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審決分類 審判 査定不服  意48条1項3号非創作者無承継登録意匠 取り消して登録 B5
管理番号 1396351 
総通号数 16 
発行国 JP 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2023-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2022-04-11 
確定日 2022-08-29 
意匠に係る物品 靴 
事件の表示 意願2021−318「靴」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由
第1 手続の主な経緯
本願は、2020年9月24日のアメリカ合衆国への出願に基づくパリ条約による優先権の主張を伴い、意匠法第4条第2項の規定の適用を受けようとし、また、意匠法第14条第1項の規定により、3年間秘密にすることを請求する、令和3年(2021年)1月8日の意匠登録出願であって、その後の手続の主な経緯は以下のとおりである。

令和 3年 2月 5日 :新規性の喪失の例外証明書提出書の提出
6月17日付け :拒絶理由の通知
9月28日 :電話応対
10月19日 :意見書の提出
12月24日付け :拒絶査定
令和 4年 4月11日 :審判請求書の提出
4月19日付け :手続補正指令
5月25日 :手続補正書の提出(方式)

第2 本願意匠
本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は、願書及び願書に添付した図面によれば、意匠に係る物品を「靴」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合を願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり、「破線で示された部分以外の部分が、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」としたものである(別紙第1参照)。

第3 原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は、本願意匠が、その出願の日前の他の意匠登録出願であって、その出願後に意匠法第20条第3項又は同法第66条第3項の規定により意匠公報に掲載された意匠登録第1618212号の意匠(以下「引用意匠」といい、本願意匠と併せて「両意匠」という。)の一部と同一又は類似するものと認められるので、意匠法第3条の2の規定に該当するというものである(別紙第2参照)。

第4 当審の判断
1.本願意匠
本願意匠は、上記「第2」の願書の記載及び願書に添付した図面の記載の内容によると、以下のとおりである。

(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は「靴」である。

(2)本願部分の位置、大きさ及び範囲、並びに用途及び機能
アッパー(Upper、「甲」または「甲被」のこと。)、アウトソール(靴裏)及びミッドソールから成る本願意匠に係る物品のうち、意匠登録を受けようとする部分(以下「本願部分」という。)は、ミッドソールの周側面部分(ただし、後端の横長楕円形を除く。以下、同じ。)であって、その位置、大きさ及び範囲であり、衝撃吸収性などミッドソールとしての用途と機能を備えている。

(3)本願部分の形状
〔形状A1〕本願部分は、正面図及び背面図によると、両側面が僅かに裾広がりである。
〔形状A2〕本願部分は、後端部が後ろ方向へ略半円状に僅かに膨出している。
〔形状A3〕靴の全長(前後の長さ)を100としたときの、本願部分の最大縦幅(高さ)は、約14である。
〔形状A4〕本願部分の下辺は、前後略中央から後側がごく緩やかな倒S字状で、前後略中央から前側が波形状で先端に向かって上向いている。
〔形状A5〕本願部分の上辺は、先端から略中央までが下に凸の大きな曲線で、略中央から後端までが上に凸の大きな曲線である。
〔形状A6〕上辺に沿って、逆山型の凹部が、先端に向かって徐々に小さくなりつつ複数並んでいる。最後端の2つの逆山型凹部は連なっており、それより先に11個並んでいる。
〔形状A7〕瓢箪形の凹部と穴部、並びに円形の穴部が混在して、後端から縦・横・縦・横……と瓢箪形が並び、その下に、後端から横・縦・横・縦……と瓢箪形が並び(正しくは、最初と2番目の縦は、瓢箪形ではなく円形が縦に2つ並んでいる。)、上下2列がかみ合うように先端に向かって並び、内外両側面の約4分の3を占めている。

2.引用意匠
引用意匠は、上記「第3」の意匠公報の記載の内容によると、以下のとおりである。

(1)意匠に係る物品
引用意匠の意匠に係る物品は「靴」である。

(2)引用部分の位置、大きさ及び範囲、並びに用途及び機能
アッパー及びソール(靴底)から成る引用意匠に係る物品のうち、本願部分に相当する部分(以下「引用部分」といい、本願部分と併せて「両部分」という。)は、アウトソールとミッドソールが同じ素材の1つのパーツから成っているソールの上端(上辺)から約7分の6の縦幅の部分(ミッドソールに当たる部分)における、前端を除いた周側面部分(ただし、本願部分に相当する後端の横長楕円形を除く。以下、同じ。)であって、その位置、大きさ及び範囲であり、衝撃吸収性などソールの内のミッドソール部分としての用途と機能を備えている。

