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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 B3
管理番号 1396370 
総通号数 16 
発行国 JP 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2023-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2022-11-21 
確定日 2023-03-20 
意匠に係る物品 傘 
事件の表示 意願2021− 28301「傘」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯

本願は、令和3年(2021年)12月23日の意匠登録出願であって、その後の主な手続の経緯は、以下のとおりである。

令和 4年(2022年) 6月17日付け 拒絶理由通知
同年 8月 1日 意見書の提出
同年 9月30日付け 拒絶査定
同年 11月21日 審判請求書の提出
同年 11月21日 早期審理に関する
事情説明書の提出
同年 12月28日 早期審理に関する
事情説明補充書の提出
令和 5年(2023年) 1月17日付け 早期審理に関する報告

第2 本願の意匠

本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は、意匠に係る物品を「傘」とし、その形状等(形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり、本願意匠において意匠登録を受けようとする部分(以下「本願部分」という。)を、「実線で表された部分が、意匠登録を受けようとする部分である。」としたものである。(別紙第1参照)

第3 原査定の拒絶の理由及び引用意匠

原査定の拒絶の理由は、本願意匠は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の意匠(以下「引用意匠」という。別紙第2参照)に類似するものであるから、意匠法3条1項3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)に該当する、というものである。

「引用意匠
特許庁発行の登録実用新案公報記載
実用新案登録第3029098号
図1に表された傘(その傘地は図2Aに表される)の本願意匠に相当する 部分の意匠

本願意匠と引用意匠とは、傘地において、8枚の花弁が隣接する花弁の一方に一部が重なるよう傘地の中心から放射状に配置された形状である点で共通し、この共通点は目につきやすい部位におけるもので需要者の注意を強くひき、両意匠の類否判断を決定付けています。
よって、両意匠は類似します。」

第4 当審の判断

以下、引用意匠を本願意匠の図面の向きに合わせて対比する。

1 本願意匠及び引用意匠の対比
以下、本願意匠と引用意匠を「両意匠」という。また、引用意匠のうち本願意匠の意匠登録を受けようとする部分に相当する部分を「引用部分」といい、「本願部分」と併せて「両意匠部分」という。

(1)意匠に係る物品
両意匠は、いずれも、雨、雪或いは日差し等を避けるために頭上にかざして用いる傘であり、意匠に係る物品は一致する。

(2)両意匠部分の用途及び機能
両意匠部分は、いずれも、本願意匠において破線で表現された部分を除いた傘地部分であり、両意匠部分の用途及び機能は一致する。

(3)両意匠部分の位置、大きさ、及び範囲
両意匠部分は、いずれも、破線で描かれた以下の各部分、すなわちハンドル部、シャフト部、石突き部、親骨部及び露先部を除いた傘地の部分であり、位置、大きさ、及び範囲は共通する。

(4)両意匠部分の形状等
両意匠部分の形状等には、主として、以下の共通点及び相違点がある。

(共通点1)
全体に係る基本的構成態様は、平面視において8枚の花弁状の生地(以下、「生地」という。)が石突き近傍から斜め放射状に配され、隣接する生地の側面に一部が重なるよう構成された形状である点。

(共通点2)
生地は、外側端部の露先部の近傍が緩やかな曲線で構成され、露先部に向かい凸条をなす花びらを想起させる形状である点。

(共通点3)
側面視において(引用意匠は、「図1」から推定する。)、横幅全長に対する高さの比率を略10:3とする緩やかに湾曲したドーム状の表面を形成している点。

(相違点1)
本願意匠の生地の輪郭は、平面視中央部が略S字状に湾曲し、露先部付近が左右対称で、剣弁を有する蓮の花びらのように湾曲している。それに対し、引用意匠の生地の輪郭は、平面市中央部が略直線状をなし、中央部から露先部にかけて左側に凸状に湾曲し、露先部付近の右側は直線状であって露先部付近は非対称形となっている点。

(相違点2)
本願意匠は、生地の外縁部が縁取りされて2重線状に表されているのに対し、引用意匠には縁取りはない点。

(相違点3)
本願意匠は、生地の中央部に生地の裏側に位置する親骨から表れる直線状の稜線が視認できるのに対し、引用意匠は稜線の有無が不明である点。

(相違点4)
本願意匠は、底面視における傘地の態様や意匠登録を受けようとする部分以外の親骨の構成配置まで視認できるのに対し、引用意匠は底面視の態様が不明である点。

