• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 N3
管理番号 1398340 
総通号数 18 
発行国 JP 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2023-06-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2022-09-28 
確定日 2023-05-26 
意匠に係る物品 施工管理機能付き情報端末機 
事件の表示 意願2021− 14038「施工管理機能付き情報端末機」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯

本願は、2021年6月14日のアメリカ合衆国への出願に基づくパリ条約による優先権の主張を伴い、意匠法4条2項の規定の適用を受けようとする、令和3年(2021年)6月28日の意匠登録出願であって、その後の主な手続の経緯は、以下のとおりである。

令和 4年(2022年) 1月31日付け 拒絶理由通知書
同年 3月11日 意見書の提出
同年 6月27日付け 拒絶査定
同年 9月28日 審判請求書の提出

第2 本願の意匠

本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は、意匠に係る物品を「施工管理機能付き情報端末機」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形状等」という。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり、本願意匠において物品の部分として意匠登録を受けようとする部分(以下「本願部分」という。)を、「意匠登録を受けようとする部分を実線で、それ以外の部分を破線で表した。一点鎖線は、登録を受けようとする部分とそれ以外の部分の境界のみを表している。」としたものである。(別紙第1参照)

第3 原査定における拒絶の理由及び引用した意匠

原査定における拒絶の理由は、本願意匠は、出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者(以下「その意匠の属する分野における通常の知識を有する者」を「当業者」という。)が日本国内又は外国において公然知られ、頒布された刊行物に記載され、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった形状等又は画像に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので、意匠法3条2項の規定に該当するとしたものであって、具体的には、以下のとおりである。

「この意匠登録出願の意匠は、施工管理機能付き情報端末機に係る画像であって、内部の下部にアイコンを配置した縦長で隅丸のスライダを画像エリアの右上に配置したものと認められます。
しかしながら、内部の下部にアイコンを配置した縦長で隅丸のスライダは、画像1−2にみられるように本願出願前に公知です。また、画像エリアの種々の位置にスライダを配置することが、画像3−4にみられるように本願出願前に一般的に行われています。
そうすると、本願意匠は、本願出願前に公知の内部の下部にアイコンを配置した縦長で隅丸のスライダについて、本願出願前に一般的に行われているように画像エリア内の配置を行い、施工管理機能付き情報端末機の画像として表したものに過ぎず、当業者であれば容易に創作をすることができたものです。

画像1
大韓民国意匠商標公報 2020年12月 9日
画像デザイン表示型ディスプレイパネル(登録番号30−1085953)の意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第RH02442469号)
の表示部に表された画像の一番左に表されたスライダの画像

画像2
表題 FonePaw iPhoneの画面録画で音声調整・音ズレ対策・外部/内部音声の収録方法まとめ
媒体のタイプ [online]
掲載年月日 令和 3年 4月20日
検索日 令和 4年 1月26日
情報の情報源 インターネット
情報のアドレス
https://www.fonepaw.com/ja/tutorials/sound-trouble-when-recording-iphone.html
の「一、iPhoneの録画でマイクの音声を収録する方法」の項目内上部、5つ並んだ画像の一番右側の画像の右部に表されたスライダの画像

画像3
表題 SeaGate Blog ストリートビュー
媒体のタイプ [online]
掲載年月日 平成20年 8月 5日
検索日 令和 4年 1月26日
情報の情報源 インターネット
情報のアドレス http://sigbox3.web.fc2.com/Pentry_id_1574227.html
の「また、Google EarthではGoogleマップにはない機能があります。」との記載の上に表された画像のうちCGが表された大きな矩形のエリアの画像

画像4
表題 ユートラベルノート 地図の使い方・見方
媒体のタイプ [online]
掲載年月日 平成23年 5月16日
検索日 令和 4年 1月26日
情報の情報源 インターネット
情報のアドレス
https://www.utravelnote.com/bbs/utravelnote_guide/1764
の「*地図動作」の欄、「・表示された地図をドラッグして目的の場所に移動させて下さい。」との記載の下に表された画像のうち上部のバーを除いた大きな矩形のエリアの画像」

第4 当審の判断

以下、本願意匠の意匠法3条2項の該当性、すなわち、本願意匠が当業者であれば容易に創作することができたか否かについて検討し、判断する。

1 本願意匠
(1)意匠に係る物品
本願の意匠に係る物品は、主に建築物の施工現場で使用され、設計情報の確認や検査記録の作成等を行う「施工管理機能付き情報端末機」である。

(2)本願部分
願書の記載及び願書に添付した図面の記載の内容から、本願部分の用途及び機能、位置、大きさ及び範囲、並びに形状等は、以下のとおりである。

ア 本願部分の用途及び機能
本願部分の用途及び機能は、願書の記載によれば、デジタル空間(BIMモデル)と現実空間(施工現場)とを重ね合わせて表示される画面において、デジタル空間表示の透過率を設定する操作画像を含む表示画面の一部であって、透過率表示用の操作画像を指で上下にスライドさせることにより透過率を設定することができるものである。