(3)引用部分の形状
〔形状B1〕引用部分は、正面図及び背面図によると、両側面が略半円弧状に膨出している。
〔形状B2〕引用部分は、後端部が後ろ方向へ略「く」の字状に膨出している。
〔形状B3〕靴の全長(前後の長さ)を100としたときの、引用部分の最大縦幅(高さ)は、約12である。
〔形状B4〕引用部分の下辺は、後端から先端まで波形状で、後端から約5分の2の位置から先端に向かって上向いている。
〔形状B5〕引用部分の上辺は、先端から略中央までが下に凸の大きな曲線で、略中央から後端までが上に凸の大きな曲線である。
〔形状B6〕上辺に沿って、逆山型の凹部が、先端に向かって徐々に小さくなりつつ15個並んでいる。
〔形状B7〕瓢箪形の凹部と穴部、並びに円形の穴部が混在して、後端から円に続いて、横・縦・横・縦……と瓢箪形が並び、その下に、後端から横・縦・横・縦……と瓢箪形が並び、上下2列がかみ合うように先端まで並んでいる。下の列の横向き瓢箪の下には、円形穴部が設けてあり、それは下辺の波の谷の位置に対応している。

3.両意匠の対比
(1)意匠に係る物品の対比
本願意匠に係る物品も、引用意匠に係る物品も、共に「靴」である。

(2)両部分の位置、大きさ及び範囲、並びに用途及び機能の対比
本願部分は、アッパー、アウトソール及びミッドソールから成る靴のミッドソールの周側面部分であるのに対して、引用部分は、アッパー及びソールから成る靴のソールの上端(上辺)から約7分の6の縦幅のミッドソールに当たる部分における、前端を除いた周側面部分である。
本願部分は、ミッドソールの周側面部分という位置、大きさ及び範囲であるのに対して、引用部分は、ソール中のミッドソールの前端を除いた周側面部分という位置、大きさ及び範囲である。
本願部分は、衝撃吸収性などミッドソールとしての用途と機能を備えているのに対して、引用部分は、衝撃吸収性などソールの内のミッドソール部分としての用途と機能を備えている。

(3)両部分の形状の対比
両部分の形状を対比すると、以下に示す主な共通点と相違点が認められる。
ア.共通点について
〔共通点1〕両部分共に、後端部が後ろ方向へ膨出している点。(形状A2とB2)
〔共通点2〕両部分共に、下辺は前後略中央から前側が波形状となっている点。(形状A4とB4)
〔共通点3〕両部分共に、下辺は途中から先端に向かって上向いている点。(形状A4とB4)
〔共通点4〕両部分共に、上辺が、先端から略中央までが下に凸の大きな曲線で、略中央から後端までが上に凸の大きな曲線である点。(形状A5とB5)
〔共通点5〕両部分共に、上辺に沿って、逆山型の凹部が、先端に向かって徐々に小さくなりつつ十数個並んでいる点。(形状A6とB6)
〔共通点6〕両部分共に、瓢箪形の凹部と穴部、並びに円形の穴部が混在して後端から先端に向かって並んでいるものであって、上下2列の瓢箪形がかみ合うように、瓢箪形が縦方向と横方向に交互に並んでいる点。(形状A7とB7)

イ.相違点について
〔相違点1〕基本的な形状のうち、正面図及び背面図における、両側面の形状につき、本願部分は、僅かに裾広がりであるのに対して、引用部分は、略半円弧状に膨出している点。(形状A1とB1)
〔相違点2〕基本的な形状のうち、後端部の後ろ方向への膨出形状につき、本願部分は、略半円状に僅かに膨出しているのに対して、引用部分は、略「く」の字状に膨出している点。(形状A2とB2)
〔相違点3〕靴の全長を100としたときの、引用部分の最大縦幅につき、本願部分は約14であるのに対して、引用部分は約12である点。(形状A3とB3)
〔相違点4〕下辺の後側の形状につき、本願部分は、前後略中央から後側がごく緩やかな倒S字状であるのに対して、引用部分は、(先端から)後端まで波形状である点。(形状A4とB4)
〔相違点5〕上辺に沿って並んでいる逆山型の凹部につき、本願部分は、最後端の2つの逆山型凹部は連なっており、それより先に11個並んでいるのに対して、引用部分は、15個並んでいる点。(形状A6とB6)
〔相違点6〕瓢箪形または円形の、凹部や穴部につき、本願部分は、後端から縦・横・縦・横……と瓢箪形が並び、その下に、後端から横・縦・横・縦……と瓢箪形が並んでいる(正しくは、最初と2番目の縦は、瓢箪形ではなく円形が縦に2つ並んでいる。)のに対して、引用部分は、後端から円に続いて、横・縦・横・縦……と瓢箪形が並び、その下に、後端から横・縦・横・縦……と瓢箪形が並んでいる点。(形状A7とB7)
〔相違点7〕瓢箪形または円形の、凹部や穴部につき、本願部分は、後端から内外両側面の約4分の3の位置まで並んでいるのに対して、引用部分は、後端から先端まで並んでいる点。(形状A7とB7)
〔相違点8〕瓢箪形または円形の、凹部や穴部につき、引用部分は、下の瓢箪形の列の横向き瓢箪の下に、円形穴部を設けてあり、それは下辺の波の谷の位置に対応しているのに対して、本願部分は、そのような円形穴部を設けていない点。(形状A7とB7)

