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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 C3
管理番号 1399456 
総通号数 19 
発行国 JP 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2023-07-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2022-12-16 
確定日 2023-06-13 
意匠に係る物品 Body of a vacuum cleaner 
事件の表示 意願2021−500898「Body of a vacuum cleaner」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の主な経緯
本願は、2020年(令和2年)8月28日の大韓民国への出願に基づくパリ条約による優先権の主張を伴う、国際登録日を2021年2月24日とする国際意匠登録出願であって、その後の手続の主な経緯は以下のとおりである。

令和4年 2月 2日付 :拒絶の通報
5月10日 :意見書の提出
9月 7日付 :拒絶査定
12月16日 :審判請求書の提出
令和5年 2月 9日 :手続補正書(方式)の提出

第2 本願意匠
本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は、願書及び願書に添付した図面によれば、意匠に係る物品を「Body of a vacuum cleaner」(参考訳:「掃除機本体」、以下日本語訳で示す。)とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状等」という。)を願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであって、「The broken lines depict portions of the body of a vacuum cleaner that form no part of the claimed design」(参考訳:「破線は掃除機本体において登録を求める意匠の部分を構成しない箇所を描く」)として、意匠登録を受けようとする部分を実線で表したものである(別紙第1参照)。

第3 原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は、本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するとしたものであって、拒絶の理由に引用した意匠(以下「引用意匠」という。)は次のとおりである(別紙第2参照)。

引用意匠
Vacuum cleaner body(当審参考訳:「掃除機本体」、以下日本語訳で示す。)の意匠のフィルターを除く全体の部分
公報発行官庁 世界知的所有権機関
文献名 国際意匠公報
出願日 2019年7月29日
登録日 2019年7月29日
登録番号 DM/204188 - 001
公開日(公報発行日) 2020年1月31日
権利者の氏名/名称 LG ELECTRONICS INC.
権利者の住所/居所 128, Yeoui-daero, Yeongdeungpo-gu 07336 Seoul (KR)
公知資料番号 HH31520661
なお、拒絶の通報に記載の公知資料番号「HH3152066」は誤記であり、正しくは、同参考和訳に記載の「HH31520661」であるものと認められる。

第4 当審の判断
1 本願意匠
本願意匠は、上記第2の願書の記載及び願書に添付した図面の記載によると、以下のとおりである。
(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は「掃除機本体」であり、吸気口にノズル等のアタッチメントを取り付けた上で掃除機として使用するものである。
(2)意匠登録を受けようとする部分の位置、大きさ及び範囲並びに用途及び機能
本願意匠の意匠登録を受けようとする部分(以下「本願部分」という。)は、意匠に係る物品全体のうち、透明のダストカップ容器内に見通すことができる内部機構部分以外の外観の形状等全てに係る位置、大きさ及び範囲であって、ダストカップ容器及び排気口を伴う本体部、吸気口を有するノズル接続部、並びに、バッテリー収納庫及び操作ボタンを一体化したハンドル部としての用途及び機能を有するものである。
(3)本願部分の形状等
〔A1〕本願部分の全体は、中央の本体部、本体部から前方に突出するノズル接続部、及び、本体部後方のハンドル部からなる。
〔A2〕本体部は、直径比約2倍の高さを有する略円柱形状であり、上半部の筐体を不透明、下半部のダストカップ容器を透明とした上で、天面を含む最上部には排気口部を設けている。
〔A3〕排気口部は、正面(本願意匠では図1.2に表された、左から、ノズル接続部、本体部、ハンドル部を視覚観察できる面をいう。以下同じ。)におけるハンドル部上端と同高の水平分岐線より上の範囲であって、その厚みは本体部上半部の約6分の1を占めており、角部は直角である。また、その天面には、極細幅の縁部を経て、本体直径比約10分の1の幅で、4つの小円孔からなる円孔列を放射状かつ円環状に多数連続配置することで形成したメッシュ状の排気口を設け、その内方は、排気口面から連なる無模様の円形状平滑面としている。
〔A4〕ノズル接続部は、本体部高さの略中央、上半部と下半部の接続位置から前方に突出する態様のものであり、略錐台形状の接続基台部を経て、やや縮径した略円筒形状の吸気口を設けてなるものである。
〔A5〕ハンドル部は、上半部のハンドルグリップと下半部のバッテリー収納庫とを曲面で一体的に形成した態様のものであり、ハンドル上部後方の傾斜面には操作ボタンを配している。
〔A6〕ハンドルグリップは、後方(外側面)にエンボス状の密な小突起群を配し、前方(内側面)は、舌片状の分割突起を挟んで上下に不連続な握り面を形成している。

