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審決分類 |
審判 査定不服 2項容易に創作 取り消して登録 G2 |
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管理番号 | 1399454 |
総通号数 | 19 |
発行国 | JP |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2023-07-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2022-11-18 |
確定日 | 2023-06-20 |
意匠に係る物品 | 車両用積載物支持金具 |
事件の表示 | 意願2021− 9720「車両用積載物支持金具」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 事案の概要 1 手続の経緯 本願は、意匠法第4条第2項の規定の適用を受けようとする、令和3年(2021年)5月10日の意匠登録出願であって、その後の主な手続の経緯は、以下のとおりである。 令和3年(2021年) 5月19日付け:拒絶理由通知(1回目)の送 付 同 年 7月 1日 :期間延長請求書 同 年 9月 2日 :拒絶理由通知(1回目)に対 する意見書の提出 同 年 9月 2日 :手続補正書の提出 令和4年(2022年) 3月25日付け:拒絶理由通知(2回目)の送 付 同 年 5月 2日 :拒絶理由通知(2回目)に対 する意見書の提出 同 年 8月19日付け:拒絶査定 同 年 11月18日 :審判請求書の提出 2 本願意匠の願書及び添付図面の記載 本願は、物品の部分について意匠登録を受けようとする意匠登録出願であって、本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は、意匠に係る物品を「車両用積載物支持金具」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形状等」という。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分(以下「本願部分」という。)を、「実線で表した部分が、意匠登録を受けようとする部分である。」としたものである(別紙第1参照)。 3 原査定の拒絶の理由及び引用した意匠 令和4年(2022年)3月25日の原査定の拒絶の理由は、本願意匠が、出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られ、頒布された刊行物に記載され、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった形状等又は画像に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので、意匠法第3条第2項の規定に該当するとしたものであって、具体的には、以下のとおりである。 「本願は物品の部分について意匠登録を受けようとするもので、意匠に係る物品を「車両用積載物支持金具」とし、意匠登録を受けようとする部分をヘッドレスト等の円柱部材に取り付ける金具の内周部分の形状とするものです。 本願意匠が属する車両用部品の物品分野においては、本願のようにヘッドレスト等の円柱部材等に何らかの装備品を取り付けるための金具について、その円柱に接する面に円柱の内周形状をなす造形を採用することは、例えば、意匠1、意匠2及び意匠3に示すようにごく普通に見られ、本願意匠の意匠登録を受けようとする部分である平面視約4分の3程度の内周形状(そして、その他部分を一部開口部とした形状)も、例えば意匠3及び意匠4に示すようにこの分野において本願出願前より公然知られた形状といえます。 そうすると、本願意匠は物品を「車両用積載物支持金具」として、この分野で公然知られた造形手法に基づき、極普通に見られる部分形状について意匠登録を受けようとするものに過ぎず、本願意匠の属する分野における通常の知識を有する者においては、特段の創意なく容易に創作できたものと認められます。 