(相違点5)
本願意匠は、平面視において生地が重なるように配されている部分に着目すると、時計回りの規則性で構成されているのに対し、引用意匠は、生地が重なるように配されている部分に着目すると、反時計回りの規則性で構成されている点。

類否判断

(1)意匠に係る物品
両意匠の意匠に係る物品は、ともに、雨、雪或いは日差し等を避けるために頭上にかざして用いる傘であり、同一である。

(2)両意匠部分の用途及び機能、並びに位置、大きさ、及び範囲
両意匠部分の用途及び機能、位置、大きさ、及び範囲は共通する。

(3)両意匠部分の形状等の共通点及び相違点の評価
両意匠の意匠に係る物品は、雨、雪或いは日差し等を避けるために、頭上にかざして用いる「傘」であり、需要者は、主に、傘を購入して使用する一般需要者が想定される。
したがって、まず、需要者が手にとって使用する時に最も注意を払う、開いた状態における傘地全体から受ける視覚的印象について評価し、かつそれ以外の形状等も併せて、各部を総合して意匠全体として評価することとする。

ア 共通点の評価
まず、(共通点1)について、両意匠部分に共通する基本的構成態様については、傘地全体の形状や生地の構成配置を概括的に捉えた場合における共通性に止まり、傘地を花弁状とした傘が本願出願前より公然知られている状況にあっては、両意匠部分の類否判断に与える影響は小さい。

次に、(共通点2)及び(共通点3)についても、例を挙げるまでもなく外側端部を花びら状とした傘は本願出願前より普通に見られ、傘地表面の曲率もごく一般的に見受けられる比率であることから、これら共通点が、両意匠部分の類否判断に与える影響は小さい。

イ 相違点の評価
まず、(相違点1)について、傘地の表面の形状等は通常の使用の状態において見えやすい部分に係る相違であることを前提に、本願意匠において平面視中央部から右側に湾曲した後に露先部に向かい左側に湾曲した略S字状の輪郭線をなし、露先部付近は緩やかな湾曲線で対称形の輪郭とした態様は、花びらを強く想起させ、しなやかな印象を与えるのに対し、引用意匠の生地は、平面視中央部は略直線状で、露先にかけて左側に湾曲しつつ露先部に至り、露先部付近は非対称形をなしている点において、直線を用いた無機的な印象を看取させるもので、相互に視覚的印象が大きく異なり、この相違が両意匠部分の類否判断に与える影響は非常に大きい。

(相違点2)について、上記(相違点1)の評価で挙げた生地の輪郭形状の相違をより際だたせる視覚的効果をもたらすので、両意匠部分の類否判断に一定程度の影響を与えるものといえる。

(相違点3)ないし(相違点5)について、何れの相違もこの物品が属する分野において本願出願前より一般的に見られる態様に基づく相違であり、これら相違が両意匠部分の類否判断に与える影響は僅かに止まる。

(4)両意匠部分の形状等の類否判断
両意匠部分の形状等における共通点及び相違点の評価に基づき、意匠部分全体として総合的に観察し判断した場合、(共通点1)ないし(共通点3)が類否判断に与える影響は小さいのに対して、(相違点3)ないし(相違点5)については類否判断に与える影響は僅かに止まるものの、(相違点1)が類否判断に与える影響は非常に大きく、相違点(相違点2)も類否判断に一定程度の影響を与えるものといえる。
したがって、両意匠部分の形状等を総合的に観察した場合、共通点に比べて、相違点がもたらす影響の方が大きいものであるから、両意匠部分の形状等は類似しない。

3 小括

以上のとおり、両意匠は、意匠に係る物品は同一で、両意匠部分の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲も共通するが、両意匠部分の形状等においては、共通点が未だ類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対して、相違点が類否判断に与える影響は共通点のそれを凌駕しており、意匠全体として観察した場合、両意匠部分は、需要者に異なる美感を与えているというべきであるから、本願意匠は、引用意匠に類似するということはできない。

第5 むすび

以上のとおり、原査定の引用意匠をもって、本願意匠は、意匠法3条1項3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから、原査定の拒絶の理由によって、本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。

また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
別掲




審決日 2023-03-08 
出願番号 2021028301 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (B3)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 江塚 尚弘
藤澤 崇彦
登録日 2023-03-23 
登録番号 1740536 
代理人 林 美和 
代理人 稲葉 良幸 
代理人 茜ヶ久保 公二 

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