ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード![]() |
審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 G2 |
---|---|
管理番号 | 1398336 |
総通号数 | 18 |
発行国 | JP |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2023-06-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2022-08-18 |
確定日 | 2023-05-12 |
意匠に係る物品 | ストレージロボット |
事件の表示 | 意願2021− 20340「ストレージロボット」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 主な手続の経緯 令和3年(2021年) 9月21日 意匠登録出願 令和3年(2021年) 9月24日 優先権主張の証明書の提出 令和4年(2022年) 2月15日付け 拒絶理由通知 令和4年(2022年) 3月23日 意見書 令和4年(2022年) 5月24日付け 拒絶査定 令和4年(2022年) 8月18日 審判請求書 第2 本願意匠 本願は、令和3年(2021年)9月21日(パリ条約による優先権主張 2021年(令和3年)4月7日、中華人民共和国(以下「中国」とも いう。)出願番号2021301921442)の意匠登録出願であって、その意匠(以下「本願意匠」という。)は、願書及び願書に添付した図面の記載によれば、意匠に係る物品を「ストレージロボット」としたものであって、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状等」という。)を願書及び願書に添付した図面に記載したとおりとしたものである(別紙第1参照)。 第3 原査定における拒絶の理由及び引用意匠 原査定における拒絶の理由は、本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当する(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)としたものであって、拒絶の理由に引用した意匠は、中華人民共和国が2021年9月14日に発行した中華人民共和国意匠公報に掲載の「自動運搬車両」(公開番号CN306823981S)の意匠(以下「引用意匠」という。)であって、その形状等は、同公報の図面に記載されたとおりのものである(別紙第2参照)。 また、拒絶の理由において、「この意匠登録出願の意匠と下記引用意匠とは、色彩の有無に差異が見られるものの、意匠の大部分を占める各部位においてほぼ同一といえるほどに酷似しているため、本願意匠は引用意匠に類似しているといわざるを得ません。 なお、この意匠登録出願は、願書に記載された第一国出願を基礎としたパリ条約による優先権主張を伴うものですが、優先権証明書記載のいずれの意匠も本願意匠と色彩の有無で差異が見られるため、本願意匠と優先権証明書記載の意匠とは、同一の意匠とはいえず、本願については上記優先権主張の効果は認められません。」とされたものである。 第4 請求人の主張の要旨 1 審判請求書の主張 請求人は、主張はおおむね以下のとおりである。 本審判請求人は、本願意匠と優先権証明書記載の意匠(出願番号が2021301921442で、公開番号がCN306823981Sである引用意匠)とは、同一の意匠であり、パリ条約による優先権主張の効果が認められるものと思料致する。 (1)パリ条約による優先権主張に関する日本の法律規定 (1−1)意匠法の規定 意匠法(特許法の準用)第十5条においては、「特許法第三十8条(共同出願)及び第四十3条から第四十3条の3まで(パリ条約による優先権主張の手続及びパリ条約の例による優先権主張)の規定は、意匠登録出願に準用する」と規定されている。 (1−2)特許法の規定 特許法(パリ条約による優先権主張の手続)第四十3条においては、「パリ条約第4条D(1)の規定により特許出願について優先権を主張しようとする者は、その旨並びに最初に出願をし若しくは同条C(4)の規定により最初の出願とみなされた出願をし又は同条A(2)の規定により最初に出願をしたものと認められたパリ条約の同盟国の国名及び出願の年月日を記載した書面を経済産業省令で定める期間内に特許庁長官に提出しなければならない」と規定されている。 (2)パリ条約による優先権主張に関する日本の意匠審査基準 (2−1)意匠審査便覧の規定 意匠審査便覧15 優先権の15.07 パリ条約による優先権等の主張の効果の認否における意匠の同一についての判断においては、「優先権は、第一国出願に基づいて優先期間内に我が国に意匠登録出願をした場合、その出願について享受することができる利益であり、優先権の主張の効果が認められるためには、我が国への意匠登録出願の意匠とそれに対応する優先権の基礎となる第一国の最初の出願の意匠とは同一でなければならない(パリ条約4条A(1)、同条B)。ただし、願書や図面等の様式は各国法令の相違により多様であることから、意匠の表現形式にかかわらず優先権証明書の中に我が国への意匠登録出願の意匠と実質的に同一の意匠が示されていればよい」と規定されている。 (2−2)意匠審査基準の規定意匠審査基準第VII部4.1(2)においては、「第一国出願の意匠と我が国の意匠登録出願の意匠が同一の意匠であるか否かは、その意匠の属する分野における通常の知識に基づいて、第一国出願の願書の記載及び願書に添付した図面等を総合的に判断することにより行う」と規定されている。 また、同基準第VII部4.1(3)においては、「第一国出願の意匠の認定(意匠に係る物品等、物品等の形状、模様、色彩、意匠登録を受けようとする部分の意匠全体に対する位置・大きさ・範囲等)は、第一国の法令等も考慮して行う」と規定されている。 さらに、同基準第VII部4.6においては、「ただし、図面等に表された意匠の構成要素が異なったとしても、第一国出願の願書のその他の記載等により、我が国の意匠登録出願の意匠にない構成要素について、意匠登録を受けようとするものでないと認められる場合(例えば、第一国出願の図面においては色彩が付されているが、説明で色彩については権利を請求しない旨記載されている)、又は、意匠の作図方法等の表現方法が異なる場合に、第一国出願の願書の記載及び願書に添付した図面等を総合的に判断したときに、我が国の意匠登録出願に記載された意匠と同一の意匠について保護を受けようとするものであることが当然に導き出すことができるものと認められる場合は、両意匠は優先権の認否において同一と判断する」と規定されている。 (3)中国における意匠出願の審査基準に基づき、グレースケールで示され黒色等の色を有する部分を含む本願意匠は、優先権証明書記載の意匠とは実質上同一の意匠であるものと認められるべきである。 (3−1)意匠に関しては、中華人民共和国専利法、中華人民共和国専利法実施細則及び専利審査指南において、次のとおり、 中華人民共和国専利法第2条第4項において以下のとおり規定されている。 日本語訳文「意匠とは、全体的或いは部分的な形状、模様、或いはそれらの組み合わせ、及び色彩、形状、模様の組み合わせからなる、美的感覚に富み、産業用途に適した新しい設計を指す」 また、同法第二十7条において以下のとおり規定されている。 日本語訳文「意匠特許を出願する際には、願書、意匠の図面或いは写真、意匠の簡単な説明などの書類を提出しなければならない」 さらに、同法第六十4条第2項において以下のとおり規定されている。 日本語訳文「意匠特許権の保護範囲は、図面或いは写真に示されている製品の外観設計の対象であり、図面或いは写真に示されている製品の外観設計を説明するために簡単な説明を使用できる」 中華人民共和国専利法実施細則第二十8条において以下のとおり規定されている。 日本語訳文「意匠の簡単な説明において、意匠製品の名称、用途及び意匠の設計要点を明記し、かつ設計要点が最も明瞭に示されている図面或いは写真を一枚指定しなければならない。正投影図の省略や色彩の保護を求める場合は、簡単な説明においてその旨を明記しなければならない」 簡単な説明の明記に関しては、専利審査指南の第一部分第三章4.3簡要説明(簡単な説明)において以下のとおり規定されている。 日本語訳文「(1)意匠製品の名称については、簡単な説明に記入した製品の名称は願書における製品の名称に一致しなければならない。(2)意匠製品の用途については、簡単な説明において、製品カテゴリの決定に役立つ用途を明記しなければならない。複数の用途を持つ製品の場合、簡単な説明において、この製品の複数の用途を明記しなければならない。(3)意匠の設計要点については、意匠の設計要点とは、従来の設計とは異なる製品の形状、模様、及び組み合わせ、或いは色彩、形状、模様の組み合わせ、或いは部位を指す。意匠の設計要点は、要点を明確にして簡潔に説明しなければならない。(4)設計要点が最も明瞭に示されている図面或いは写真を一枚指定する要件について、指定する図面或いは写真は、特許公報に掲載するために使用される。 なお、以下の場合、簡単な説明に明記しなければならない。(1)色彩の保護や正投影図の省略を求める場合については、意匠出願は色彩の保護を求める場合は、簡単な説明においてその旨を明記しなければならない)」 優先権証明書記載の意匠においては、倉庫保管用ロボットの外観設計のカラー図面を提出しており、簡単な説明で色彩の保護を求めていないことから、優先権証明書記載の意匠は色彩を保護しないと認識できる。 