意匠1(当審注:別紙第2参照) 特許庁発行の公開実用新案公報記載 昭和61年実用新案出願公開第118822号 意匠2(当審注:別紙第3参照) 大韓民国意匠商標公報2017年5月29日17−16号 自動車用運転席保護板(登録番号30−0907778)の意匠 (特許庁意匠課公知資料番号第HH29417814号) 意匠3(当審注:別紙第4参照) 特許庁総合情報館が1999年4月5日に受け入れた 1998年6月15日発行の大韓民国意匠商標公報(CD−ROM番号:1998−04)に記載された意匠登録第0219635号の自動車用運転席保護板の意匠 (特許庁意匠課公知資料番号第HH14512359号) 意匠4(当審注:別紙第5参照) 特許庁総合情報館が1996年4月8日に受け入れた アメリカ意匠公報:オフィシャルガゼット 1996年1月16日3号 第2194頁所載 自動車用バックミラー取付金具の意匠 (特許庁意匠課公知資料番号第HH09009306号) 意匠5(当審注:別紙第6参照) 特許庁総合情報館が1997年10月9日に受け入れた 大韓民国意匠公報1997年8月29日 第87頁所載 自動車用日除けガイド固定金具の意匠 (特許庁意匠課公知資料番号第HH11055925号)」 第2 当審の判断 本願意匠の意匠法第3条第2項の該当性について、すなわち、本願意匠の出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)であれば容易に本願意匠の創作をすることができたか否かについて、以下検討し、判断する。 1 本願意匠の認定 (1)意匠に係る物品 本願意匠の意匠に係る物品は、自動車の座席のヘッドレストポールに車両用積載物を支持させるために用いられる「車両用積載物支持金具」であって、車両用積載物をヘッドレストポールに取り付けることができるものである。 (2)本願部分の用途及び機能 本願部分の用途及び機能は、車両用積載物支持金具におけるヘッドレストポールを把持する部分(以下「クランプ部」という。)であり、車両用積載物支持金具をヘッドレストポールに固定する機能を有するものである。 (3)本願部分の位置、大きさ及び範囲 本願部分の位置、大きさ及び範囲は、車両用積載物支持金具における、平面視において円周の約1/4の部分が開口した、直径と高さの比率が約1:2の略円筒形状のクランプ部の内周面の部分を、その位置、大きさ及び範囲とするものである。 (4)本願部分の形状等 ア 全体の形状等は、平面視において円周の約1/4の部分が開口した略円筒形状の内周面の部分の形状である。 イ また、その配置態様は、僅かに間隔をあけて平行に配置した左右2枚の略長方形板状体を連結する部分に、開口した略円筒形状のクランプ部を、それらの内側面が滑らかに連結するようにして配設したものであって、平面視において、左側の略長方形板状体の内側面がクランプ部の内周面の接線方向になるように配設し、右側の略長方形板状体の内側面がクランプ部の内周面の法線方向になるように配設したものである。 ウ そして、開口した略円筒形状のクランプ部の内周面部分の直径と高さの比率は、約1:2である。 2 原査定の拒絶の理由における引用意匠の認定 原査定の拒絶の理由で引用された、意匠1ないし意匠5の意匠に係る物品及び本願部分と対比、判断する部分、すなわち、本願部分に相当する部分の形状等は、概要以下のとおりである。 以下、対比のため、本願意匠の図面における正面、平面等の向きを、意匠1ないし意匠5にもあてはめて以下記載する。 (1)意匠1(別紙第2参照) 意匠1は、特許庁発行の公開実用新案公報(公開日:昭和61年(1986年)7月26日)昭和61−118822号に記載された「着色透視板付サンバイザー用締め付け具」の意匠であって、本願部分に相当する部分の形状等は以下のとおりである。 ア 部分全体の形状等は、円周の約1/4の部分が開口した略円筒形状の内側面部分の形状である。 イ また、その配置態様は、僅かに間隔をあけて平行に配置した左右2枚の略長方形板状体を連結する部分に、開口した略円筒形状の締め具を配設したものであって、締め具の下方部分に左右の略長方形板状体を左右対称となるように配設したものである。 ウ 締め具は、開口した略短円筒形状である。 (2)意匠2(別紙第3参照) 意匠2は、大韓民国意匠商標公報2017年5月29日17−16号に記載の「自動車用運転席保護板(登録番号30−0907778)」の意匠であって、本願部分に相当する部分の形状等は以下のとおりである。 ア 部分全体の形状等は、略円筒形状の内周面部分の形状である。 イ また、本物品は、自動車の座席のヘッドレストポールを略円筒形状のクランプ部の内部に挿入して固定するものである。 ウ そして、略円筒形状のクランプ部の内周面部分の直径と高さの比率は、約1:3.5である。 (3)意匠3(別紙第4参照) 意匠3は、1999年4月5日に、特許庁総合情報館が受け入れた、1998年6月15日発行の大韓民国意匠商標公報に記載された意匠登録第0219635号の「自動車用運転席保護板」の意匠であって、本願部分に相当する部分の形状等は以下のとおりである。 ア 部分全体の形状等は、その中央部分を平面視が上に凸の円弧状に形成した略長方形板状体の湾曲した内周面の部分の形状である。 イ また、本物品は、自動車の座席のヘッドレストポールを、湾曲した板状体と略長方形板状体で挟んで固定するものである。 (4)意匠4(別紙第5参照) 意匠4は、1996年4月8日に、特許庁総合情報館が受け入れた、1996年1月16日3号のアメリカ意匠公報:オフィシャルガゼット 第2194頁に所載の「自動車用バックミラー取付金具」の意匠であって、本願部分に相当する部分の形状等は以下のとおりである。 