イ 本願部分の位置、大きさ及び範囲
本願部分は、情報端末機の正面に取り付けた表示画面内の右端に位置し、縦幅は表示画面の縦幅と等幅で、横幅は表示画面の横幅の約1/13の大きさ及び範囲とするものである。

ウ 本願部分の形状等
(ア)基本的構成態様
本願部分は、全体を略縦長帯状とし、その中央上方寄りに略縦長隅丸長方形の操作画像(以下「スライダ」ともいう。)を形成したものであって、当該スライダは、変化した状態において、横幅一杯に横線が現れて上下方向の任意の位置にスライドするものである。
(イ)各部の長さの比率
本願部分は、縦横の長さの比率を約9.6:1とし、上から約1/8の位置にスライダを配置したものであって、当該スライダの縦横の長さの比率は約3:1で、縦幅は全体の約1/5で、横幅は全体の約4/7である。

2 引用意匠の認定
原査定における拒絶の理由で引用された画像1ないし画像4について、以下のとおり認定する。
なお、画像1ないし画像4の出典及び公知日については、前記第3に記載したとおりである。

(1)画像1(別紙第2参照)
ア 画像1は、情報端末機のスライダの画像である。
イ 画像1の用途及び機能は、音量調整を行う際に表示されるレベル表示である。
ウ 画像1の形状等は、縦横の長さの比率を約3:1とする略縦長隅丸長方形であって、真ん中付近から上を白色、それ以外を青色に塗り分け、下端寄りにスピーカーの絵文字(ピクトグラム)を形成している。

(2)画像2(別紙第3参照)
ア 画像2は、情報端末機のスライダの画像である。
イ 画像2の用途及び機能は、音量調整を行う際に表示されるレベル表示である。
ウ 画像2の形状等は、縦横の長さの比率を約2:1とする略縦長隅丸長方形であって、下から約1/4を白色、それ以外を黒色に塗り分け、その境目付近にスピーカーの絵文字を形成している。

(3)画像3(別紙第4参照)
ア 画像3は、インターネットのブラウザにより表示したウェブページの画像である。
イ 画像3の用途及び機能は、地図情報を表示し、地図の拡大又は縮小等を行うことができるものである。
ウ 画像3の形状等は、縦横の長さの比率を約0.9:1とする略横長長方形であって、全面に街の風景を表示し、その前面の右上隅に縦幅の約1/6の長さの縦線状のスライダと、その左横に略横長長方形のウインドウを階層状に形成している。スライダは、両端に略釣鐘状の操作ボタン(アロー)と真ん中に略小円状の操作ボタン(ノブ)を形成している。

(4)画像4(別紙第5参照)
ア 画像4は、インターネットのブラウザにより表示したウェブページの画像である。
イ 画像4の用途及び機能は、地図情報を表示し、地図の拡大又は縮小等を行うことができるものである。
ウ 画像4の形状等は、縦横の長さの比率を約1:1.6とする略横長長方形であって、全面に地図を表示し、その前面の右上隅に略横長楕円形の画像を形成し、その下側に縦幅の約1/3の長さの縦線状のスライダを形成し、左端近傍に略縦長長方形のウインドウを階層状に形成している。スライダは、両端に略釣鐘状の操作ボタン(アロー)と真ん中やや上寄りに略小長円状の操作ボタン(ノブ)を形成している。

3 本願部分の創作性の検討
この意匠の属する分野において、音量を調整するために略縦長長方形のスライダの画像を用いることは、本願の出願前に公然知られているものである(画像1及び画像2)。また、インターネットのウェブページにおいて、地図を拡大又は縮小するために用いられるスライダの画像を表示画面の右上隅に形成したものも、本願の出願前に公然知られているものである(画像3)。
しかしながら、デジタル空間と現実空間とを重ね合わせて表示できる情報端末機において、本願部分のように、略縦長長方形の操作画像中の横線を上下にスライドさせることにより現実空間に対するデジタル空間の透過率を設定できるものは、本願部分の他には見られないから、本願部分は、当業者にとって、格別の創作を要したものといわざるを得ない。
そうすると、本願部分の態様は、この種物品分野において独自の着想によって創出したものであり、当業者が公然知られた形状等に基づいて容易に本願意匠の創作をすることができたということはできない。

第5 むすび

以上のとおりであって、本願意匠は、原審が示した理由によっては意匠法3条2項に規定する意匠に該当しないものであるから、この拒絶の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。

また、当審において、更に審理した結果、他に拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。

別掲













審決日 2023-05-09 
出願番号 2021014038 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (N3)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 成田 陽一
内藤 弘樹
登録日 2023-06-21 
登録番号 1747609 
代理人 恩田 博宣 
代理人 恩田 博宣 
代理人 恩田 誠 
代理人 恩田 誠 
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