に湾曲した取手を取付けたものである。

具体的態様として、
イ 容体
(ア)全体の縦横の長さ及び高さの比率は、約1:1.2:1.4であり、周側面は緩い弧面状に形成し、本体の背面中央のうち全幅の約1/3強の面を下端まで鉛直面とし、右側面右下隅に略矩形状の開口部を設けて、コード収納部としている。
(イ)底面について、中央の略角丸矩形状のエリアの正面側の両角に略長円錘台形状の小さな脚部と、背面側の両角に略円錐台形状の脚部が設けられている。
(ウ)容体の蓋と本体の境界に、周側面に沿って細帯状の枠を形成している。
(エ)本体中央の上端寄りに、略横長角丸長方形状の開閉ボタンが設けられている。

ウ 操作ボタン
操作ボタンは、蓋部の平面視下寄りに、略角丸正方形の操作ボタンを中央と左右寄りに等間隔に3つ、横一列に配置し、左右の操作ボタンの直上に、横幅が同じで縦幅が約半分の略角丸横長長方形の操作ボタンを1つずつ配置している。

2 引用意匠の認定

(1)意匠1(別紙第2参照)
ア 意匠に係る物品
意匠1の意匠に係る物品は、米を炊く目的で使用される電動の「炊飯器」である。

イ 形状等
意匠1は、全体が、本体と蓋からなる、略角丸直方体の容体であって、蓋部の上面の周縁の内側全体を僅かに段差状に凹ませ、その略中央の前方寄りに、表示部と、その両脇に略円形の操作ボタンを1つずつ設け、その前方寄りに、略正方形状の操作ボタンを横に等間隔に4つ設け、略中央後方寄りに略円形の蒸気孔を設け、本体正面中央の上端寄りに、略横長角丸長方形状の開閉ボタンを設け、容体の両側上方寄りに略「U」字状の取手を取り付けたものである。

(2)意匠2(別紙第3参照)
ア 意匠に係る物品
意匠2の意匠に係る物品は、米を炊く目的で使用される電動の「炊飯器」である。

イ 形状等
意匠2は、全体が、本体と蓋からなる、略長円柱形状の容体であって、蓋部の略中央のやや前方寄りに表示部を設け、表示部の前方の両角辺りに、略長円形状の操作ボタンを1つずつ設け、その直下に略角丸四角形状の小さな操作ボタンを1つずつと、真ん中に略角丸正方形の大きな操作ボタンを等間隔に配置し、蓋部の略中央後方寄りに横長の蒸気孔を設け、本体正面中央の上端寄りに、略横長角丸長方形状の開閉ボタンを設けたものである。

(3)意匠3(別紙第4参照)
ア 意匠に係る物品
意匠3の意匠に係る物品は、米を炊く目的で使用される電動の「炊飯器」である。

イ 形状等
意匠3は、全体が、本体と蓋からなる、略角丸直方体の容体であって、蓋部の上面の周縁に縁取りを有する略平坦面状とし、その略中央の前方寄りに、外形が略角丸横長長方形状であって、その内上側約2/3のエリアには、中央に略横長長方形状の表示部と、その両側の略縦長長方形状の文字盤部を配置し、下側約1/3には、約角丸正方形状の4つの操作ボタンを等間隔に配置した表示部兼操作部を設け、この両側に、上側に略円形状操作ボタンを1つと下側に略角丸正方形操作ボタンを1つ、それぞれ配置し、蓋部の中央から後方にかけて略縦長長方形状の蒸気孔エリアと、その中央やや後方寄りに、縦長の蒸気孔を設け、本体正面中央の上端寄りに、縁取りのある略円形状の開閉ボタンを設け、容体の両側上方寄りに略逆「U」字状の取手を取付けたものである。

3 本願意匠の創作性の検討

意匠法3条2項の規定の適用についての判断は、全体の形状等が、当該意匠登録出願前に公然知られた形状等に基づいて当業者であれば容易に創作することができたものであるか否かを判断し、当該物品分野において採用することが当業者にとってありふれた手法であるか否かを判断することにより行うものである。
そこで、本願意匠の形状等の創作について考察すると、当業者は、炊飯器という物品の通常の使用の状態において、目に付く容体全体の外形や、操作をするためのボタンや表示部の形状や配置の美感と共に、より良い操作感向上の観点からも創作を行うものと考えられる。
本願意匠の形状等は前記第4の1(2)に示すとおりであって、平面視略角丸縦長長方形状の容体や、蓋正面の前面側に略横長長方形状の表示部及び角丸重畳形の操作ボタンを設けることは、意匠1ないし意匠3に見られるとおり、本願出願前より公然知られた形状ではあるが、本願意匠のように蓋上面をほぼ平坦面状とし、表示部及び操作ボタンを、略角丸正方形状の操作ボタンを中央と左右寄りに等間隔に3つ、横一列に配置し、左右の操作ボタンの直上に横幅が同じで縦幅が約半分の略角丸横長長方形の操作ボタンを1つずつ配置したものは、本願意匠以外には見られないものであるから、本願意匠は当事者にとって、格別の創作を要したものと言わざるを得ない。
そうすると、本願意匠は、この種物品分野において、独自の着想によって創出したものであり、当業者が引用意匠に基づいて容易に本願意匠の創作をすることができたとはいうことができない。

第5 むすび

以上のとおりであって、本願意匠は、原査定が示した理由によっては意匠法3条2項に規定する意匠に該当しないものであるから、この拒絶の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。

また、当審において、更に審理した結果、他に拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
別掲




















審決日 2023-02-14 
出願番号 2021018011 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (C5)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 内藤 弘樹
特許庁審判官 石坂 陽子
渡邉 久美
登録日 2023-03-08 
登録番号 1739154 
代理人 永芳 太郎 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