ア 部分全体の形状等は、円周の一部を長手方向に切断し、隙間を設けた略円筒形状の内側面部分の形状である。 イ また、バックミラー取付け時には、取付金具のクランプ部の内周面の形状は、隙間が閉じて略円筒形状となるものである。 (5)意匠5(別紙第6参照) 意匠5は、1997年10月9日に、特許庁総合情報館が受け入れた大韓民国意匠公報1997年8月29日の第87頁に所載の「自動車用日除けガイド固定金具」の意匠であって、本願部分に相当する部分の形状等は以下のとおりである。 ア 部分全体の形状等は、円周の約1/4の部分が開口した略円筒形状の内側面部分の形状である。 イ また、その配置態様は、略略長方形板状体内側面の内側端部から連続して開口した略円筒形状の固定金具を形成したものである。 3 本願意匠の創作容易性の判断 (1)意匠法第3条第2項の判断手法について 意匠法第3条第2項の規定は、意匠登録出願前に当業者が、日本国内又は外国において公然知られた形状等に基づいて容易に創作をすることができた意匠である場合には、その意匠については、排他独占的な権利を与えるべき意匠の創作的な価値を見出せないのであるから、登録できないとするものである。 すなわち、意匠法第3条第2項の規定は、先行する意匠を全体として直接的に対比することに止まらず、その先行する意匠を構成する各部位の形状等を構成要素として抽出したり、物品を離れた形状等そのものをモチーフとして判断のための材料として使用したりして、出願された意匠が、それら先行する形状等に基づいて容易に創作することができたものか否かを、当業者が行う意匠の創作という観点から判断するものである。 (2)本願意匠に対する意匠法第3条第2項の適用について 本願意匠の当業者とは、自動車用部品の開発・設計を行う自動車パーツの専門家であるといえる。 したがって、自動車パーツのデザインについての通常の知識を有する上記当業者が本願部分の創作を行うという観点から、本願意匠の創作容易性について以下考察することとする。 本願部分全体の形状等については、平面視において円周の約1/4の部分が開口した略円筒形状の内側面部分の形状であるところ、自動車パーツのデザインについての通常の知識を有する当業者であれば、意匠1にあるように公然知られた形状のものにすぎず、その略円筒形状の内側面部分の直径と高さの比率を約1:2とした点も含め、本願部分の形状等には着想の新しさないし独創性があるとはいうことはできない。 しかしながら、本願部分に係る配置態様は、僅かに間隔をあけて平行に配置した左右2枚の略長方形板状体を連結する部分に、開口した略円筒形状のクランプ部を、それらの内側面が滑らかに連結するようにして配設したものであって、平面視において、左側の略長方形板状体の内側面がクランプ部の内周面の接線方向になるように配設し、右側の略長方形板状体の内側面がクランプ部の内周面の法線方向になるように配設したものは、意匠1ないし意匠5には見ることはできず、このような配置態様をなしうるように創作した本願部分の形状等には着想の新しさないし独創性があり、当業者が意匠1ないし意匠5に接したとしても容易になし得るものではない。 そうすると、本願部分全体の形状自体には、特段特徴のないものであるとしても、その形状のものを特徴ある配置態様で構成した本願部分の形状等には、着想の新しさないし独創性があるということができ、この物品分野の当業者にとって、本願意匠の創作を容易になし得るとはいうことはできない。 よって、本願意匠は、その出願前に当業者が日本国内又は外国において公然知られ、頒布された刊行物に記載され、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった形状等又は画像に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものとすることはできない。 第3 むすび 以上のとおりであって、本願意匠は、原審が示した理由によっては意匠法第3条第2項に規定する意匠に該当しないものであるから、原査定の拒絶の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。 また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2023-05-29 |
出願番号 | 2021009720 |
審決分類 |
D
1
8・
121-
WY
(G2)
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最終処分 | 01 成立 |
特許庁審判長 |
小林 裕和 |
特許庁審判官 |
江塚 尚弘 渡邉 久美 |
登録日 | 2023-07-04 |
登録番号 | 1748522 |
代理人 | 弁理士法人 津国 |