2 引用意匠
(1)意匠に係る物品
引用意匠の意匠に係る物品は「掃除機本体」であり、吸気口にノズル等のアタッチメントを取り付けた上で掃除機として使用するものである。
(2)本願部分に相当する部分の位置、大きさ及び範囲並びに用途及び機能
本願部分に相当する引用意匠の部分(以下「引用部分」という。)は、引用意匠の意匠に係る物品全体のうち「フィルターを除く全体の部分」、すなわち、透明のダストカップ容器内に見通すことができる内部機構部分以外の外観の形状等全てに係る位置、大きさ及び範囲であって、ダストカップ容器及び排気口を伴う本体部、吸気口を有するノズル接続部、並びに、バッテリー収納庫及び操作ボタンを一体化したハンドル部としての用途及び機能を有するものである。
(3)引用部分の形状等
〔B1〕引用部分の全体は、中央の本体部、本体部から前方に突出するノズル接続部、及び、本体部後方のハンドル部からなる。
〔B2〕本体部は、直径比約2倍の高さを有する略円柱形状であり、上半部の筐体を不透明、下半部のダストカップ容器を透明とした上で、天面を含む最上部には排気口部を設けている。
〔B3〕排気口部は、正面におけるハンドル部上端と同高の水平分岐線より上の範囲であって、その厚みは本体部上半部の約7分の1を占めており、厚みの約半分の高さまで略垂直に上昇させた周側面には、後方寄り2箇所に一対の略長楕円形状片を付設している。また、その天面には、細幅の傾斜面を経て、本体直径比約10分の1の幅で、斜めリブ状のフィンを円環状に多数連続配置することで形成したルーバー状の排気口を設け、その内方は、排気口より一段高い極細幅の帯状部を介して接続した緩球面状の膨出部としている。
〔B4〕ノズル接続部は、本体部高さの略中央、上半部と下半部の接続位置から前方に突出する態様のものであり、略錐台形状の接続基台部を経て、やや縮径した略円筒形状の吸気口を設けてなるものである。
〔B5〕ハンドル部は、上半部のハンドルグリップと下半部のバッテリー収納庫とを曲面で一体的に形成した態様のものであり、ハンドル上部後方の傾斜面には操作ボタンを配している。
〔B6〕ハンドルグリップは、後方(外側面)にエンボス状の密な小突起群を配し、前方(内側面)は、舌片状の分割突起を挟んで上下に連続的な握り面を形成するとともに、表面に疎な小陥群を配している。

3 本願意匠と引用意匠の対比
(1)意匠に係る物品
本願意匠及び引用意匠の意匠に係る物品は、いずれも「掃除機本体」であり、一致すると認められる。
(2)本願部分と引用部分の位置、大きさ及び範囲並びに用途及び機能
本願部分と引用部分は、いずれも、意匠に係る物品全体のうち、透明のダストカップ容器内に見通すことができる内部機構部分以外の外観の形状等全てに係る位置、大きさ及び範囲であって、ダストカップ容器及び排気口を伴う本体部、吸気口を有するノズル接続部、並びに、操作ボタン及びバッテリー収納庫を一体化したハンドル部に係るものと認められるため、本願部分と引用部分の位置、大きさ及び範囲並びに用途及び機能は、いずれも共通する。
(3)本願部分と引用部分の形状等
本願部分と引用部分の形状等を対比すると、主として以下のとおりの共通点及び相違点が認められる。
ア 共通点
〔共通点1〕本願部分及び引用部分の全体は、中央の本体部、本体部から前方に突出するノズル接続部、及び、本体部後方のハンドル部からなる。
〔共通点2〕本体部は、直径比約2倍の高さを有する略円柱形状であり、上半部の筐体を不透明、下半部のダストカップ容器を透明とした上で、天面を含む最上部には排気口部を設けている。
〔共通点3〕ノズル接続部は、本体部高さの略中央、上半部と下半部の接続位置から前方に突出する態様のものであり、略錐台形状の接続基台部を経て、やや縮径した略円筒形状の吸気口を設けてなるものである。
〔共通点4〕ハンドル部は、上半部のハンドルグリップと下半部のバッテリー収納庫とを曲面で一体的に形成した態様のものであり、ハンドル上部後方の傾斜面には操作ボタンを配している。
〔共通点5〕ハンドルグリップは、後方(外側面)にエンボス状の密な小突起群を配している。
イ 相違点
〔相違点1〕排気口部の外周形状について、
本願部分は、本体部上半部の約6分の1の厚みで構成され、その全ての高さで垂直に上昇した後、直角状に内側に折れる形状であり、表面に凹凸はないのに対し、
引用部分は、本体部上半部の約7分の1の厚みで構成され、その約半分の高さで略垂直に上昇した後、斜状に内側に折れる形状であり、表面には後方寄り2箇所に一対の略長楕円形状片が付設されている。
〔相違点2〕排気口部の天面形状について、
本願部分は、極細幅の縁部を経て、4つの小円孔からなる円孔列を放射状かつ円環状に多数連続配置することで形成したメッシュ状の排気口を設け、その内方は、排気口面から連なる無模様の円形状平滑面としているのに対し、
引用部分は、細幅の傾斜面を経て、斜めリブ状のフィンを円環状に多数連続配置することで形成したルーバー状の排気口を設け、その内方は、排気口より一段高い極細幅の帯状部を介して接続した緩球面状の膨出部としている。
〔相違点3〕ハンドルグリップ前方(内側面)の形状について、
本願部分は、舌片状の分割突起を挟んで上下に不連続な握り面を形成しているのに対し、
引用部分は、舌片状の分割突起を挟んで上下に連続的な握り面を形成するとともに、表面に疎な小陥群を配している。