本審判請求人は、中国の法律制度では、意匠出願においてカラー図面の提出が可能であり、簡単な説明において色彩の保護を求めておらず、また、ほとんどの国の法律にはそのような規定がないことを考慮すると、パリ条約を通じて日本への入国を申請する際に、グレースケール画像を取得するために本願意匠のカラー図面を脱色しておいた。 つまり、本願意匠は、優先権証明書記載の意匠とは実質上同一の意匠であるものである。 したがって、本出願の意匠は、優先権証明書記載の意匠と同一であるものであり、パリ条約による優先権主張の効果が認められるべきである。 第5 当審の判断 引用意匠は、本願出願前の2021年9月14日に発行した中華人民共和国意匠公報に掲載の「自動運搬車両」(公開番号CN306823981S)の意匠であるが、この意匠は、本願が、第一国出願としてパリ条約の優先権を主張するところの、2021年(令和3年)4月7日、中華人民共和国に出願の意匠(出願番号2021301921442)であり、その後登録され、2021年9月14日に中華人民共和国意匠公報に掲載されるにいたったものである。 本願意匠が、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するか否かは、本願意匠について、パリ条約による優先権の主張の効果が認められるか否かによるから、まず本願意匠が、本願に添付された優先権主張証明書に表された第一国である中華人民共和国に出願の意匠(以下「第一国意匠」という(別紙第2参照)。)と実質的に同一の意匠であるか否か、本願について優先権の主張の効果が認められるか否かについて検討し、その後、本願意匠が、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するか否かについて判断することとする。 1 本願意匠 (1)意匠に係る物品 本願意匠の意匠に係る物品は、倉庫などにおいて、保管対称物の保管場所からの出し入れ及び搬送などを行う「ストレージロボット」である。 (2)本願意匠の形状等 基本的構成態様として、全体は、扁平な略長円柱状の台車部と昇降用レール及び複数のトレー部を備えた略はしご状収容部と昇降可能なピッキング部からなるものであって、 具体的態様として、 台車部は底面4隅寄りにキャスター様小車輪を配し、長手方向中央左右端寄りにやや大きめの車輪を埋没して配し、前後に緩衝部を設けたものであって、略はしご状収容部は、台車部上面の長手方向奥行き長さの前方から約2/3の後方寄りに、二本の昇降用のレールを台車部横幅より僅かに狭く、左右端寄りに鉛直状に設け、その間に上端を含む8本の横桟部を略等間隔に配し、下方の5つ横桟部には後方に差し出すようにトレー部を配している。ピッキング部は、はしご状収容部の前方に設け、上方は開口し、下面は板状で、周側面はやや幅の太い帯状体を略U字状に湾曲したような態様で、湾曲した正面中央が略縦長長方形状に突出しており、側面視で前端は台車部とほぼ同位置に配している。 また、グレースケールで現され、ほぼ全体はごく明るい明調子で、ピッキング部の内周面と下面及び台車部底面は黒色に近い暗い暗調子で現されている。 2 第一国意匠 以下、対比のために図の表記及び図の向きを本願意匠と合わせることとする。 (1)意匠に係る物品 第一国意匠の意匠に係る物品は、中華人民共和国意匠公報の表記「▲倉▼儲机器人」(システム上表示出来ない文字(ひとがしら(人頭)にまげわりふ)について代替して、以下「▲倉▼」と表示する。)(漢字表記「倉儲機器人」和訳:倉庫ロボット)である。 (2)第一国意匠の形状等 第一国意匠の形状等は、本願に添付された優先権主張の証明書第一国出願としてパリ条約の優先権を主張するところの、2021年(令和3年)4月7日、中華人民共和国に出願の意匠(出願番号2021301921442)に表されたとおりのものである。 なお、後述4のとおり、第一国意匠の認定は、「外観設計簡要説明」(※簡体字のため漢字に置き換えて表示。以下同様。)に記載の内容もふまえて行う。 基本的構成態様として、全体は、扁平な略長円柱状の台車部と昇降用レール及び複数のトレー部を備えた略はしご状収容部と昇降可能なピッキング部からなるものであって、 具体的態様として、 台車部は底面4隅寄りにキャスター様小車輪を配し、長手方向中央左右端寄りにやや大きめの車輪を埋没して配し、前後に緩衝部を設けたものであって、略はしご状収容部は、台車部上面の長手方向奥行き長さの前方から約2/3の後方寄りに、二本の昇降用のレールを台車部横幅より僅かに狭く、左右端寄りに鉛直状に設け、その間に上端を含む8本の横桟部を略等間隔に配し、下方の5つ横桟部には後方に差し出すようにトレー部を配している。