4.判断
(1)意匠に係る物品の類否判断
両意匠の、意匠に係る物品は、いずれも「靴」であるから、一致している。

(2)両部分の位置、大きさ及び範囲、並びに用途及び機能の評価
本願部分は、ミッドソールの周側面部分という位置、大きさ及び範囲であるのに対して、引用部分は、ソール中のミッドソールの周側面部分という位置、大きさ及び範囲であるから、位置、大きさ及び範囲は共通しているものと認められる。
両部分の用途及び機能は、共に、ミッドソール部分としての用途と機能を備えているから、一致している。

(3)両部分における形状の評価
ア.共通点について
共通点1は、この種物品のうち、特に運動靴においてはありふれた形状であって、両意匠のみの特徴とは認められず、かつ、相違点2の相違を内包しているものであるから、両部分の類否判断に与える影響は小さい。
共通点2は、一定程度の共通感を生み出してはいるが、下辺の一部の共通点であるから、両部分の類否判断に与える影響は一定程度にとどまる。
共通点3は、共通点4と共に、この種物品のうち、特に運動靴においてはありふれた形状であって、両意匠のみの特徴とは認められず、両部分の類否判断に与える影響は小さい。
共通点5は、その部分のみに注目すると僅かな共通感を生み出してはいるが、相違点7によって、引用部分は先端まで並ぶ瓢箪形によって上辺の逆山型の凹部が埋没して、余り目立たないのに対して、本願部分は、瓢箪形が無い先端側約4分の1の箇所で上辺の逆山型の凹部が際立つことになり、逆山型の凹部が共通する印象を弱めているから、両部分の類否判断に与える影響は一定程度にとどまる。
共通点6は、目立つ、特徴的な模様であるから一定程度の共通感を生み出してはいるが、本願意匠の出願前より散見され、両意匠のみの特徴とはいえず、両部分の類否判断に与える影響は一定程度にとどまる。

イ.相違点について
相違点1については、相違点2及び相違点3と相まって、ミッドソールの機能や性能に関わる基本的な形状における相違であるから、両部分の形状の類否判断に与える影響は大きい。
相違点4については、靴の性能を左右する靴底の側面形状(または「断面形状」)由来の形状であって、本願部分は、踏みしめた際に安定性を強く感じ得るフラットな形状であるとの印象を看者に与えるものであるのに対して、引用部分は、使用者の体重や衝撃を押圧分散する形状であるとの印象を看者に与えるものであって、両部分に対して別異の印象を与えるものといえるから、両部分の形状の類否判断に与える影響は大きい。
相違点5については、その部分を注視したり、丁寧に数えたりして、初めて分かる小さな相違であって、両部分の形状の類否判断に与える影響は小さい。
相違点6については、上下2列でかみ合うように、縦・横・縦・横……と瓢箪形が数多く並んでいるため、縦始まりか横始まりかの相違や、正確には、瓢箪形ではなく円形が縦に2つ並んでいる形状は、注視して初めて分かるほどの僅かな相違と認められるから、両部分の全体観察による類否判断においては、与える影響は小さい。
相違点7については、目に付きやすい先端側(つま先側)の内側面及び外側面に、特徴的な模様があるか否かという相違であって、両部分に対して別異の印象を与えるものといえるから、両部分の形状の類否判断に与える影響は大きい。
相違点8については、引用部分には、下の列の横向き瓢箪の下に、下辺の波の谷の位置に対応して円形穴部が設けているという形状があり、それは、体重や衝撃を押圧分散する形状に合わせてある様に見受けられるから、そのような円形穴部を設けていない本願部分とは異なる印象を生じさせているから、両部分の形状の類否判断に与える影響は大きい。

(4)小括
そうすると、両部分の形状については、その共通点及び相違点の評価に基づくと、上記のとおり、共通点は、類否判断に及ぼす影響は、一定程度にとどまる、または小さいものであるのに対して、多くの相違点によって類否判断に及ぼす影響は大きいものといえるものであり、両部分の形状は、類似するとは認められないものである。

(5)両意匠における類否判断
以上のとおり、両意匠は、意匠に係る物品が一致し、両部分の位置、大きさ及び範囲が共通し、両部分の用途及び機能が一致している。
しかし、上記のとおり、両部分の形状は、類似するとは認められないものである。

5.結び
以上のとおりであって、本願意匠は、引用意匠の一部に類似するとは認められないため、意匠法第3条の2の規定に該当しないものであるから、原査定における拒絶の理由によって、本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また、当審が更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲




審決日 2022-08-16 
出願番号 2021000318 
審決分類 D 1 8・ 16- WY (B5)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 刈間 宏信
特許庁審判官 橘 崇生
正田 毅
登録日 2022-09-09 
登録番号 1725199 
代理人 伊東 美穂 
代理人 木村 吉宏 
代理人 特許業務法人不二商標綜合事務所 
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