類否判断
以上の共通点及び相違点が類否に及ぼす影響を評価、総合し、本願意匠と引用意匠の類否について判断する。
(1)意匠に係る物品
本願意匠と引用意匠は、意匠に係る物品が同一である。
(2)本願部分と引用部分の位置、大きさ及び範囲並びに用途及び機能
本願部分と引用部分は、意匠に係る物品全体に占める位置、大きさ及び範囲並びに用途及び機能が共通する。
(3)本願部分と引用部分の形状等
ア 共通点の評価
共通点1ないし4は、本願意匠及び引用意匠のような、ハンディ型又はスティック型として用いる掃除機の本体形状において本願出願前から多数の意匠に採用されている基本形の一といえるものであり、需要者は、意匠の選択において、これら基本的な構成態様に加え、より具体的な構成態様にも注目するものと認められるため、これらの共通点が類否判断に与える影響は限定的である。
共通点5は、この種物品における基本形とまではいえないものの、ハンドルグリップにおける付加的な滑り止めとしては既存例の範囲内といえるものであるため、この共通点が類否判断に与える影響もごく限定的である。
イ 相違点の評価
相違点1について、本願部分と引用部分の排気口部はいずれも扁平な態様ではあるものの、その外周面の垂直成分は相対比で約2倍の高さの差があり、全体を太幅かつ表面凹凸なしとして構成した本願部分は、細幅かつ後方寄り2箇所の略長楕円形状片を有する引用部分とは対照的な、シンプルかつ頑強な印象を与えるものとなっている。
相違点2について、本願部分と引用部分の排気口部天面には、いずれも本体直径比約10分の1の幅の円環状排気口が設けられてはいるものの、それら排気口の具体的な構成態様は、本願部分がメッシュ状の小円孔列、引用部分がルーバー状の斜めフィンからなるものであって、全く異なっており、その両隣接部位である内方の膨出態様の有無及び外方縁部における傾斜面の有無に係る相違、並びに、上記相違点1とも相まって、本願部分及び引用部分をそれぞれ独自に強く特徴付けるものとなっている。
これら相違点1及び同2に摘示した排気口部は、この種の掃除機本体において、ハンドルグリップを握っての使用時には常時至近距離から観察されやすく、また、保管時には天面が見えるようにスタンドに立て掛け収納することが一般的であることに鑑みると、不使用時においても視覚観察されやすい部位となるため、排気口部は需要者の注意を強く引く部分といえ、当該部位におけるこれら相違点が類否判断に与える影響は非常に大きい。
相違点3について、これ自体は部分限定的な範囲の相違ではあるものの、ハンドルグリップの滑り止め効果の観点から、本願部分が、グリップ後方のエンボス状小突起群に加え、グリップ前方には上下に不連続な握り面形状、すなわち、より手指になじみやすい曲面形状を採用している点は、引用部分が、グリップ前方の握り面にはシンプルな曲面形状を採用しつつ表面に小陥群を付加しているのとは異なる点であり、掃除機本体の使い勝手にも影響を及ぼすものであるため、本願部分と引用部分の違いを視覚的に更に強める特徴として需要者の注意を引くものとなっており、類否判断にも一定の影響を与えるものといえる。
ウ 小括
上記した共通点及び相違点の評価に基づくと、本願部分と引用部分の形状等の共通点が類否判断に及ぼす影響は限定的であるのに対して、相違点が類否判断に及ぼす影響はとても大きく、これら相違点の存在によって需要者に別異の美感を与えているというべきものであるため、本願部分と引用部分の形状等は、類似するとは認められない。
(4)本願意匠と引用意匠の類否
以上のとおり、本願意匠と引用意匠は、意匠に係る物品が同一であり、本願部分と引用部分の位置、大きさ及び範囲並びに用途及び機能も共通している一方、本願部分と引用部分の形状等は類似するとは認められない。
よって、本願意匠と引用意匠は類似するとはいえない。

第5 結び
以上のとおりであって、本願意匠は引用意匠に類似するとはいえず、原査定の引用意匠をもって意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできないから、本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また、当審において更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。

別掲




審決日 2023-05-24 
出願番号 2021500898 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (C3)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 伊藤 宏幸
江塚 尚弘
登録日 2023-06-28 
登録番号 1748158 
代理人 渡辺 陽一 
代理人 三橋 真二 
代理人 中村 和広 
代理人 南山 知広 
代理人 鶴田 準一 
代理人 川崎 典子 
代理人 青木 篤 
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