ピッキング部は、はしご状収容部の前方に設け、上方は開口し、下面は板状で、周側面はやや幅の太い帯状体を略U字状に湾曲したような態様で、湾曲した正面中央が略縦長長方形状に突出しており、側面視で前端は台車部とほぼ同位置に配している。 また、「外観設計簡要説明」に何ら色彩の保護について記載がなく、色彩の保護を求めていないものであるから、ほぼ全体がごく明るい明調子で、ピッキング部の内周面と下面及び台車部底面は黒色に近い暗い暗調子であると認められる。 3 本願意匠と第一国意匠の対比 (1)本願意匠と引用意匠の意匠に係る物品 本願意匠の意匠に係る物品は、「ストレージロボット」であって、引用意匠の意匠に係る物品は、中華人民共和国意匠公報の表記「▲倉▼儲机器人」との記載から日本語に訳すれば「倉庫ロボット」すなわち「ストレージロボット」に係るものであって、本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という)の意匠に係る物品は、一致する。 (2)両意匠の形状等 本願意匠引用意匠の形状等を対比すると、両意匠の形状等は、ほぼ一致するものである。 4 第一国意匠と本願意匠が優先権の認否において同一と認められるかについて パリ条約による優先権を主張するためには、最初の第一国の出願の意匠と後の出願の意匠が同一でなければならないが、各国の法制度はそれぞれに異なり、各国の出願それぞれに意匠の表現形式があるから、優先権の認否においては、最初の第一国の出願の意匠と後の出願の意匠において、表現形式 がなっていても、実質的に同一であればよいといえ、優先権証明書に記載の最初の出願の意匠中に我が国への意匠登録出願の意匠が開示されているか否かは、優先権証明書全体記載内容を総合して行い、また、優先権証明書に記載された最初の出願の意匠の認定は、その国の法令などを考慮して行うものである。 第一国意匠と本願意匠との対比においては、意匠に係る物品は、前記、3(1)のとおり、一致するから同一であって、共に「ストレージロボット」に係るものと認められる。 そして、形状等については、前記、3(2)のとおり、本願意匠と第一国意匠はほぼ一致するから実質的に同一の意匠である。 なお、第一国意匠に記載の図面は色彩の施された状態のものであるが、中華人民共和国の出願における色彩の保護を求める場合は、その旨記載しなければならないところ、本願に添付の優先権証明書に記載の第一国の出願の「外観設計簡要説明」には、色彩の保護を求める記載は見当たらず、色彩の表された図面に関わらず、色彩の保護を求めないものと認められるから、第一国の出願の意匠の認定において、第一国意匠は、実質的には、色彩を施さない、形状と明暗調子のみを表したものと認められる。 そうすると、前記認定の本願意匠の形状等と照らして、優先権証明書に記載の第一国出願の意匠には実質的に同一の意匠が表されていると認め得るものであるから、本願意匠はパリ条約で定められた要件を満し、パリ条約による優先権の主張の効果は認められる。 5 本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に該当するかについて 前述のとおり、本願について請求人が申し立てた優先権の主張が認められるから、第一国の出願日を本願の出願の日とみなすことができる。 そして、引用意匠は、本願の出願の日とみなすことができる2021年4月7日より後の2021年9月14日に中華人民共和国意匠公報に掲載された意匠であって、引用意匠は、先行の公知意匠、すなわち、本願の出願前に公知になった意匠とは認められないので、本願意匠は意匠法第3条第1項第3号に該当しない。 第6 むすび 以上のとおりであって、本願については、パリ条約による優先権の主張の効果は認められるものであって、引用意匠をもって、本願意匠を、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから、原査定の拒絶の理由によって、本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。 また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |
審決日 | 2023-04-25 |
出願番号 | 2021020340 |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(G2)
|
最終処分 | 01 成立 |
特許庁審判長 |
内藤 弘樹 |
特許庁審判官 |
渡邉 久美 江塚 尚弘 |
登録日 | 2023-06-06 |
登録番号 | 1746245 |
代理人 | 弁理士法人ユニアス国際特許事務所 |