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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 D7 |
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管理番号 | 1399455 |
総通号数 | 19 |
発行国 | JP |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2023-07-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2022-12-02 |
確定日 | 2023-06-19 |
意匠に係る物品 | いす |
事件の表示 | 意願2021− 12382「いす」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 主な手続の経緯 令和3年(2021年) 6月10日 意匠登録出願 同年 12月 9日付け 拒絶理由通知 令和4年(2022年) 3月29日 意見書の提出 同年 9月 2日付け 拒絶査定 同年 12月 2日 審判請求書の提出 第2 本願の意匠 本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は、意匠に係る物品を「いす」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状等」という。)を、願書の記載及び願書に添付した写真に記載されたとおりとしたものである。(別紙第1参照) 第3 原査定の拒絶の理由及び引用の意匠 原査定の拒絶の理由は、本願意匠は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の意匠(以下「引用意匠」という。)に類似するものであるから、意匠法3条1項3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)に該当する、というものである。 引用意匠(別紙第2参照) 独立行政法人工業所有権情報・研修館が2016年 6月27日に受け入れた雑誌、domus 1002巻 第123頁所載 左のいす(MBRACE)のクッションを除いた意匠 (特許庁意匠課公知資料番号第HB28002649号) 第4 当審の判断 1 本願意匠と引用意匠の対比 (1)意匠に係る物品 本願意匠及び引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、共に「いす」であるから、一致する。 (2)両意匠の形状等 両意匠の形状等については、主として、以下のとおりの共通点及び相違点がある。なお、引用意匠の認定に際しては、本願意匠と同じ向きとして、認定する。 ア 共通点 (ア)基本的構成態様 両意匠は、本体は、背もたれと座を一体状に形成したものであって、外枠を略変形楕円形のフレームで枠取り、これにやや粗目のメッシュ材を張設し、底面に4本の略丸棒状の脚を裾広がり状に開脚して取り付け、脚の中程に2本の略角棒状の貫(ぬき)を対角線状に形成している点、 各部の態様として、 (イ)本体は、全体的にやや背面側に傾斜している点、 (ウ)背もたれは、左右に凹湾曲状とし、上端はほぼ水平で左右の角から前方に向かって外側に膨らみながら緩やかに傾斜している点、 (エ)脚は、前脚より後脚の方が外側に傾斜し、両側の前脚と後脚の付け根の間に略横棒状の座枠を取り付けている点において、共通する。 イ 相違点 (ア)本体について、本願意匠は、座面の奥行きが浅く、左右の湾曲度合いも緩やかであるのに対し、引用意匠は、座面の奥行きが深く、左右の湾曲度合いが急で上に迫り上がっている点、 (イ)背もたれについて、本願意匠は、両側が上方に向かって内側に傾斜しているのに対し、引用意匠は、両側が上方に向かって外側に傾斜している点、 (ウ)本体のフレームについて、本願意匠は、フレーム全体を細い平紐で籐巻き(とまき)状に巻いているのに対し、引用意匠は、不明である点において、相違する。 2 類否判断 以上の共通点及び相違点が両意匠の類否判断に与える影響の評価に基づき、総合的に観察して、両意匠の類否を意匠全体として検討し、判断する。 (1)意匠に係る物品 両意匠の意匠に係る物品は一致するから、同一である。 (2)形状等の共通点及び相違点の評価 ア 共通点の評価 この種物品の分野において、メッシュ材で張設した略変形楕円形の本体底面に4本の脚を開脚して取り付け、脚の中程に対角線状に貫を形成し、両側の前後の脚の付け根の間に座枠を取り付けたものが、以下の参考意匠に見られるとおり、本願の出願前から公然知られていることから、この共通するとした態様は、両意匠のみに共通するものとはいえず、共通点(ア)ないし共通点(エ)が、両意匠の類否判断に与える影響は小さい。 参考意匠(別紙第3参照) 電気通信回線の種類 インターネット 掲載確認日(公知日) 平成31年1月31日(2019.1.31) 受入日 平成31年2月22日(2019.2.22) 掲載者 デドン、ゲゼルシャフト、ミット、ベシュレンクテル、ハフツング 表題 DEDON | MBRACE | Wing chair 掲載ページのアドレス https://www.dedon.de/en/Product-Finder/furniture/mbrace/wing-chair に掲載された「いす」の意匠 (特許庁意匠課公知資料番号第HJ30062397) イ 相違点の評価 当該物品において、背もたれや座は、身体に接し、使用感に大きく関わるから、需要者が最も強く注意を払う部位であり、また、前記アのとおり、両意匠の基本的な構成はごく一般的なものであるから、需要者は、本体のより具体的な形状等に着目するものといえるところ、相違点(ア)のとおり、座面の奥行きが浅く、左右の湾曲度合いも緩やかである本願意匠と、座面の奥行きが深く、左右の湾曲度合いが急で上に迫り上がっている引用意匠とは、一見して異なる視覚的印象となって、需要者に異なる美感を起こさせるものであるから、相違点(ア)が、両意匠の類否判断に与える影響は大きい。また、相違点(イ)についても、背もたれの両側を内側に傾斜している本願意匠の態様は、座に比べて小振りで控え目な印象を与えているのに対し、引用意匠の背もたれは、外側に大きく張り出して大きく目立っており、需要者に別異の印象を与えるものといえるから、相違点(イ)が、両意匠の類否判断に与える影響は大きい。さらに、相違点(ウ)についても、最も目立つ正面のフレームにおいて、本願意匠は、メッシュ材の隙間から籐巻きされたフレームがはっきり確認できるところ、フレームの態様が不明である引用意匠との相違は、需要者に異なる美感を起こさせるものといえるから、相違点(ウ)は、両意匠の類否判断に与える影響は大きい。 ウ 形状等の類否判断 両意匠の形状等における共通点及び相違点の評価に基づき、意匠全体として総合的に観察し判断した場合、共通点は、両意匠の類否判断に与える影響は小さいものであるのに対し、相違点(ア)ないし相違点(ウ)が、両意匠の類否判断に与える影響は大きいものである。 したがって、両意匠の形状等を全体として総合的に観察した場合、両意匠の形状等は、共通点に比べて、相違点が両意匠の類否判断に与える影響の方が大きいものであるから、両意匠の形状等は類似しない。 (3)小括 以上のとおり、両意匠は、意匠に係る物品は同一であるが、形状等において、共通点が未だ両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対して、相違点が両意匠の類否判断に与える影響は共通点のそれを凌駕しており、意匠全体として見た場合、両意匠は、需要者に異なる美感を与えているというべきであるから、本願意匠は、引用意匠に類似するということはできない。 第5 むすび 以上のとおりであって、原査定の引用意匠をもって、本願意匠は、意匠法3条1項3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから、原査定の拒絶の理由によって、本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。 また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2023-05-31 |
出願番号 | 2021012382 |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(D7)
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最終処分 | 01 成立 |
特許庁審判長 |
小林 裕和 |
特許庁審判官 |
尾曲 幸輔 内藤 弘樹 |
登録日 | 2023-07-05 |
登録番号 | 1748611 |
代理人 | 大槻 聡 |